彼女は引き金を愛しすぎている   作:龍流

6 / 15
ボーダー日記 二発目

 

 〇月★▽日 (火曜日)

 結論から言えば、わたしは負けた。

 ……くやしい。めちゃくちゃくやしい。部活の試合で負けた時よりも、さらにくやしい。というか絶対に間違いなく人生で一番くやしい。

 出水くんのメイントリガーは『通常弾(アステロイド)』。わたしのメイントリガーも当然『通常弾(アステロイド)』。両方、同じだった。条件は五分。イーブンといってよかっただろう。唯一の違いは、わたしが『通常弾』をアサルトライフルで出力していたのに対して、出水くんはシュータースタイル……キューブの弾丸を直接出力する形で用いていた、という点だ。

 今回の勝敗の差は、要するにそこにある。

 継続的な火力……連射性能なら、銃型トリガーを扱うわたしに分があった。まだトリガーを手に取り始めたばかりで使いこなせていないとはいえ、命中精度だって「銃型トリガーの方が確実に上」と、イケメン嵐山さんが太鼓判を押してくれていた。それなのにわたしが負けた原因は、射手用トリガーのふざけた命中範囲。弾をばらして乱射することによる、面制圧の火力。それに対応しきれなかったからだ。確かに、純粋な火力で言えば、銃手は射手よりも間違いなく上。同じ箇所に弾丸を正確に叩き込み続ければ、トリオン兵の装甲は抜ける。けれど、対人戦なら……弾丸一発で容易く撃ち抜かれるトリオン体の耐久力なら、弾を広範囲にばら撒ける方に圧倒的なアドバンテージがあった。ちまちま銃を連射するわたしに対して、出水くんはこうなんというか……ぶわっ!という感じで弾を撃ちまくっていた。で、結局火力勝負には勝てず。避けきれずにじわじわと削られて負けたのだ。

 もちろん、出水くんの戦い方もうまかったと思う。遮蔽物を上手く活かしてわたしの射線には全然入ってこなかったし、そのくせ自分はうまく身を隠しながらキューブの弾丸を時間差で撃ったりしていた。センスがあるというか、とにかく彼の動きはそつがなくて巧かった。天才肌というやつだろう。くやしいけど、出水くんのセンスは確かに『射手(シューター)』というポジションに噛み合っていた。認めたくないけど。

 もう一つ。今回の勝負で痛感したことがある。普通の体よりも身体能力はめちゃくちゃ上がるし、殴られても全然痛くない『トリオン体』だけど……実は同じトリオンによる攻撃に対しては予想以上に脆い、ということだ。弾をくらったらすぐに穴あくし、そこからトリオン漏れるし。当たり所が悪ければ(頭とか心臓とか)、それだけで一発アウト。これからは、トリオン体の特性を活かして戦い方を練らなきゃいけないみたい。

 とにかく。今回のタイマン勝負で、射手の利点というものは身を持って理解した。課題も見えてきた。なら、後は練習あるのみ!

 

 さあ、やることがいっぱいだ。

 

 

 

 〇月✕✕日 (水曜日)

 

 まずは攻撃手相手に間合いを取った戦い方を練習しようと思ったら、黒髪で鋭い目つきのちびっ子くんにボコボコにされました。

 適当な相手を探していたら、向こうから声をかけられた。特に断る理由もなかったので、二つ返事で了承。そのまま模擬戦をやることに。

 攻撃手用のトリガーは『弧月』っていうブレードで、ちびっ子くんの得物もそれだった。言い方は悪いけれど、弧月は見た目通りの何の変哲もないただの剣らしい。ちびっ子は普通の奴よりも短いタイプ(改造品?)を二本持っていて、いわゆる二刀流というスタイルだった。かっこいいし、ロマンである。だからわたしは、

 

「へぇ! それかっこいいね!」

 

 と、褒めてあげたのだ。

 それが、何故か癪に触ってしまったらしい。

 ちびっ子の動きは、それはもうえげつなかった。アホみたいに速かった。小さいから速く動けるのは当然かな、とも思ったけど、それにしてもえげつないスピードだった。気づいたら胸を貫かれていた、なんてことはざらで、ひどい時には接近しているのに気づかないまま後ろから首を落とされた。冷静に考えてみると、ぴちぴちの女子中学生(もうすぐ花のJK)の首をためらいなく切り裂くってなかなかひどい。きっとわたしがトラウマになって訴えても勝てるレベル。

 軽く30回は負けただろうか。ちびっ子は、

 

「まだやるのか?」

 

 と、聞いてきた。わたしは、

 

「もちろん」

 

 と、答えて、さらに負け星を重ねた。

 もういいだろう、と言われたけど、年下相手に負けっ放しというのはどうしても納得がいかなかった。なんとしてで1回は勝たないと、わたしの銃に対するプライドが許さない。

斬られまくって動きは覚えた。

 攻撃にパターンがあることは学習した。

 それを、脳に覚えこませた。でも、重いアサルトライフルじゃ、動きを見極めても当たらない。照準が安定しない。

 

 だから、動きを先読みすることにした。

 

 動く相手に銃口をポイントするのではなく。動く場所を予想して、照準を置いておく。相手がそこに飛び込んできた瞬間に、引き金を引く。

 そうしたら、当たった。

 ちびっ子くんはニヤリと年不相応な笑みを浮かべながら「やるな」と、短く呟いて、

 

 

 

 

 

 

 なんか、半透明の盾みたいなやつで防がれた。

 

 

 

 

 

 

 いやいやいやいや!?

 なにあれ!? おかしいでしょずるいでしょ!

 こっちが一生懸命がんばってようやく当てたっていうのに、防げるってなにそれ!?

 

 結局、わたしは1回も勝てずに50連敗という素晴らしい記録を樹立した。いえーい。悲しい。自分の才能に自信がなくなっちゃう。

 わりと本気で肩を落としながらトリオン体を解除。訓練室の外に出ると、ちびっ子くんが腕を組んで待ち構えていた。なんだよぅ……まだ言いたいことがあるのかよコイツめぇ……と思っていると、

 

「なかなかいい動きだった」

 

 と、お褒めの言葉を賜った。なんという、上から目線……これが天才少年の余裕か……なんて、わたしは戦慄していたのだけれど、

 

「正隊員の風間蒼也。18の大学生だ。よろしく」

 

 年上でした。本当にごめんなさい。

 




特に気にならないかもしれない疑問に答えるQ&Aコーナー

Q.この頃ってC級の制度はないの?
A.BBFのQ237で『総隊員数が3ケタを越えたあたりからチームランク戦が始まった』とあるので、この頃の綸はただの訓練生扱い。余談ですが、約3年前のこの時点で所属していた主な隊員は、烏丸を除く玉狛メンバー、太刀川、風間さん、東さん、冬島さん、柿崎さん、三輪、二宮さん、加古さん、諏訪さん、トッキーと佐鳥と堤さん(当時新入り)、月見さんなど。ちなみに同期入隊は出水と綾辻さん。

Q.風間さん、なんで弧月使ってるの?
A.スコーピオンがまだ開発されていないから。つまり迅さんがまだ太刀川に個人戦で負け越し中です。レイガストもまだない。

Q.逆にこの頃ってどんなトリガーがあったの?
A.確定で存在しているのは弧月、バッグワーム、アステロイド、銃手用のアステロイド、シールド、エスクード(「かなり初期型のトリガー」というクローニンの発言より)。独自解釈になりますが、小南がメテオラも多用していることから、おそらくメテオラもあった。若くてヤンチャしてた忍田さんが城戸さんの車をぶった斬っているので、多分『旋空』も多分実装済み。オプション類や他のブレード2種、ハウンドなどの特殊弾丸や狙撃手用トリガー各種はまだ開発中……という解釈で進めています。



過去編考えるのが楽しくてこちらばかり書いていますが、厨二の方も近いうちに更新します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。