Fate作品についてはFGOとExtraしかプレイしていない未熟者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
緑茶兄さんカッコいいよね!!
透き通るような青空、ざわめく緑の木々、流れる群雲、
大地、自然、天空、その全てが英雄を飾るバックグラウンドとして成り立ち、そしてこの男をも英雄として装飾する。
「ガラじゃあないんだけどね、オレには曇天とか夜闇の方がお似合いだっての」
吹き抜ける風は緑の男の頬を撫でる。
慈しむように、愛しむように、憐しむように。緑の男、ロビンフッドは森の茂みの中からじぃっと辺りを警戒し、索敵する。しかし決して彼は今、敵陣の真っ只中にいるわけでも、マスターが重傷を負っているわけではなかった。今、彼のマスターは休養、―――もとい他のサーヴァント達とお茶会を開いている。勝利の女王が焼いたパンケーキを、人類の守護者が淹れた紅茶と共に愉しみ、子供達の英雄がはしゃぐ姿を遠巻きで眺める。幸せ、それを体現したかのような明るいお茶会、気を抜け切っていないにしろ、彼の仲間は少なくも戦闘態勢ではなかった。そんな中、ロビンフッドだけは警戒を怠らずにお茶会を後にしてマスターの敵となるモノが現れぬように索敵を止めることはなかった。
「ワイヤートラップ反応――OK アルパインキャプチャー反応――良好 トラバサミ反応――問題なし」
己が仕掛けた無数の罠を一つ一つ丁寧に、一切の綻びや不備がないことを確認し終えた彼は一息をつく意味でも紫煙をくゆらせる。プカプカと大気へと消えていく煙を何気なしに眺める彼の眼は、どことなく寂しげであった。
「森の守り手―――たまたま森でのゲリラ戦が得意であっただけ。顔のない王―――賞賛されないことに何の意味がある。無名の英雄―――俺個人としての我はどこにもない」
鬱蒼とした茂みの中で彼は己の生い立ちに想いを巡らせる。
父を失くした幼少期、その父から譲り受けたサバイバル知識と妖精の姿を見ることができる力。しかしその力は村から迫害を受ける原因となり、厄介者として扱われていた。
彼は村の人々を愛してはいなかった。彼は村の人々を心から愛してはいなかった。
ただ見捨てることができなかっただけ、領主の圧政に苦しめられる彼らを蔑み、笑い飛ばす程ロビンフッドは村の人々を憎んではいなかった。だから弓を取った。だから毒を仕掛けた。だから奇策を講じた。卑怯、低俗、貧賤と乏しめられてきた彼の戦い方はただ一途に村を守ろうとしただけであった。そのために村人にすら顔と姿を潜め、人間であることを止めた。武器を隠し、誇りを隠し、英雄としての顔をも隠した。
結果、彼は自分が守ろうとした村人達に裏切られ、二年足らずで敵の凶弾に倒れる。
暗がりの視界、朦朧とする世界、そんな中彼が夢見た真の英雄とは正反対の形でその人生を終えた。
「英雄なんて器じゃないんだよ、オレは。あんな人達と肩を並べてちゃいけないんだよ。オレは今まで何をしてきた?何を成してこんな大層な座に就いた?世界を生きたまま一周した、広大な地を征服した、無数の民を幸福に導いた、......どれでもない、どれでもないんだよ。英霊になっちまう前から気づいてたことなんだよ、陽の当たる場所は俺の居場所じゃないってことくらい」
分かっていた、分かっていたのだ彼は。
索敵、警戒、マスターの守護、そのどれもが口実に過ぎなかったことを。本能的に、無意識的に、根本的に、彼にとって笑顔の溢れる場所は毒であった。胸が高鳴る、悪い意味で。
「ハハ、情けねえなオレ......」
地に落つる視線は何を見つめるでもない。眩い仲間たちと共に戦う罪悪感、輝かしい功績のない劣等感、自分という存在への嫌悪感、その全てが彼にのしかかり、―――反応を鈍らせた。
「ッッ!!!」
チリンと鳴り響く鈴の音、それは彼の半径50メートルに張り巡らせたワイヤートラップに獲物が触れたことを意味する。そしてその音の方角から、
「音は、......後ろかよ!!」
切羽詰まった表情のまま、矢を番えて彼は慌てて振り向いて構えを取った。―――ことが災いした。
「こんなところで何をしているのかネ?」
「は?」
自分の目の前に突然現れた白髪のご老人、紳士のような現代風の衣装とは対照的に胡散臭い雰囲気を醸し出す彼にロビンフッドの矢を番えていた指が緩んだ。
「本当に恐ろしいネ、君が解毒薬持ってなかったら私今頃英霊の座に戻ってたヨ!」
「急に後ろに立つんじゃねえですよ、マジで敵襲かと思ったじゃないですか」
最近マスターと新しく契約したらしい紳士のようなサーヴァント、クラスは自分と同じアーチャーであるご老人にロビンフッドは軽口を叩きつつも、頭を下げ解毒作業を終える。しかしこのご老人、自分の背後に立つ前にここらに張った罠を全て解除してしまったらしく、そんな彼を横目にロビンフッドは内心に驚きを隠しながらも、罠の再配置を始める。
「お茶会はいいのかい?君のようなイケメソ、もとい華がいないと女性陣はさぞかし退屈するだろうナ」
「ハハッ、冗談じゃないっすわ。どいつもこいつも有名人ばかりで気おくれしちまうっての。アンタはどうなんだよ、抜け出しちまっていいのかい」
いったいどうやってこの数の罠を気づかれることもなく解いたのか、そんな思考がグルグルと頭の中で巡るが彼の手はとても手際の良いモノでほんの数秒かそこらで解かれた罠を再配置していく。
『村を守るために英雄の衣をかぶり、勝つためだけに森の茂みに隠れ続けた青年』
――ロビンフッドの手が、止まる。
『しかし村人達が彼を讃えることはなかった。――顔のない王』
手が、仕事が、思考が、鼓動が止まる。ハっとした顔で視線を向けるロビンフッドを前に彼は独白を続けた。
「姿を、素性を、隠し続けてきたのは私もいっしょだ。無論、人から褒められるようなことはしてこなかったがネ」
落ちる視線、モノ哀し気な瞳、含みを持つ笑み、そのどれもが彼に、ロビンフッドにそっくりであった。
「だから歴戦の英雄たちと肩を並べて、堂々とこの名で、この姿で、
――英雄なんて器じゃないんだよ、オレは――
――あんな人達と肩を並べてちゃいけないんだよ――
――陽の当たる場所は俺の居場所じゃない――
「時々少~しむず痒くてね、抜け出してきちゃった☆」
見開く目は驚きを、動かぬ開口は唖然を、ゴクリと生唾を飲んだ彼は――
「わかるわ~~」
ご老人の手を取り、嬉しそうに身体を震わせる。
彼の瞳は、笑みは、挙動は隠し続けてきた感情を初めて共有できる友ができた少年を連想させるほど嬉々として輝く。
「なんで前線でこんながんばっちゃってるんだろうって思うよネ!」
「そうそうそう!!」
「正攻法なんてばかみたい!!むしろ戦わずして勝ちたい!!」
「そうそうそう!!!」
ステップを刻むご老人は懐からソレを取り出す。ロビンフッドが森に仕掛けた罠の一つ、ソレをご老人はとても興味深そうに眺める。
「では
ロビンフッドの嬉々とした表情がほんの少し赤らみ、背を向けて止まっていた作業を続行した。
恥ずかしいもあるのだろう、しかしそれ以上に自分の専門である罠に興味を持たれることに心が躍ったのだ。その証拠に、
「......毒草とか興味あります?」
「もちろんだとも~!!くわしく教えてくれればより邪悪な配合や使い道を考案しよう!!」
その証拠に彼の再配置する予定だった罠の半分を預け渡す。自分の罠を晒し、預ける。それは罠を専門とし、生命線とする彼にとっては最大限の好意の表しであった。
「ハハッ、殺したい相手でもいるんですか」
「いっぱいいるとも~!!」
楽しげに罠の設置方法や効果を尋ねてくる彼を横目にロビンフッドは空を見上げる。煌びやかな太陽、吹き抜ける風、なびく自然、そのどれもが二人には不釣り合いで、不適格で、相応しくなくて、彼は思わず吹き出してしまう。
「――ったく、ガラじゃぁねえのにな」
ありがとうございました。
元ネタ提供者、わふさん(@w_a_f)もよろしくお願いします。この人の描くロビンフッドめちゃくちゃお兄さんでカッコいいです。