私の姉が肉食系だった件   作:ナツイロ

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他のSSの息抜きに書き始めたら、筆がのってしまいました。
原作キャラのイメージが壊れるかもしれません。正直すまん。
でも、頭空っぽにして書いてて楽しかった。
オリキャラと原作キャラの恋愛が含まれます。
オリジナル設定が当たり前に入ってます。
苦手な方はご注意を。
基本、ギャグみたいな話です。
姉とチームの一員のオリキャラ先輩がくっついて、妹のみほが何だかもにょる話。
突き詰めれば、こんな感じ。
※誤字報告ありがとうございました。修正適応しました。



本編 まほ姐さんルート
私の姉が肉食系だった件


 私の名前は西住みほ、大洗女子学園に通う高校二年生だ。

 勝利だけを追求する戦車道が嫌になり、熊本の黒森峰女学園から転校して来たのだが、なんやかんやあって結局また、戦車道に関わっている。

 今では友人にも恵まれ、以前の様にただ義務感からやっていた戦車道が、ここに来てからは楽しいものと思える様になったので、戦車道の大家であり西住流の師範である母や後継者の姉には悪いが、転校して良かったと思っている。

 このままいつか、自分の戦車道を見つけられるかもしれない。

 そう思えるようになり、日々充実した高校生活を送っている。

 

 私が所属している戦車道チームは、つい先日の全国大会一回戦で強豪校でもあるサンダースを相手に、ギリギリの所で勝利を収めた。

 サンダースのケイ隊長のスポーツマンシップに助けられた形だったが、チームメイト達は素直に勝利を喜んでいた。

 はっきり言って、誰も大洗の勝利を期待していなかったところに、この大番狂わせだ。

 学園艦の住人たちも、にわかに浮ついている気がする。

 二十年ぶりの戦車道復活に、この大金星だ。

 仕方ない面もあるだろう。

 二回戦の相手はもうそろそろ決まるはずだが、どこが相手だろうとウチのチームからすれば全て格上の相手になるのは間違いない。

 作戦次第で勝てる相手ならば良いのだが……。

 

 特徴的な電子音が、カバンから聞こえて来た。

 携帯電話がなっている。誰だろうか?

 携帯を取り出して、ぱかりと開く。

 私は目を疑った。姉からの電話だった。

 どうして?

 先日、試合後に友人の麻子さん達をヘリで送ってもらった時には、まともに会話もなかったというのに。

 震える手で通話ボタンを押す。

 

「も、もしもし?」

『みほ、私だ』

「うん、お姉ちゃん。久しぶり」

『先日会ったばかりだ、久しぶりというわけでもないさ』

「それはそうだけど、殆ど話さなかったし」

『……それも、そうだな』

 

 ふいに、会話が途切れる。

 突然の電話で、何を話題にすれば良いのか、私は分からず言葉が続かなかったのだが、姉の方もどうやら何かを逡巡している様子。

 数秒の沈黙の後、意を決したように、私に問いかけてきた。

 

『彼の連絡先を教えてくれ』

 

 彼ってどれ?

 いや、誰?

 そもそも彼と言うからには男性ということで、姉の口振りからすれば私はその彼の連絡先を知っているらしい。

 いやいやいや、私には彼と呼び合うような知り合いはいないし、彼という表現はつまりその、そういう関係を暗示しているわけで。

 

「わ、わたし彼氏なんかいないよぉっ!」

 

 つい言葉が上擦ってしまい、誰かに聞かれていないか周囲を見回してしまった。

 幸い、周囲にひと気はなかった。

 くっそ、こんなことで辱めを受けるなんて。

 

『誰も、みほの彼氏の話なんてしていないぞ』

「だ、だから! 私には彼氏なんて……」

『彼というのは、先日私を学園艦に案内してくれた男子生徒の事だ』

「へ?」

『私より頭一つ分くらい背が高く、体を程々に鍛えていて、気遣いができ、髪を変に染めたりせず短髪で、カレーが好きな、あの彼だ』

「背が高い以外の情報は、別にいらなかったなぁ……」

『何か言ったか』

「んーん、別に」

 

 ため息が漏れるのを、私は止められなかった。

 姉の言う彼とは、恐らく、というよりほぼ間違いなくあの人だろう。

 小野忠勝。

 何か、トンボを切ってそうな名前だが、大洗女子学園の男子分校に通う、高校三年生だ。

 戦車道チームの裏方として参加してくれていて、自動車部に混ざって戦車の整備や演習場の造成、試合会場に戦車を運搬する際の車輌の運転などもしてくれる、痒い所に手が届く、そんな先輩だ。

 

 大洗女子学園艦にも、学園艦生まれの学園艦育ちという生徒が一定数いる。

 これはどの学園艦でも同じなのだが、学園艦生まれの児童は陸の小学校には通えない。

 幼い子供が親元を離れられないとされるのは、陸も学園艦も変わらないのだ。

 そういった児童は大抵の場合、中学校に上がる段階でそのまま学園艦の中等部進学するか、大洗女子のような女子校の学園艦の男子児童は、他の学園艦の学校に進学する。

 しかしながら、事情があって親元を離れることが困難な児童生徒という者が存在する。

 そのような生徒向けの学校として、女子学園艦であっても、男子生徒が通う分校として教育施設が存在するのだ。

 そして、少数クラスである利点を利用して、学園艦外からも事情を抱えた生徒を受け入れる事もある。

 姉の言う彼も、事情を抱えていた一人だったようで、高校に上がると同時にこの学園艦にやって来た、らしい。

 らしいというのは、他人から聞いた話であり、話してくれた人は生徒会長の角谷会長だからだ。

 プライベートな内容なので、聞く事は憚れたのだが、これからちょくちょく顔を合わせるのだからと、押し切られてしまった。

 それはともかく。

 

「お姉ちゃんが言ってるのは、小野先輩のこと?」

 

 というか、姉を相手に物怖じせず、角谷会長が学園艦の案内を任せる男子生徒と言ったら、彼しかいないのだが。

 

「三年生で、男子生徒で唯一生徒会に参加してて、戦車道チームに参加してる?」

『あぁ、食事の時、確かそう言っていた気がする』

 

 食事ってなに。

 いや待て、確かあの日は姉を乗せて帰るはずだったヘリを麻子さんの為に動かして貰ったので、姉はヘリが戻ってくるまで大洗女子学園で待っていて貰ったと、会長が言っていた。

 しかし、会長がずっと姉についている訳にもいかず、同じ生徒会で戦車道チームの一員でもある小野先輩に姉の相手を任せたのではないだろうか。

 接点としたら、そう考える他に思いつく物がない。

 十中八九、その時に夕食を共にしたのだろう。

 生徒会室の入っている艦橋近くには、それなりにお食事処がある。

 無理のある推測でも無いはずだ。

 

「ちなみに、ご飯は何を食べたの?」

『カレーだが』

「やっぱり」

 

 姉はあれでも、中々のカレー好きなのだ。

 姉が惚れっぽい性格だとは思わないが、食事のチョイスはポイントが高かったのだと予想はつく。

 小野先輩はイケメンというほど、容姿が整っているとは言わないが、あれで中々人好きのする笑顔の持ち主なのだ。

 友人の沙織さんの調べでは、そこそこの人気があるのだとか。

 確かに、後輩の面倒見は良いと思う。

 男子分校の生徒は、偶に不良っぽい生徒が入ってくるらしいのだが、小野先輩の言葉には絶対従うようで、不良少年達からは恐れと尊敬を集めているとかいないとか。

 沙織さん、一体どこからそんな情報を?

 

 いや、沙織さんではなく、今は姉の事だ。

 姉の口振りから察するに、あの姉にしてはかなりの高評価を下しているようだが、まだ小野先輩のことを好きかどうかというのは明言していない。

 ここまで来て、ただお礼を言う為だけに連絡先を聞いて来たのだったら、私の独り相撲で終わってしまうのだが。

 

「ね、ねぇお姉ちゃん。一応聞くんだけど、小野先輩の連絡先が知りたいのって」

『先日の、お礼をしたいからだ』

 

 ふう、どうやら私の取り越し苦労だったらしい。

 全く、変な冷や汗をかいてしまったではないか。

 

『それと、だな……』

 

 待て、まだ続きがあるだと。

 しかも、なんだか言いづらそうにしている。

 これはもしや、もしかするのか?

 

『どうやら私は、彼に恋をしてしまったらしい』

 

 なんでそぎゃんこつになっとっと?

 いや、失礼。つい地元の方言が出てしまった。

 あの、姉が恋をした?

 妹の私から見ても、そういうことに奥手に見える、あの姉が?

 こういうと、私が積極的かのように思われるかもしれないが、私自身も奥手なのは自覚している。

 しかし、姉はそれに加えて、西住流を体言するような人物でもあるのだ。

 奥手で、堅物で、西住流も付いてくる。

 はっきり言って、こういう性質の話題は私の方が先だと思っていた。

 何だか、とってもちくしょう。

 

 大体、小野先輩ならどちらかと言うと、私の方が恋をするポジションとしては妥当なのではないか。

 失意の内に転校してきた女子生徒、またしても戦車道に関わる中それを支える男子生徒に淡い恋心を抱く、なんて。

 別に、私は小野先輩に対して恋愛感情を持っているわけではないが、私の方がまだ可能性のある立ち位置にいるシチュエーションでしょうが。

 戦車道全国大会を通じて距離が縮まる二人、なんてアニメで言ったら二クール分くらいにはなりそうなもの。

 そして最後は辛くも奇跡的な勝利から優勝を収め、私は彼に告白をするのだ。

 それを彼は受け入れて、二人の顔が近づいていく……。そしてエンディングだ。

 いいじゃないか。

 スポ根と恋愛を絡めたベタな展開だが、私は嫌いじゃない。嫌いじゃないですよ。

 特にモデルが私な所とか、高評価だ。

 特別協賛で、ボコが関わっているならもっと良い。

 後日談として、デート風景などをOVAで出してくれたら完璧だ。

 私なら円盤をボックスで買うね、間違いない。

 

『みほ、聞いているのか』

「あ、うん。ごめん。聞いてるよ」

 

 いけない、今は私ではなく姉の恋路のことだった。

 小野先輩の連絡先を聞きたいとのことだが、いくら私の身内が相手とはいえ、そう簡単に他人の連絡先を吹聴するのは憚れる。

 一度、先輩の了解をとるというのが筋だろう。

 まぁ、私の予想では断られる事は無いと思う。基本的に大らかな人だし、小野先輩は。

 

「一度、小野先輩に聞いてみるよ。お姉ちゃんに連絡先教えていいか」

『頼む、他に頼れる相手がいないんだ』

「う、うん。任せて? それじゃ、また連絡するね。バイバイ」

『あぁ、失礼する』

 

 ピッと、電話を切る。

 姉は随分前のめりな気がするが、私の気のせいだろうか。

 それはともかく、先輩に了解を取る必要がある。

 何だか、私の方が緊張してきた。

 今の時間帯なら、小野先輩はガレージで戦車の整備を自動車部と共に行っているはずだ。

 確か、換えの装甲板が今日大洗の鉄工所から届くと聞いているので、その交換作業に追われているだろう。

 私は何となく申し訳ない気持ちになりながらも、チーム全員の連絡先を登録してある携帯の電話帳を開き、小野先輩の番号を選んで発信ボタンを押した。

 数度の呼び出し音の後、電話が繋がる。

 

「もしもし? 小野先輩、今大丈夫ですか?」

『どうした、西住隊長。戦車の整備はまだまだかかるから、練習は無理だぞー』

「いえ、戦車の話ではなくてですね」

『んー? ちょっと待って。みんなー! 電話きたから少し離れるっ!』

 

 電話口を塞いだのだろうが、周囲の騒音に負けないように張り上げた声は伝わってきた。

 そして、了解の返事も聞こえてくる。

 ナカジマさん達だろう。

 騒音が遠のいて行くのを感じ、小野先輩が再び電話に出た。

 

『それで、何か用だった?』

「はい、えーと。その、私のお姉ちゃんの事、覚えてますか? 先日の」

『あぁ、冷泉さんの件でお世話になった、黒森峰の隊長さんだろ? 覚えてるよ』

「えぇ、そのお姉ちゃんが先日の食事などの件で、お礼がしたいらしくて」

『いや、お礼するのはこっちの方でしょ。別に、気にしなくてもいいよ』

「お姉ちゃん、その辺りのこと結構きっちりやるタイプでして」

『真面目そうな感じなのは分かる』

「それで、お姉ちゃんから先輩の連絡先を聞かれまして。教えちゃってもいいですか? 本人が直接お礼がしたいと言ってるんですよ」

『んー、西住隊長のお姉さんなら、変な風に使ったりしないだろうし。いいよ、教えちゃって』

「分かりました、ありがとうございます。後から、お姉ちゃんから連絡が行くと思いますので」

『はいはい、了解。それじゃ、隊長、お疲れー』

「はい、それでは失礼します」

 

 ふふふ、我ながら上手いことやれた気がする。

 というより、これ以上を求められても困るのだ。

 早速、成果を姉に伝えることにしよう。

 先輩の電話番号と、メールアドレスをメールで送った。

 数分もしない内に、姉からまた電話がかかってきた。

 早すぎないかと思わないでもないが、恋する相手の連絡先が手に入るとなれば、私も似たような行動をするかもしれない。

 きっとドキドキして、携帯を手放せないだろうなぁ。

 

『みほ、メールを見た。ありがとう』

「うん、お姉ちゃんなら信用できるからって」

『これから彼に、連絡を入れるとしよう。みほ、また電話する』

「う、うん。頑張ってね? お姉ちゃん」

『あぁ。健闘を祈ってくれ』

 

 電話が切れた。

 不安だ、姉はもう少し慎重に行動するタイプだと思っていたのだが、恋は人を変えるのだろうか。

 まぁいいか、もう私の手を離れたのだ。

 後は、高みの見物と洒落込もうじゃないか。

 ふふふ、まさかあの姉が恋に落ちたとは。

 これは今から、連絡が楽しみである。

 

 

 

 姉からの連絡は予想以上に早く、その日の夜になってからだった。

 その頃には二回戦の相手がアンツィオ高校と決まったので、アンツィオ高校の運用戦車などを調べていたのだが、そこに姉からの電話が来たのだ。

 私は、もう来たかと若干早い気がしていたものの、私とて女子高生の端くれ。

 他人の恋バナは、大好物だ。

 作戦ノートをたたみ、ベッドにあるボコのぬいぐるみを抱えて、姉からの電話に出る。

 

「もしもし、お姉ちゃん?」

『私だ、みほ』

「それで、小野先輩とはどうだったの?」

『あぁ、お礼を伝えて、会う約束を取り付けた』

 

 ちょっと、展開早くないですかね。

 

「い、いつ、会うことにしたの?」

『今度の大洗の二回戦、アンツィオ高校とだったろう? そこに偵察に行くことになっているから、その試合後に会うことにした』

「そ、そう、なんだ。あはは」

 

 何がそこまで姉を駆り立てるのか、いや、間違いなく恋してるからなんだろうが、ここまで人を積極的にさせるのか。

 私にそこまでの経験は無いが、そういうものなのだろうか。

 沙織さんなら、『そうだよっ!』と鼻息を荒くするかもしれない。

 しかし、小野先輩もよくオッケーを出したものである。

 彼は、薄々気が付いているのか?

 姉の気持ちに。

 ……いや、どちらかと言えば『律儀だなぁ』と思っている可能性が高いか。

 小野先輩は人から好かれるタイプだが、異性にモテるかというと、少し失礼かもしれないが首をひねるところだ。

 私が嫌いだというのではなく、先輩は私から見ても好ましい部類の男子生徒だが、如何せん周囲にいるのは女子高生。

 判断基準が、基本的に顔面偏差値な年頃で、先輩は篩い落とされてしまうタイプなのだ。

 だからこそ、姉が彼に恋したのは、つまり顔より中身で選んだわけで。

 私だって、容姿が良くても中身がチャラ男では願い下げである。

 その点は、姉に同意できるだろう。姉の見る目が確かで、妹の私も鼻高々だ。

 小野先輩の良いところは、見た目だけでは分からないのだ。

 いや別に、彼の見てくれが悪いと言っているのではなく……。

 あぁ、私は一体誰に言い訳しているのか。

 これでは、まるで私まで先輩に恋をしているみたいだ。

 そう、私で無く姉の話。姉の話だ。

 私では無いぞ、大事なことだ。

 もう一度言うぞ、私ではない。

 

『それで、みほに相談があるんだが……』

「な、何かな? 流石に、小野先輩の好みのタイプとかは知らないからね」

『それはいい、私に振り向かせれば良いだけだ』

 

 我が姉ながら、男前すぎる。

 そんなんだから、同性からバレンタインチョコを段ボール箱でもらうのだ。

 偶にだが、性別を間違えて生まれてきたんだなと、思うことがある。

 例えば、今みたいな時に。

 男だったら、かなりのイケメンだったろうに。

 

「それで……相談って?」

『あぁ、試合会場の近くにホテルが――』

「ねぇ待って、ちょっとタイム。ストップ、カメラ止めて」

『カメラなんて無いが?』

「お姉ちゃん、ちょっと黙ってて』

『わ、分かった……(何を怒ってるんだ?)』

 

 どういうこと?

 ホテル?

 火照るのは私の方だよ、ってうるせーよ。

 そうじゃない、ホテルだ。

 恋愛初心者の私だって、それは段階飛ばしすぎだろって分かる。

 階段登ってたら、ロケットに点火してたってぐらい飛ばしすぎ。

 何言ってんだ、私は。

 そう、段階だ。順番に手順を踏んで行けという話だ。

 流石に電話で告白はしないだろうから、未だ気持ちが通じ合うとかそれ以前の話で。

 大体こういうのは、告白してデートして、名前で呼び合ったりして、何度目かのデートでキスをして、何やかんやあってゴールイン。

 そういうものの、はずだろう。

 私の願望も多分に含まれたが、大体こんな感じのはずだ。

 それがいきなり、ゴールテープとか。

 何じゃそら。

 健全な深夜アニメが、初回からR-18だったぐらい驚きだよ。

 深夜アニメが健全かどうかはさておき、それぐらいの驚きだってこと。

 どうしてその結論にいたったのか、妹の私にもさっぱり分からない。

 一体、誰の入れ知恵だ。姉にそんなことを吹き込んだのは。

 

「お姉ちゃん、どうしてそういうことになるの? ほ、ホテルとか、つまり、そういうことをする所でしょ?」

『泊りじゃないぞ、休憩の方だ』

「そういうことを聞きたいんじゃなくて! どうしてその結論になるのっ! 小野先輩にそういうことにふしだらって思われていいの!?」

『しかし、年頃の男子は基本的にそういうことばかり考えていると……』

「そ、それはそうかも知れないけど。いやいや、だからって本能丸出しは無いよ。そんなことしてる男子がモテるワケ無いでしょ!」

『小野君はそんな人じゃないぞ、安心しろ』

「分かってるよっ! お姉ちゃんよりもね!」

 

 知り合った期間なら、妹の私のほうが長いんだぞ。

 そんな相手だったら、そもそも戦車道チームには入れてないし、姉に連絡先を教えるなんてしない。

 

『それにだ。手元の資料によれば、S○Xまでに至るデート回数は年々減少傾向にあるというデータが……』

「なにその資料? 雑誌?」

『後輩が戦車に持ち込んでいたのを、没収したんだが。それに』

「捨てて、それデタラメだから」

『し、しかし』

「捨てなさい」

『……ハイ』

 

 そんな雑誌のデータが、信用できるはずが無いでしょうが。

 スポーツ新聞の見出しか、政治家の公約ぐらいの信用も無いのに。

 

「いい、お姉ちゃん。会うのは良いけど、ホテルはダメだからね。絶対。大体、それが上手くいったとして、私はどんな顔して小野先輩と顔を合わせればいいの? 姉がエッチでごめんなさいと、言えとでも?」

『言葉にされると、恥ずかしいな……』

 

 恥ずかしいのはこっちだよ、馬鹿野郎。

 年頃の娘に、エッチだのホテルだの言わせておいて、何いっちょ前に恥ずかしがりやがる。

 

「とにかく、一度会ってきちんと告白すること。そういうことは、気持ちが通じ合ってから、時間をかけて行くものなの」

『ま、まさか。みほは経験がっ』

「無いよっ! 常識の話をしてるの、私は!」

『そ、そうか。どこの馬の骨がと思ったが、違うんだな?』

「違うよっ!」

 

 それを言うなら、私の方だろう。そのセリフは。

 小野先輩は、知り合いだから別に馬の骨でもなんでもないし、人間性もまともだけど。

 

「と、とにかく。会って告白して、次の約束を取り付けるだけで終わらせてよね。いい?」

『しかし、それだけだと不安だ……キスもだめか?』

「それは、せめて何回かデートしてからにして」

『つまり二回目以降なら……』

「三回以上」

『……分かった』

「よろしい」

 

 何がそこまで、姉を肉食系女子に全力投球させるのだ。

 小野先輩から、変なフェロモンでも出ているのだろうか。

 それから何度も姉に釘を差し、その日の電話は終わった。

 

 

 

 アンツィオ高校との試合の後しばらくして、小野先輩と姉の関係は一歩進んだようで、姉から『成功した』という内容の電話が来た。

 小野先輩からも、人目を偲んでであるが、姉とお付き合いを始めたと伝えられた。

 伝え聞く二人の話を統合すると、二人はちょくちょく連絡を取り合っているようで、最近はパソコンの無料ビデオチャットで逢瀬を重ねているらしい。

 二人共異なる学園艦にいるのだから、仕方ないのだが。

 同じ港に寄港日が重なることも早々無く、姉のほうがやきもきしているようだ。

 そんなある日、偶々寄港日が重なり、姉と先輩がデートしたらしい日の夜、小野先輩からメールが来た。

 

 

差出人:小野忠勝

送り先:西住みほ

件名:教えてくれ

本文:

西住さんからデートの途中、ホテルに誘われた。

もちろん、俺達には早いと言って断ったのだが。

俺はどうすれば正解だったんだ?

獲物を狙う目にみえて、少し怖かったよ……

 

………

……

 

 あの馬鹿姉めぇっ!

 

 

 

 直ぐ様、携帯を手に取り、姉に電話をかけ一時間もの間、説教をした。

 それでも、懲りてないような気がする。

 ちくしょう、私だけでは無理なのか。

 誰か、助けになりそうな人は居ないのか。

 

 黒森峰は……、いないな。

 逸見さんが思いつくが、彼女は姉に心酔している節がある。

 姉のピンク頭をどうにかしてくれと言ったら、私の方が色々言われそうだ。

 実家だと、父か母だが、こういうことに父親を混ぜても余計にこじれるだけだ。却下。

 母ならどうか、しかし以前両親の馴れ初めをお手伝いさんの菊代さんに尋ねた時、顔が引きつっていたのを思い出した。

 もしかすると、姉の行動は母譲りなのかもしれない。却下。

 最後は菊代さんだけだ。

 一番マトモで、常識人は彼女だけだろう。

 しかし、なんと言って相談しようか。

 ……ふむ、仕方ない。直球で行くしか無いか。

 姉の名誉はズタズタだが、身から出た錆と思ってもらう他ない。

 

 

 

差出人:西住みほ

送り先:菊代さん

件名:私の姉が肉食系だった件

本文:

………

……

 

 

 

 




・男子分校
アニメの麻子を起こしに行くエピソードで、住宅街で空砲を撃った時に、住宅の窓から覗いた児童らしき少年がいたことから膨らんだ設定。

・肉食系になってしまったお姉ちゃん
普段はキリッとしていて頼りになる人が、親しい相手にはポンコツになるギャップ。
大好きです。

・つい飛び出た熊本弁
やみのまじゃ無い方。
県北と県央、県南でもちょこっと違う。
でも通じるから、誰も気にしない。
全員が地元の方言だけで収録したアニメがあったら、すごく面白そう。
カオスで。
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