原作通りにならない僕アカ   作:オリオリ

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注意
オールマイトのキャラが崩壊しています。
前回甘くできなかったので砂糖マシマシでお送りします。
皆、ブラックコーヒーの準備はできたかい?
それじゃ、今回も楽しんでくれると嬉しいです。



第十一話 無防備すぎる!

「アリス君、ナイトアイと直正からの届け物だよ」

 いつもの様に私の拠点にやってきたアリス君に、直正から預かった封筒を渡した。

「ナイトアイと直正さんから? なにかしら?」

 アリス君が首を傾げながら封筒を受け取って中身を見始めた。

 私も中身は知らされていないので、個人的な物だろうと推察している。

 あまり見ているのも悪いので、ソファに移動してテレビをつけた。

 

「ねぇ、オールマイト」

「ん? なんだい?」

 少しして斜め後ろから声が聞こえて、そちらを見やるとソファの後ろから身を乗り出して、手に持っている物を見せてきた。

「温泉旅館の宿泊券もらったんだけど、一緒に行かない?」

 …………ん!?

 今、アリス君の口から信じられない言葉が飛び出した気がしたんだが、うまく認識できない。

「……いま、なんと?」

「ナイトアイと直正さんが、色々と頑張って疲れてるだろうから良ければどうぞって。ペアチケットらしいからオールマイトも一緒にどうかなって。私も結構ここにきてるけど、オールマイトって連休とかとった事ないじゃない? 二泊三日ってなってるから丁度いいし、この機会に少し休むのもどうかなって」

 行かない?といって首を傾げるアリス君の仕草に、いつもなら胸が高鳴る所だが、今はそれより大きな爆弾を投げられててそれどころじゃない。

 

 宿泊である。

 泊りである。

 男女一組で温泉旅行である。

 しかもペアチケットと言う事は同じ部屋である可能性が高い。

 意識すればするほど顔が熱を持ちそうになる。

 アリス君がこんなに近くにいるのに、顔を赤くするわけにはいかない。

 

 と言うかアリス君!!

 君、無防備すぎやしないかい!?

 好意を持っている相手にこうして誘われたのは非常に嬉しいのだが!

 内心ではすぐさま了承したい気持ちで一杯だが、涙を呑んで忠告する事にした。

 

「し、しかしアリス君、一応私は男だ。流石に年頃の女性が男と二人で旅行に行くというのは、流石に無防備すぎると思うのだが……?」

 脳内ではこれを用意したであろう二人がため息をついている映像が浮かんだ。

 口がヘタレと動いているのは、自分でもそう思っているからだろうな!

 それでももうちょっと異性に対して警戒心をだな……

 

 そんなことを思っていた私は、アリス君の言葉にあっけなく撃ち抜かれた。

「オールマイトだから大丈夫よ。……それとも、我慢できなくなって、襲っちゃう?」

 少し顔を赤くして、上目遣いでそんなことを言うアリス君から顔を逸らす。

「そ、そんなことするはずがないだろう!?」

 あぁ、もう顔が熱い……!

 自分でも真っ赤になってることがわかるくらいだ。

 ちらりとアリス君を見ると、ソファの背もたれに腕を乗せて顔を伏せていた。

 ……髪の隙間から見える耳が真っ赤になっている。

 どうやら自分で言ってて恥ずかしかったようだ。

 それを見て、更に自分の顔がさらに熱くなるのを感じる。

 

 ……まだ赤くなるのか!?

 アリス君から視線を逸らして、片手で顔を覆う。

 今のアリス君を見ているだけで、私の顔もどんどん熱くなってしまう。

 せめて顔の熱が引くまで時間がほしい。

 アリス君……できれば、もう少しそのままでいてくれないだろうか……?

 

「……ねぇ」

 そんなことを考えていた直後に、アリス君から小さな声が聞こえた。

 ……どうやら神は私を助けてくれる気はないようだ。

「……なんだい?」

 観念してアリス君の方を向くと、伏せていた顔を少し上げて私を見ていた。

 真っ赤な顔で若干涙目だ。

 心臓の鼓動が凄まじく速くなり、顔がさらに熱を持つのを感じた。

 何という破壊力……!

 ここでさらに追撃が来るのか……!

 私の心は既に白旗を上げているのだが、それに気が付かないアリス君は更なる口撃を放った。

 

「……一緒に、いこ?」

 恥ずかしげに私を見上げなら放たれた言葉に、完全に撃ち抜かれた気がした。

「わかった」

 何かを考えるよりも早く口から言葉が出ていた。

 そして、勝手にアリス君を抱き寄せようとする腕を何とか抑える。

 だが、良かったと言って嬉しそうに笑うアリス君を見て、つい腕が動いてしまい、咄嗟に頭を撫でる事で何とか誤魔化した。

 まさか、自分を律する事が出来なくなるとは……恋、とは恐ろしいものだな。

 なんてことを考えても、顔はずっと熱かった。

 

 

 あの後は、アリス君とある程度日程を決めて、温泉宿に電話したところ1週間後に予約を取る事が出来た。

 予約を取った後は、いつも通りの日常……多少ぎくしゃくしていたが……を過ごして、アリス君は帰っていった。

 それを見送った後に、私は寝室に駆け込んで、枕に顔を押し付けて叫んだ。

「あれは反則だろおおおおおおおおおお!!」

 

 勘違いしていいのか!?

 勘違いしてしまっていいのだろうか!?

 少なくとも嫌悪感は見えなかった。

 無防備だと忠告しても一緒に行こうと誘ってくれたのは、そう言う事だろうか!?

 くっそう!! 可愛かった!

 思わずギュッと抱きしめてしまいそうになった!!

 

 予約の時に「想現アリスと八木俊典でお願いします」と言っていた時は、またドキッとしてしまった。

 当日はヒーロー名ではなく名で呼び合うことになったが、アリス君はなんと呼んでくれるのだろうか……?

 八木?俊典?

 どっちでもいいが、ヒーロー名ではなく名を呼ばれると思っただけでここまで胸が高鳴る私は乙女か!?と思わないでもないが、実際に私の名を知っている人たちはそんな多くないから仕方ないのだ!

 それが意中の人ともなれば、こうなるのもわかるはずだ!

 君達もわかってくれるだろう?

 脳内でナイトアイと直正に問いかけると、ニヤニヤと笑いながら『そうだね』と言う幻聴が聞こえる。

 普段ならそのニヤニヤ笑いをやめろと言う所だが、今の私はそんなことは気にならない。

 

 いかん、私のキャラが激しく崩壊している。

 いったん落ち着かねば……!

 大きく深呼吸をして、自分を落ち着ける……事ができない!!

 旅行前の子供よりひどいな今の私は!

 

 そんなことを考えていると、端末に着信が入った。

 取り出してみると相手は直正だ。

 そういえば、彼らが用意してくれたんだったな。

 礼を言わねば。

 

『やぁ、今時間は大丈夫かい? 神綺くんに誘われて一人悶々としていたオールマイト』

「君は私を監視でもしているのか!?」

 端末と通信を繋ぎ、聞こえた第一声に思わず周りを見渡してしまった。

『いや、最近の君ってすごく分かりやすいからね。その反応から察するに実際悶々としていたみたいだね』

「うぐぅ!? な、直正、最近、意地が悪くないかい……?」

『失礼な。僕とナイトアイは君の事を応援しているというのに』

 心外だと言った感じの声が聞こえるが、それならこんなにも弄らなくてもいいじゃないか。

 

『僕たちが何か言わないと、オールマイトは何もしないじゃないか』

「…………」

 その言葉に何も言えなくなる。

 確かに、今回の旅行も直正たちのお蔭ではある。

 今思えば、ああやって揶揄っていたのも私の気持ちを自覚させるためだったのかもしれない。

 ……教えてくれなかったのはなぜだろうか?

 

『まぁ、いいさ。せっかくいい宿を手配したんだから楽しんできなよ』

「……ありがとう、と言っておく」

 揶揄われた後の所為だけあって素直にお礼が言い難い!

『せっかくの宿泊デートだ。いっその事、思いっきり押してみたらどうだ?』

「なぁ!?」

 直正の言葉に、アリス君の言葉が脳内に再生される。

【我慢できなくなって、襲っちゃう?】

 い、いかん!!

 今これを思い出してはいかんのだ!!

 思わず過剰反応してしまった私に、直正が驚いたような声を上げた。

 

『え、何その反応? 何言われたの?』

「なんでもない!! 追求しないでくれ!!」

 

 直正の宿泊デートと押してみろと言った言葉の所為で、ある妄想をしてしまった。

 寝巻の浴衣を着て、顔を赤らめて涙目で私を見上げるアリス君。

 畳敷きの布団に横たわるアリス君は、上半身だけを起こして私に先程と同じ言葉を……

 

 そこまで妄想して、思いっきり頭を殴った。

 ガスンッ!と言う凄まじい音がするが、痛みのお蔭で何とか先程の妄想を振り切る事に成功した。

『……オールマイト、もしかして……』

「……後生だから、何も言わないでくれ……」

『……まぁ、君も男だからね』

「…………」

 何も言わないでくれと言ったのに、察したみたいだ。

 と言うか、私は思春期の中学生か!?

 もう40だというのに、自分の感情を全く制御できないのだが!?

 痛む頭を軽く揉み解しながら、何とか冷静さを取り戻す。

 

『……ナイトアイに頼めば、過去は無理でも未来の事なら……』

「やめろ!? なんてことを考えるんだ君は!?」

 小さく呟かれた恐ろしい言葉に戦慄する。

 この友人、どこまで私の事を追い詰める気だ!?

『やだなぁ、冗談だよ…………2割くらいは』

「ほとんど本気ではないか!?」

 私がそういうと、直正は楽しそうに笑った。

 

『本当に冗談だよ、オールマイトは前よりも生き生きしてきたな』

「……そうだろうか?」

 自分の感情に振り回されていることは自覚しているが……

 そんなことを思っていると、直正は機嫌よさげに言った。

『あぁ。オールマイトは、もう少し自分の幸せと言うものを知った方が良いと思うぞ』

 

 ……心配をかけていたのだろうか?

 直正の言葉には、どこか安心した様な気持ちが込められている気がした。

「……そうだな。もう少し考えてみるよ」

『お、前向きな発言だな。その言葉を聞けただけでも、やっぱり変わったと思うよ』

「HAHAHA、そこまで言うかね」

 このいつまでも変わらない親友に感謝を。

 友の幸せを願える彼も、幸せになってほしいと思った。

 

『さて、それじゃあ早速お節介だ。実はお勧めの温泉をピックアップしておいたんだが、この情報はいるかな?』

 その言葉に私は小さくため息をついた。

「君たちは本当に準備が良いな。一体どこまで仕込んでいるんだい?」

『それは教えられないな。けどまぁ、良い効能の温泉だ。楽しんでくると良い』

「あぁ、温泉なんて初めてだからね。楽しんでくるよ」

 私は直正から温泉の情報を聞きつつ、一つ一つメモを取った。

 女性向けの効能の温泉もあるらしいので、それもメモに取っておいた。

 

 ……一週間後が待ち遠しいな。

 きっと楽しくなるだろう。

 

 ★ ★ ★ ★

 

 

 V月D日 やってしまった

 

 ナイトアイと直正さんから、温泉旅館の宿泊チケットを貰った。

 最近色々と頑張ってるが、根を詰めすぎないで偶にはゆっくりと休めってさ。

 あの二人、凄く優しいよね。

 二泊三日で旅館は結構有名な所らしい。

 ペアチケットなので、オールマイトも誘う事にした。

 ちゃんと週一で休んではいるから、二泊三日も拘束するのはちょっと迷惑かなって思ったけど、行くって言ってくれた。

 断られたら一人で行くことになってただろうから、一安心だ。

 

 流石にイズくん達は誘えないし、消太君の仕事は3日も抜けることができないだろう。

 他に一緒に旅行行くような友達はいないし……あれ?

 ……いま、気が付いたんだけど、俺ってもしかしてボッチか?

 …………いや、学生時代はちゃんと友達居たし。

 ただ、プロヒーローになって疎遠になっただけだし。

 …………やめよう、これ以上は自爆するだけだ。

 

 まぁ、何はともあれ温泉である。

 パンフレットには多種多様な温泉があるらしいから、実に楽しみだ。

 年寄り臭いと言われるかもしれないが、海とか山よりも温泉でのんびりしてる方が好きだしな。

 二人には感謝しないとね。

 

 オールマイトも居るから、一人で退屈って事もないし、一緒に何かを共有できるのは嬉しいよな。

 ……しかし、あれは少しやりすぎた。

 前世でやったゲームみたいなシチュエーションだったから、つい真似してしまった。

 何だよ襲うって。

 オールマイトがそんなことするわけないだろ、常識的に考えて。

 まぁ前世の俺が言われたら、喜んでただろうけどさ。

 

 しかし、あれを言うのは割と恥ずかしかった。

 イメージ的にはちょっと小悪魔的にさらっというはずだったんだがな。

 あまりに恥ずかしすぎて、オールマイトがどんな反応してたかよく覚えてないし。

 もしかしたら真っ赤になってたりしたかもしれない。

 あ、なんかもったいないことした気分。

 

 でも、正義のために心を捧げたオールマイトが誘惑とかされるのかね?

 ある意味では某正義の味方みたいな生き方してるよね、オールマイトって。

 凄いとは思うけど、ちゃんと人としての幸せも掴んでほしいな。

 

 俺はそんなオールマイトをサポートしていきたいね。

 




まさかの初デートがお泊りデート。
しかも二泊三日である。
準備編が終わったので、次は温泉旅行編が始まるよ!
甘く、甘く、より甘くできたらいいな!
胸焼けを感じた人は、バックした方が良いかもしれない。

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