いつも読んでいただいてありがとうございます!
皆さんの応援のお蔭で、また書く意欲が戻ってきました!
勢いばっかりの猛進小説ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです!
私はある建物の屋上にて人を待っていた。
まさか私が……その、恋をするなど、全くの想定外なのだ。
気が付いてしまったこの感情に、私は振り回されている。
アリス君の一挙一動に、私の心は酷く搔き乱されている。
流石にヒーロー活動に支障が出るほどではないが、ふと時間に余裕ができると、アリス君の事を考えている事がある。
厄介な感情だと思う。
だが、同時に心地良くもある。
ガチャッと言う音がして、扉が開いた。
どうやら待ち人がやって来たようだ。
「待たせたね、オールマイト」
そう言って手を上げてきたのは、私の親友である直正だ。
「いや、私の方こそ突然済まない」
忙しい中、相談したいことがあると言って彼を呼び出したのだ。
というか、相談できそうな相手が直正しかいなかった。
「それで相談があるって言ってたけど、どうしたんだ?」
直正はビニール袋から昼食を取り出しつつ、ベンチに腰掛けた。
「あぁ、それなんだが……」
いざ相談しようと思うと、なんだか非常に気恥ずかしい。
その気恥ずかしさを誤魔化すようにベンチに座って、弁当を取り出しつつ切り出した。
「その……だな……今まで全く意識していなかったが……私はどうやら神綺君に……その、好意を持っているらしい」
「あ、ようやく気付いたの?」
「………………ん?」
聞こえた言葉がうまく認識できず、直正を見る。
なにやらニヤニヤと見覚えのある笑みを浮かべているではないか。
そこまで認識して、ようやく直正の言葉が理解できた。
「な、なっ、なぁ!?」
「おう、落ち着け、オールマイト。君は人間だ、人間にわかる言葉で話そう」
取り乱す私をニヤニヤと笑いながら、直正は袋からコーヒーを取り出していた。
その反応に、私は思わず立ち上がって、ビシッ!と音がしそうな速さで指さした。
「私がぁぁああっと!!」
「ブハハハハハハッ!!」
立ち上がった勢いで、弁当が地面に落ちそうになっているのを見て、慌てて回収する。
あ、危なかった……というか、そんなに笑うな直正!!
片手で弁当をもって、腹を抱えながら笑っている直正を改めて指さす。
「私が! 神綺君の話をする度に! にやけていたのはそう言う事か!?」
「ナイトアイも一緒に笑ってるよ」
「彼も!?」
何故当事者である私より早く気付いた!?
知らぬは本人のみと言う事か!?
もしかして私はわかりやすいのだろうか……ッ!?
そこまで考えて、ふとある考えが頭を過った。
「……まさか、神綺君にも気付かれているのだろうか……ッ!?」
気持ちを自覚する前から、本人に気づかれているとか気まずいなんてレベルじゃないんだが!?
「多分だけど、気付かれていないと思うよ。彼女の様子を見た感じ、親友とかそういう風に思われてるみたいだ」
「……そうか……」
よかった……これ以上恥ずかしい思いをしないですんだ。
小さく息をついて、ベンチに座る。
ほんの数分しか話していないのにどっと疲れた。
「まぁ、オールマイトは大分信頼されてるみたいじゃないか。それだって、彼女が作ってくれた弁当だろう?」
「……確かにそうなのだが……」
直正の視線が私の手に持つ色鮮やかな弁当に注がれる。
この弁当はアリス君が態々用意してくれたものだ。
私用に大分大きな弁当箱を使い、野菜や肉料理がバランスよく入っている。
私が誓いを立ててから、アリス君は私の身の回りの世話をしてくれるようになった。
1日おきだが必ずやって来て、掃除、洗濯、家事をしてくれている。
その事を思い出したからか、余計なことまで思い出してしまう。
あの事件から数日が立ち、落ち着きを取り戻していたアリス君の様子が何やらおかしい。
私の隣に座って、時々私を見て「お、おー……」とか「……うぁぁぁぁ」とか謎の言語が飛び出す。
私に何か言いたい様だが、無理に聞き出すのも悪いと思い、話しかけて来るのを待っているのだが……。
もうかれこれ30分ほど様子を見ている。
流石にこれは助け船を出すべきかと思い、私から話しかけることにした。
「アリス君? さっきからどうしたんだい?」
「ッ!? な、なにが!?」
ビクッとして、視線がキョロキョロと激しく泳いでいる。
その顔を見ていると、今度は頬を少し赤く染めて恥ずかし気に目を背ける……これ以上見ていると、私もおかしな気分になってしまいそうだ。
「何か私に言いたい事でもあるかい?」
「えっと……その……ね?」
少し高揚した気持ちを抑えて、話を促した。
アリス君の様子を伺っていると、唐突にその姿が消えて背後から肩に手を添えられた。
「アリス君!?」
いきなり接触されるとこちらもドキッとしてしまうのだが!?
突然の接触に身を固くしていると、更に予想外の言葉が降ってきた。
「わ、私……オールマイトの役に立ちたいの! だから私にできる事ならなんでもいって!? オールマイトの言う事ならなんでもするから! ね!?」
「な、なんでも……」
聞こえた言葉を思わず小さく繰り返してゴクリッと唾を吞んでしまった。
幸いアリス君も一杯一杯みたいで、気付かれなかったようだ。
「なんでも」と言う言葉に思わずあらぬ想像をしてしまった自分を殴りたい……
自分の好意を自覚しただけに、何でもと言われて思考が暴走してしまった。
決して、砂浜で見た透けた服の事など思い出していない。
服が張り付いて透けて見えた肌が煽情的だったとか思っていない。
……もっと見ればよかったとか、断じて、断じて! 思ってない!!
そんなことを考えてた私は頭を抱えていたらしい。
「オールマイト? 大丈夫?」
頭が痛そうだとでも思ったのか、ゆっくりと頭を撫でられる。
……凄く心地よかった。
「大丈夫だ。今は特に思いつかないな」
「そっか……じゃあ、家政婦の真似事でもしてようかな」
そう言ってアリス君は、部屋の掃除を始めたのだった。
「顔がすっごいニヤけてるぞ」
「ニヤけてなどいない!」
可笑しそうに笑う直正を軽く睨む。
「で、何を思い出していたんだ?」
「……黙秘する」
相変わらず笑みを浮かべた直正から目を逸らす。
「大方、彼女のあられもない姿でも想像していたんじゃないか?」
「っ!? ごほぉ!? ごっほっ!!」
な、なんてことを言うんだ直正ァ!?
あながち間違っていない所が辛い!!
「おや、図星か? オイオイ、オールマイト。いくら彼女が美人だからって盛りすぎじゃないか?」
「誰が盛るか!?」
「彼女には興奮しないのかい?」
「そういう話ではないだろう!?」
君いつもよりも性格が可笑しくなってないか!?
追求から逃れる為に弁当を食べる事に集中する。
直正の言葉は聞こえん、と自分に暗示を掛けつつようやく食にありつく。
結構時間が経っているにも拘らず、まるでできたての状態だ。
アリス君が個性を使って状態を保存していたのだろうか。
直正によって乱されまくった心が、ゆっくりと落ち着いていくのを感じた。
美味しい弁当を用意してくれた上に、こんな気遣いまで。
胸の奥から温かくなるのを感じた。
「またすっごいにやけてるぞ」
「…………」
「幸せで一杯ですって顔だな」
揶揄うような直正の言葉は黙殺する。
顔が熱いのはきっと太陽が照り付けている所為だ。
「今日は曇りだぞ」
「えぇい!! 私を観察してる暇があるなら飯を食べないか!」
「もうとっくに食い終わったよ」
相変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべながら、頬杖を突く直正から目を逸らす。
駄目だ! このままでは非常に食べにくい!!
無視するなんて最初から無理だったのだ!!
ならばと考え、私はポケットからケースを取り出した。
「ん? なんだいそれ?」
「暇ならこれでもあげててくれ」
「あげる?」
直正が首を傾げているのを見ながら、腕を高く上げた。
それと同時に、私の腕に朱い鳥が腕に止まった。
「でかっ!?」
「翼を広げたら2m以上あるからな」
直正が珍しく目を丸くして声を荒げた。
「凄いな! 赤い巨鳥! 炎を纏えばフェニックスみたいだな!」
「君ってそういうの好きだったかな?」
今まで見たことないくらい興奮した直正がそこにいた。
私の使い魔である不死鳥のヴィクトリーを傍の手すりに移動させる。
V字の羽がチャームポイントだとアリス君が言っていた。
これなら追及からは逃れられそうだ。
「君そっくりのV字の羽があるぞ。これも彼女からの?」
……逃げられなかったようだ。
軽くため息をついて頷く。
「神綺君は自動人形みたいなものだと言っていたな」
「自動人形? 彼女の魔法の様な個性で作ったなら、魔導人形と言ったところかな?」
魔導人形……ふむ、確かにしっくりと来るな。
ヴィクトリーに機械は全く使われていないし、次からはそう呼ぶか。
直正が不死鳥の魔導人形を触っているのを見ながら弁当を食す。
ミートボールが美味い。
「凄いな、これが作り物か……確かに血は通っていないみたいだが、動作はまるで生き物だ……色んな個性を見てきたが、彼女ほど多彩な個性は見たことないな」
想像できることならなんでも実現させる事ができるからなと思いつつ、言葉には出さない。
また何か揶揄いの言葉が飛んでくると思ったが、大丈夫そうだ。
ある程度観察が終わったのか、今度は渡したケースの中に入っている物をマジマジとみている。
「これは……飴玉みたいだな……」
「餌みたいなものらしい」
「ふむ……おぉ!? 不死鳥が啄んだら簡単に千切れたぞ!?」
「初めて上げた時は私も驚いたな」
アリス君曰く、この飴玉みたいなものはエネルギーの塊で、ヴィクトリーを動かす為の電池みたいなものだと言っていた。
こうして餌をやらないと、能力が発動しなくなり、終いには動かなくなるらしい。
……動かなくなったら、口の中に餌を入れれば勝手に補充されると言っていた。
……アニマルセラピーみたいな事ができればいいと思ってこうしたと言ってたが、余計生き物にしか見えなくなるな。
実際嬉々としてヴィクトリーが餌を啄む様子を見ている直正を見るとそう思う。
「動作まで鳥みたいだな。オールマイト、彼女に魔導人形展でも開くように言ってくれないか?」
「ククッ……展示するのは伝説上の生物かい?」
直正の言葉を聞いて、ドラゴンや過去に絶滅した生物が自由に動き回る動物園の様な人形展を想像し、笑った。
「あぁ! ドラゴンの様な個性を持つ人もいるだろうが、餌付けなんて失礼だろう? けど、彼女の魔導人形ならまるで本物の様な人形に餌をやることができるし、何より安全だ」
「HAHAHAHA! それは凄く平和的な個性の利用の仕方だな!」
戦いや救助と言ったものだけではなく、人を楽しませる娯楽として個性を使うか。
アリス君の個性なら確かに可能だな。
「それでだな! 彼女なら餌の形を肉の様にしたりもできると思うんだ、そうすればよりリアリティが……」
まるで子供の様にはしゃぐ直正をみて、そんな未来が来ればいいと思う。
そうすればアリス君も笑顔で居られるだろう。
そこまで考えてふと思った。
……そういえば、アリス君は来年雄英で教師をすると言っていたな……。
その時によりリアルな現場を体験させるって言っていたが、まさか?
未だ夢心地に人形展の事を語る直正をしり目に、ヴィクトリーをじっと見る。
本物にしか見えない作り物……災害救助……アリス君なら命のタイムリミットも再現し、活動を停止する人形を作れるだろう……そうなると……訓練なのに、現場と同じ臨場感を味わえる授業?
救命措置や個性の使用による要救助者への影響もリアルに再現できるだろう。
人形でやるなら、災害救助でなくヴィラン想定戦も可能だろう。
しかもヴィクトリーを見るに、個性戦すらも再現できる。
来年の生徒たちは凄く恵まれているかもしれない……というか、絶対に恵まれている。
人形とはいえアリス君が作るものだ。
本当の現場に近い経験ができると言う事は普通ありえない。
本当に心停止させるわけにもいかない、呼吸停止させるわけにもいかない。
だが、彼女が作る魔導人形ならそれができる。
実戦さながらの経験を積んだ生徒達は、大きく成長するだろう。
……アリス君は、本当に次世代を育てようとしているのだな。
私との誓いを本気で守ろうとしてくれているのだ。
直正の語った未来……そんな笑顔が溢れていそうな未来をつくる。
アリス君にあれだけ大見得をきったのだ。
オール・フォー・ワンは私が絶対に倒す。
今度こそ。
そして、アリス君が個性を使って未来の人々を楽しませる。
そんな未来をこの目で見たいと思った。
できる事ならば……その隣で……な。
私は心新たに、弁当をかき込んだ。
「さて、直正。その未来予想図もいいが、まずはやらなくてはいけないことが多いぞ」
「勿論わかっている。まずはパトロンを見つけて……」
「違うぞ!?」
喧しく過ぎていく、そんな何でもない平和な昼下がりの事だった。
アリスさん、日記では冷静に見せかけて、現実ではこんなにも恥ずかし気ですw
屋上でのコイバナはきっと男の青春、そう信じてます!
そして下ネタに走る……と思うのは私の想像力がアレなだけ?
どうでも良い事ですが私は、他人の惚気話をニヤニヤしながら聞く人です。
なんか幸せそうで、こっちまでうれしくなりますw
アリスの雄英高校参入で、雄英高校が凄まじい事になりますw
今回オールマイトが言った分だけでも、三年生が卒業したくないって言いたくなるかもしれないw
いつも多くの感想、評価ありがとうございます!
私は未熟者ですが、これからも自分が楽しめる様に書けていけたらなって思ってますので、応援よろしくお願いしますm(__)m