最近アスナちゃんがおかしい。   作:大塚ガキ男

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こんばんは!今日ってSAOクリアした日なんですってね!




フェアリィ・ダンス編
第6話


 

 

 

 

「──ッはァ」

 

目が覚めた。

覚めた、と一言で言っても、一晩の眠りから覚めた時のような気怠さや眠気に支配される程度のソレではなく、今のオレを襲っていたのはもっと凄い──まるで一晩だけでなく何年も眠っていたかのような身体のしんどさ。指先しか動かせないほどの身体の重さと、有り得ないほどの喉の渇き。しかし意識だけは目を開いた一瞬で覚醒していて、未だ掴めない現状だけがオレの脳に絶えず不安感を送り込んでいる。

 

「……が、あ」

 

白い天井と、身体中に伸びる何かのコード。一定の間隔で耳に入る電子音と、窓の外の青い空。ベッドの横にはヘルメットのようなものが置かれている。

病院?オレは病院のベッドで眠っていたのか?

視覚情報を頼りにそう結論付けてみる。SAO

の中にこれほど現代チックな医療施設なんかあったかと記憶を遡ってみるが、該当する記憶は無い。

白い天井を見る。すると、足元の方から誰かが突然動き出した。

 

「おい、ミツヤ!大丈夫か!今看護師呼んでやるから──」

 

その人物はオレの名前を呼んだあと、慌てて駆け寄ってくる。肩を揺さぶるその必死な眼差しと、口の端についていた涎のあと。どうやらつい先程まで眠っていたらしいその男は黒い髪を揺らし、聞き慣れた声で話しかけてくる。

 

「……き、りと、ちゃん?」

 

そこには、SAOで共に幾度もの死戦を潜り抜けた親友──キリトちゃんが、いつものかっちょいい戦闘服ではなく黒のジャンパーを着て立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ〜マジでビックリしたぜ。目が覚めたら身体クソ重いんだもんなァ」

「そこから一週間でそんな元気になったのも驚きだよ。身体は大丈夫なのか?」

「へーきへーき。まだ松葉杖(マツバ)は必要だけど、その気になったらこのまま歩いて家まで帰っちゃうぜ」

「それはマジでやめとけ」

 

冬の空、冬の気温、冬の病院の中庭。

そこに設置されているベンチにて、上着を着込んだキリトちゃんと並んで座っている。喋る度に白い息が吐き出され、宙に上がり霧散する。そんな状態。

 

「……それにしても、まさか終わったなんてな」

「……あぁ、そうだな」

 

鼻腔をくすぐる空気の匂い。

頬に当たるそよ風。

柔らかく照る冬の日差し。

どれもがSAO(ゲーム)内のソレとは比較にならないほどにリアルで(というか現実なのでリアルなのは当たり前だが)、オレは項垂れて溜め息を吐いた。

 

「……2025年かァ」

「2年以上経ったな」

「経ったなァ……」

 

しみじみ。失った時間と、SAOで過ごした日々を思い出して目を細めると、キリトちゃんは思い出したように声を上げた。

 

「──てか、ミツヤお前最後のアレなんだよ!」

「最後のアレ?」

 

首の角度だけ変えてキリトちゃんの方を見ると、キリトちゃんはなんだか怒っているように見えた。いや、確実に怒ってるわコレ。

 

「第100層でのアレだよ!ヒースクリフと命を賭けたタイマンをする代わりに、みんなを一足先に現実世界に返してやってくれってやつ!」

「あぁ、アレね」

 

よく通ったよなあの要求。ヘラヘラと笑いながら答えると、胸倉を掴まれて前後にガクンガクンと容赦無く揺さぶられた。

 

「なんだよキリトちゃん〜〜〜オレ病人だぜェ〜〜〜」

「またお前、75層の時みたいな自己犠牲かましたろ!お前を残して病院で目が覚めた俺の気持ち考えたことあるのか!」

「オレのイケメンムーブでみんなが無事に帰れるんなら安いもんだろうがよ〜。ヒースクリフったらやたらとオレに執着してるんだからさ」

「ふざけるな!粒子になって消える(現実世界に帰る)瞬間のアスナの表情見てなかったのかよ!」

「え、笑ってたじゃん」

「アレは喜の感情の笑顔じゃないんだよ!」

 

恐ろしい恐ろしい。

自らの肩を抱いてぶつぶつと呟くキリトちゃんの元気な姿に、現実世界への帰還を改めて実感する。現実っていいねと共感を求めて発言すると、うるさいと言われてしまった。しょんぼり。

 

「……それで、お前勝ったのか」

「まぁ、判定がムズいっちゅーか。……色々複雑なんだよね」

「?」

「言うなら、男と男が夕方の河川敷で殴り合うようなもんなのよ」

「?」

「勝っても負けてもない。でも不思議と解決はした。みたいな?」

「よく分からないな」

「分かんなくていいよ。こうして現実世界に戻ってこれてる今が全てなんだし」

 

確かにな。

オレの言葉に同調してくれたキリトちゃんと、顔を見合わせて笑う。ひとしきり笑って、そろそろ病室に戻らなければいけない時間が迫っていることに気が付く。キリトちゃんに支えられながら立ち上がり、松葉杖をついてえっちらおっちらと移動する。

屋内に入ってエレベーターに乗り込み、上昇。

その最中。つまりはエレベーター内にて。

親友相手でもエレベーターの中って不思議と気まずいよなとか考えながら、エレベーターの階数表示や重量制限、それから識別番号なんかに目を移したりしていると、キリトちゃんが。

 

「…………一つ、話があるんだ」

「なに?キリトちゃん」

「…………」

「え、なによ」

「…………今のミツヤに言っていいのか、少し迷ってる。松葉杖をつくくらいに気力体力が低下しているミツヤに伝えるのは、酷なことなんじゃないかってな」

「気になるじゃん。言ってよ」

「…………アスナのことだ」

「アスナちゃん!?そっかそっか、確かに、キリトちゃんが今これだけピンピンしてるってことはアスナちゃんも同じくらい元気ってことだもんな!会いたい会いたい!連絡先とか知ってるの!?」

「ミツヤ」

「じゃあシリカちゃんやリズベットちゃん、クラインちゃんにエギルちゃんにアルゴちゃんも、みんな元気なのか!みんな今頃何してるんだろう!連絡とか取ってみたいな!」

「ミツヤ」

「そういえばユイのデータってキリトちゃん持ってるんだよね?あのデータって現実(こっち)で上手いことできないかな。ユイのパパとして──」

「……ミツヤ、聞いてくれ」

「おう。ごめんごめん」

「──────」

「え?」

 

発言から1分と経たずに告げられた衝撃的な言葉と、その発言の真偽を裏付ける一枚の画像。

自分の病室まで戻ってキリトちゃんと別れ、一人でベッドに寝転がった今も。

寝返りをうっても。

看護師さんが様子を確認しに来ても。

夜が更けても。

オレは、キリトちゃんから言われた言葉のことをずっと考え続けることになった。

 

 

『アスナが、囚われている』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──それで、無理矢理ここまで来た、と」

「そうなんだよ〜」

「そうなんだよ〜、じゃないだろこの馬鹿!なに勝手に病院抜け出してんだよ!」

「いててててててて」

 

キリトちゃんに背後から左右のこめかみを拳でぐりぐりされる。最近しんちゃんでこの描写みなくなったよねと現実逃避ついでに考えてしまうくらいには、キリトちゃんのぐりぐりは危険なものだった。

カウンターに突っ伏す。グラスを拭きながらオレ達のやり取りを見ていたエギルちゃんは苦笑いをしていた。くそぅ、病院着のまま勇み足(With松葉杖)でタクシーに乗り込んでまで来たってのに、なんたる仕打ちか。

 

「本題に戻ろうぜ」

「病院抜け出した馬鹿が真面目な顔してるよ。親御さん心配してるぞ」

「パッパとマッマは今海外暮らしだから良いの(いーの)

「…………」

「いや、別に地雷とかじゃないから。気まずそうな顔しないでよ」

「わ、悪い」

「兎に角!アスナちゃんを助ける!そうだろ!?」

「なんとなく分かっちゃいたが、お前って現実(リアル)でも本当にそんな感じなんだな」

「驚いた?エギルちゃん。オレってガチ陽キャなのよ」

 

親指を立てて笑う。しかし水を差すようにキリトちゃんが返す。

 

「ミツヤの場合、陽キャとはまた違うだろ」

「え、じゃあオレってなに?」

「…………狂キャ?」

「え!!!!!!字面カッコいい!!!!!!採用!!!!!!」

「……ミツヤ、次俺の前でその声量出しやがったらぶん殴るからな。患者だろうと容赦無く」

 

キリトちゃんからの嬉しい言葉に両手を挙げて喜んでいると、エギルちゃんからの忠告(よしくは予告ホームラン的なやつ)。エギルちゃんのムッキムキで丸太みてぇに太い腕で握られた拳を見せつけられて、慌てて居住まいを正す。エギルちゃんみたいな漢に殴られた日には頭部欠損のダメージを負ってポーションが飲めずに死んでしまうからだ。

いや即死か。

 

「…………」

 

ソードアート・オンライン(SAO)

2年以上も、あの世界にいた。

だからこうして思考がゲーム内に順応したソレになってしまうのは仕方のないことだ。病院内でも、癖で何度もウィンドウを開こうとした。

しかし、現実世界に帰ってきて一週間が経っているにも関わらず、こうして欠損ダメージだポーションだとナチュラルに考えてしまっている自分(オレ)の思考が、なんとなく嫌に思えてしまう。まるで、未だオレの心だけはSAOに取り残されているような──

 

「…………ヘッ」

 

全く。

SAO(ゲーム)のやり過ぎだ。

ネガティブ禁止。楽しく行こう。

 

「それで、さ」

 

咳払い。二人の視線を集めてから。

 

「あの画像ってどこで撮られたの?木とか多いから外国?だったらパスポートとか持って来なきゃだから一度家帰りてェんだけど」

「落ち着けミツヤ。海外じゃない」

「あ、やっぱ日本だったんだ。流石にね、流石に。でもあんなデカい木が日本にあったか?」

「……狂キャめ」

「呼んだ!?」

「喜ぶな!……あぁ、もう」

 

今日も元気にツッコミを入れてくれるキリトちゃんが、懐からなにかを取り出す。カウンター上に置かれたそれを見て、オレは首を傾げた。

 

「……ゲームのカセット?」

「カセットって……まぁ良いや。これはアルヴヘイム・オンライン。通称ALOと呼ばれるVRMMOゲームだ。SAOみたいに、ギアを被ってフルダイブするタイプのヤツだ」

「それにしても、SAOのいとこみたいな名前だなァ」

 

言いながら、パッケージの裏に書かれている説明文を読んだりしてみる。

晶彦ちゃんに騙されなければSAOをプレイしていなかったし、なんならSAO内でキリトちゃんから説明を受けるまでSAOの存在すら知らなかったくらいの、自他共に認めるゲーム無知野郎であるオレ。空が飛べるとかなんとか書いてあるが、実際問題あまり理解してはいなかった。

眉を傾けながら説明文を読み込むオレを見ながら、キリトちゃんが続ける。

 

「ミツヤに見せたアスナらしき女性の画像はALO(このゲーム)のキャプチャ画像だ。ALO内の世界樹と呼ばれる大きな樹の、遥か上の方で撮られたものらしい」

「キャプチャって?」

「……ゲーム内で撮ったスクリーンショットのこと」

「へぇ、キリトちゃん物知りだな」

「「……ハァ」」

 

キリトちゃんとエギルちゃんの溜め息が綺麗に重なったのを見て、()()()()()がどうやら一般常識な単語であることを理解する。しょうがねェ〜だろ分かんないんだから。

 

「兎に角、分かった。このゲームをプレイして、アスナちゃんを探し出せば良いんだな。早速行ったろうぜキリトちゃん」

 

拳を握り、キリトちゃんに向けてファイティングポーズ。つまりはオレのやる気をアピールしているわけだ。

しかしキリトちゃんはオレのファインディングポーズを見て、呆れたような表情でもう一度溜め息を吐いた。

 

「……あのな」

「?どうしたんだよキリトちゃん」

「ミツヤ、お前は留守番だからな」

「えぇぇえええぇぇえぇええぇええッ!?!?!?!?」

 

血も涙も情け容赦もないキリトちゃんのお達しにオレは心底驚いて後ろにひっくり返ったし、有言実行ということでエギルちゃんからはえげつない拳骨を落とされてしまった。

 

 

 

 





ド序盤のド序盤だけで申し訳ないです。
フェアリィ・ダンス編覚えてなさ過ぎるので続き書けてないみたいなところもあります。

俺にフェアリィ・ダンス編の()()を教えてくれ!!

↑オタクのテレビ大陸音頭


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