正義の味方候補の魔術使い   作:ラグーン

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遅くなって申し訳ない。投稿したのが約2ヶ月前だということに驚きましたが……投稿したので許してください(白目
いや、最近fgoのモチベが過去最高になくてちょっと驚いてます。通算ログインボーナスも途切れてちょっと更に気力が……とりあえず愚痴になりそうなので本文にどうぞ!


第30話  雪の少女

「もう、お姉ちゃんに再会できたあまりに放心するのはいいけど今は戦いの最中よ?戦いの中じゃなかったら私も抱きしめてあげようって思っていたけど今はシャンとしなさい」

 

いやその状況を作ったのは君だろっと口にしようとするがすんでの所で止める。イリヤスフィールに余計な一言をとばせざ最後どうなるかわかったものではない。それに彼女の言葉は正論であるため黙って従った方が身のためだ。……いや、決して逆らった場合の後がめんどくさくなると理由ではない。

 

「今ものすごーく失礼なこと考えてない?お姉ちゃんの前ではお見通しよ、恭介。後できつーいお仕置きでもしてあげようかしら」

 

「……頼む、それだけは止めてくれ。いくら記憶が無かろうがイリヤスフィールのそのお仕置きとやらは結果として洒落にならないレベルなのはわかるぞ」

 

「ふーん、そんなこと言っちゃうんだ。それじゃあ、お望みどおり2人きりの時にお仕置きしてあげる。あとで人形を探さないとね」

 

「いや、なんでさ……!?」

 

暴君にも勝るであろう横暴っぷりに思わず昔の口癖を悲鳴に似た声で出せばイリヤスフィールはそれを見て満足そうに笑みを浮かべる。正直彼女の一言一言は冗談ではない気がして冷や汗ものではあるが彼女はこうだったと僅かにながら思い出していく。それでもイリヤスフィールがこういった少女だという朧げなものであって彼女との記憶を思い出したわけではない。

 

「驚きですね、贋作者(フェイカー)さんが書庫を持ち合わせているのは正直意外でした」

 

「味気ない無数の剣の中に一冊の本ぐらい紛れ込んでいてもおかしくはないわよ」

 

イリヤスフィールと春日聖の2人の間には何者も入り込むことができない空間が漂っている。もしこの場にかの大英雄が居ればどうなっていたのかは想像すらしたくない。この場で俺がやるのはイリヤスフィールを宥めることなのだが彼女を止めたら飛び火しそうなため正直遠慮したいがそうも言っていられない。

 

「……あー、イリヤスフィール。少し落ち着くんだ、少し周りのみんなが困惑していていて――――」

 

「イ・リ・ヤ!イリヤスフィールじゃなくてイリヤって呼びなさい!そうじゃないと私は止まらないからねっ!」

 

「……うぐっ……わかった、イリヤ……」

 

「うんうん、恭介はいい子。可愛い弟の頼みなら大人しく下がってあげないとね」

 

この場にいる全員の視線を一斉に向けられてしまいこの場から姿を消したい衝動に駆られるが流石にそれは堪える。落ちぶれてはいるもののこれでも成れの果てのだぞ?この場で姿を消せばイリヤから何を言われるかわからん。

 

「ごめんちょっといくら私でも情報量が大きくて処理できない……彼女はセイバーさんから貰った書庫ってこと?」

 

「そうね、詳しく説明すれば違うけれど今はその認識でいいわ。今は私のことよりもどうにかしないといけない問題が目の前にあるでしょ?」

 

「まっ、そうッスね。これ以上は彼方さんも待ってくれるわけには行かなさそうッスからね」

 

「いえ、別に構いませんよ?ただ贋作者(フェイカー)さん以外はその間に消滅させちゃいますから」

 

にっこりと笑みを浮かべながら物騒なことを口走ることを見ると春日聖の本気度が窺える。さて、今の状況を見れば戦えるメンバーは俺を含めてレヴィ、リーゼロッテの3人。俺はともかく2人は本調子とは言い難い。

 

「さてっと、それじゃあそろそろ役割分担しちゃおっか。忍者身体は大丈夫?」

 

「万全ってわけではないッスけど戦闘については問題ないッス。そういうリーゼさんこそ大丈夫なんッスか?」

 

「こんな状況で参加しないって選択肢はないわよ。裏切った私が言える立場じゃないけどセリナに攻撃を向けたことは頭にきてるから参加するつもりだったけどね」

 

『うぅー、私も力になりたいけど力になれるほど魔力は回復してないよ。ごめんね、2人とも……』

 

「ユイは生徒を守るって大きな仕事をしてくれたから充分よ。荒事は私たちの得意分野の一つだしね。それじゃ、ペアは私と忍者でいいかしら。恭介君は単独の方がやりやすいでしょ?」

 

「別に動くのは構わないが本格的に手を出すつもりはないぞ。あくまで俺がやるのは足止めだけだ」

 

「それだけで充分よ。聖を止めるのは私たちトリニティセブンと恭介君もじゃなくてアラタ君だからね。恋する乙女は愛する人に止めてもらいたい気持ちもあるから。あっ、それじゃあもう一つ追加の注文頼んでいいかしら?」

 

「君も大概遠慮というものがなくなってきたな。はぁ、言うぶんはただではあるから言ってみるがいい、それを引き受けるかどうかは別だが」

 

「むぅ、恭介君記憶戻った後捻くれとトゲが加速してない?まっ、そんな恭介君も魅力的だし私的には全然ウェルカムだけど。それじゃ、セリナのこと守ってね。ルーグが相手だと流石に私も本気でいかないとやばいから」

 

リーゼロッテにとって妹、セリナは自身よりも大切な存在だろうに。そんな大切な妹を俺に守ってほしいと頼み込むのは余裕がないと言うのは本当なのだろう。だがリーゼロッテの気持ちは俺とて理解できるものだ。イリヤへと僅かに視線を向ければ彼女はキョトンとして首を傾げる。

 

「君の妹であるセリナの身の安全は保証する。流石に俺も知り合いを守らないほど堕ちているつもりはない。それに妹を目の前で亡くすというのはかなり応えるものだぞ」

 

「んっ、その忠告深く胸に刻んでおくわ」

 

「ちょっとー!私を見て言ったってことは後で覚えておきなさいよぉ!」

 

イリヤが頬を膨らませて抗議してくるが間違ったことは言っていない。イリヤスフィールという少女は俺にとっては大切な人で俺の唯一のお姉ちゃんだ。それを口にするかどうかとなると話は別だが……まぁ、いいだろう。

 

「それじゃあ、行くわよ忍者」

 

「自分も色々と恭介さんに言いたいことがあるっッスけどその話はこの後でってことで。その時は逃すつもりないッスから覚悟しておいてくださいッスね」

 

「さてね、話をするほどのことなどないと思うが……まっ、記憶の片隅にでも覚えておくさ。彼方の相手をしている間に忘れるかもしれないがな」

 

近いうちに話すことがあるのは間違いないだろう、ただし全てというわけではないがな。レヴィの願いは正しい意味で叶うわけではないが話するということでは間違っていない。

 

「相談は終わりましたか?それではそろそろ再開しましょうか。トリニティセブンのみなさん」

 

『むぅー!みんな負けないでっ!私は応援しかできないけどみんなが勝つことを信じてるからっ!』

 

「……えっと、私ってこれ完全に足手まといですよね?夢の世界に戻った方がいい気がすると思うんですけど……」

 

『うっ、ごめんセリナちゃん。魔力が足りないからセリナちゃんを此方側に戻すのは難しいかも……それまではお兄ちゃんが守ってくれるはずだからっ!』

 

責任重大なものを任された以上は全うするさ。俺がこの双子の姉妹をあの2人を重ねてしまっているのは事実であるしそのことを否定する気はない。心の贅肉か?っと僅かに自嘲しながら弓と数本の剣を投影し、そのまま剣を矢へと変質させ弓へと番える。

 

「さて、ならば先行は我々が貰おうか。今回は事前に派手にやる許可はもらっているのでね」

 

「それじゃあやるッスよ、リーゼさんっ!」

 

「はいはいっと!そっちもしくじらないでよね、忍者っ!」

 

先に矢を射ちそれを合図にレヴィとリーゼロッテは個々に動く。矢は春日聖ともう1人の少女へと向かうが、春日聖の方は魔術による防壁で防がれもう1人の方は神器により弾かれる。先ほどが最初で最後の援護になるだろうっと内心で呟き春日聖により俺へと向けられている無数の魔力の塊へと対処を移る。だがその矛先は俺ではない、ならば先ほどのトリニティセブン2人か?いやそれは否だ。彼女の狙いは――――

 

「ふーん、狙いは私とこの子ってわけね。確かに私を消滅させれば恭介の勧誘が楽にはなるわね。あの言葉で揺らいだのは間違いなさそうだし」

 

「え、えっ!?それより呑気に話してる場合じゃないですよイリヤスフィールさん!!」

 

「あら、その点については大丈夫よ。一度守ると約束した以上はその約束を破ることはないわ。そうでしょう?恭介」

 

「―――当然だ」

 

両手の弓を即座に消し魔力の弾の数だけの剣を投影して座標を固定して射出する。その後にやることは簡単でセリナに失礼するっと言い俗に言うお姫様抱っこで彼女を抱える。そんなことをされると想像していなかったセリナは驚いた声を出し、イリヤは俺が何をするのか察してため息を吐きながら書庫へと戻り俺の首元へと戻ってくる。

 

『ふーん、へぇー、緊急事態なのはわかるけどそんなこと簡単にできるようになったんだ。お姉ちゃんには一度もしてくれたことなかったくせに』

 

「……文句は後で耳が腫れるほど聞くから今から文句を言うのはやめてくれよ」

 

「え、ええっと、え、衛宮さん!?この格好は恥ずかしいですけど……そのぉ、そのぉ……っ」

 

「すまないがこうした方が確実でな。嫌かも知れないが我慢していてくれ」

 

顔が真っ赤になってセリナが何かを言いたそうだが我慢してほしい。春日聖が何をしてくるのか未知数な以上はこうやって抱きかかえて共にいた方が確実に守ることができる。相手への威嚇は周りに投影して射出させることに留めておく。

 

「どうやら本気で逃げに徹するようですがいいんですか?私を止めないとルーグさんの方は加戦しちゃうかも知れませんよ?」

 

「その時は背中から刺すだけさ。下手に動けないから其方もこうやって決定打にはなり得ない魔術で牽制しているんだろう?」

 

「お見通しというわけですか。けれど、時間稼ぎをしている点ではお互い様でしょう?ルーグさんから付けられた傷を癒しているといったところですか」

 

『この程度の傷に必要ないって言うのが恭介だもの。治療しているのは否定しないわ。貰ったものである以上は有効活用しないといけないもの』

 

貰ったと言うより押し付けられたんだがっと静かに呟けばそれでもよっとイリヤはさも当たり前のように口にする。この書庫が正体については体内に入れられた時に察しているため魔力を使えば身体の傷が回復していくのはわかりきっていた。だからこそイリヤの意識がこの場にあることにおかしいんだが……今はそれに聞くことではない。片腕でセリナを支えて空いた片方の手に剣を投影して校舎の壁に投げつけ、壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)を使い壁を崩壊させそのまま校舎へと侵入する。

 

「校舎の中は逆に私たちが不利になりませんか!?お姉ちゃん達に意識を向けられたら……っ!」

 

「それについては問題ない。春日聖が俺の全てを見たと言うのならば姿を消した方が一番警戒する。俺の本来の戦い方は射る方だからな」

 

『あんなに干将・莫耶を投影して前に出れば勘違いされがちだけど恭介の得意分野は弓による狙撃よ。視界が悪くなる点で相手と此方側はイーブンにはなるけど校舎に入ったってことは時間稼ぎが目的かしら?』

 

「ああ、約30秒の時間稼ぎが必要だ。その時間稼ぎができれば確実にアレで射てる」

 

『30秒の時間稼ぎ……そう、宝具の真名解放を使うの。使う宝具は30秒の時間稼ぎが必要な時点で猟犬ね。標的を仕留めるにしろ時間稼ぎにしろうってつけであるのは間違いないわね』

 

校舎の廊下を走り抜けていればそれを追いかけるように魔力の弾が襲ってくるがなんのこともない。直撃すれば厄介程度と切り替えてまずはこの攻撃をどうにかしなければ。

 

「反撃開開始と行きたいがこの弾幕ではな。このままではジリ棒であるのは変わりないが、どうする?」

 

『そんなの魔術を無効にできる剣か槍でも投影して牽制すればいいじゃない。なんなら偽・螺旋剣(カラドボルグII)でも使えば速く終わるでしょ。アレぐらいの魔術防壁突破するの簡単じゃない』

 

「あの、春日聖さんはアラタさんが助けたい人なんです。だからあまりそう言った手段は取らない方がいいと思います……」

 

『この世界の魔導士は甘いのね。正に心の贅肉じゃない、敵対してる以上は完全に殺すつもりでいかないと自分が死ぬだけよ。彼女を助けたい人なんて私ははっきり言えば興味ないもの。私の大事な弟を勝手に誑かした時点でタダで帰すつもりはないわ』

 

「……っ」

 

セリナはイリヤが冗談ではなく本気であることが伝わり言葉を詰まらせる。残酷かと思うかも知れないが俺たちの知る魔導士―――魔術師にとっては普通だ。春日聖の目的は知らないが危険分子には違いない。今のうちに刈り取る選択を選ぶのも一つの手だ。

 

『まぁ、これはあくまで私の意見であって恭介はどうなのよ?確認するまでもないと思うけど敢えて確認するわ』

 

「……別に俺は春日聖がどのような結末を迎えようが知ったことではない。ただ俺が手を下すのは間違ってるだろうよ」

 

『はいはい、こんな時でも捻くれた回答なんて必要ないから。昔みたいに素直になりなさいって無理強いはするつもりはないけどもうちょっとストレートに言いなさい。そうする気が湧かない理由はわかってるから今は何も言わないけど……』

 

イリヤがその理由に深く踏み込むことをしないのは今がその時ではないとわかっているからだ。戦場の真ん中ではなく2人きりの時であるのならばその領域まで踏み込んできたことを考えて今は戦いの最中であったのはある意味で救いだった。彼女の前で本音を隠し通せる自信は全くないからな。

 

「えっと、2人の関係性が気になるのは確かなんですけど……今はこの状態をどうにかしませんかっ?私ができる範囲なら幾らでもお手伝いしますっ!」

 

「それならこの校舎の壁をセリナの魔術で固定して強度を強化できないか?春日聖が先ほどから撃っている魔術の威力は幸いにも高くはない。25秒ほどの時間を稼いでくれると助かる」

 

『それが一番まともな作戦ね。他に上げればオトリもあるけどそれは許してくれないんでしょ?』

 

「当然だ、そんな自殺に等しい方法を取るつもりはない。今回で余分な犠牲を出すつもりはない。さて、セリナそろそろ準備してくれ。束縛の魔術を使って欲しい壁に目印として剣を投げるためそれに向けて魔術を使ってくれ」

 

「わ、わかりましたっ!」

 

緊張した様子でセリナの声は上ずっているが無理もないか。魔導士同士の戦闘はリーゼロッテで体験したが本格的に巻き込まれたのは今回が初めてだろう。不安を和らげるためもあるが魔術を使う準備としてカメラを両手で握り深呼吸を繰り返す。そして覚悟を決めた彼女の口から大丈夫ですっと震えながらも芯のある声を出したことに上出来だと褒め、手筈どうり干将を投影して束縛してもらう壁に向けて投擲しそのまま突き刺さり彼女は魔術を使いその壁の空間を束縛をし強度を上げる。セリナを安全に床に下ろして両手に空きができ即座に黒い弓と一本の剣を投影をして矢に変え番える。

 

「25秒間は絶対に持たせてみせますっ!それが今の私にできる精一杯ですからっ!」

 

『ふーん、怯えてばかりだと思っていたけど胆気はある方じゃない。そういった子は嫌いじゃないわよ、私。それじゃあ、私もちょっとばかり協力しようかしら。この壁を突破された以上危険なのは変わりないしね』

 

魔力が減った感覚に襲われれば次には書庫から人な姿に戻ったイリヤがおり術式を唱えれば彼女の周りには3匹の鳥型の使い魔が出現する。イリヤの魔術がどんなものか残念ながら覚えてはいないが手を貸してくれる時点でありがたい。

 

「行きなさい、今回は相手を翻弄してくれればそれでいいわ」

 

3匹の鳥の使い魔は羽ばたき崩壊している壁から抜けて春日聖へと狙いを向ける。春日聖の攻撃が増しているのは少しづつヒビが入っている束縛で固定した校舎の壁でわかりきっている。あと少しでチャージは終わるそれまで耐えられるか?っと分析していれば少しまずいわねっとイリヤは小さく呟く。

 

「あの子この壁の向こうに私たちがいるとわかったから壁ごと消し飛ばすつもりよ。恭介残りのチャージ時間は?」

 

「あと5秒だ。イリヤその5秒を確保してくれるか?」

 

「可愛い弟からお願いされたらその5秒を確保してあげないとね」

 

壁があるためイリヤがあの3匹の使い魔に何を命じたのか分からないが合図を送ったということはわかった。イリヤならばどのような手段を使ってもその5秒は確保できるだろう。あとはこの後の攻撃を凌ぐ手段を引っ張り上げてくるだけだ。

 

「2人は俺の後ろに下がれ。次に春日聖が使ってくる魔術は全て俺が受け止める」

 

「すみません、お願いします……次にくる一撃には耐えきれないと思いますから」

 

「それならお願いするわ。後はカッコイイ姿を見せてよね、お兄ちゃん」

 

「お、お兄ちゃん……?アレでもお姉さんとか言っていませんでしたっけ……?」

 

セリナは困惑するが訂正するにはある意味で時間が掛かるため悪いが聞こえなかったフリをする。イリヤはこんな性格なのは時期にわかってくると思うので慣れていってくれとしか言えない。此方のチャージは終わったため惜しむことなくそのまま射つ。

 

「赤原を行け、緋の猟犬―――赤原猟犬(フルンディング)

 

かの魔剣は一度射たれれば標的を喰らいつくまで追い続ける。魔剣は赤閃を纏い魔弾と化し春日聖を狙うだろう、この魔剣を射った後は次の行動に移る。赤原猟犬(フルンディング)を訴えて直後に彼方も膨大な魔力を使用して直撃すれば跡形も消し飛ばすほどの魔力の砲撃を撃ってきた。

 

「―――I am the bone of my sword. (―――体は剣で出来ている。)

 

「これは衛宮さんの詠唱……?」

 

「―――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

 

七枚の光の盾が花弁のように展開されれば壁は崩壊し、熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)へと直撃する。本来は対投擲用の宝具にも等しいがそれ以外でもアイアスの名は伊達ではなく頼もしい防御力を発揮する。問題点があれば能力による都合上魔力消費が剣を投影する時よりも2〜3倍ほどあることか。今回は出血大サービスと思えば魔力消費量については多めに見ればいい。一枚目は突破されたが二枚目で完全に塞ぎ切り魔力の砲撃は途切れば俺も熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)を消滅させる。

 

「今の一撃を完璧防ぎますか……流石ですね。贋作者《フェイカー》さん。先程貴方が放った宝具も壊すのには苦労しましたよ」

 

「壊す選択を選んだということは赤原猟犬(フルンディング)も知っていたということか……手の内を知られているのはやりにくい話だな」

 

「全てというわけではありませんよ?ただ貴方の使う宝具について警戒しておくには越したことはありません。一つでも怠れば死んでしまうのは私の方ですから」

 

こうやって春日聖と談笑しながら頭の中ではどうするかと次の策を考える。相手も次の一手を考えているのはわかりきっていること……真正面から挑み敵の手の内を一つでも明かすのは考えるがその後のことを考えると却下だ。

 

「牽制程度なら今の私でも充分できるとは思うけど……どうするの?おそらく相手の狙いは恭介じゃなくて私たちよ」

 

「……わかっている。春日聖は俺に勝つというよりも君たちを排除することを優先としているのはな。戦略の一つとしては最善の一手だ」

 

「それでしたら私たちが遠くに逃げるとかはどうでしょうか……?」

 

「それも考えなくはないけれど私たちが一番身の安全を保証できるのは結局恭介の近くにいることなのよ。相手が瞬間移動でもなんでも使えるとしたら恭介から離れたらその瞬間に終わりね。私はともかく貴女は死体が残ればいい方なんじゃない?」

 

「イリヤスフィール、あまり彼女を脅すようなことはするなよ」

 

「別に脅してるわけじゃないわよ。可能性の一つとして教えてあげてるだけじゃない。あっ、それよりもまたそうやって他人行儀に呼ばないのっ!」

 

抗議してくるがこの際聞こえなかったフリをさせてもらう。イリヤからの抗議を無視していれば此方側に膨大な魔力を感じ取ったこともあるのかレヴィとリーゼロッテが合流してくる。

 

「なんか凄い一撃放たれたようッスけどその様子ですと大丈夫そうッスね」

 

「アレぐらいを防ぐのは造作もない。むしろオーバーキルをしたと思っていたところだよ。それよりもそっちはどうだったんだ?」

 

「こっちは駆け引きには勝ったってところかしら。なんとかルーグの宝具を2つほど破壊できたってことね。まっ、あっちは宝具以外の損傷はないんだけどねぇ……」

 

「結果としては2人とも良くやった方だろうよ。無理をして攻めれば崩されるのは此方の方だからな」

 

『でもお互いに五分五分の状態だからお兄ちゃんたちが戻ってくるまでどうにかなりそうだね。油断をしちゃいけないけどホッと安心したよぉ』

 

それをどれほどの状態を維持できるのかと口にするのは野暮と言うものか。正直此方側はギリギリを保っている状態で1人でも離脱者が出ればそれが崩れる。彼方側もそうであると願いたいが手の内が未知数でまだ余裕がありそうだ。

 

(……あまり宝具の投影はしたくないがもう一つぐらいはしておくか。あまり火力がある宝具を使えないことを考えれば選別するのは些か面倒だがな)

 

問答無用な手段をとるのなら話は別ではあるが今回はそうはいかない。火力のあるものではなく拘束する類の宝具の選別を行っていれば先ほどとは違い見知った魔力を感知する。……どうやら俺の仕事はここまでのようだな。

 

「ふん、主役は遅くやってくると言ったところか?」

 

「……ええ、どうやらそのようですね。ルーグさんその場にいると危ないですよ」

 

「どう言うことですかっと当機は疑問を――――」

 

俺と春日聖との会話で何なことやらとみんなが何なことやらと首を傾げていると剣を纏っていた少女の頭上にて何やら黒い渦のようなものが浮かんでいた。その存在を認識する前に少女は突如と現れた人物に押し潰され1人だけではなく数人の人間が現れそのまま重力に従い落ちていく。

 

「……もう少しマシな登場はできないのか」

 

「まあまあ、アレがアラタ君の持ち味みたいなものだから、ね?」

 

顔に出してたつもりはなかったが微妙な表情な浮かべている俺をリーゼロッテは苦笑いを浮かべながら宥める。派手な登場をしろと言うつもりはないがもう少しこの場に似合うようにしろと。某赤い悪魔でも頭上から落とすうっかりなんざしないぞ。……いや、流石にしないよな?

 

「あら、それはどうかしら。だって凛のうっかりでしょ?凛のうっかりなら大きなポカをやらかすと思うからあると思うわよー?」

 

「……悪いが俺はノーコメントだ」

 

それって答えじゃないとイリヤはクスクスと笑うが俺はそれを聞こえないフリをする。彼女のうっかりについてはどうやろうが時たまにやらかし大概巻き込まれてロクなことがあった気がしない。もはやアレは一種の呪いと断言していい……そんなことを口にすれば次元など超えて報復をしてこようとする姿を容易に想像できたため黙っておく。……悪寒がするが多分気のせいだ、血を流しすぎたからそう思うだけだ、うん。

 

「……さて、結果はほぼ見えている。これ以上俺は手を出すつもりはない、あとは君たちの力だけで乗り越えたまえ。セリナの護衛ぐらいは引き受けはするがね」

 

「で、ですがお姉ちゃんもレヴィさんも限界に近いですし、衛宮さんがこのまま一緒に戦えばっ!」

 

「それじゃあ意味がないのよ。これぐらいの脅威は自分たちだけで振り切れるようにならないと魔王を止めるなんて夢のまた夢の話よ?そうでしょ、リーゼロッテ?」

 

「……まぁ、確かにね。流石に恭介君ばかりに甘えるわけにはいかないってことね。それじゃあ、セリナのことはよろしくね?」

 

「まぁ、元より恭介さんも休んだ方が良さそうッスからね。なにがあったかは知らないッスけどその姿から見て結構派手にやり合ってるようッスし」

 

「やり合ってるに含めていいかは結局は微妙なんだがな……まぁ、君たちの健闘は祈っているさ」

 

2人はそのまま戻ってきたアラタの元へと合流する。そんな2人を心配そうに見送るセリナを見て、一応は保険をかけておくかと念のために投影するものを決めておく。

 

「本当に捻くれ者になったわね。そんなことするぐらいなら初めから手伝ってあげればいいのに」

 

「さて、なんのことか俺にはわからないな。……実際これぐらいは自分らの力だけで乗り越えてもらいたいのは事実だ。いつまでも俺が手を出すわけにはいくまいよ」

 

この戦いでアラタ達はこの世界の在り方をきっと知ることになるだろう。しかし、その前にこの戦いで得る必要があるのは勝利だ。

 

(――――自分の目の前に救いたい者が敵として現れた今、貴様はどのような行動をとる?お前が選ぶその選択を見届けさせてもらうぞ、春日アラタ)

 

今から始まるであろう戦いに俺はアラタへと視線を向ける。春日アラタがどのような選択を取るのかを俺はただ無機質に無表情に見定める――春日アラタがどれほど本気なのかを。





よしっ、これで聖編終了します。閉廷!えっ、戦闘シーンやれ?原作もさほど変わりがないので正直に書く必要があるか悩んでます……けど、原作で伏線が貼ってあるから書くしかないよね……だから頑張ります……ほんと、本来はこの回で終わったのに……書きたいことが多すぎて無理でした((

そして今のところfgoのモチベが低いのは純粋にぐだぐだで配布が消えてしまったことですね。いや、本当になんで卑弥呼か一ちゃんを配布にしなかったの?信勝君がフレポ(期間限定)に追加されるから?卑弥呼の中の人参戦をめちゃくちゃ待ってた自分にとってはストレスがやばかったですね。もうね、石がないのに☆5なんか引けるわけないだろ!いい加減にしろ!!

あー、はい、見苦しいのでこれ以上は愚痴るのはやめましょう。とりあえず推しキャラとか愛でて落ち着くことにします。レヴィさんとか、レヴィさんとか、レヴィさんとか!とりあえず聖編は後1話続きます……それでは次回の更新は未定ですが気長にお待ちください!誤字&脱字報告はいつでも待っております!

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