マテリアルズRebirth   作:てんぞー

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 絶望さんが近くから顔だけをだしてちーっすと挨拶をしています。どうしますか?


スーン・カムズ・ディスペア

 部屋を一つ一つ確認しながら複雑な研究所内を進んで行く。多くの研究機材や機器を目撃する事の出来るこの研究所はかなりの広がりを見せている。まるでアリの巣の形をした迷路のように。これだけの研究施設を一人で維持する事は到底不可能なはずだ。だからその為の人員も少なくない数存在したはずだ。その証拠に、此処に来るまでにロッカールームやら休憩部屋、キッチンなどの生活感あふれる部屋もあった。だが不思議な事にそれを利用しているはずの人員を一人も見かける事はなかった。まるで全員どこかに消えてしまったかのように。軽い不気味さを覚える光景だったが、

 

「たぶん俺達の接近を知って逃げたんだろ」

 

「え?」

 

「知りたい? なんでジャミングがあるのに逃げられたか知りたい? 知りたいだろ? 教えなーい!」

 

 無言でレイジングハートをダメ先輩に突き刺す、早く言えと脅迫する。先端を脇腹に突き刺すとレイジングハートが嫌そうにコア部分を弱く光らせる。

 

「主従揃って素直だなぁ! まぁいいや。簡単な話、相手の転送装置が俺達の使うジャマーよりも性能が良いって事よ。これだけの施設、相当大きなクライアントがついているぜ? それこそ管理局レベルのが。そしてもしクライアントが管理局だとして、ジャマーの規格やデータは駄駄漏れなんだからジャマーを無効化するか、隙間をすり抜けて転移させるような装置を作ることぐらいはできるだろ、金と時間さえありゃあ」

 

「待ってください」

 

 今まるで管理局が犯罪者を支援しているかのようにこの男は言ったぞ。それは流石に聞き捨てならぬ事だ。

 

「うん? 管理局の暗部をまだよく見てないのか?もしかして完全無欠の正義の味方とか思っている? 残念、所詮理想は理想なんだよ」

 

「ちょっと待ってください、流石にその発言はどうかと思いますよ。それにこの件が管理局と通じているなんて―――」

 

「この件だけじゃなくて何百件も、何千件もの犯罪が管理局の主導で行われてきたよ。証拠もバッチリあるから今度6隊に戻ったら隊長のオッサンかゲンヤさん辺りに見せてもらいなよ。証拠はあるけど公表すれば間違いなく闇の中で殺されるからって理由で絶対出回る事の無い証拠品。べつに死にたいんだったら好きなだけ持ち出してもいいんだぞ? オススメしないけど」

 

「そんな……」

 

 聞かされた事実に予想以上のショックを受ける。ここ一ヶ月、確かに首都であるクラナガンに何故ここまでの犯罪件数が多いのか、無能ではない筈の空港を何故突破して入国できたのか。そういう疑いはあったが、内部から素通ししている裏切り者がいるのかと思う程度だった。それがまさかこんな形で回答を得られるとは―――。

 

「なのはちゃん。お前ここ一ヶ月ホント良く働いてるよ。並のやつなら数日でなじめないまま異動するからな。俺達の誰もがお前を認めているし、俺達みたいにこんな所で腐っているようなやつだとも思わない。だからここら辺からは俺達も容赦しねぇ。見せなきゃいけないものはとことん見せるし、教えなきゃいけないもんはとことん見せる―――入り口のポッドの中身みたいにな」

 

 入り口の惨状を思い出す。あの人が人とも思われていなかったかのような惨状を。つまりアレに匹敵する様なものをどんどん教え、伝えてくるという事だ。―――入り口で上着をかぶせてくれたようなフィルタリングも、もうしてくれないという宣言。それに対して挑戦的な笑みを浮かべる。

 

「いいですよ、覚悟はできています。元々6隊はしばらく所属するつもりです。今更逃げる気はありませんよ」

 

「その強がりが何時か泣き顔になると思うと楽しみだなぁ!」

 

「基本外道ですねイスト!」

 

 そこで胸を張って応、と答えないで欲しい。非常にリアクションが取りにくい。

 

 ―――ともあれ。

 

 そういうやり取りをし、基本的にその場のテンションを温めながら先へと進む。研究所の大分奥へと進んできた自覚はあるが、それでもまだ終わりは見えない。その代わりに、今まで多くあった部屋はここまで来ると無くなっている。そしてそのせいか、少しだけ広くなった通路が永遠に続いている様に思える。ただ壁には途中から先にあるものを示す様に注意書きなのが書かれている。

 

 メインシステム、と矢印と共に壁には書かれている。

 

 矢印に従いながら先へと進み続けると、やがて一本道の終わりへとやってくる。そこからは通路が二つに分岐し、壁には”セクターS”と”セクターT”と書かれている。二手に分かれる通路の前で、イストの横に並び、通路の奥を見る。少しだけセクターT側に踏み込み、その奥を自分が見る様に、イストがセクターS側に少しだけ踏み込んで奥を見る。ライトは付いていて奥まで照らしているが、

 

「こちら、奥まで見る事はできませんね」

 

「こっちもだな」

 

 通路が途中から下へと向かって曲っているために奥まで見る事が出来ないのだ。その場から動かず、逆側の方へと向かって声を張る。

 

「どうしますかー? 分かれますかー?」

 

「なんで分かれるんだよばぁーか。こんなの分断させるためのいいシチュエーションじゃねぇか。二人一緒に行動して、駄目だったら戻ればいいだろ。どうせ逃げる気配無いんだからゆっくりやりゃあいいんだよ」

 

 暴論だが正解だ。相手が逃げる気がないと言うのが一番いい所だ。通らない方の道には魔力でのサーチャーでも飛ばして調べればいいのだ。そう判断し、レイジングハートを持ち上げる。

 

 

                           ◆

 

 

「さて、始めようか?」

 

 

                           ◆

 

 

 ―――次の瞬間、突如として自分の側と、そしてイストの側を分断する様にシャッターが出現し振り下ろされる。イストの言った事は間違いではなかった。これは分断するための通路だあ、こんな強引にやれば―――!

 

「さぁーて、ここからが本番だな……!」

 

 分厚いシャッターを貫通する様に一本の腕が出現する。そう、下手な手段では此方を警戒させるだけに終わる。だからイストの言うとおりにここからが本番だ。だから次の瞬間、シャッターを貫通した腕が向こう側へと引き戻される事に驚きはなかった。自分でも全く同じ手段を取るであろうからだ。術式の名は聞こえない。だが穴の開いたシャッターの向こう側、その隙間から見えるのは首と、両腕、両足を拘束し、奥へと引きずり込むバインドを受けたイストの姿だった。

 

「イスト!」

 

「なのはちゃん、プランDだ……!」

 

「そんなものありませんよ……!」

 

 何時もネタに対して全力だなぁ、と再確認した瞬間、レイジングハートをストライクフレームへと変形させ、体を横へと飛ばす。次の瞬間、シャッターに当たり、そして跳ねる一発の銃弾があった。その軌道と音から一瞬でそれが魔力弾ではない事を把握する。

 

 質量兵器。

 

 自分の故郷、地球でも使用されている兵器―――金属製の弾丸を装填した銃だ。

 

 振り返り、そして弾丸が飛んできた先へと視線を送る。近接戦向けにレイジングハートを握り直しながら確認する視線の先―――そこには闇が広がっていた。先ほど確認した時にはついていたはずのライトが全て消え去り、完全な闇を演出していた。そしてその闇の中に男が一人、立っている。シルエットしか確認できないが、両手に銃―――おそらくアサルトライフルタイプのを握り、そして……、

 

 ―――イストと同じ髪型……?

 

 男と思わしき存在がいた。

 

「やあ、初めまして高町なのは准空尉。唐突で悪いけど君に家族はいるかな?」

 

 等々に相手は話しかけてきた。奇襲や不意打ちに対応できるように相手と自分の間の距離を測り、そしてアクセルシューターを十数個自分の周りに浮かべる。砲撃を使えばこの施設が崩れてしまう事を考えると、強力な攻撃は打てない。だから相手の話にあえて乗る。引き出せる情報があれば引き出せるのがいい。

 

「……いますけど何か?」

 

「じゃあ兄弟は? もしくは姉妹とか?」

 

「……兄と姉が一人ずつ」

 

「うーん、そっかぁ、妹がいないのかぁ。うーん、いないのかぁ……非常に残念だなぁ……あぁ、でもという事は君は妹キャラか! あぁ、何かそう思うと凄い気合が湧いてきたぞ」

 

 こいつは一体何を言っているんだ。とりあえず意味が解らない。アレだ、たぶん危険思想の持ち主だ。それともたぶん純粋なシスコン。……妹オタク? ともあれ、目の前の人物がキチガイであることに間違いはない。そして何でこうも自分の人生はキチガイに縁があるのだろうかと思い悩む。始まりははやての紹介に違いない。

 

 だが良く考えてみよう。

 

 フェイトちゃんは脱げば脱ぐほど強くなるって変なシステムに気付いちゃってバリアジャケットは結構ギリギリだし、はやてちゃんはユニゾンして殲滅魔法連発すればいいって危険思想持っているし、シャマルさんはシャマルさんで秘儀リンカーコアぶち抜きを強化するつもり満々だし、シグナムさんは元からバトルキチだし……!

 

 良く考えたら一歩踏み外している様な友人ばっかりではないのか? 自覚がないだけでは。この自分の周りに常識人がいないというのは。それに比べて自分はどうだ。膨大な魔力は持っているが、戦闘スタイルは堅実だ。魔力をタップリ注ぎ込んだ遠距離砲撃型。とりあえず砲撃を撃てばそれで勝てる。どっかの殲滅厨と同じ様な発想だがこっちはセオリー通りなのだ。ほら、常人。

 

 アイデンティティの確立にとりあえず成功する。

 

 よし。

 

「貴方、狂人ですね!」

 

「うーん、その迷いのなさはまさしく”流石”としか言いようのない感じだよね。うん、君も本当にあの6隊のメンバーだって納得できるよ。うんうん。あ、ところで名前を名乗れなくてごめんね? ”名前を名乗る時はもっとこう、いいタイミングがあると思うんだ!”っていうのが上司の発想というか発言でね、まだ名前を名乗っちゃ駄目だって言われているんだ。あとデバイスの記録映像を見れば確実にバレてるだろうけどわざと暗くしてシルエットだけで登場させるのも演出の一環だってさ。ほんと、キチガイを上司に持つとお互いに苦労するよね」

 

 お前にだけは言われたくない、という言葉を無理やり飲み込んで、そしてこの会話の流れを悟る。このやり口、喋り方、そして会話の内容というか質、間違いなく自分は知っている。

 

「―――ウチ(6隊)のやり方です!」

 

 それを自覚するのと同時にアクセルシューターをシルエットへと向けて叩き込む。だが闇に隠れるシルエットは後ろへと向かって回避するのと同時に引き金を引いた。魔力よりも使いにくいが、それでも破壊力のある兵器は凄まじい速度で魔力弾の倍を超える量の弾丸を吐き出し、それを弾幕として一気にアクセルシューターを粉砕する。

 

 ―――やはり質量兵器相手は非常にやりにくい……!

 

 が、殺害を目的とするだけなら実に効率的だと思わなくてはならない。個人の資質に左右されずに相手を倒す事が出来るのが質量兵器だ。対魔力弾を装填しているのであれば、魔力弾との打ち合いにも負けない―――いや、一秒間に放てる数が多いのであれば圧倒できる。

 

「よ、っと。危ないじゃないか」

 

「ディバインバスター!」

 

 桜色の砲撃を問答無用で闇の中へと向けて放つ。一瞬だけ周囲が魔力光によって照らされ、シルエットが僅かにだが姿を現す。だが姿を確認できる前に、それは闇の中へと姿を隠す。

 

「ちょ―――」

 

「これなら砲撃魔法でも弱い方です!」

 

「そういう問題じゃないと思うんだ!」

 

 闇の中へと向けて砲撃魔法を叩き込む。それが着弾しない事から相手へと届く事はなかったと悟る。が、しかし今の一撃は天井へとぶつかり、天井を軽く粉砕した―――思ったよりも研究所は硬くないらしい。

 

「あと二、三発なら行けると思ったのに」

 

「いや、君十分に頭おかしいよ」

 

 そう言って苦笑するシルエットが闇の中に依然、存在する。此方が全力を出せない状況で此方を封殺する様に手を打ってくるのは流石ホームグラウンド、というべきなのだろう。さっきはノリで軽くディバインバスターを放ったが、二発目はない。ハイペリオン、スターライト、どちらの砲撃魔法も封じられてしまったのは非常に痛いが、戦う手段がないわけではない。この手口、

 

 ―――間違いなく時間稼ぎ。

 

 あのめんどくさく、そして遠まわしで、自分のペースへ引きずり込む様な嫌な話術は間違いなく6隊必須のスキル、イストが良くやっているのを見ている。この人物は間違いなくウチの隊の縁の人物で、そして時間を稼いでいる。その目的は―――増援だろう。

 

「さて、意図に気づかれはしたけどそこまでだ。向こうの交渉は決裂したようだしあとはバトンタッチさせてもらうよ」

 

「待ってください」

 

 アクセルシューターを十数と再び浮かべる。だが闇の中にいたシルエットは直ぐに消え、そしてそれと入れ替わる様に水色の閃光が目にも止まらない速度で瞬発し、接近してくる。デスサイズの様な形のデバイスを手に、閃光は叫ぶ。

 

「―――バルフィニカス、狩るよ」

 

 

                           ◆

 

 

 ―――時を同じくして、

 

 ”それ”は杖を構えた。矛先を肉に突き刺し、慈悲の一遍もなく放った。

 

「―――ルシフェリオンブレイカー」

 

 成すすべもなくイスト・バサラの体は吹き飛ばされた。シャッターを貫通し、通路の奥へと吹き飛ばされる姿を眺めながら少女は無感情の視線を向けて宣言する。

 

「理のマテリアル―――シュテル・ザ・デストラクター」

 

 一歩前へと踏み出しながら彼女は言う。

 

「死んでもらいます。王の為に」




 とりあえず石を投げよう。

 そんなわけで次回へ続く。ここまで出せば大体わかってくる人いるんじゃないかなぁ、と。

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