艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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零戦隊が取り逃がした敵攻撃隊の生き残りを迎撃した艦娘たち。
しかし、置き土産の魚雷が指揮艦に迫る。
迎撃が間に合わないと悟った響は、自らが指揮艦の盾となる道を選んだのだったーーー。


第10話「南西諸島防衛線・5」

魚雷の爆発で水飛沫があがり、それによって大きな水柱ができあがる。

 

響と指揮艦は水柱に飲まれ姿が見えなくなっていた。

 

「魚雷が爆発した・・・・・・はっ!?指揮艦は・・・響は無事なの・・・?」

 

叢雲は呆然とその光景をみていたが、はっと我にかえって響たちの姿を探す。

他の艦娘も、未だ水飛沫が晴れない水柱付近を眼を凝らして観察する。

 

「・・・・・・!あれは!」

 

少しして視界が晴れてくると、1つの影が見えた。

 

「指揮艦・・・無事だったのね・・・。」

 

現れたのはほぼ無傷の指揮艦の姿だった。

それを見て伊勢がほっと胸を撫で下ろす。

至近距離での爆発だったため、所々に細かい傷がついているが、特に問題ははなさそうだ。

 

「う・・・ど、どうなったんですか・・・被害状況は・・・?」

 

激しい衝撃でふらつく頭を左右に振りながら、安住が状況報告を求める。

 

「そ、損害軽微・・・衝撃の影響で船尾が押されたのか、先程と比べて船体が少し半時計回りに回転ましたが、計器上は航行に支障はありません・・・。」

 

他の乗組員も、それぞれ体勢を建て直しながら状況を確認して報告した。

 

「そう、ですか、目視による損傷確認を急いでください。・・・・・・響さんは!?無事なんですか!?」

 

ようやく立ち上がった安住は、顔色を真っ青にして先程まで響がいた場所に眼を凝らす。

水柱の影響で未だに視界は悪いが、必死にその姿を探す。

艦娘たちも近づいてきており、響を探そうとしているようだ。

 

(まさか・・・・・・我々を守って犠牲に・・・。)

 

嫌な想像が頭をよぎる。

それを振り払うように頭を振り、再び響を探す。

ようやく水飛沫もおさまり、視界が開けてくる。

水柱の中心点、魚雷が炸裂した場所。

そこにはーーー。

 

 

 

 

 

何も、無かった。

 

 

 

 

 

艤装の残骸も、衣服の切れ端も、響の痕跡は何も無かった。

ただ、魚雷の破片と思われる金属片が水面を漂っているだけだった。

 

「そん、な・・・跡形も・・・なく・・・・・・?」

 

それ以上、安住の喉からは声がでなかった。

 

「嘘・・・・・・。」

 

信じられない光景に、叢雲は膝の力が抜けたようにへたりとその場に座り込む。

この状況を見れば、一撃で轟沈したとしか考えられない。

その場の全員が、ほんの数十秒前まで響がいたその場所をただ見つめることしか出来なかった。

 

・・・・・・3人を除いて。

 

「帰艦中の全機に告ぐ!燃料に余裕のある者は、上空から響さんを探して!」

 

「響ちゃん、どこにいったの・・・返事をして!」

 

「由良は指揮艦の左舷側を!俺は右舷側を探す!」

 

赤城は丁度、艦隊上空に戻ってきた航空隊に響の捜索を命じ、由良と木曾は指揮艦を中心としてその周囲を探し始めていた。

3人は響を諦めてはいなかったのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・!司令官さん!」

 

指揮艦の左舷側を捜索していた由良が、何かを見つけたようで、安住へ叫ぶ。

 

「由良さん!?何か見つかったんですか!?」

 

安住は慌てて指揮艦左舷へ行き、海上の由良を見る。

すると由良は指揮艦の左舷後方に近づいていき、全員へ通信を送った。

 

「由良より全艦へ。響ちゃんを発見しました!」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

頭が痛い。

ズキズキする。

昨夜ウォッカを飲み過ぎたかな。

 

ーーきーーん

 

なんだろう、声?

 

ーーーけてーびーーーー

 

誰かが呼んでる?誰を?

 

ーきてひびーーーーひびきちゃん

 

ひび、き?

ああ、そうか。私の名だ。

もう朝なのかい、電。

わかったよ、起きればいいんだろう?

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「目をあけて!起きて!響ちゃん!!」

 

「う・・・・・・。」

 

誰かに身体を揺さぶられているのを感じて、響が目を開く。。

 

「・・・起きるから・・・・・・電・・・そんなに揺さぶらないで・・・・・・あれ・・・?」

 

「響ちゃん!大丈夫!?しっかりして!」

 

響は意識が朦朧としているようで、目の焦点が定まっていない。

 

「響ちゃん、私のことわかる?」

 

「・・・・・・由良、さん・・・。私は・・・。」

 

響は指揮艦の左舷後方で、指揮艦に背中を預けるようにして気を失っていた。

由良に揺り起こされ、ようやく意識がはっきりしてきたようで、響は由良の問いかけに答えた。

 

「ん・・・もう、大丈夫。身体中が痛いけど、問題ないよ。」

 

「よかった・・・ごめんね・・・。」

 

響の言葉に安堵したのか、由良は響を強く抱き締めた。

由良の肩が小刻みに震えているところを見ると、泣いているようだった。

 

「由良さん・・・・・・少し、苦しいかな・・・。」

 

「本当に無事でよかった・・・。なんであんな無茶したの・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

泣きながら由良が問うが、響は言いづらそうに押し黙ってしまった。

そこへ他の艦娘たちも集まってくる。

 

「響ちゃん!無事だったのね。よかった・・・。」

 

「大丈夫?響さん、怪我は?」

 

「この馬鹿!どうしてあんな無茶するのよ!・・・でも、無事でよかったわ・・・。」

 

「なんて無茶をしやがる・・・まったく。」

 

心配そうに響の顔を覗きこむ伊勢と赤城。

無茶をしたことに泣きながら怒り、無事なことに安堵する叢雲。

悪態をつきつつも響へ手を差しのべる木曾。

由良の強烈なハグから解放された響はその手をとり立ち上がる。

そして、ある違和感を覚える。

 

「あ・・・。帽子・・・・・・。」

 

頭に手をやり、いつもかぶっている帽子が無くなっていることに気がつく響。

魚雷が爆発したときにどこかに吹き飛ばされていったのだろう。

他の者にとってはただの帽子。しかしそれは響にとっては大切な物だ。

響の瞳にわずかだが悲しみの色がさす。

 

(あの帽子・・・こいつにとっては大事なものだったか。)

 

木曾がその様子に気づいて目を細めて周囲を見渡すが、どこに飛ばされていったかも分からない以上、なにも出来なかった。

そこへ、艦娘たちの頭上から声が掛けられる。

 

「響さん!無事ですか!?怪我は!?身体に異常はありませんか!?」

 

声のした方を見上げると、顔を真っ青にした安住が艦上から身を乗り出し、心配そうに響を見つめていた。

 

「大丈夫、艤装の盾が少しへこんだくらいだ。怪我もかすり傷だし問題ないよ、司令官。作戦続行に支障はない。」

 

響の言う通り、艤装に装備されていた盾が損傷しているが、とても「少しへこんだ」とは言えない具合だ。

小破、といったところだろうか。

だがもはや、それは盾としての役割を果たさないだろう。

 

「・・・本当に大丈夫なんですね?」

 

不安そうに訪ねる安住に、響は首を縦に振ってみせた。

 

「無茶な真似をしてすまなかった。いくらでも罰は受けるよ。」

 

「司令官さん、響ちゃんを責めないでください。あれは・・・。」

 

響を庇おうとする由良を手で制止する安住。

 

「あれは運が悪かっただけです。おかげで我々は命を救われたのですから責めるつもりはありませんよ・・・・・・一応、話は戻ってから聞かせてもらうつもりです。・・・作戦を続行しましょう。」

 

そう言うと、安住は指揮艦の中へと戻っていった。

 

「由良さん、おかげで助かったよ。・・・Спасибо(スパスィーバ)。」

 

「響ちゃん・・・。」

 

響はそう言って、由良にふわりと笑うのだった。

 

 

 

ーーーーー南西諸島沖・12:55ーーーーー

 

 

 

「さすがに、敵艦隊には逃げられましたね。」

 

陣形を組み直し、敵艦隊のいるであろう場所まで進軍した第1艦隊だったが、すでに敵の姿は無かった。

 

「すまない司令官。私が損傷で速度を落としていなければ・・・。」

 

「いえ、むしろよかったのかもしれません。」

 

響が申し訳なさそうに言うが、安住は叱責するどころか、よかったという。

 

「どういうことかな?」

 

「それはすぐにわかると思いますよ。」

 

そう言って安住は微笑む。

敵艦隊はたしかに取り逃がした。

だが、たしかにここに敵艦隊がいた証拠に、深海棲艦の艤装や赤城艦載機の残骸が周囲に散乱していた。

敵の痕跡を眺めていた安住に、赤城が報告する。

 

「撃墜された機から脱出していた妖精たちの救助は完了しました。」

 

「了解です。救助した妖精さんたちはゆっくり休ませてあげてください。・・・加賀さんから連絡は?」

 

「はい、少佐の予想通りだったと先程連絡がありました。予定通り行動するとのことです。」

 

「わかりました。・・・・・・だとすれば、こちらもそろそろでしょうね。」

 

赤城から加賀たち第2艦隊の動向についての報告を聞いた安住は、自身の予想を確信に変えつつあった。

そこへ、安住の予想を確信に変える決め手となる通信が入る。

 

「由良搭載の水偵より入電!取り逃がしたものとは別の、空母機動部隊を発見!おそらくこちらが敵防衛主力艦隊と思われます!!」

 

それを聞いた安住の表情が変わる。

獲物を見つけた狩人のような、ギラギラした目付きだ。

 

「全艦戦闘準備!ここからが本番です!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第10話です。

いかがでしたでしょうか。
響は無事でしたね。不死鳥の名は伊達ではなかったです。
初戦から轟沈かとヒヤヒヤさせて申し訳ないです。

しかし、気づけばもう10話なんですね。
南西諸島防衛線で引っ張りすぎやろ・・・(-_-;)

次はきっと砲雷撃戦にはいります。
・・・・・・・・・たぶん。


では、次回をお楽しみに。
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