艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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無事に任務を達成し、鎮守府へと帰還した艦娘たち。
入渠(おふろ)や夕食を終えた第1、第2艦隊の面々は会議室に集められていた。



※注意
 今回は台詞が多目になるかもしれません。
 あと、長くなるかも?


第13話「真相」

ーーーーー鎮守府・20:00 第1会議室ーーーーー

 

 

 

「諸君、ご苦労だった。安住少佐から報告は聞いているが、初任務は大成功だったようだな。ああ、全員楽にしてくれて構わない。堅苦しい会議というわけじゃあないんでな。」

 

そう言って、比良が満足そうにニカッと笑う。

久々の登場でお忘れの方もいるだろうが、彼こそがこの鎮守府の提督である。

 

「赤城さんと私が出たのだから、当然の結果よ。」

 

「楽勝だったっぽい!」

 

「あたしも頑張りました!」

 

比良の労いの言葉に、艦娘たちに笑顔があふれる。

 

「ところで提督、この机の上にあるものは・・・もしや。」

 

さっきからうずうずしていた赤城が机の上に置かれた物を指差しながら比良に問う。

 

「おお、忘れる所だった。初任務成功のお祝いというわけではないが、スイーツを用意させて貰った。皆、食後のデザートだと思って遠慮せずに食べてくれ。食べきれないお菓子は持ち帰ってもいいからな。」

 

艦娘たちが座る椅子の前には、ケーキやお菓子といったスイーツが、机に所狭しと並べられていたのだ。

比良の言葉を聞いた艦娘たちは各々目を輝かせ、我先にとスイーツに手を伸ばしていった。

 

「はむ。ほのケーキおいひいれふ!ほうほう(上々)ね♪」

 

「さふがにきぶんがほうよう(高揚)します。」

 

「ほら日向、こっちの羊羮も美味しいよ!」

 

「うん、悪くない。」

 

「こっちのも美味しそう♪提督さんも食べてみて?ねっ♪」

 

「提督、ありがとう。とっても美味しいよ。」

 

「おいしいっぽい!夕立もっと食べるっぽいー!」

 

「たまには甘いものも悪くないな。」

 

「美味しい・・・!まあ、あれだけ頑張ったんだから当然ね♪」

 

「この羊羮は姉さんと那珂ちゃんに持ってかえってあげましょう。」

 

「提督、ホントにありがとう!」

 

「・・・・・・Спасибо(スパスィーバ)・・・。」

 

その様子を比良は微笑みながら見つめるのだった。

 

(こうしてスイーツにはしゃぐ姿は年頃の乙女そのものだな。)

 

艦娘たちがスイーツに群がって暫くして、比良が口を開いた。

 

「皆、そのままでいいから聞かせてくれ。」

 

比良の言葉に反応し、なんだろうといった様子の艦娘たち。

自身もあんみつを頬張りつつ、比良が問いかける。

 

「実践での安住の指揮はどうだった?ん、美味いなこれ。」

 

少し考える素振りを見せる艦娘たち。

今日の作戦を思い返しているのだろう。

その中で、一番最初に口を開いたのは叢雲だった。

 

「そうね・・・潜水艦への警戒を怠ったという点を除けば、まあまあといったところね。対空戦闘の指揮も悪くはなかったわ。」

 

「たしかにね~。迎撃の優先順位も的確だったし、次の目標の選定もよかったよ。でもまさかあの状況の中で機銃の時限信管にまで気づいたのには驚いたよ。よく見えてたと思う。」

 

叢雲に続いて伊勢も感想を口にした。

 

「ふぉふへんふぉはんふぇいふぉふふひ・・・。」

 

「赤城、口の中の物を飲み込んでから話してくれ・・・。」

 

比良が苦笑しながら言うと、赤城は口いっぱいに頬張ったスイーツをごくんと飲み込んで話し始める。

 

「直前の戦闘での反省をすぐ次に活かしていたのも、機転がきくという点でよかったですよ。」

 

「あー輪形陣の外にいて、流れ魚雷にあわや撃沈されそうになった時のことね。」

 

「あの時は響が指揮艦を庇ってなければ、今ごろ司令官たちは海の藻屑になってたはずよ。」

 

赤城も加わり、比良を放り出して第1艦隊の面々がわいわいと騒ぎ始める。

そこへ今度は神通が口を開いた。

 

「潜水艦への警戒不足はたしかによくなかったですが、その後の指示には驚きました。」

 

「そうだね。まさか司令官の予想が的中するなんてね。」

 

「ほう、その予想とはあれのことかな?」

 

神通と時雨の言葉で何かを察した比良は先を促す。

 

「はい。敵の伏兵のことですね。まさか、司令官の予想した地点に敵の支援艦隊がいるだなんて・・・。」

 

「半信半疑で水偵を飛ばしてたけど、びっくりしました!まるで千里眼みたい!」

 

「あのまま索敵機を出していなかったら、戦艦ル級を擁する敵艦隊に挟撃されていたでしょうね。赤城さん、頬にクリームが付いているわ。」

 

「ル級と言えば、頭に爆弾喰らっても沈まなかったもんね。しぶとすぎだよ。」

 

「次に見つけたら、夕立が沈めてあげるっぽい!」

 

「瑞雲があれば、仕留めてやったのだがな。提督、瑞雲の開発・・・期待しているぞ?」

 

「第1艦隊への支援攻撃の為に、ル級を取り逃がしたのは残念だけれど・・・全体の指揮としては悪くはなかったし、それなりに期待はしているわ。」

 

「ほほお・・・伏兵の位置をピンポイントでねぇ・・・。まあ、あいつなら別に不思議ではないな。・・・・・・瑞雲はきっとその内にな・・・。」

 

何気なく口にした言葉に反応し、艦娘全員が比良を見る。

 

「不思議じゃない、ってどういうこと?提督さん?」

 

「ん?ああ言ってなかったか。安住はな、艦隊演習でも陸戦演習でもそうなんだが、罠や伏兵といったものをことごとく見破るんだよ。まるで戦場の全てが見えているみたいにな。そんなもんだから、付いたあだ名が『慧眼の軍神』ってな。」

 

軍神と言われても普段のあの頼りなさからは想像できないよな、と笑う比良が顔を上げると、艦娘たちは目をぱちくりさせて驚いていたのだった。

 

 

 

ーーーーー鎮守府・同時刻 工厰ーーーーー

 

 

 

「皆さん、お疲れ様です。差し入れを持ってきましたよ。少し休憩してください。」

 

作業服に身を包んだ安住が、工厰で艤装や指揮艦の修理・整備をしている妖精と整備員に声をかける。

 

「おっ!少佐は人間にしちゃあ気が利くじゃないか!」

 

「丁度腹がへってた所だ。ありがてえ。」

 

「夕飯くってねえしな。少佐、ゴチになりやす。」

 

「沢山ありますから、しっかり食べてくださいね。」

 

妖精と整備員たちは作業の手を止め、安住の持ってきた差し入れに群がり始めた。

 

「いっただきまーす!はむ。もぐもぐ。んまい!!」

 

「このおにぎり旨いなオイ!」

 

「卵焼きもふわふわでめちゃウマやーー!」

 

「唐揚げ!唐揚げはあるか?」

 

遅めの夕食をとりながら、整備員の一人がふと聞く。

 

「少佐、これ手作りみたいだけど、一体誰が?」

 

「ああ、これは鳳翔さんからですよ。」

 

「「「「「ダニィ!?」」」」」

 

安住の言葉に一同は騒然とし、全員の目付きが変わる。

 

「テメーさっきも卵焼き食ってただろ!食い過ぎだぞ!!」

 

「早いもん勝ちだー!食ったもん勝ちだー!!」

 

「この唐揚げは誰にも渡さんぞー!」

 

「ちょ!オイラの分がなくなるって!!まだ食べてないやつもいるってば!!」

 

鳳翔の手料理と聞いた瞬間、壮絶なる争奪戦が始まっていた。

その様は、まさに戦場。

今、工厰は飢えた整備員たちの最前線と化したのであった。

 

(鳳翔さんの手料理は絶品ですからね、皆さんの気持ちもわかります。)

 

その様子を横目に見ながら、安住は整備のために工厰へ移されていた指揮艦へ近づく。

 

「今日はよく頑張ってくれましたね・・・。」

 

船体へ触れて撫でながら、安住は優しい表情で指揮艦へ労いの言葉をかけた。

その表面には、魚雷の破片でついたのだろう細かい傷があちこちについており、あの魚雷の威力を物語っていた。

 

(そうだった、後で第1艦隊の面々を集めてあの時の話を聞かないといけないですね。)

 

うっかり忘れていたことを思いだしつつ、指揮艦のどこから磨いていこうかと上を見た時だった。

 

(ん・・・・・・?あれは・・・。)

 

安住は何かを見つけ、指揮艦の中へ入っていった。

 

 

 

ーーーーー鎮守府・08:00 工厰ーーーーー

 

 

 

翌朝、工厰内にある整備中の指揮艦の前に第1艦隊の面々が集められていた。

安住が指揮艦を背にして「休め」の状態で立ち、その正面に艦娘たちが横一列で整列している。

 

「朝早くからすみません。全員集まっていますね。」

 

「ここに第1艦隊を召集したってことは、やっぱり昨日の件?」

 

伊勢の言葉に安住は頷いて応える。

 

「ええ。響さんが指揮艦を庇った時の話です。」

 

途端に響の表情が曇り目を伏せる。

それに気づいた叢雲が、安住を睨み付ける。

 

「アンタ、どういうつもり?響を責めようっての?」

 

叢雲の、鋭利な槍の切っ先のような視線に鳥肌がたつのを感じた安住だが、なんとか平静を装う。

 

「いえ、責めるつもりはありません。ただ、いくつか不明な点があるのでそれを知りたいんですよ。」

 

変わらず叢雲の視線が突き刺さるが、安住は続ける。

 

「叢雲さんも気づいているでしょう?あの時の状況からすると、響さんが無事だったことは不思議だと。」

 

「・・・・・・。」

 

叢雲は沈黙をもって応えた。

 

「いくつか聞きたいことはありますが、その前に私の話を聞いてください。まずはいくつかの不明点ですが・・・。」

 

そう言うと安住は、艦娘たちの前を往復するように歩き始めた。

 

「なぜ、響さんは無事だったのか。なぜ、指揮艦は左方向に回転したのか。なぜ、あの状況で由良さんたちが、いち早く響さんの捜索に動き出したのか。なぜ、響さんは指揮艦の左舷後方で発見されたのか。」

 

静かに語る安住の言葉に、艦娘たちは黙って耳を傾けている。

 

「これらの疑問と指揮艦の損傷具合から、私は1つの推測に辿りつきました。それはーーー。」

 

 

 

「魚雷は命中していなかった。」

 

 

 

「なぜそう思ったか。それは、指揮艦と響さんの艤装の損傷具合が、魚雷の威力と釣り合わないからです。」

 

「立ち上った水柱の規模からして、魚雷の炸薬量はかなりのものでした。あれが命中していたら、いくら防御姿勢を取っていたとしても駆逐艦娘や指揮艦程度なら確実に轟沈していたでしょう。」

 

「しかし、指揮艦の損傷は破片によるものと、吹き飛ばされた響さんが衝突したと思われる箇所の凹みだけ。響さんの艤装も魚雷が命中したにしては、盾が大きく損傷した程度で、身体の怪我も軽傷だった。」

 

「魚雷は確かに爆発した。でも命中はしていない。なら魚雷はどうなったのか。」

 

そこで安住は一旦言葉を切り、立ち止まって指揮艦の方を向いて言った。

 

「魚雷は命中する前に狙撃され爆発した。その時、衝撃で響さんは爆風と破片を浴びながら吹き飛ばされた。そしてそれを目撃していたからこそ、響さんの捜索に動き出すことができた。」

 

「だから、響さんは指揮艦の後方で気を失った状態で発見された。指揮艦の凹みは、響さんが衝突したときにできたものでしょうね。指揮艦が左へ回転したのもそのためでしょう。」

 

「あの時、魚雷を狙撃できたのは3人。しかし木曾さんは位置からして不可能なので除外。残りは2人ですが、小口径の主砲弾では直撃させなければ魚雷を迎撃できないため、叢雲さんも除外。となると、残るは1人。中口径主砲を装備し、一番狙撃しやすい位置にいた者・・・。」

 

そこまで言ってから安住は1つ深呼吸して振り向き、続けた。

 

「魚雷を狙撃したのは、由良さんですね。そして、赤城さんと木曾さんがそれを目撃していた。・・・・・・違いますか?」

 

由良は俯いており、返事はない。

当然だろう。認めれば、味方に向けて発砲した、ということになる。これは普通であれば銃殺刑もあり得る話だ。

しかし否定しようにも、安住は全て分かっていて話しているのだろう。

 

「・・・・・・沈黙は肯定と受け取られますよ。」

 

「っ!!アンタねえ!!」

 

叢雲が声を荒げる。今にも掴みかかりそうな剣幕だ。

だが安住は目を閉じ、静かにこう続けた。

 

「まあ、だからと言って誰も、責めるつもりも罰するつもりもないんですけどね。」

 

「「「「「・・・・・・は?」」」」」

 

艦娘たちはその言葉に思わず間抜けな声を出していた。

 

「魚雷の狙撃は響さんを助けるため。そしてそれを黙っていたのは由良さんを守るため。そうでしょう?なら何も問題ないじゃないですか。むしろ、責任があるとしたら私ですよ。最初から輪形陣の中に入っていれば防げた事なんですからね。・・・後で提督に何言われるか・・・・・・はぁ。」

 

後半は片手で頭を抱えつつそう言う安住。

目を丸くして言葉もでない様子の艦娘たち。

 

「責任の在処はともかく、司令官の推測通りだよ。」

 

口を開いたのは由良でも木曾でも赤城でもなく、響だった。

 

「響ちゃん・・・気づいてたの・・・。」

 

「当たり前さ。あれが命中すれば無事で済まないのはわかってた。それに、由良さんが言ったんじゃないか。『ごめんね』って。」

 

「あっ・・・。」

 

響の言葉に、両手で口を押さえる由良。

由良を見つめて、響は微笑んで言った。

 

「私にはあれで全部わかったよ。由良さん、すぱ・・・ありがとう。」

 

「響ちゃん・・・痛い思いさせちゃってごめんね・・・。」

 

響に抱きついて由良は泣き出した。

両手をその背中に回し、響はぎゅっと由良を抱き締め返すのだった。

その様子をじっと見つめていた安住に、声がかけられる。

 

「少佐よ。誰も罰するつもりがないのは分かったが、なんの為にこんな推理ショー紛いのことをしたんだ?」

 

「そうだよ。それなら黙ってても問題なかったんじゃないの?」

 

声の主は、木曾と伊勢だった。

その問いに、安住は気まずそうに頭をかく。

 

「ただ、確認したかっただけです。損傷箇所の報告書も書かないといけませんから。」

 

(というのは建前で、この目で確認したかったんですよ。あなたたち艦娘の、仲間を想う心。仲間を支え助け合う絆を・・・なんてね。・・・・・・我ながら、悪趣味ですね・・・これっきりにしよう・・・。)

 

「・・・・・・ふーん。じゃあ、そういうことにしといてあげるかな。」

 

伊勢の反応に、また心の声が漏れていやしないかと不安になる安住だった。

 

「さあ、この話はこれでお仕舞いです。皆さん、朝食はまだですよね。一緒に食堂にいきましょう。」

 

「いいわね、それ。もちろん、司令官の奢りなのよね?」

 

「えっ?」

 

食堂へ行こうと言う安住に、叢雲がいたずらっぽい笑みを浮かべて言う。

 

「今回のことはそもそも、指揮艦が輪形陣内にいれば起きなかったのよね?それに責任があるとしたら、アンタなんでしょう?なら、お詫びってことで奢ってくれるわよね?」

 

叢雲のわざとらしい声量の提案に、艦娘たちがここぞとばかりにのっかる。

 

「少佐の奢りか。悪くないな。」

 

「由良、デザートには間宮アイスがいいな~♪」

 

「やったね!ついでに日向も呼ぶから奢ってね、少佐♪」

 

хорошо(ハラショー)。」

 

「えっ?ちょっ?」

 

盛り上がる艦娘たちにたじろぐ安住。

背後に凄まじい気配を感じて振り返るとそこには・・・。

 

「一航戦、赤城!食べます!!」

 

鎮守府きっての大食らい、喰う母空母 赤城の姿があった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

朝食を終えた響は、部屋へ戻ろうと廊下を歩いていた。

 

「響さーーーん!」

 

すると背後から誰かに呼ばれる。

 

「?」

 

振り返るとそこには息をきらして走ってくる安住がいた。

 

「司令官、どうしたんだい。そんなに慌てて。」

 

「ぜぇ、ぜぇ・・・これを渡すのを、忘れていました・・・。」

 

そう言って安住が差し出したそれは・・・。

 

「・・・!!これ!一体どこで!?」

 

響が南西諸島沖で無くした帽子だった。

 

「昨夜、指揮艦のマストに引っ掛かってるのを見つけたんですよ。大事な物でしょう?さすがにちょっと破れたり汚れたりしてましたけど、手伝って貰ってなんとか直してみました。」

 

安住から帽子を受けとり、帽子に付いているバッジを愛おしそうに撫でる響。

 

「ああ・・・大切なのは帽子と言うより、この暁型駆逐艦お揃いのバッジだけれどね。これは私と姉妹とを繋ぐ絆・・・・・・宝物なんだ。」

 

帽子をかぶると、響は満面の笑みでこう言った。

 

 

 

Спасибо(スパスィーバ)、司令官。」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第13話です。

いかがでしたでしょうか。

長い。長くなった。
普段の長さからいくと、2話分のボリュームありますよ・・・。
実際、どのくらいのボリュームがいいんでしょうね?

今回のタイトル「真相」ですが、2つの意味にかけたつもりです。
そのあたりがうまく伝えられているか心配です(-_-;)

では、また次回をお楽しみに。
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