それを運用する艦娘と妖精たちとの小さなお話。
ーーーーー鎮守府・
カーン、カーン、カーン。
バチバチッ、ジジジジーーー。
工厰では、日夜開発や整備が行われている。
今日も艦娘の艤装の整備や新兵装の開発がされており、各所から響く音でかなりうるさい。
その工厰の入り口に、二人の艦娘の姿があった。
「ここはいつ来てもスゴい音だねー。」
工厰の中を見渡しながら、髪を短めのポニーテールにした女性が感嘆の声をあげる。
明るい声が活発な印象をあたえる彼女の名は、伊勢。
「工厰から灯りが消えたことがないと噂があるくらいだし、まさに不夜城だな。」
伊勢の隣に立つ、落ち着いた声のショートヘアの女性が頷きながら同じように工厰を眺めている。
ポニーテールを取った伊勢といった容姿の彼女の名は、日向。
この二人が鎮守府の主力艦隊、その中核を担う戦艦娘だ。
「さて、夕張たちはどこにいるのだろうね。」
「うーん・・・これだけごちゃごちゃしてると、どこにいるか分かんないね。」
二人は今日、明石と夕張に呼ばれて演習後そのまま工厰へと来ていたのだ。
その証拠に彼女らの身体の至るところに艤装が取り付けられている。
自分たちを呼び出した人物を探していると、「おーい。」という声が聞こえてきた。
「伊勢さーん、日向さーん、こっちこっちー!」
声のした方を見ると、ツナギの作業服の上半身を脱いでタンクトップ姿となっている夕張が手招きしていた。
夕張と合流した二人は明石のもとへ向かうべく工厰の奥へと進んでいった。
ーーーーーーーーーー
「演習お疲れさまです。どうでしたか、瑞雲は?」
妖精と一緒に瑞雲の整備を始めながら、明石が問いかける。
「悪くないね~。発艦にはまだ慣れが必要だけど。」
「先制爆撃も中々だった。さすが瑞雲だな。」
伊勢と日向がそれぞれの感想を述べる。
念願の瑞雲に満足感を得られているようだ。
「ご満足頂けたようでなにより。提督から瑞雲の開発と整備を、随分と
「あ、あはは・・・ごめんね明石さん。」
「は~い、じゃあ飛行甲板を預かりますね~。」
げんなりした表情をする明石をよそに、夕張が二人から飛行甲板を受け取って整備台へと持っていく。
「あ、他の艤装も下ろしてもらって大丈夫ですよ。整備し終えたら出撃ドックに運んでおくので。」
「いいの?・・・ならご厚意に甘えて、お願いしようかな。よいしょっと。・・・・・・ん?」
夕張の厚意に甘え、艤装を外していく伊勢。
隣にいる日向が艤装を外さないのを見て、声をかける。
「日向?どーしたのよ。艤装外さないの?」
「ん?ああ、今外すよ。」
何やら考え事をしていた様子の日向も艤装を外していく。
そして全てを外し終えたところで、疑問を口にした。
「今日の演習で思ったのだが。瑞雲の妖精たち、今日が初の空戦だったはず。それなのに中々いい戦いをしていたのは、なぜだろうね?」
「え?あー・・・言われてみれば、そうかも。二航戦が相手だったとはいえ、かなり食い下がってたね。おかげで制空権喪失はしなかったから助かったよ~。・・・でもなんでだろ?」
伊勢も日向の感じた疑問には同感らしく、首を傾げている。
「あれ?聞いてないんですか?」
意外そうな夕張の声に二人揃って首を傾げる。
聞いていない?何を?
「この子たち、完熟訓練の間に鳳翔さんの航空隊にしごかれまくりだったんですよ。」
「「はあああ!?」」
衝撃の事実に、伊勢だけでなく日向までもが声をあげて驚いた。
鳳翔の航空隊といえば、一航戦の航空隊をも凌ぐ程と噂される練度と実力を誇る、鎮守府の最高戦力の一翼だ。
そんな存在に空戦の師事をしていたことに、驚きを隠せる者はいない。
「君たち、なぜそれを私たちに言ってくれなかったのかな?」
「そうだよー。水くさいじゃないのさ~。」
瑞雲の整備を手伝っていた搭乗員妖精たちに二人が詰め寄る。
自分たちの主人に詰め寄られ、瑞雲妖精たちは怒られるのかと震え上がっている。
「皆なんでそんなに震えてんの?」
図らずも瑞雲妖精たちを問い詰める形になっていることに、二人は気づいていない。
実際には、鳳翔航空隊にしごかれたと聞いて、心配と興奮で詰め寄ってしまっているだけなのだが。
「ちょちょちょ!この子たちを責めないでください!!」
慌てて明石が二人と瑞雲妖精たちの間に割って入る。
「この子たちがそんな無茶したのは、日向さんのためなんですから!」
「私のため?それはどういう・・・?」
心当たりが無いと、日向が首を傾げる。
「ほら、日向さんが完成間近の瑞雲を見に来たとき。言ってたじゃないですか!」
「あっ!日向、もしかしてあれじゃない?」
ーーーーー数日前 工厰ーーーーー
「ほう。瑞雲もようやく完成か。」
「待ちに待った瑞雲だね~。」
ズラリと並んだ瑞雲を見て、日向と伊勢が嬉しそうに話している。
「急造だったんで、予備機があまり用意できてなくて・・・すみません。」
「明石さん!そんな、これだけの機数を用意してもらっただけでも十分ですよ!」
申し訳なさそうに頭を下げる明石を伊勢が宥める。
「この瑞雲があれば・・・。」
「日向?」
明石と伊勢のやり取りに気づいていないのか、日向が興奮した様子で拳を握る。
「そうだ。艦載機を放って突撃。これだ!!」
日向はその拳をあげて震わせながら、工厰に響き渡る程の声量で力強く叫んだのだった。
ーーーーーーーーーー
「ああ・・・そんな事を言ったような・・・。」
ようやく思い出したようで、日向が頷いている。
「それで、日向さんの期待に応えようとして、この子たちが安住少佐に泣きついたんですよ。」
「ふぇ?なんで少佐に?」
伊勢が分からないといった風に首を傾げる。
「訓練メニューとか決めてるのって安住少佐じゃないですか。それでですよ。」
「ああ~そういうことね。」
明石の一言で伊勢は納得したようだ。
笑顔で瑞雲妖精たちの頭を優しく撫でている。
「空戦や爆撃は鳳翔さんの航空隊に。索敵と弾着観測は由良さんの水偵妖精に。それぞれ指導して貰ったんです。」
「そうだったのだね・・・。私たちが艤装との同調率を調整している間に、そんなにも頑張ってくれて、ありがとう。」
感謝の気持ちを伝えて日向が優しく微笑み、伊勢と同じように瑞雲妖精たちの頭を撫でる。
自分達の努力が報われたと知って、瑞雲妖精たちは嬉し泣きする者や飛び上がって喜ぶ者など、様々な反応を見せた。
「よし!共に航空戦艦の時代を切り開こう!!」
「「「「オー!!」」」」
「うぇ!ちょっと!ひゃああああ!?」
日向の叫びに、瑞雲妖精たちが日向に駆け寄って雄叫びをあげる。
瑞雲妖精の波に飲まれる明石。
それを見ていた夕張が興奮した様子で日向に駆け寄る。
「次の演習、私も一緒に出てデータを集めていいかしら!」
「いいとも!瑞雲の素晴らしさをしっかり記録するといい!」
瑞雲妖精たちに混ざって騒ぎだした夕張に日向。
その様子を伊勢は微笑ましく眺めていた。
「日向ったら、あんなにはしゃいじゃって・・・。ふふ、私も嬉しいや!」
そして伊勢も日向たちの輪の中へ飛び込んで行ったのだった。
ーーーーーーーーーーつづく
第22話です。
いかがでしたでしょうか。
土曜日あたりから熱を出していました・・・。
40℃ってきついですね・・・・・・。
熱が下がって病院いったら、手足口病だそうで・・・。
最近、大人でかかる人が多いらしいので、皆さんお気をつけください。
そんなわけで今回は短めでしたが、伊勢姉妹のお話でした。
師匠の期待に応えようと、妖精たちが影で頑張る。
微笑ましいとおもいます。
では、また次回をお楽しみに。