艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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対策会議のため大本営に赴いた比良。
連日続けられる会議、その休憩時間の1コマである。


第23話「愛は惜しみなく奪うもの」

ーーーーー大本営・15:00(ヒトゴーマルマル) 会議室ーーーーー

 

 

 

「では、ここで一時休憩とし、続きは16:00(ヒトロクマルマル)より開始とします。」

 

はりつめた空気が解かれ、会議室から士官たちがぞろぞろと出ていく。

それを横目に見ながら広げていた資料を手元に集めて整える。

 

「ふぅーーー・・・。」

 

連日に渡る長時間の会議で凝り固まってしまった肩や首をコキコキと鳴らし、ため息をつく。

ぽん。とその肩に手が置かれる。

 

「お疲れのようだね、比良君。」

 

秋山(あきやま)中将・・・。いえ、私は大丈夫です。」

 

比良に声をかけたのは、海自時代からの恩師である、海軍中将の秋山だった。

姿勢を正して敬礼をする。

 

「楽にしてくれたまえ。そちらの艦娘は君の所の?」

 

秋山が比良の後ろに立っている艦娘について問う。

 

「はい。私の秘書官をして貰っています、霧島です。霧島、こちら恩師の秋山中将だ。」

 

「はじめまして。金剛型戦艦4番艦、霧島です。秋山中将、お噂はかねがね。」

 

霧島が姿勢を正し、秋山に敬礼する。

秋山も敬礼を返してそれを解くと、ふっと微笑んだ。

 

「中々の美人さんじゃないか。比良君もすみにおけないな。ええ?」

 

「よ、よしてください。そんなつもりは微塵も・・・。」

 

微笑みをイタズラっぽい笑みに変え、秋山が肘で比良の横腹をつついている。

そのやり取りそのやり取りを見ていた霧島はどこか既視感を覚えていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

秋山と別れて会議室を出た後、比良と霧島は休憩にお茶でもしようと喫茶店が併設されているテラスへ向かっていた。

 

(あのやり取りどこかで・・・・・・ああ、そういうこと。)

 

既視感の正体に思い至った霧島がくすくすと笑う。

それに気づいた比良が不思議そうに問いかける。

 

「霧島・・・?どうした・・・何か可笑しかったか?」

 

「いえ、お二人がとても仲良さそうにしてみえて・・・ふふっ。まるで提督と少佐を見ているようで。」

 

「そうか?・・・霧島が言うならそうなのかもしれんな。」

 

照れ臭かったのか、軍帽の上からボリボリと頭をかく。

 

・・・・・・・・・ゥゥゥゥ・・・。

 

「ん?」

 

前を歩いていた比良が突然立ち止まる。

比良の3歩後ろを歩いていた霧島も立ち止まった。

 

「どうかされましたか。提督?」

 

「なんか聞こえなかったか?」

 

「いいえ?」

 

・・・・・・ォォォォォォォ・・・クゥゥゥゥゥゥゥ・・・。

 

「ほらまた。声みたいな。」

 

・・・・・・ィィィィィトォォォォォォォォォクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・。

 

「どんどん大きくなって・・・・・・ってまさか・・・!」

 

「ああ・・・なるほど。」

 

徐々に大きくなる声の正体に気づいた比良が身構える。

霧島も気づいたようで、壁際にそっと寄った。

 

「テェェェェェェェイィィィィィィィトォォォォォォクゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

「来たか!!」

 

声が背後から聞こえてくることに気づいた比良が身体ごと振り向き、構える。

その時には声の主は比良の目前に迫っていた。

 

「バァァァァァァァァァニングゥゥゥゥゥ!!ラァァァァァァァァァァァァヴ!!!」

 

「ごっっっっっっふぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

猛スピードで飛び込んできたそれを、比良は身体をくの字に曲げながらも受け止める。

そしてそのまま15メートル程押されていき、廊下の突き当たりの壁にぶつかる寸前で止まった。

 

「テートクゥーーー!逢いたかったデース!チュッチュッ♪」

 

「ひ、久しぶりだな金剛・・・。ちょ、待っ、んむっ、やめ、たすけ、霧島ぁ!」

 

比良にダイビングハグしたのは、金剛型戦艦の1番艦であり霧島の姉の金剛だった。

金剛は比良に好意を寄せているらしく、会うたびに抱きついてはキスの嵐を浴びせている。

襲いくる唇をかわし、時には直撃しながらも霧島に助けを求めるが・・・。

 

「無理です。」

 

にっこりと笑った霧島から、無情にも救助を拒否された。

 

「チュチュチュ~♪テートクゥ~♪」

 

「ぬわあああ・・・。」

 

それから数分、比良は金剛からのキスに蹂躙されるのだった。

 

 

 

ーーーーー大本営・15:20(ヒトゴーフタマル) カフェテラスーーーーー

 

 

 

大本営の本館、その中庭にあたる箇所の2階にそれはある。

広い中庭を一望できるテラスに円卓と椅子がいくつも設置されており、休憩時間やお昼時には士官や艦娘の姿がよく見られる。

その円卓の内の1つを囲んで座る、5人の姿があった。

 

「テートク、紅茶が入ったネー♪」

 

「おお、ありがとう。」

 

比良の前に金剛が入れた紅茶が差し出される。

ティーカップから立ち上る湯気に乗って、紅茶のいい香りが鼻腔をくすぐる。

 

「いい香りだ・・・これは、ダージリンだな。」

 

「イエース!さっすがテートク、もう紅茶の銘を当てられるようになったデスね♪」

 

「いやぁ偶々だ。分からんなりにあてずっぽうで言ってみるもんだな!がっはっは!」

 

「ぶー・・・まぐれだったデスカー・・・。」

 

紅茶の銘柄を言い当てたことに喜んだ金剛だったが、すぐに頬を膨らませてしまった。

その様子を見ていた比叡が比良に詰め寄る。

 

「提督!お姉さまの入れた紅茶の銘柄くらい、まぐれじゃなく当てられないとダメじゃないですか!」

 

「お、おう。・・・・・・そういう比叡はわかるのか?」

 

比叡の前に置かれたティーカップを指差しながら問う比良。

それに視線を移した比叡は、ふふんと鼻を鳴らして答えた。

 

「当然です!気合い!入れて!当てます!!・・・・・・これは・・・アッサムですね!!」

 

自信満々に言い切った比叡。

果たして合っているのか・・・榛名が判定を下す。

 

「比叡お姉さま・・・・・・・・・正解です!」

 

「さっすが比叡ネ!ご褒美にスコーン多目にしてあげるデース!」

 

「やったーー!!」

 

思わぬご褒美に比叡は小躍りしそうな程喜んだ。

差し出されたスコーンを美味しそうに頬張っている。

 

「マジか・・・。香りと色で分かるもんなのか・・・。」

 

「比叡お姉さまくらいになろうと思ったら、かなりの慣れが必要ですね。」

 

ダージリンを飲みながら金剛たちのやり取りを見ていた比良の隣に、いつの間にか榛名が来ていた。

その手には小さな包みが握られている。

 

「うぅむ・・・難しそうだ。」

 

「大丈夫です。榛名が手取り足取り、お手伝いします。」

 

にっこりと笑って比良との距離を詰める榛名。

身体というより、顔同士を近づけようとしているようだ。

 

「い、いやしかし、榛名の手を煩わせてしまうのもな・・・。」

 

「榛名は大丈夫です!」

 

身の危険を感じ始めた比良はなんとか話題を逸らそうと目線を泳がせる。

その目にある物が留まった。

 

「は、榛名!その手に持っているものはなんだ?」

 

「ふぇ?・・・あ。」

 

言われて思い出したのか、榛名が手に持っていた包みを差し出す。

 

「あの、榛名、クッキーを焼いてみたので・・・宜しければ召し上がってください。」

 

「榛名の手作りか!ほお・・・これは美味そうだ。」

 

受け取った包みからクッキーを1つ取りだして眺める。

そして一口かじった。

サクッ。という音を出してクッキーが割れ、口の中に香ばしい香りが広がる。

 

「うん・・・美味い。榛名はお菓子作りが上手なんだな。」

 

「いえ、榛名は金剛お姉さまに教わって作っただけですから。」

 

比良が素直に感想を述べると、手をもじもじさせながら榛名が目を剃らす。

 

「それでも、上手なのにはかわりないさ。んー美味い!小さい頃から好きだったんだよ、ジンジャークッキー。」

 

上機嫌で比良はクッキーを次々と食べていく。

まるでお菓子にはしゃぐ子どものようだと、榛名は思った。

 

「榛名はいいお嫁さんになるだろうなぁ。」

 

「ふぇっ///そそそそれはつまり///」

 

比良は無意識で言ったのだが、それに気づくよしもない榛名は顔を真っ赤にしてしまった。

それに気づいた金剛が比良にダイブしてくる。

 

「テェーートクゥーー!!榛名に何してるデース!!」

 

「ぐえっ!」

 

横腹に思いきり体当たりハグされて、倒れはしなかったものの比良はお腹を抱えて踞る。

身体が小刻みに震えていることから、相当の衝撃だったのだろう。

 

「ワタシから目を離しちゃ、ノーなんだからね!!」

 

「ゴホッゴホッ・・・わかったから・・・ちょっと離れて・・・・・・苦しい。」

 

抱きついて頬擦りする金剛をなんとか引き剥がす。

決して金剛を嫌っているわけではない。

むしろ好意を寄せて貰えるのは素直に嬉しい。

ただ所構わず抱きついてくるのと、色々と当たっているのと、周囲の目もある。

ましてここは大本営だ。

あまり目立たないでおきたいというのが比良の本心である。

 

「金剛お姉さま、提督が困っています。それに、そろそろ会議室に戻らないといけない時間です。」

 

「お?もうこんな時間か。」

 

これまで黙って姉妹と比良のやり取りを見守ってきた霧島が助け船をだした。

開始5分前には会議室に戻っておかなければならない。

 

「時間が経つの早すぎデース・・・。」

 

「仕方ないですよ、お姉さま。」

 

「榛名、大丈夫じゃないです・・・。」

 

分かりやすくがっかりする金剛たち。

それを見ると、なぜか悪いことをした気分にさせられる。

 

「あー・・・なんだ、その。」

 

「テートク・・・?」

 

軍帽の上からボリボリと頭をかいて、比良が口を開いた。

 

「秋山中将には話は通しておくから、明日は皆で昼飯でも食べに行くか・・・?」

 

願ってもない提案に、金剛たちの表情が花が咲いたように明るくなる。

 

「テェートクゥゥーー!大好きデース!!」

 

「こら、すぐ抱きつこうとするな。」

 

また抱きつこうとする金剛の頭を掴んで阻止する。

そのまま格闘を続けていると、榛名と比叡が真剣な表情で見つめているのに気づく。

 

「提督、榛名たちは明日は元々休暇ですから、私たちが手料理をご馳走します!」

 

「気合い!入れて!作ります!!」

 

「おお!それはいいな!楽しみにしてるぞ!」

 

料理上手の榛名の手料理を食べられるとあって、比良は二つ返事で提案を受け入れた。

自信ありげな比叡もきっと料理上手なのだろうと思うと、期待が膨らむというものだ。

 

「それじゃあ、また後で連絡を入れるからな。紅茶、美味しかったぞ。またご馳走してくれると嬉しい。」

 

残っていたダージリンを飲み干し、席を立つ。

 

「ハイ!会議頑張ってくださいネー!」

 

手を振る金剛たちと別れ、比良と霧島は再び会議室へと向かっていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

コツコツと廊下に靴音が響く。

休憩で会議室から出た後と同じように、比良の3歩後ろを霧島がついていく。

 

「いやぁ助かった。ありがとな、霧島。」

 

「提督は甘やかしすぎです。お姉さまたちも、鎮守府の皆も。」

 

戻る時間を教えてくれた霧島にお礼を言った筈が、返ってきたのは予想外の言葉だった。

少し気まずい空気になる。

 

「甘やかしてる・・・かねぇ?」

 

霧島に言われたことを反芻してみるが、いまいちぴんとこない。

 

「提督・・・私たちは、艦娘です。」

 

「おう、知ってるが?といっても、俺たち人間が勝手に付けた総称だけどな。」

 

「・・・・・・。」

 

「霧島?」

 

後ろをついてきていた足音が止まったのに気づいて振り返る。

そこには霧島が俯いて立ち止まっていた。

 

「私は・・・私たちは。・・・兵器、なんですよ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

霧島は圧し殺した声を絞り出すように言う。

 

「なんで・・・あなた方にとって兵器でしかない私たちに、優しくしてくれるのですか。」

 

「私たちは、深海棲艦と戦うために存在しているんです。」

 

「いつ、どこで、どうやって生まれたのかもわからない。」

 

「そんな私たちに、私に・・・どうして・・・提督は、少佐は・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

俯いたまま、震える声で霧島は自分の気持ちを語った。

出会って共に戦うようになってから、初めてのことかもしれない。

霧島のこれほど不安そうな声を聞くのは。

 

(金剛たちとのティータイムでずっと黙ってた原因は、それか・・・。ま、あんな艦娘を人と思わない連中がいる会議に参加していれば、そうなるか。)

 

海軍の中には、艦娘をただの兵器としてしか考えていない連中もいる。

彼らは無思慮にも、会議中にその考えを隠そうともしていなかった。

そんな艦娘からしたら悪意の塊とも思えるものに間近で晒されていれば、不安になっても不思議ではなかった。

他の泊地の提督に付き添っていた艦娘たちの顔色も、いいものではなかったなと今さら気づく。

こんな時、安住ならすぐに何か手を打っていただろうかと思うと、比良は自分が情けなく思えた。

 

「どうして・・・ですか・・・。」

 

だが今は、そんなことを考えている場合ではない。

目の前にいる艦娘の、普段から秘書官として自分を支えてくれている娘の不安を少しでも拭ってやらねばならない。

それが鎮守府の提督たる自分の役割でもあるだろう。

 

「どうして、ねぇ・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

深呼吸をひとつ。

なぜか緊張しているのが自分でわかる。

 

「んなもん、お前らが可愛いからだろうが。」

 

「・・・はい?」

 

霧島が顔をあげて間の抜けた声をあげる。

よく頭の回る霧島のことだ、色々と返ってくる言葉を予想していたのだろう。

目を丸くしている表情で、予想していた言葉にかすりもしなかったことが分かった。

 

「可愛いやつに優しくするのは当然だろ。まして、それが女の子なら尚更な。」

 

比良が霧島に1歩近づく。

 

「いつ、どこで、どうやって生まれたのかもわからん。それでもな、そんな可愛い姿で生まれてきたんだ。」

 

さらに1歩近づく。

 

「それは、お前らの『愛されたい』、『優しくされたい』っていう根底の本能ってやつの表れだろうよ。」

 

もう1歩近づく。

 

「そんな甘えん坊たちに優しくしたい、愛したい。人の姿で生まれ変わったお前らの人生を、笑顔で一杯にしたい。」

 

比良と霧島の距離は目の前になっていた。

 

「そう、俺たちが思ってしまうのは、当たり前のことだろうよ。」

 

霧島の頭に手を置き、その綺麗な髪を乱してしまわないように撫でる。

 

「人間全員を信用しろなんて言わない。けどな、鎮守府の皆や俺たちだけでもいい。」

 

泣きじゃくる子どもをあやすように、ゆっくりと何度も撫でる。

 

「お前らを大切に思う人たちの事、俺だけでもいいから、信じてやってはくれないか。」

 

「てい、とく・・・。」

 

いつの間にか、霧島は比良の胸に顔を埋めて静かに泣いていた。

 

「すまんな・・・霧島の不安に気づけなくて・・・。」

 

「もっと・・・。」

 

ぽつりと言って霧島が比良の背中に腕をまわす。

 

「ん?」

 

「もっと、撫でてください。」

 

「・・・・・・はいよ。」

 

やっぱりクサい台詞は似合わないなと思いつつ、そのまましばらくの間、比良は霧島の頭を撫で続けていた。

 

 

 

ーーーーー大本営・20:10(フタマルヒトマル) 会議室ーーーーー

 

 

 

「ふぃー・・・やっと終わったな・・・。」

 

ため息をついた比良が伸びをすると、背骨がボキボキを音を立てる。

人の殆ど残っていない会議室にその音はよく響いた。

 

「お疲れさまです、提督。」

 

資料を纏めながら霧島が労いの言葉をかけた。

その表情には数時間前の不安そうな気配は微塵も見られない。

 

「おう、お疲れさん。霧島もありがとうな、色々手伝ってもらって。」

 

「いえ、私を大切に思ってくれる提督を支えたいだけですから。何も問題ありません。」

 

にっこりと笑う霧島。

 

「・・・・・・ん?今の何かおかしくなかったか?」

 

「いいえ。どこもおかしい所はありませんよ。」

 

変わらず、にっこりと笑う霧島。

 

「いや、でm「何もおかしくないですよ?」アッハイ。」

 

霧島の笑顔の圧力に屈し、比良がそれ以上追求することはできなかった。

するとそこへ誰かが近づいてきた。

 

「いや~お熱いねぇ~、比良君?」

 

「あ、秋山中将・・・。」

 

ニヤニヤしながらからかうのは、秋山だった。

ずっと見ていたのだろう、面白いからかいネタを見つけた時の比良と同じような顔をしている。

 

「よせやい、今日の業務は終了してるんだ。堅苦しいのはなしにしようや。」

 

「・・・・・・了解です、秋山さん。ずっと見てたんですかい・・・。」

 

「おう、いいもん見させてもらったわ。ははは!」

 

げんなりした様子の比良と、昼に会話したときとは別人のように気さくな秋山。

その様子をみて、またしても霧島は安住と比良の姿を重ねて、くすくすと笑っていた。

 

「で、会議もようやっと終わったことだし・・・どうだ今夜。」

 

そう言って秋山が、手でくいっと合図をする。

久しぶりに一杯やろうと言いたいのだろう。

 

「お付き合いしましょう。去年作った、いい梅酒も持ってきてますから、期待しといてくださいな!」

 

「流石、比良君はわかってるねぇ!いや~楽しみだ!」

 

サムズアップしてニヤリと笑う比良と心底嬉しそうに笑う秋山。

秋山は中々の酒豪で、比良の梅酒のファンでもある。

そのため、比良と秋山が会う時には秘蔵の梅酒を持ってきて飲み明かすのが恒例なのだ。

 

「ま、飲みながら明日からの休暇の予定でも組んでやろうや。なあ?」

 

「・・・お耳の早いことで。」

 

秋山が言っているのは、カフェテラスで約束した金剛たちとのことだろう。

金剛、比叡、榛名は現在、秋山の下で秘書艦の練習をしている。

比良たちと別れたあと、金剛がさっそく連絡したのだろう。

こういう融通を聞かせてくれるところは、秋山のいいところだ。

 

「ほれ、霧島君。迎えがきているぞ。」

 

「え?・・・あっ。」

 

秋山が指差す先、会議室の入り口には金剛たちの姿があった。

 

「霧島~!早くディナーにいくデスよー!」

 

金剛が元気よく霧島を呼んでいる。

霧島は一瞬、行っていいものかと比良の顔をみた。

 

「こんな早い時間に会議が終わったんだ、姉妹と一緒に夕食でもいってきな。」

 

「・・・はい!では、行って参りますね!」

 

比良の許可も降りたところで、霧島は金剛たちの所へ小走りで向かっていった。

その姿を見届けて、比良たちも飲みに向かうことにした。

 

「さて、つもる話もあるし、行くか。」

 

「お手柔らかに頼みます・・・。」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

金剛たちと一緒に会議室を後にする際、霧島は振り返って比良を見た。

 

(私は知ってますよ。金剛お姉さまが入れた紅茶の銘柄を当てたのが、まぐれじゃないということ。)

 

霧島は知っていた。

金剛のために隠れて紅茶についての勉強をしていたことを。

 

(比叡お姉さまの精一杯のじゃれ合いに付き合ってくれていること。)

 

比叡が甘え下手でつい突っかかってしまうのに気づいていることを。

 

(榛名に以前好物を聞かれたのを忘れたフリをしていること。)

 

榛名にジンジャークッキーが好きだと話していたことを。

 

(本当に、見ていないようで見てくれているんですよね。提督は。)

 

自分が久しぶりに姉妹と会えるからそのための時間を作ろうとしてくれていたことを。

 

(そんな貴方なら、私は信じられます。)

 

「霧島?置いていかれちゃうよ?」

 

「今行くわ。榛名。」

 

榛名に呼ばれて小走りで金剛たちを追いかける。

 

(私『たち』からの好意に気づいていることも、ね。)

 

「霧島~、何かイイコトでもあったデスか~?」

 

「ふふ・・・そうかも知れませんね。」

 

「もぉ~!霧島が可愛いネー!!」

 

金剛に思いきり抱きつかれる。

 

「霧島ずるい!金剛お姉さま!比叡は羨ましいです!」

 

比叡が羨ましがって金剛に抱きつく。

 

「榛名も羨ましいです!」

 

榛名が反対方向から霧島に抱きつく。

そうやって姉妹ではしゃいでいると、不意に金剛から耳打ちされ、霧島は目を見開いた。

金剛を見ると、不敵な笑顔をしていた。

 

(やっぱり、金剛お姉さまにはお見通しってわけね。)

 

一番の強敵はやはり金剛なのだと、霧島は改めて思った。

なぜならーーー。

 

 

 

 

 

『テートクのハートをつかむのは、ワタシデース!比叡にも榛名にも霧島にも、負けないからネ!』

 

 

 

 

 

長女たる金剛には、全てお見通しなのだから。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第23話です。

いかがでしたでしょうか。

体調崩してたのと、艦これ夏イベもあって、かなり更新遅れましたm(__)m

今回は比良と、金剛姉妹のお話です。
一瞬だけ出てきて以降、出番がなくてごめんよ霧島さん・・・。
霧島さんは不在がちな安住の代わりに、比良の事務仕事をサポートしてます。
作戦立案にも参加してますので、今後の活躍にご期待ください。

それはそうと、皆様、夏イベの調子はいかがでしょうか。
自分はまだ始めて9ヶ月弱なので、E3からは丙でやっております(-_-;)
それでもE4のラスダンが突破できないです・・・。
妖怪「2足りない」とか「13足りない」に悩まされています。
いい編成はないものでしょうか・・・。
皆さんの夏イベ突破をお祈りしています。
終了日まで諦めずにがんばりましょー!

それでは、次回をお楽しみに。
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