艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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合流の道中にある足柄たち。
動き出した同盟国船団。
敵機迎撃のため先行した飛龍制空隊と蒼龍制空隊は激しい空戦の中にあった。


第27話「海の彼方から・3」

ーーーーー沖ノ島海域・17:39(ヒトナナサンキュウ)ーーーーー

 

 

 

紅く染まった夕焼けの空で、白と黒の影が舞い躍り交錯する。

 

「堕ちろ!」

 

胴体に青い一本帯の描かれた零戦二一型の両翼から20mm機関砲が火を吹いた。

撃ち出された弾丸が黒い異形の機体に次々と命中し、目標を爆散させる。

 

「よし!次!!蒼龍の所へはいかせるかよ!!」

 

敵機の撃墜を確認すると、すぐに次の敵機を見つけ攻撃にかかった。

そこから少し離れた場所では、同じく青い一本帯の零戦が敵機に追い回されていた。

 

「くっそコイツ、いつまでもしつこい!」

 

機体を左右へ小刻みに振ることで、真後ろからの銃撃をなんとか回避する。

 

「上昇しろ蒼龍の!今助けに行く!!」

 

「飛龍の五番機!?了解!!」

 

味方からの通信を聞いて、零戦が急上昇を始める。

敵機もそれに続き、上昇している間も銃撃を止める気配がない。

 

「唸れ発動機!もうちょっとだ!」

 

新人の搭乗員妖精に対して、耳にタコができるほどいい聞かせられる言葉が存在する。

それは『上に逃げる敵を追うな。追われた時も上には逃げるな。』である。

深海棲艦機には発動機が無く、機動の限界がないように思える。

これとの空戦において、発動機があり機動の限界もあるこちらが急上昇しようものなら、いつか機体が失速してしまう。

そうなると、後方から迫る敵機からは空中に制止しているように見え、いい的になるからだ。

搭乗員妖精なら誰でも知っている『御法度』を指示したのはなぜか。

 

「待たせたな!」

 

いよいよ機体が失速しようかという所で、上空から急降下してきた五番機がすれ違うように通り過ぎる。

射撃に夢中になっていた敵機は新手の奇襲に対応出来ず、なすすべなく撃墜された。

急降下による一撃離脱、そのために蒼龍の零戦に敵機を引き付けさせたのだ。

 

「すまん、助かった!」

 

「いいってことよ!同じ五番機同士、持ちつ持たれつでいこうや!」

 

「しかし20mm・・・威力はあるが片側60発、両翼で合わせて120発は少なすぎるぞ・・・。」

 

「そうだな・・・噂では大本営で100発入り弾巣が開発中だとか。」

 

「提督には是非ともそれを入手してもらわないとな。」

 

蒼龍と飛龍の五番機はそんな事を言い合いながら次の敵機へ向かって行った。

その後も、深海棲艦機との空戦は暫く続いた。

 

【挿絵表示】

 

「よーしよし、制空権は握った。飛龍にいい土産ができたな。・・・こちらも大分堕とされたが・・・・・・。」

 

船団捜索の疲労もあったのだろうか、動きに精彩を欠いた機も多かった。

制空権確保には成功したものの、少なくない犠牲が出る結果となった。

 

(しかし思ったよりも敵機の数が少なかった・・・ヲ級じゃないのか?)

 

飛龍の五番機は疑問を抱くが、戦況を報告すべく通信機に手を伸ばした。

 

 

 

ーーーーー沖ノ島海域・17:50(ヒトナナゴーマル)ーーーーー

 

 

 

「制空隊五番機より入電。『我、制空権ヲ確保セリ。』!」

 

「やった!これで攻撃隊も安心してだせるね!」

 

飛龍の報告を聞いて、興奮気味の蒼龍がグッと拳を握る。

捜索任務とはいえ、久々の実戦で戦果をあげられたのだから、無理もないだろう。

後は攻撃隊で先制攻撃を加えて、合流した味方と共に残敵を掃討するだけだ。

 

「二人の制空隊はよくやってくれたわ。でも・・・。」

 

眼鏡をくいっとあげた霧島が振り返ると第一砲塔と第四砲塔を空に向けて発砲した。

装填されていた三式弾が雲を突き抜けて飛翔していき、やがて炸裂する。

 

「・・・撃ち漏らした敵機の報告が無かったから、70点かしらね。」

 

飛び散った子弾が何かに命中したのだろう、爆発音の後に雲の上から落下してくる複数の物体が見えた。

 

「て、敵の艦載機・・・!?」

 

「まさかすり抜けてきたのがいたなんて・・・!」

 

飛龍と蒼龍の顔がみるみる青ざめていく。

もしも霧島が気づいて迎撃していなかったら、今ごろどうなっていたかは想像に難くない。

 

「「ご、ごめんなさいぃ!」」

 

顔面蒼白の状態で謝罪する二航戦の二人。

 

「気にしないで・・・とは言えないけど、次は対空見張りも厳として、頼むわね。」

 

すり抜けた敵機を見落とす程、激しい空戦だったのだろうと想像して霧島はあまり強く咎めなかった。

 

「あわわわ・・・ど、どうしよう蒼龍!?」

 

「わ、私に聞かれても・・・!?」

 

しかし、飛龍と蒼龍は青ざめた顔のまま何やら揉めているようだ。

 

(どうしたのかしら、キツい言い方はしなかった筈だけど・・・ああ。)

 

顎に手をやって首を傾げて考える。

だが考えるまでもなく、聞こえてくる会話から、ものの数秒で二人の心配事に思い至る。

 

(空母の教導艦は鳳翔さんだったわね。指導が厳しいらしいけど、見かけによらないもの、か・・・。)

 

『霧島、ちょっといい?』

 

そんなことを考えていると足柄からの通信が入る。

時間的に、もう少しで合流できそうな頃合いだ。

 

「何?足柄、そろそろ合流出来そう?」

 

『ええっと・・・。』

 

足柄にしては歯切れが悪い返答に疑問を抱く。

 

「どうしたの?」

 

『いや、それがね・・・ちょっと問題が・・・。』

 

「問題?」

 

 

 

ーーーーー沖ノ島海域・17:52(ヒトナナゴーフタ)ーーーーー

 

 

 

小島群から出発した船団は、輸送船を最後尾とした単縦陣で航行していた。

輸送船を先導する艦娘が振り返り、笑顔を見せて後ろにいる仲間に話しかける。

 

「周囲に敵影なし。ここまでは順調ね。」

 

長い金髪に健康的な白い肌、澄んだ青い瞳に整った顔立ち。

中でも一際目を引くのは、その豊満なバストだ。

女性から見ても魅力的な彼女の笑顔を見れば、どんな男性でも一瞬で彼女の虜になってしまうだろう。

大きな艤装を装備した彼女の名は、Iowa(アイオワ)

16inch三連装砲をはじめとする強力な火力を持つ、米海軍所属の艦娘だ。

 

「ええ、このまま敵に見つからずに味方と出会えればいいけれど・・・。」

 

不安そうな表情で返事をしたのは、Saratoga(サラトガ)

大人しそうな顔と明るい茶色の髪、煙突を模した帽子をかぶってその先端から髪を一房出しているのが特徴だ。

そしてアイオワに負けず劣らずのバストを持つこちらも、米海軍所属の艦娘である。

 

「サラは心配性ね~。きっと味方が近くに来てくれているから大丈夫よ。」

 

「・・・・・・貴女はいつも楽観的すぎると思います。」

 

いつでも楽観主義なアイオワに呆れて、サラトガは右手を頬に当ててため息をついた。

敵の攻撃を掻い潜って逃げおおせてはいるものの、いつまた発見され襲撃されるかわからない。

それに加えてこれまでの度重なる襲撃で船団は輸送船1隻を残して壊滅。

祖国から旅立った時には12隻居た護衛の艦娘も、残るはサラトガとアイオワのみ。

しかも、アイオワは大破していて残る武装は主砲1基と対空火器だけ。

サラトガの艦載機も損耗が激しく、とても襲撃を凌ぐだけの防衛力はないのだ。

 

(こんな時に・・・・・・レックス・・・貴女が居てくれたなら・・・。)

 

今はもう居ない姉の事を思って、サラトガの目に涙が浮かぶ。

だが、そんな感傷に浸る間も与えてくれないのが現実だ。

 

「え、遠方より飛来する機影を発見!!」

 

その声を聞いて、はっと我に返るサラトガ。

叫んだのは輸送船で対空見張りをしていた船員の声だった。

 

「方角と機数は!?」

 

すかさず旗艦であるアイオワが足りない情報を求める。

 

「2時方向、距離はおよそ27キロ!機数は・・・お、多すぎて正確な数は不明ですが、少なくとも80機以上!!」

 

「くっ・・・近いうえに多いわね、間違いなく敵機・・・・・・対空戦闘用意!サラ!迎撃機を!!」

 

「ええ!航空隊、スクランブル!!」

 

一瞬、苦い顔をしてアイオワが指示をだす。

サラトガも言われるより先に艦載機の発艦準備を始めていた。

 

「艦隊は迎撃機の発艦終了後、直ちに取り舵!現状出せる最大速度で離脱!!」

 

「サラの子たち、お願いします!」

 

サラトガの艤装、飛行甲板の下のマシンガンを模したレシーバー部にマガジンがセットされ、敵機の迫る方角へ飛行甲板が向けられる。

そして引き金を引くと、ガガガガガッという激しい発砲音と共に凄まじい速さで艦載機が発艦していく。

 

(艦載機の皆・・・1機でも多く無事に帰ってね。)

 

発艦した機は後続の合流を待たずに敵機を迎え撃つべく飛翔していく。

戦いの空へ赴くその機数はわずか19機。

 

(レックス・・・どうか皆を守って・・・。)

 

不安な気持ちを顔に出さないように、サラトガは紅く染まる空へと飛んで行く戦友たちの姿を見送った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第27話です。

いかがでしたでしょうか。

今回は無い絵心をまた絞り出して挿し絵を描いてみました。
下手くそな絵ですが、今後も描かないと伝えづらい時とか、必要に応じて頑張って描くかもです。
もっと文章力ほちい。

制空隊の失態に焦るにっこにこ二航戦、可愛いと思うのは自分だけでしょうか。
顔を青くするほど、帰還した後の事を考えて絶望したんでしょう。
二航戦コンビも鳳翔お艦の艦載機たちには敵わないということですね。
なんてったって熟練ですもの!
まあ、敵機をみすみす見逃がした(見落としたともいう)制空隊はきっと大目玉でしょう・・・。

ここで同盟国艦娘の正体が判明しましたね。
こんなまだ海域も録に奪還できていない状態で海を渡るなんて無茶をできるのは、やはり米国だと思うんですよね。
物量もすごいんで艦娘も大勢いると仮定して、連合艦隊を組んでの強硬突破ってことですね。
アイオワが普通に会話してるのは、英語で話しているからと思って頂ければ・・・(^_^;)
サラトガはレキシントン級の二番艦で、飛行甲板にそれぞれ『LEX』と『SARA』と書かれていたそうで。
そしてそれがそのまま愛称だったらしいので、姉の名前(愛称)はレックスということですね。



この作品をちょこちょこ読んで頂けているみたいで嬉しいです。
やっぱり読んで貰っているというだけで励みになります。
もっとコメント書いてくれてもいいのyうわビス子さん・・・すみまs・・・アーーッ!!
コレカラモ読ンデ頂ケルト嬉シイデス。

さて、後書きが長くなってしまいました。
また次回も、お楽しみにお待ちくださいませ。



P.S.
先日、やっとうちの艦隊にもビスマルクさんが着任しました。
うれしみ(^_^)
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