艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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同盟国船団を無事に救出し、鎮守府へ迎え入れて数日。
よく晴れたその日、空には朝から発動機の駆動音が響いていた。


第34話「ドッグファイト」

ーーーーー鎮守府湾内・05:00(マルゴーマルマル)ーーーーー

 

 

 

鎮守府の広い湾内。

薄く白みだした空に、白い機体が4つの編隊を組んで飛行していた。

先頭を行く編隊は零式艦上戦闘機二一型で構成されている。

隊長機の垂直尾翼には、白カラスのエンブレムが描かれており、鳳翔制空隊の機体だとわかる。

 

残りの編隊を構成するのは零式艦上戦闘機三二型。

先日の船団への上空援護の際、鳳翔、赤城、加賀の制空隊が駆っていた機体だ。

二一型との外見的な違いは主翼端を切り落とし角形翼端としたことで、横転(ロール)性能などの向上を図った機体である。

主翼に内蔵された20mm機関砲の装弾数も増加しており、二一型の性能向上型といったところだ。

ただ、主翼長が短くなった影響か航続距離が短くなってしまったのが難点か。

 

先導して飛んでいる二一型の隊長機から、三二型の編隊にいる機へと通信が入る。

 

「どうだ、飛龍の。三二型の乗り心地は?」

 

「操縦席の座り心地は二一型とあまり変わらないです。でも、かなり素直に横転してくれるから気持ちいいですね。」

 

そう言うと飛龍の妖精は機体をくるりと横転させ、背面飛行をしてみせる。

まだそんなに飛んでいないのに機体を自在に操るあたり、二航戦は伊達ではないということか。

 

「まさか、100発入り弾巣どころか、新型機まで持ってきてくれるとは、流石は提督ですね。」

 

「うんうん、二一型では20mmの弾切れに悩まされることもあったけど、こいつならイライラせずにすみそうです。」

 

「そうか。だが弾数が多いからといって無駄撃ちはするんじゃないぞ、蒼龍の。」

 

「了解であります、教官殿。」

 

蒼龍の妖精とも話していると、一番後ろの編隊の機が恐る恐るといった声色で話しかけてくる。

 

「あの、でもよろしかったんでしょうか・・・。」

 

「何がだ?龍鳳の。」

 

「教官殿や一航戦の先輩方を差し置いて、我々が新型を頂いてしまって・・・。」

 

龍鳳の妖精が不安そうに聞くが、鳳翔の妖精はそんなことかと思った。

しかし、その疑問ももっともなので教えてやることにする。

 

「俺たちも三二型の試作機に乗ってみたが、二一型よりも素直に動く分、ヒヨッ子のお前らを乗せた方が逃げ回って生き残りやすくなるだろうって結論になってな。提督と少佐に具申したんだ。」

 

「そ、そういうことだったんですね・・・。」

 

第一線で活躍する先輩妖精たちでなく、自分達に新型機が配備された理由が分かって龍鳳の妖精は安堵したようだ。

 

『皆さん、談笑されている所失礼しますが、そろそろ始めましょう。』

 

会話に割り込んできた安住の声で、本来の目的を思い出した妖精たち。

鳳翔の妖精が準備はすでに整っていることを伝える。

 

「もうそんな時間か。少佐、こちらの準備は整っている。いつでもいいぞ。」

 

『了解しました。それでは、模擬空戦を始めます。まずは蒼龍隊からお願いします。』

 

「承知した。飛龍と龍鳳のは指定空域へ向かい、高高度へ退避せよ。」

 

鳳翔の妖精の指示に従い、編隊が2つ離れて高度を上げていく。

 

「蒼龍隊の先輩方、ご武運を!」

 

「二航戦の意地をみせてやれ!教官たちに下克上するんだぞー!」

 

龍鳳と飛龍の妖精からのエールを受けて、蒼龍の妖精たちに気合いが入ったようだ。

 

「よっしゃあ!やっちゃるぞ!」

 

蒼龍隊が左旋回して編隊から離れていく。

それと同時に鳳翔隊は右旋回を行い、距離をとる。

 

『それでは一度離れた後、お互いの編隊がすれ違ったところで模擬空戦を開始します。』

 

「「了解。」」

 

十分に離れた2つの編隊が、先ほどとは逆方向に旋回して向き合う。

その距離は徐々に縮まっていき、戦闘開始の時が迫る。

離れた距離が近づく程に緊張感が高まっていく。

遠くに見える山の間から朝日が顔を覗かせはじめた。

 

『模擬空戦、開始!』

 

安住の声と同時に双方の機体がエンジンを噴かして速度を上げる。

 

「「各機散開!」」

 

お互いがすれ違ったところで、編隊飛行を崩して機体が上下左右に散っていく。

空戦が始まり翼を翻す度に、白い機体が朝の光を反射してキラキラと美しく輝いていた。

 

 

 

ーーーーー鎮守府湾内・11:38(ヒトヒトサンハチ) 上空ーーーーー

 

 

 

太陽が天高く昇り、そろそろお昼時にさしかかる頃。

数度の休憩と補給を繰り返しながら、いまだに模擬空戦は続けられていた。

 

「うおおお!ふ、ふりきれない!?」

 

三二型が白カラスの二一型に追いかけ回されていた。

その機体にはいくつもの塗料が付着し、ペイント弾によって被弾したことを意味していた。

一方、二一型には塗料は一切付着しておらず、かすりもしていないようだ。

 

「どうした飛龍の。二航戦の意地とやらはその程度か?」

 

「くそぉぉぉ!」

 

機体を左右に旋回させて逃げようとするも、二一型がぴったりと後ろに食いついて離れない。

まるでこちらがどう動くのかが分かっているかのように、どこへ逃げてもふりきることができないでいた。

 

「まだまだヒヨッ子だな。あとはお前だけ・・・そろそろ終わりだ。」

 

「飛龍のためにも、何度もあっさりやられてやるわけにいくかぁ!!」

 

照準に捉えられて撃たれる寸前、飛龍の妖精は機体を左へ45度程横転させて左斜め宙返りに入った。

二一型もそれを追って宙返りを始める。

 

(かかった!今だ!!)

 

自身の機体が180度方向を変えた時。

つまり、宙返りの頂点に達した所で飛龍の妖精がかすかに右へ機体を傾け、ラダーを右へ切った。

すると機体は海面に対して垂直に90度傾いた姿勢となり、その姿勢のまま緩やかな軌道で緩降下しながら宙返りを続けていく。

これで、追ってきていた相手はこちらの姿を見失い、宙返りの開始点に戻るころには前後が入れ替わり、相手は一転して追われる側になる・・・はずだった。

 

「これで後ろをとれ・・・てない!?」

 

ぞっとして後ろを振り返ると、そこには二一型がぴったりとついてきていた。

 

「そんな見え見えの捻り込み()()()に、誰が引っ掛かると思ったんだ?」

 

「くそっ!まだだ!」

 

飛龍の妖精は三二型の横転性能を活かして、今度は右へ急旋回して離脱を図った。

逃がすまいと後を追う鳳翔の妖精は、ここで違和感に気づく。

三二型の速度が急に落ちたのだ。

 

(ほう・・・発動機の出力を絞るだけでなく、フラップを使って速度を落としたか。)

 

教え子の成長を実感し噛み締めながらも、手を抜いてやる程甘くないのが、この妖精だ。

自機の速度が相手よりも速くなったとみるや、上昇して速度を落とし、あくまで背後から離れない。

 

「よく頑張ったが、ここまでだ。」

 

その言葉と共に、二一型の機首の7.7mm機銃からペイント弾が掃射され、三二型に新たな被弾跡となる塗料を付着させていく。

 

「うっそだろぉぉぉ!?」

 

『三二型、飛龍制空隊隊長機の被弾を確認。撃墜です。』

 

飛龍の妖精の絶叫がこだまする中、安住による撃墜判定が下された。

どうやら、下克上は叶わぬ夢と消えたようだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第34話です。

いかがでしたでしょうか。

船団の援護に駆けつけた際の、鳳翔隊の妖精が言った台詞を覚えていますでしょうか。
『慣れない機体』と言っていたのが、三ニ型です。
第30話の中でも、『白い艦載機』としか書かなかったのは、わざとです。
気になった方は是非読み返してみてください。

あと、話ごとに数字や英語が半角だったり全角だったりバラついているのはすみません。
その時の気分で変えてたりするので・・・。
この話だけは28話くらいと同時に書いてたりしたので特にぶれてるかも(-_-;)

では、また次回をお楽しみに。
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