面倒な所は安住に押し付けつつ、一行の滞在先等の手配に奔走する。
これは、会議室が静かになった後のお話。
山のように積み重ねられる白い円盤、もとい大皿。
もくもくと立ち上る煙を吸い込み続ける換気扇。
赤い塊が熱せられた鉄の網へ投入される。
水が蒸発する時のようなじゅーじゅーという音を立てて、塊の色が変わっていく。
そこから漂う、食欲をそそる匂い。
程よく焼かれたそれを、我先にと口へ運び貪る女たち。
「・・・・・・一体どうしてこうなった・・・。」
「・・・・・・わかりません・・・。」
「比良ちゃん・・・こいつは洒落にならんぜ・・・。」
比良の友人が経営する焼き肉店。
入り口に『本日貸切』の張り紙のされた店内では、赤城たちによる焼き肉大戦争が勃発していたのだ。
ここで時間は数時間前に遡る。
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政府高官が電文を読んで飛び出していった後、会議室はなんともいえない空気になっていた。
「高官殿が飛び出していってしまったわけだが・・・。」
「これからどうします?」
比良と安住が苦笑いしながら顔を見合わせる。
「ふぅむ・・・どうしたもんかねぇ・・・。」
腕を組んで比良が悩み始めた所で、女性の声がした。
「あの、私たちはこれからどうなるのでしょう・・・?」
不安そうな瞳で上目遣いに比良をみるのは、鳳翔だった。
「あの無礼な男は、貴方に私たちの処遇を任せると言っていたようだけれど?」
加賀が警戒心を隠そうともせず、冷たい視線を比良に向ける。
どうやら、自分達のことを任せても大丈夫な人物かどうか、見定めようとしているようだ。
「そうだな、とりあえずは近場で滞在出来る場所を確保するとして・・・。安住、彼女たちの滞在場所の手配を任せていいか?」
「了解。いい温泉宿を手配します。領収書の宛名は艦長にしときますからね。」
「おう、それでいい。飯の旨いところを取っておけよ?」
「勿論です。我々も特務扱いになるでしょうし、温泉を楽しんでやりましょう。」
阿吽の呼吸で温泉宿の手配を始める安住。
ちゃっかり自分達も温泉で楽しもうとしている。
「え・・・あの、温泉・・・?」
その様子に、加賀は着いていけていないようで、困惑した表情をしている。
他の艦娘も状況が飲み込めていないようだ。
「あの、比良さん?温泉ってどういう・・・?」
鳳翔が困惑しつつもなんとか問いかける。
「おっと、皆さんを放置して話を進めて申し訳ない。現状、あなた方の立場については非常に曖昧なものと言わざるを得ない。それは高官殿が任務を放り出して帰ってしまった為、どうしようもない。そこはわかっていただきたい。」
淡々と話す比良に普段の豪快さは無く、完全に仕事モードになっている。
真剣な表情を見て、鳳翔たちは背筋を伸ばして聞いている。
「暫くすれば、あなた方の処遇は上から通達があると思われる。それまで上や政府としては、目の届く所に置いて監視したい。という所だろう。」
加賀たちの表情が曇り、俯く者も出始めた。
「そこで、あなた方を客人として扱い、先の戦闘で我々を救って頂いた礼を兼ねて、暫くは温泉街等の行楽施設でゆっくり過ごしていただく。無論、我々も同行する形にはなるが。」
「「「は?」」」
比良の言葉に、加賀たちは思わず間の抜けた声をあげる。
「これならば、監視という目的は果たせる。何より既に報道機関が海上で戦うあなた方の姿を報道しているはず。深海棲艦に対抗して我々人類を救ってくれた存在に対して失礼な対応を取っていると知れれば、政府が国民からの反感を買うことになる。今のところ発表は無いが、あなた方を『保護』した政府としてはそれは絶対に避けたいだろう。」
そこまで言ったところで比良は仕事モードを崩して続けた。
「とまあそんなわけで、だ。高官殿が失礼な態度を取った謝罪も含めて、暫くはゆっくりと現在の日本を楽しんでもらいたい。戦争を越えて豊かになった、あなた方の祖国をな。なぁに、上には文句は言わせんさ。なにせ、政府高官直々に『任せる』と言われているからな。がっはっはっは!!」
豪快に笑う比良を、鳳翔たちは唖然として見つめていた。
そこへ、「ぐぅぅぅ~~~・・・。」という音が聞こえてきた。
音のした方へ全員の視線が集中する。
「あ、あはは・・・。お腹、すいちゃいました・・・。」
赤城が頬を朱に染めて照れ笑いしながら、お腹を擦っていた。
「ならまずは飯にするか!いい焼き肉の店があるんだ。」
「では、別室で待機している方々も連れて行きましょうか。あの店ですよね、予約取っておきます。」
初対面の女性たちを食事に連れていくというのに、焼き肉はどうかと安住は思ったが、まあいいだろうと予約の為に電話をし始めた。
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というわけで、比良の友人が経営する焼き肉店に来たまではよかった。
想定外だったのは彼女たちの食欲。
店にある食材全てを飲み込む勢いで肉、野菜、白米がどんどん胃袋に吸い込まれていく。
人数が多かった為、貸切にしていたのだけは幸いだった。
「
「
「肉焼けるのおっそーい!」
「ほら飛龍、カルビ焼けたよー!」
「蒼龍ありがとー!次は何焼こうか!」
「お肉美味しいっぽーい!!」
「ああもう夕立、ほっぺにタレが付いちゃってるよ。こっち向いて、拭くから。」
「気合い!入れて!食べます!!」
「榛名は大丈夫です!まだまだ食べられます!」
「比叡も榛名も一杯食べるネー!霧島も遠慮せずに食べるデース!!」
「私の計算によると、まだまだ食べられます!」
「曙ちゃん、お肉焼けてるよ。はい。」
「ん、ありがと。潮も焼いてばかりいないで食べなさい。あたしが代わるから。」
「ぼのたん、やっさすぃ~!まさにデレぼnムグ!ちょ、お肉もう口に入らなムガムグ!」
「ちょっと曙、漣が窒息するって!」
「この厚切り肉・・・胸が熱くなるな。」
「長門、もうそろそろいいんじゃないかしら。私が切り分けてあげるわね。」
「お肉の焼き加減なら、衣笠さんにお任せ!ほら青葉、撮ってばかりいないで食べなさい。」
「皆さんいい食べっぷりですねぇ~!はーい、青葉食べちゃいます!」
「加古、寝ながら食べると喉に詰まるよ?」
「もぐもぐ・・・Zzz」
「はわわわ、コゲちゃったのです。」
「電、それは私が食べるよ。ほら、このお肉ならコゲてないよ。」
「みでぃあむれあで食べるのが、レディーのたちなみ!!」
「お肉どんどん焼くわよ!もーっと私に頼っていいのよ!」
出された肉が、野菜が、白米が、出たそばから無くなっていく光景を呆然と眺めることしかできない三人。
ぽん、と比良の肩に手が置かれる。
「比良ちゃん・・・・・・支払い、大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・・つ、ツケでお願いします・・・。」
「私も出しますから、ツケはやめときましょう・・・。」
「すみません。うちの子たちが・・・。」
鳳翔が申し訳なさそうに何度も頭を下げているが、こればっかりはもうどうしようもない。
光を失った目で、変わらず繰り広げられる焼き肉大戦争をみつめる。
「これ、滞在費とか食費、経費で落ちないかな・・・・・・?」
大分軽くなるであろう財布を思いながら、次からは抑えて食べてもらおうと決心する比良であった。
ーーーーーーーーーーつづく
第3.1話です。
いかがでしたでしょうか。
赤城さんのことだから、お腹がすいていると思うんですよね。
なので、焼き肉回にしてみました。
第3話~第4話でかなり時間が経過している設定なので、ここの間話は第3.9話まで書くつもりです。
ネタがうかんだらちょっとずつですけどね。
今回は短めでしたが、楽しんでいただけたら幸いです。
では、また次回をお楽しみに。