既に、それから数ヵ月の時が流れていた・・・。
新日本海軍の設立から数ヵ月が経過した。
世界各地で艦娘が出現してからというもの、深海棲艦の侵略はほぼ停滞している。
戦闘は散発的で、遭遇戦ばかり。敵が深追いしてくるそぶりもなく、不気味な程静かだ。
テレビ等のメディアでは、深海棲艦は人類の秘密兵器たる艦娘に恐れをなしているといった旨の報道が目につく。
深海棲艦は本当に艦娘に恐れをなし、攻勢に出るのを躊躇っているのか。
それとも、隙をうかがい足元をすくうその時を待つ、嵐の前の静けさなのか。
それは誰にもわからない。
そのどちらであれ、人類は一時的にだが、戦力を整えるための時間を得たのだった。
海自を母体とした新海軍はこれぞ好機と捉え、志願兵を募り、驚異的な早さで巨大組織へと成長した。
しかも、艦娘を運用するための設備も異常とも言える早さで充実していき、新海軍の基地として、鎮守府が建設された。
極秘の情報だが、深海棲艦の出現より以前に艦娘の出現は観測されており、日本政府は秘密裏に艦娘を捕獲。
艦娘に対して、聞けば吐き気がするような非人道的な研究もしていたそうだ。
ーーーーー鎮守府・09:30ーーーーー
「まったく・・・政府の奴等、あんな大事な事を隠してやがったのか・・・。」
真新しい制服に身を包み、中年風の男が苛立ちを隠そうともせず毒づいている。
苛立ちの証拠に、先程から足を机の上に投げ出し、非常に行儀の悪い体勢で椅子に座っている。
彼の名は、比良。この鎮守府の提督である。
「気持ちはわかります。艦娘の情報を秘匿せず、すぐにでも情報提供をしていれば、いくらかの犠牲は防げたでしょうからね・・・。」
少し悲しげな表情でそう言った若い男の名は、安住。提督たる比良の副官である。
こちらも真新しい制服に身を包み、比良の横で背筋を伸ばし「休め」の姿勢で立っている。
「ふぅ・・・だが、その研究成果とやらのお陰で、情報提供料を他国からぼったくって海軍の資金を蓄え、こうして艦娘の力を引き出すための設備がこの早さで用意できたと考えると・・・・・・それでも納得はできんがな。」
「きっと誰もが思っていることですよ。けれど、抑えてくださいね。貴方はこの鎮守府のトップ、提督なのですからね。比良大佐殿。」
大佐と呼ばれ、少し眉間に皺が寄った比良だったが、すぐさまお返しとばかりに嫌味を返す。
「わーかってるよ。・・・俺はここを離れられないからな、現場でのことは頼むぞ。前線指揮官たる、安住少佐殿?」
「ええ、わかっています。艦娘にも、指揮艦の乗組員にも、犠牲は出させません。」
「・・・・・・・・・はぁ・・・。」
嫌味を嫌味と受け取らないのか、気づいていないのか。
変な所で真面目な副官にため息をつきつつも、上官として、海自時代からの相棒として、補足してやる。
「艦娘も乗組員もそうだが、お前も、だぞ。わかってるか、安住?」
すると、安住は「うっ・・・。」と言葉を詰まらせ、咳払いをして誤魔化した。
長年、この相棒と一緒にやってきた比良が、この最高のイジり時を見逃すはずはなかった。
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、早速イジることにする。
「もしもお前に何かあれば、泣くのは誰なんだろうな~?」
「んなっ!?ほ、鳳翔さんは関係ないでしょう!!?・・・・・・あ。」
「俺は一言も、「鳳翔」なんて言ってないんだがなぁ~?ん~?」
顔を赤くして反射的に返した安住だが、すぐに失言に気づく。
が、時すでに遅し。比良の満足気な笑みに、安住は頬をヒクヒクさせて笑うしかなかった。
「あ、あははは・・・・・・。」
つくづくこの人には敵わないな。と思う安住であった。
ーーーーー鎮守府・10:15ーーーーー
「さて、そろそろか。」
そう言って、椅子から立ち上がる比良。
「そうですね。では、いきましょう。」
頷き、提督室の扉を開ける安住。
「・・・・・・。」
「提督、どうされました?」
扉を開けたものの、比良が立ち止まっている。
不審に思った安住が声をかける。
すると比良は少しうつ向いていた顔を上げ、今までに見たことのない程真面目な顔で歩みよった。
そして安住の右肩に自身の左手を乗せながら、こう言った。
「安住・・・絶対に、死ぬなよ。生きてこの戦争を終わらせるんだ。お前は前線で、現場で犠牲を減らす所から。俺は上に行って、腐った大本営を変える所から。必ず、生きて、皆で平和を勝ち取るぞ。約束だ。」
「はい。必ず、平和な海を取り戻しましょう。約束です。」
安住も、これまでに見せたことのない程真面目な顔で、そう言い切った。
ーーーーー鎮守府・10:30ーーーーー
鎮守府内に備え付けられた、出撃ドッグ。
そこに今、この鎮守府に所属する全艦娘と士官が集まっていた。
「あー、テステス。マイクチェック・ワン・ツー。大丈夫です、提督。」
よく通る声でマイクテストを行ったのは、金剛型戦艦4番艦である高速戦艦・霧島。
「ん、ありがとう。」
比良は霧島からマイクを受け取ると指揮壇に登壇し、ひとつ咳払いをして、話し始めた。
「諸君、よく集まってくれた。もう知っている者もいると思うが、俺がこの鎮守府の提督の比良だ。」
艦娘と士官たちは整列し、比良の挨拶に静かに耳を傾けている。
安住は指揮壇の側で、幹部クラスの艦娘や士官と共に、整列した艦娘や士官を眺めていた。
(この短期間でこれだけの艦娘と士官が揃うとは・・・中々壮観ですね・・・。)
「ーーー俺からは以上だ。次は艦娘部隊の指揮官からの挨拶だ。安住少佐、頼む。」
そんな事を考えていると、比良の挨拶が終わり安住の番が回ってくる。
「はっ!」
降壇した比良からマイクを受け取り、交代で安住が登壇する。
(ラリックスして、しっかりとな。)
(それを言うなら、リラックス、ですよ。)
すれ違い様、お互いにだけ聞こえる声量で何時もの冗談を言い合う。
あがり性な安住に対する、比良の優しさである。
「只今、紹介に預かりました、安住です。出撃の際には指揮艦に乗艦し、艦娘の皆さんと共に戦場へ赴きます。」
普段の頼りなさは鳴りを潜め、堂々とした口調で挨拶する安住。
「ーーーのため、ーーーーー。」
(ふ・・・ちゃんとやれてるじゃないか。もう、余計なお世話だったかね・・・。)
部下であり、相棒である男の成長を見て、中年は満足そうに微笑むのだった。
「最後に、何があってもこの命令だけは守ってください。」
死ぬな。どんな状況でも絶対に諦めず、生きて帰ることだけを考えろ。
「これが、この鎮守府での絶対順守の命令です。以上です。」
そう言って最後に敬礼で締め括った安住の挨拶に、艦娘と士官も敬礼で返す。
この日が、人類と艦娘による、深海棲艦との本当の意味での開戦日となった。
ある者は世界の腐敗を正すため。
ある者は戦争によるビジネスのため。
ある者は信念を貫き通すため。
ある者は己の欲を満たすため。
ある者は愛する者を守るため。
其々の思惑を胸に、其々の戦いがーーー始まる。
ーーーーーーーーーーつづく
第4話です。
今回は比良と安住のコンビにスポットを当ててみました。
男同士の友情、いいですよね~(^_^)
え?お呼びじゃない?
もっと艦娘をだせ?
・・・・・・・・・(^q^)ワカリマシター
なんで一人芝居をやっているのか・・・orz
これから本格的に戦闘が入ってきます。
くるはず・・・くるんじゃない、かな・・・?
これからどうなっていくのか、全然わかりません!
ノープラン!
・・・・・(^q^)テッターイ