「俺はウルトラ業務上過失致死を起こしたけどそのおかげで一人の少女の命を救うことができたんだ。本当なんだよ!信じてくれ親父!」 作:雷月皆無
原作:結城友奈は勇者である
タグ:残酷な描写 クロスオーバー 鷲尾須美は勇者である ウルトラマン 三ノ輪銀
これは多くの偶然が重なった結果の話。
これは……光の巨人と勇者のおはなし。
これは広い宇宙の物語……。
きみは多次元宇宙マルチバースというものを知っているだろうか?
宇宙は無限に存在し、それぞれの宇宙は隣り合って存在している。隣り合っていると言っても、各宇宙間ごとに壁で隔てられていて移動するのは困難だ。
そして、その宇宙を一つとってみても、わずかに異なる世界が無数存在する。いわゆる『IF』の世界と呼ばれるものだ。
これらを総称して多次元宇宙マルチバースと呼び、より詳しく述べるならば、前者は『レベル2マルチバース』、後者は『レベル3マルチバース』と呼ばれ分類されている。
泡のようなものが無数に浮かぶ幻想的な空間を飛行する二つの球体があった。
この泡の一つ一つが宇宙であり、二つの球体が飛んでいるこの空間こそ、全ての宇宙を包括する空間なのだ。
赤い球体に追われる青い球体はどこか目的地でもあるのか真っ直ぐに飛ぶ。追う側の赤い球体は青い球体に遠距離から光線としか呼べないものを発射したり、時折ぶつかったりなどして、その行動を阻止しようとしていた。
それでも止まることなく青い球体は目的地であろう、とある泡の中へと飛び込んでいく。
赤い球体もすぐに後を追い、泡の中へと飛び込んでいった。
◇
「ぁぁあああああああ!!」
赤き勇者装束を身に纏う少女の叫びが異界と化した瀬戸大橋に木霊する。
最早満身創痍。全身に傷を負い血を流しながら、それでも立ち続け、得物である二丁の巨斧を敵目掛けて振るう。
少女が何故そこまでして戦うのか。何が彼女をそこまで駆り立てるのか。
それはひとえに、自分の住んでいる世界を、平和な日常を守るために他ならない。
敵の数は三体。
対する少女は一人きり。
状況は一対三と圧倒的不利だ。しかしここで退くことは出来ない。退けば文字通り世界が終わるのだ。
まだ幼い少女が背負うには重すぎる役目。
だけどそれでも、今戦えるのは彼女一人しかいないのだ。
彼女の仲間は傷を負い戦える状態ではないため、敵からの追撃を防ぐ意味も含めて既に海へと放り投げた後だ。
不退転、決死の覚悟で彼女は今の戦いに臨んでいるのだ。
「てやぁあああ!!」
斧が敵の肉体を傷つけ後退させるも、すぐさま何事もなかったかのように再生を果たす。
たった一人で三体を相手取ることの難しさは、子供でも分かるだろう。
敵は異形であり、しかも巨体だ。
左の敵が鋏を振り下ろす。右の敵が長い尾で薙ぎ払う。中央の敵が矢を無数に放つ。
紙一重で回避し、新たな傷を増やしながらも彼女は攻撃の手を緩めない。
傷つきながらも一歩、一歩と前へと進み、敵をだんだんと壁の方へと追いやってゆく。
流れる血の量は明らかに危険だと分かるくらいで、視界が霞み、足もふら付く。
限界などとうに迎えている。それでも、と彼女は歯を食いしばり身体を動かす。
「ここから……出ていけぇえええええ!!」
声を振り絞り、咆哮する。
敵の鋏が右手首の靭帯を断ち切った。長い尾が身体を強く打った。矢が全身を貫いた。
右手の斧が落ちた。
だけどまだ左手が使える。武器もある。
両足もある、口で噛みつくこともでき、まだまだ戦えることができる。
無我夢中に斧を振り回す。全身から血が噴き出し飛び散る。
敵が壁の向こうへと引き返していくのを見届けた少女の意識はゆっくりと薄れていき、視界の全てが赤い光に染まったところで彼女の意識は途絶えた。
◇
鷲尾須美は棺の前で目を覚ました。棺の中を見るも、中には誰もいない。
中身のない棺。これは現実だが、認めたくなんてなかった。
戦場の瀬戸大橋に残されていたのは、彼女のスマホと、武器の斧、そして戦いの激しさを表す血痕のみ。
彼女はどれだけ探しても見つかることはなかった。
遺体がまだ見つかっていないから生きていると信じたくもあったが、出血量から見てもそれは有り得ないというありがたい言葉までもらった。
須美は目から込み上げる熱いものを堪えようとしたが無理だった。涙は流し尽くしたはずなのに、零れ落ちるものは止まることを知らない。
三人での思い出を振り返る度に彼女の様々な顔を思い返すことができる。
ついこの前まで、一緒に遊んで、笑って、喧嘩して、戦って……。
乃木園子は須美の隣で泣き腫らしたまま寝ていた。
鷲尾須美の章完結とジード放映開始記念
あとついでにウルトラマンの日記念
やっつけなのでもちろん続かない()
あ、のわゆ最高でした