親からの命令に疲れ、仮面が崩れ始めた陽乃さん。八幡は陽乃さんのために動く。

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遅れました。pixivでは7/7に投稿したんですけど……


七夕の日、腐り目の彦星は仮面が壊れた織姫を攫った

「ひゃっはろー、比企谷君」

 

俺が書店にのんびりと、ボケっと歩いていると、雪ノ下さんに声をかけられた。どこか元気のない気がする。

 

「ども、は、雪ノ下さん」

 

危ない、名前で呼びかけた。名前で呼んだらどうなるかわからない。

 

「どうしたんすか?」

 

「話が、あるの」

 

今回も拒否権は無さそうだ。今までと違う意味で。まぁ、俺はそれだけではないのだが。

 

振り向いて歩き出した雪ノ下さんには話しかけるなオーラが俺より出ていてちょっと怖い。

っと、置いていかれる前に早足で雪ノ下さんの隣に並ぶ。チラリと見た雪ノ下さんの横顔は、悲しげで苦しげで泣きそうな表情を浮かべていた。余程のことがあったのだろう。雪ノ下さんがいつもの強化外骨格を壊すなんてただ事じゃない。

今は黙って雪ノ下さんについていこう。どこに向かっているのかわからないけど。

 

 

 

やがて、商店街から住宅街に出る。街から出るなら向かっているのは公園だろうか。住宅街に入るんだからそれぐらいだと思うが。

 

「着いたよ」

 

雪ノ下さんの声に、足を止め、雪ノ下さんが見ている先を見ると、ちょっとした広場だった。背もたれのないベンチと木が少しあるだけの広場。

そのベンチに雪ノ下さんと隣り合わせで座る。ベンチが1つしかないのだからそうするしかないだろう。俺が立つ手段もあるが。

 

座っても、しばらく沈黙が続く。たぶんだが、雪ノ下さんの話は俺から切り出してはいけない気がする。

しかし、今日俺が雪ノ下さんに会わなかったどうなっていたのだろうか。俺の家に来ていたのだろうか。まぁ、そこは気にすることではない。

 

「比企谷君」

 

思考の海から引き上げられ、俺は軽く雪ノ下さんの方を向く。

そこには涙を流している雪ノ下さんがいた。まさか涙まで流すとは。

 

「あの、ね、私、私……」

 

そこからは無意識に手が動いた。左手が雪ノ下さんの背中に回り、引き寄せ、右手で頭を撫でる。

 

「落ち着いてください。落ち着いてからで、いいです」

 

しばらく、嗚咽と鼻をすする音が聞こえたが、やがてそれも聞こえなくなり、不安定な呼吸が、寝息に変わった。

……いやいや、寝るなよ。話があるんじゃないのかよ。俺も男なんだからそこを考えてほしい。いくら理性の化け物とは言っても、一応性欲だってあるのだ。抱き寄せたのは俺だけど。そもそも人を襲って楽しむほど落ちぶれた男ではないけど。

まぁ、起きるまではこうやって頭を撫でていよう。

 

小町にメールしておくか。帰れるかわからないしな。

 

From:お兄ちゃん

To:小町

Text:夕飯いらん。あと今日帰れないかもしれない。

 

左手で打ったから時間はかかったが、一応送信できた。帰ったら何かお小言はあるかもしれないが、今はそうも言っていられない。お姫様抱っこで家に連れて帰るのもいいが、人気のない場所まで連れて来られたんだ。雪ノ下さんの話は人に聞かせるものではないのだろう。

 

 

 

あれから1時間経って19時24分になった。雪ノ下さんは起きる気配を見せず、それどころかより深く寝入ってる気がする。話を聞くと言った手前、俺が寝る訳にも行かない。かと言ってスマホで電子書籍を読む気にもなれない。まぁ、雪ノ下さんの安心しきって眠る姿を眺めるのもなかなか良いのだが。

 

「ふぁ……」

 

あ、起きた?

雪ノ下さんが顔を上げた。俺は雪ノ下さんの方を向いていた。必然的に2人の距離が近くなる。ほんの数cmほど顔を前に出せば唇が触れ合うほどに。

 

「………」

 

「………」

 

どちらかとも無く近づき……

 

そして、唇が接触した。接触してしまった。

急いで離そうとしたが、雪ノ下さんの腕が俺の首と頭に回され、離れられなかった。細い身体と腕をしてどこからこんな力が出てくるんだか。

抵抗を諦め、俺は雪ノ下さんを受け入れた。ここまでして逃げたら、1時間ほど前の雪ノ下さんのような表情になり、ほんとに人を信じるのを辞めるかもしれない。俺に嘘を付くことにもなるし……。

色々脳内で言い訳をして、雪ノ下さんに回している腕と手に力を込めた。

雪ノ下さんはなんとなく嬉しそうな表情を浮かべる。

拒絶されないのが嬉しい。脳内が雪ノ下さんで埋め尽くされる。

温かい口付け。舌は入れてないのに深く繋がった気がする。気がするだけだろう、ほんとに。

 

何分、何十分ただの口付けをしていただろうか。雪ノ下さんから唇を離す。俺の首に腕を回したまま。だからすぐに口付けできる位置に雪ノ下さんの顔がある。

 

「私、逃げたいの」

 

雪ノ下さんが話し出す。

 

「逃げるのは悪いことじゃないと思います」

 

「君と、逃げたい……」

 

「愛の逃避行、ってヤツですか?それとも、駆け落ちですか?陽乃さん」

 

冗談でもなんでもなく、真面目にそう言う。陽乃さんと居られるなら、どこまででも逃げたい。

 

「一緒に居てくれるの?比企谷君」

 

「いつまででも、どこまでも」

 

俺はすっと立ち上がり、陽乃さんに手を差し伸べた。

 

「今から逃げましょう。なんとなく、そんな気分です」

 

「うん!」

 

見たこともない満面の笑みで俺の手を取り、立ち上がった。

 

 

 

「商店街、寄ってもいいですか?」

 

「駅行くにはそこも通るでしょ?それに目の前じゃない」

 

「そうでした」

 

陽乃さんの手を引きながら早足で、且つ優しく歩く。歩き続ける。

いつの間にか恋人繋ぎで繋がっている手もそこから伝わる熱も隣にいる愛しい人の匂いも、今は俺のもの。そして俺は陽乃さんのもの。重いな。

 

「あ、ここです」

 

「短冊?」

 

「えぇ、俺と陽乃さんがいつまででも、どこまでも一緒に居られますように、と」

 

「……君、あざといって言われない?」

 

「俺は否定してるんですが、後輩に言われますね」

 

ほんとなんでだろう、俺があざといとかありえないんだが。

 

「1枚ください」

 

「はいよ」

 

商店街のおじさんから短冊を貰い、ペンを借りる。

そこにさっき言った台詞を書き、隣の笹に吊るす。

 

すると、陽乃さんも書いたようで。

 

「陽乃さんはなんて書いたんですか?」

 

「私は比企谷君と私が幸せになれますようにって書いたよ」

 

不意打ち辛たん。

 

「じゃ、行こっか」

 

まわりに花を咲かせるような笑顔でそう言った。見ていた男が鼻血を吹いて倒れた。恋人がいた男は蹴り起こされ、いなかった男は近くの人に介抱されている。俺の女みて鼻血出すなよ。その目、潰さなきゃいけなくなるだろ。

 

「比企谷君って独占欲強いね」

 

「きっ、きき気の所為ですよ?」

 

つか心読まないでくださいよ。

 

心の中でもツッコミ、陽乃さんの手を取り、駅へと歩き出した。

願わくば、誰にも見つからずいつまでも一緒にいたい。

 

 

 

「ねぇ、比企谷君。織姫と彦星は天の川に遮られて1年に1度しか会うことが許されないよね?私達がそうなったら、どうなるのかな?何年も何年も七夕に雨が降り続いて会えない時が続いたら、私達は想い続けていられるかな?」

 

「それは仮定の話です。それに俺達は織姫と彦星ではありません。それでもいいなら話します」

 

「それでもいいよ」

 

いつになく真面目な表情で問うてきた。電車に揺られながらゆっくり考える。

 

「俺は……俺が彦星なら隠れて会います。彦星は別名アルタイル。鷲座の一等星です。鷲なら川なんてひとっ飛びだと思います。だから忘れるはずがありません。それに、お互いに想いすぎて離されたんです。ちょっとやそっとじゃ忘れないですよ」

 

「あっはははははは!比企谷君最高!あはははははは!」

 

「ちょ!人、人見てますって!」

 

「あはははははははは!もう大好き!」

 

笑いながら不意打ち。しかもまわりに人がいるなかで。くっそ、頬が熱い。仕返ししてやる。

 

「……俺は愛してますよ、陽乃さん」

 

耳元で囁く。すると、すぐに笑いが止まり、徐々に頬が赤く染まってく。愛の囁きと回りの視線からの羞恥心だろう。ま、俺ならそんなに笑わないけどな。

 

「私も愛してる。これからも一緒に居ようね!」

 

 

 





デアラネタすみません

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