チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性   作:八神っち

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 いつぞやに書いて消したボツ話

 林間学校の辺りから派生している


ボツ話 バッドエンドのその先で

1.定番だけど肝試しってあんまり行かないよね

 

 

 夕飯と皿洗いの後はA組B組対抗?の肝試しである。

 

「補習連中は今から俺と補習だ」

 

 相澤先生の一言により赤点組は引きずられていく。まあドンマイ?

 

「くじ引きで2人一組になるのか」

 

 A組は5人補習だが私が入った事で偶数になる。そしてくじ引きの結果が……

 

1.常闇・障子

2.爆豪・轟

3.耳郎・葉隠

4.物見・八百万

5.蛙吹・麗日

6.尾白・青山

7.飯田・口田

8.緑谷・峰田

 

 

「八百万とか。よろしく」

「ええ物見さんと一緒は頼もしいですわ」

 

 見事に女子同士でペアである。峰田が男女ペアになるように別れろよオォン!って気迫を感じるが気のせいだろう。

 とても肝試しではビビるとは思えないペア2組が出発して、次に女子ペア3組の出発になる。

 ちなみに私はポーチ持参である。なんかもう持ってないと落ち着かない。

 

「おーおー耳郎の悲鳴が聞こえてくんな」

「物見さんってこういう事の経験は?」

「肝試しか?そういやないな。八百万は?」

「私も初めてですわ。でも物見さんは怖がらなそうですし安心です」

 

 どうやら八百万の中で私は怖がらないカテゴリーに入っている様だ。他は?と聞くと先立ち男子4人と蛙吹と飯田らしい。

 話していると地面からニュっと出て来てまつ毛を伸ばすB組の奴。

 

「きゃっ!」

「お……おう」

 

 こういう時どういう顔をすればいいのか分からない。いや驚いたけど!驚いたけど先にシュールという思いが強くなる。

 

「き……キャー」

「棒読みですわ物見さん」

「すまん驚くタイミングを見失ってた。B組もすまん良いリアクションが出来なくて」

「い……いえお気になさらず」

 

 どこからか元普通科手強いという声が微かに聞こえる。何だ元普通科ってA組扱いじゃないのか。

 

「ま、次行こ……八百万」

「ええ……おかしいですわね」

 

 先程から出ている煙。轟と爆豪が先に行っている以上私の知る中でこれ程の煙を起こせる者は居ない……B組も山の中で危ない事はしないだろう。

 

「八百万ガスマスクの量産を頼む」

「……はい!」

 

 私はポーチからゴーグルとカチューシャと自前のガスマスクを取り出し装着する。ポコポコと生み出されるガスマスクを7個程ポーチのベルトに取り付ける。

 

「私は先に行った耳郎と葉隠を探す。八百万は近くのB組の世話を頼む」

「……一人で大丈夫ですか?」

「大丈夫だろ。この先の中間地点にラグドールさんも居る」

「……わかりました。ですが早く戻って来て下さいね」

「ああ」

「ご武運を」

「八百万もな」

 

 さてゴーグルの電波感知機能をオンにして……流石に3分じゃそこまで遠くには行かないよな。

 

「B組の分の電波もあるから結構多いな」

 

 流石現代っ子だ皆携帯を常備である。近くに居る連中から声掛けるか……

 

………………………

 

 ガスマスクを配りながらB組の連中の証言を頼りに耳郎と葉隠を見つけ出す……というよりも行く途中のB組の生徒が背負っていた。

 とりあえずガスマスクを装着させながらそのB組生徒と共に道を戻る。途中で相澤先生から戦闘許可が下りるのと爆豪が狙われている事を知る。

 

「物見!良かった居たね!」

「えーと……拳藤?どうしてここに?」

「八百万から頼まれたんだ。見掛けたら声掛けろって」

「で八百万は?」

「泡瀬の保護をお願いしてる!」

 

 心配性なやっちゃな……嬉しいが。さて託す先も見つけたので私も動こうか。

 

「拳藤こいつを頼む」

「コイツって……ちょ!物見どこ行くのさ!」

「いやーこの毒ガスをどうにかしようかと」

「だったら私達も!……って物見?」

「せっかくの皆との合宿をさー台無しにされてさー心底イラつく訳ですよ」

「物見アンタ冷静になんな!」

 

 安心しろすこぶる冷静だ。

 

「大丈夫だ無茶はしない」

「……本当だね」

「ああ……だから葉隠と耳郎を頼む」

 

 私の目を見て決意した拳藤。悪いな私のワガママに付き合って貰って。

 

「絶対に戻って来なよ!」

「当たり前だ」

 

 まだ見ぬ毒ガス野郎よ……さあ戦争を始めようか。

 

………………………

 

 毒ガスの中心に居る学生服を着たガスマスクのヴィラン。個性のガスの動きで近づいてくる人物の人数を凡そは把握出来ている。

 

(1人だけこちらに近づいてくる……流石名門校。でも所詮人間なんだよね)

 

 300m手前で近づいてくる人物の動きが止まる。木に寄り添ってから動かない。毒ガスにやられたと思っている。

 

(まあいくら近づいても無駄なんだけどね。どれだけ優秀な個性があってもね)

 

 ヴィランはほくそ笑む。懐に手を突っ込み誰か動きが無いかを感知しながら待ちの姿勢を崩さない。

 近づいた人物も木の近くから動かない。

 

(所詮人間……銃を撃てば傷つくんだ)

 

 そう人間とは銃を撃てば傷つく。その傷口から毒ガスが入れば致命傷だろう。そしてこの個性社会、銃を携帯する人物なんぞ皆無だろう。

 

(誰も来な……!!!!!!!)

 

 小さな発砲音。その直後にヴィランの脚……右のアキレス腱が強く熱を帯びる。

 

「うが!……ああああああああ!!!!」

 

 そして遅れて来る強い痛み。思わずその場に脚を押さえて蹲る。

 

(何で!?何で!?何で!?何で!?撃たれた?どこから!?)

 

 脚から流れる血。ヴィランの意識が混濁する。

 

(拙い!毒ガスを遠くに!いや止めて……)

 

 ヴィランが出している毒ガスである。当然ヴィランの意思で止められる。モタモタとしていると再び小さな発砲音。

 

「ああ!?ああああああああ!!!!????」

 

 左肩を撃ち抜かれる。滴り落ちる血と更に重なる激痛に声を上げる。もはや個性どころではない。この場から逃げなくてはと思うが。

 

(足が動かない……!?)

 

 アキレス腱を撃たれている為力が入らずに左足だけバタバタと動く。動く右腕で進もうとする。

 

(足音!?)

 

 ヴィランが反応し銃を構えようとした瞬間に右腕に強い衝撃。

 

「ぐぅ!」

 

 そしてヴィランはここに来て相手を認識する。そこにはスナイパーライフルを肩に担ぎ拳銃を向ける1人の女性。

 

「……ヴィラン連合って奴か?」

「……ぐっ!ああ!?」

 

 ヴィランは再び銃を構えようとするが右手を撃たれて叩き落とされる。

 

「返事は?」

 

 ヴィランはその女性の目を見る……見てしまう。ゴーグルから覗く目はとてもじゃないがヒーローを目指している者の目ではない。ハイライトが消えて無機質にこちらを捉える双眸は完全にヴィランのそれである。

 

「何で!?何で雄英の奴が狙撃銃なんて!?……ぐぁ!」

「返事は?」

 

 質問に答えないヴィランに一方的に銃をぶっ放す女性。それによりガスマスクが破壊される。晒される素顔だが関係無いと言わんばかりに銃を向ける。

 

「返事は?」

「……ぐあっ!」

 

 動かせる右腕と腹を思い切り踏み抜かれる。目線の先には今まで自分が相手に向けて来た銃口が覗く。

 

「……知らない!そんな組織!」

「……そうか」

 

 短く返事をした女性。銃を向けながら空いている左手で手榴弾を取り出し肩の傷口の近くへ置く。

 

「……本当か?」

「………………………」

 

 あのエンデヴァーでももう少し容赦するぞ!?

 

「お前それでもヒーロー候補かよ!?」

「そうだが?」

 

 冷たい返事を返す女性。何がメイドヒーローだ何が修復ヒーローだ。そんな優しい人じゃない。目の前に居るのは完全にヤベー奴である。

 

「返事はしないって事でいいのか?」

「……」

 

 左手に銃を移して屈む女性。そして右手で思い切り口を開けて銃をねじ込む。

 

「話す気になったか?」

「……」

 

 ヴィランはもう完全に泣いている。それでも顔を横に振る。

 

「そうか……じゃあさらばだ」

「……!!??」

 

 撃たれる!そう思って目を瞑ると首筋に強い電流が流れて意識を失う。

 

「……初めてまともに使ったなスタンガン」

 

 女性は気絶しているヴィランの傷口を見て手当てを始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

2、奇術師ヴィランのジャンプ力って人間やめてるよね

 

 

 ヴィランの装備を全部剥ぎ取り傷口の弾を取り出し治療後に縛り上げる。

 

「これで良しっと」

 

 木にくくり付けて放置する。後で引き取って貰わねば。

 

「ここから一番近いのは中間地点のラグドールさんか?」

 

 森の中の道に戻り次の行動を考えていると木の上に何かが飛び出す。

 

「なんだありゃ?B組の奴って訳じゃないよな」

 

 マントを着けて木の上をピョンピョンして見るからに怪しいし追ってみるか。

 

「結構距離あるなー」

 

 ゴーグルのズームで距離を測りながらも移動していると軌道的に投げ飛ばされている様子の3人が見えた。

 

「おーおー無茶するねぇ」

 

 森の中に落ちて行った彼らを追うとそこには見るからにヤバい連中と相対するクラスメイト3名。銃が当たる距離まで近づき木の上の射線が通る位置で息を潜めて出方を伺う。

 

(銃の弾は……入ってるな)

 

 陰で見ていると障子が玉を2つ見せて駆け出そうとするが仮面のヴィランが口の中に更に2つ玉を隠し持っていた。

 

(あれが本命って事でいいんだな?)

 

 焦っている様子の3人。霧らしき何かに吸い込まれる仮面の奴に照準を合わせて引き金を引く。

 

(これで終わりって……いかないか)

 

 顔に当たり口に含んでいた玉を取り返そうと飛び出す3人。1つは障子が掴みもう1つの玉に手を伸ばすヴィランに照準を再度合わせ撃つ。

 

「……っし!」

 

 ヴィランの手が強い衝撃により弾かれ轟が玉を取る。そして取った事を確認した瞬間に轟が最大火力で個性を使い視界を奪う。

 

「ずらかるぞ!」

「ああ!」

 

 チラリとこちらに視線を送る轟。私もライフル置いて退散しますかねー。

 

「うおっ!」

 

 逃げようと思って木から降りた瞬間に熱さを感じて目を向けると私の視界に青が迫る。あーこりゃ無理だ。遠くから誰かの叫び声が聞こえるし。

 

「なんて諦める訳ないよなぁ!」

 

 投げるのは命一杯の壁の欠片、迫る青い炎。

 

「っっっ!!!あっっつっ!!」

 

 大部分は復元が間に合った壁に阻まれたが目前の炎には対処できずに直に焼かれる。弾の薬莢が誘爆して太ももが上半身とは比べ物にならない痛みが生じる。

 

「いっっっ……!!」

 

 ゴーグルにより目は無事であるが腕……というより上半身の火傷も洒落にならない。肌全部から焦げる匂いがするし服も髪も焼けている。

 

(ああ……こりゃ無理だ)

 

 やがて痛みと酸素の不足で私は意識を失う。

 

 

……………………………

 

 

 ヴィラン連合による林間合宿の傷跡は深かった。

 生徒12名が毒ガスによって昏睡状態。

 重・軽傷者11名。その中の生徒の1人「物見 直」が全身火傷による意識不明の重体。奇跡的に一命をとりとめるも未だに意識が戻らず。

 その他多くの犠牲を出して林間合宿が終了となる。

 

 病院で多くの人が悲しみに包まれていた。中でも炎の阻止を出来なかった轟と障子の顔が大火傷の物見を見て曇る。脳無の襲撃から目を覚ました仲が良く一緒に行動してた八百万は大粒の涙を流す。

 その他A組の生徒と送り出したB組の拳藤も今にも泣きそうな顔であった。

 手術後全身の肌が継ぎ接ぎ状態で見るからに痛々しい物見。当然ながら面会謝絶であった。

 

「チッ!余計な事を」

「爆豪!」

 

 拉致寸前に救出された爆豪は悪態をつくも顔は暗い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3、個性が少し変わったよ

 

 

「知らない天井だ……」

 

 炎に包まれてから幾何の時が経っただろうか……体中から痛みと熱がぶり返し目を開けるとそこには「青い線や模様が多数刻まれている天井」がある。そして「それ」を認識した途端に頭痛に襲われ再度気を失う。

 

………………………

 

 この「青い模様」が再度目を開けると天井には無くなっていたが視界を他へ移す度に映り込み認識すると頭痛に襲われる。

 私は目を開くのを諦めて手探りでナースコールのボタンを探し押す。

 しばらくして駆け足で誰かがやってくる音が聞こえる。

 

………………………

 

 私は自分の体の視認すら出来ないまま目にも包帯を着けてもらい担当の医師に説明を受ける。

 何でも体中火傷で焼け爛れていて酷い有り様で病院に運ばれた。運ばれて一時呼吸も止まっていたらしく心肺も弱まっていた。

 治療も難航し学校からリカバリーガールが来て個性を使うも容態は安定せずに生死を彷徨っていたらしい。

 一命をとりとめるも体中に火傷の痕が残り意識を取り戻さなかった。

 また体の中でも太もも部分の傷が深く一時歩けないと言われる。

 髪も完全に焦げてしまってリカバリーガールでも治せない状態だった為首の辺りまでバッサリ切ってしまったらしい。道理で頭が軽い訳だ。

 勝手に髪に手を付けた事を謝られたが気にしていないと返す。

 

 今でも体中に包帯を巻いて経過を見ているとの事。そして極めつけがだ。

 

「個性の暴走ですか……」

「ああ呼吸停止の際に脳が少しダメージを受けてしまってね。君の個性か身体機能に影響が出るかもと言われた」

 

 不幸中の幸いは私の個性が基本害を与える類の物では無い事だろう。だが私の視界に変化が生じている事を話すと医師の声は難色を示す。

 

「脳のダメージの影響か……分かったこの後にまた精密検査を行おう」

「お願いします」

「構わない。久しぶりの寝起きで疲れただろう今日も面会は無しにしとくから休んでおきなさい」

「はい……そう言えば何日程寝ていたんですか?」

「24日……約3週間だ。このまま目覚めないのではとも言われてた」

「そうですか……心配かけましたね」

 

 皆どうしているんだか……暗い視界の中で意味も無い考えを巡らせていた。

 

………………………

 

 精密検査の結果、私の個性に変化が生じてしまっていた。今まで何となくで感じてきた修復部分が自分の認識しない僅かな傷さえも目が……脳が捉えて青い模様や線として現れてしまっているらしい。また傷ついた物の寿命さえも捉えて30日とは言わずに正しく「物の死」が見えていると。

 

「普通は見えない物を見ている訳だから脳の負担も比べ物にならない」

 

 それに加えて個性の暴走だ。青い模様を消そうと意思に関係無く個性が強制発動。病院内で部屋だけだからこれで済んでいるが街に行こう物なら……考えるだけで恐ろしい。

 

「これから大変な生活になるかもしれないがこちらも精一杯サポートする。だから頑張ろうな」

「……はい」

 

 対策が出来るまでは目を閉じての生活になると言われた。

 その日の夜は看護師に付きっきりで介護をして貰った。途中で使っていた痛み止めが切れて全身の痛みと熱がぶり返して気絶した。辛い。

 

 

………………………

 

 ラジオ代わりに聴いていたテレビでオールマイトが引退したと言われていた。マジか。

 また雄英のヴィラン連合強襲は今でも取り上げられ管理体制について厳しく言われていた。私の名前が何回も出た。叩き台にするのは止めてもらいたいのだが。保須の事を取り上げる時にメイドヒーローはやめて?お願いだから。

 連日連夜ニュースで報じられる今後のヒーロー界の行く末。ホントどうなるんだろうね。

 

………………………

 

 リカバリーガールの治療も合わせて数日経ち痛みが引いて来た頃に面会謝絶が解かれる。まずやって来るのは学校関係者であった。

 これまでの事を聞かされた後に無茶した事に対する説教と無茶させてしまった事に対する謝罪。

 個性に関しての説明と今後の進路の是非。一時ヒーロー科から普通科へ戻る事になるだろうと言われた。そも両親が雄英に通う事と全寮制での寮生活を許してくれるかの家庭訪問もあるらしい。

 そして最後に無事……とは言えないが意識を取り戻した事を喜ばれた。

 

 その後に警察関係者が来て事件についての聞き取りが行われた。とは言え私自身ヴィラン連合に関しては本当に何も知らないのだが……。

 警察関係者で時間となりその日の面会時間は終わった。

 

………………………

 

 

 さらに次の日、昨日来れなかった両親が来る。私の痛々しい姿に胸が張り裂けそうな思いだったと涙を流しながら言われた。顔は見えないが悲しさで一杯だろう。

 今後はあるか分からないが心配かけないようにしなければ……。

 父も母も私が女性として少し歪な肌になってしまった事も心配していた。

 家庭訪問は明後日行われるとの事。私は両親と共に病院で。

 

「ヒーロー活動は死と隣り合わせ。そう覚悟していたんだがな……」

 

 まさか女性としての死が近いとは思わなんだ……綺麗な肌を見せてやりたかったな……はぁ。あれ目が濡れている。おかしいな。

 注意一秒、怪我一生とは良く言ったもんだ。

 

 

 

 

 

 

4、少し休むだけだから

 

 

 両親が泣きながらも帰った後に続いて誰かがやって来る。

 

「物見さん……その目は」

「個性がちょっとな……八百万だけか?」

「……いいえ私だけでは無いです。緑谷さんに障子さん、轟さんに常闇さん。それに飯田さんと、相澤先生も引率で居ますわ」

「7人か。それにしては足音が少なかったが」

「物見さんが着替え中だという事も配慮した結果、私が先に見て来る事に」

「そうか。それで他6人はどこに?」

 

 八百万が言うにはロビーで待機中らしい。私は動けないので呼んで貰う。昨日来た相澤先生以外は息を漏らしていた。顔は見えないが喜びの顔ではないだろう。

 

「物見くん目が覚めて何よりだ」

 

 飯田が声を震わせながらも話しかける。恐らく目を包帯で巻いているのが重く見えるのか……はたまた別の誰かと重ねているのか。

 

「おはようございます、とでも言えばいいか?今は何時か分からんが」

 

 朝飯は食べたけど昼飯は食べていないから11時くらいか?

 

「相澤先生も忙しいのに引率ご苦労様です」

「全くだ。本当は生徒は外出は禁止なんだがな。こいつらが話をしたいと再三言ってきて、校長も積もる話もあるだろうから行って来いと許可出しやがった」

「ご愁傷様です」

 

 親の返事によっては雄英で会えなくなるかもだからなぁ。私も相手も。

 

「それで話って言うのは?」

 

 大体想像は出来るが。一時、間が空く。

 

「物見さん……ごめんあの時……体が動かなかったんだ。助けてあげられなかった」

「緑谷か。障子に背負われていた所を見たが、無理をしすぎだ……って私が言っても説得力無いか」

「そんな!物見さんは動いてくれたから、かっちゃんも常闇くんも助かって!」

「助けに来た人が無事じゃなきゃ意味が無いんだ緑谷」

「……ッッッ!!」

 

 すまない今の緑谷には一番堪える言葉だろう。勿論私にもだ。人の事を言えた義理ではない。

 

「ではその助けられた者から謝礼を。物見お前のお陰で助かったありがとう。そして済まない俺がもっと強ければ……」

「謝礼は受け取っておく。これから強くなればいいだろうさ」

 

 助けた人に過去の事は言わない。それが未来を守った者の礼儀だと思っている。

 

「物見すまねぇな……あの時爆豪の玉を掴んで焦って……お前なら無事に離脱する勝手に思い込んでいた」

「油断した私の自業自得だ。轟が気にする事じゃない……って言っても気にするか」

「油断?違うだろ物見」

 

 障子が口を挟む。あんまり話した事なかったなお前とは。

 

「付き合いは短いがお前の事だ。俺たちが離脱出来るかどうか狙撃態勢で見送ってただろう。邪魔が入れば再度狙撃していた、違うか?」

「……さて、どうだかな」

 

 生憎そんな優しい性格ではない。

 

「私も知識としてありますわ。狙撃は一撃離脱が基本、ですが話を聞いた限り2発撃ってその位置に居る……それがどれだけ危険な事か」

 

 八百万お前もか。

 

「私はそんなお人好しじゃねーよ。ただの判断ミスだって」

「ですが!」

「八百万くん落ち着きたまえ!」

 

 飯田が止めに入る。私が原因で内輪揉めは勘弁願いたいが……ホント言えた義理じゃないな。

 

「物見くん意地っ張りな君の事だ。どうしても自分が悪いと思うだろう」

 

 いつも堂々としているのに変わらず声が震えている飯田。

 

「だからこれだけは言わせて欲しい。生きていてくれて良かった」

「……ああ。そうだな」

 

 他の奴等もそうだがもっと聞きたい事が……言いたい事があるだろう。だが聞いてこない。後悔で聞けないのか優しさで聞けないのか。

 

「八百万」

「はい」

「合宿後の約束覚えているか」

「体育祭のリベンジ……でしたわね」

「私の個性が今少しばかり変化していてな。しばらく果たせそうにない」

「そう……ですか」

 

 八百万の声のトーンが低くなる。

 

「だから待っていてくれ。それだけだ」

「…………はい!お待ちしておりますわ」

 

 八百万の声が明るくなる。いい声だ。

 

「話はついたか?」

 

 相澤先生が〆に入ろうとする。あ、1つだけ言いたい事あった。

 

「誰か爆豪に伝言頼む」

「聞こうか」

「体育祭のリベンジ絶対してやるって」

 

 結局爆豪には負けたままだ。しかも完封でだ。

 

「物見らしい」

 

 轟が笑ったトーンで言った。それに釣られて他の皆も伝えておくと元気に返事をする。これでいいんだ……これこそがA組だろう。

 病室を出ていく足音が聞こえる。皆出て行ったのだろう。

 

「物見」

 

 相澤先生の声が聞こえて来る。

 

「心配かけたな」

「何の事でしょう?」

「……お前がそう言うなら、そういう事にしておく」

 

 勘の良い先生だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………

 

 

 テレビを聴きながらぼーっとしているとまた足音が聞こえる。

 

「物見起きてるか?」

「心操か。どうした」

 

 変わらない声色の心操に安心を覚える。

 

「君にしては珍しく無茶したな」

「自覚はあるさ。ホント何してんだか……」

 

 私の声は震えているだろう。

 

「なあ心操」

「どうした物見」

「手を繋いでくれるか?」

「……ああ」

 

 私が伸ばした手に心操が触れる。繊細……とは言えないが丁寧に扱ってくれるのは分かる。

 

「物見……不安だったんだな」

「当たり前だろ……こんな状態で不安にならない程、私は強くない」

 

 手が……腕が声に合わせて震える。それに応える様に心操が両手で私の手を包む。

 

「物見」

「なんだ………って痛っ!」

 

 デコピンを喰らう。つい声が出てしまう。

 

「大方、傷だらけで嫌われるとでも思っていたか」

「……悪いか」

 

 再度デコピン。怪我人だぞコノヤロー。

 

「物見らしくない。俺がそんな事で嫌いになる訳ないだろ」

「そりゃ……まあ」

「全く。いつもすまし顔の君はどこ行ったんだ」

 

 私は普段そんなに感情を出さなかったか?

 

「大丈夫だ物見。俺が居るから。だから安心しろ、どんな姿になっても見てやる」

「本当か?」

「君は止まらないと決めたんだろう?だから追ってやると。そう言っただろう」

 

 言ったな確かに言った。

 

「絶賛止まっているんだが」

「止まっているんじゃない。休んでいるだけだ」

 

 お前そんな屁理屈言うキャラだったか?そういうのは私の役目なんだが。

 

「キャラ盗ってるんじゃねぇ」

「……その声だ」

 

 ずっと変わらないトーンで話す心操。気が付いたら手の震えが止まっていた。

 

「落ち着いたか物見?」

「……お陰でな」

 

 止まらせたいのか止まらせたくないのかどっちなんだか。つい笑ってしまう。

 

「なんか久しぶりに笑った気がする」

「それは良かった」

「……笑わないお前に笑わせられるのは何か悔しい」

「変なところで悔しがるな物見」

 

 私の告白にノーリアクションだったんだぞコイツ。あーなんか悔しい。

 

「寝る!」

「……」

 

 ふて寝に対してもノーリアクションか。いいもんこのまま寝てやる。

 

 

 

 

「物見」

「………………なんだ」

「好きだ」

「………………………バーカ」

 

 片手で布団を更に深く被りながらも手の繋ぎ方は変わ




懐かしいですね☆
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