召喚演舞   作:tonton

4 / 7
 


召喚演舞 舞ノ肆

 

 

 

「なんだコレ……」

 

 それは誰の声だったか。

 島の中央を目指し、一路結界に誘導されながらも行軍していた連合は、今眼下の光景を眺めて立往生を余儀なくされていた。

 

「村、よね。こんな所に……」

 

「いや、集落くらいあっても大して不思議じゃねーが、これはなんつーか、そう。ちょっと規模が真面すぎやしないか?」

 

 小山上に盛り上がっていた丘を往き、蔽い茂っていた森を抜ければそこ広がっていたのは誰がどう見ても“村”である。集落といってもいいのか、そこには生活の色があり、喧騒が聞こえ、所には調理か仕事のものか煙も上がっている。

 壊滅的な襲撃という、ファーストコンタクトとしては大凡最悪に近いだろう邂逅を経て、彼等の認識としてはもっと原始的なコミュニティを想像していただけに、以外と言えば意外だった。

 加えて―――

 

「城ですか――間違いなく拠点の類ですね」

 

 視線の先、明らかに平地の中で異彩をはなっている豪奢な建造物、朱色のお城だった。

 

「島にある集落――先輩たちを襲った怪物たちもここに暮らしてるんですか?」

 

 ルエリィの言葉に、一同緩みかけていた思考を引き締めなおす。

 あまりに真面な光景だったが、ここは異界で襲撃された以上、敵地であるのは間違いないのだ。よってつまり、集落があるという事はコミュニティーが形成されているという事であり、情報が行きかっているという事になる。

 

「ええ、ですがそれもあくまで推察です。私達は圧倒的に情報不足ですから―――なので、情報を探るためにも、ここは少数で斥候を編成する事を提案します」

 

 よって、その選択は不満の声もなく承諾される。

 現状非力さは痛感している所なので、今は皆少しでも情報が欲しいのだ。例え絶望的な差を自覚させられることになっても、何も知らない状態と知っているとでは訳が違う。

 

「――その意見には僕も賛成だけど、誰がいく? なんなら僕は別にかまわないけど」

 

「その提案は却下といいたいですが――現状の戦力で少数に絞る以上、精鋭である事は言うまでもありません。ですから部隊は多くて5~6人。フォルスさんは確定として、あとは―――」

 

「あ、ハイ! 先輩が行くなら私もっ」

 

「――ルエリィさんは却下です」

 

 懲りないというか、恋する乙女は物事を熟考する前に行動に出てしまうらしい。いや、この乙女ちょっとネジの方向がおかしいのかもしれない。にべもなく切り捨てられ、シュンと落ち込む彼女だが、ラディリアが言うまでもなくその結果は見えていたといえよう。

 と、そんなやり取りをしていると部隊の編成が終わったようで、フォルスを中心に集まってっている。確かに彼は両の腕を義手に変えているが、その剣技の冴えに陰るものはない。現状、戦力として信頼がおけ、先駆けとなるだけの実力を持つのが条件になるとおのずとその選択肢は限られてくるのだ。

 

「――じゃ、いってくるよ。定刻になっても合図が無かったら」

 

「ハイ。増援を送りますのでご心配なく」

 

 フォルスは見捨てる選択肢もと言おうとしたのだが、これでラディリアは会話の空気が読めない娘ではない。あえて空気を読まないのである。その表情は笑や和ませるといった気概は皆無であろうから、多分それらも天然で、彼女流の先を見据えた戦略なのだろうが――どうにも読み間違えるのはご愛嬌か。

 今度は勝手な行動がとられないように抑えられているルエリィの姿に苦笑しつつ、フォルスは残りのメンバーを引き連れて丘を後にした。

 

 

 

 

 

 遠目から様子を確認して、予想外に問題なく潜入出来る事かが発覚してから幾らか経ち、フォルス達は驚きの渦中にいた。

 

「いやまさか、人がいるなんて思わなかったが……なぁ、アンタはどう思う?」

 

「……私に聞かないでよ。あと、あまり周囲に忙しなく視線をやるのも感心できないわね。幾らここまで問題ないとはいえ、私達は潜入中なんだから」

 

「あー……ハイハイ。そうでございますね」

 

 その驚愕一つ目、見た目が同じ人が集まってできた集落だという事に咀嚼が上手くいかない彼、アベルトはなんとなしに横の女性に声をかけたが、彼女もどこかの鉄の乙女のように反応は無愛想極まりない。しかもお説教が返ってくる追加サービスに事欠かいとくれば――泣けるぜと首を振る彼の背にはどこか哀愁が漂っていた。

 

「あはは、とりあえず聞き込みかな? 見たところ言葉も聞き取れたし、意思疎通ができないっていう最悪の事態はないみたいだしね」

 

 思わずフォルスも苦笑を漏すほどであり、場の空気を和ますためにも本来の目的に話題を持っていく。

 先の通り、姿に問題はなく、潜入してみれば村の人間が話している言語もこちら側に共通していたものだ。となれば、このまま聞き込み等の本格的な情報収集に移っても問題ないだろう。

 

「君たちもそれでいいかな?」

 

「え? わ、私ですか? え、ええーと――」

 

「――ああ、俺達も別に問題ないぜ。アンタが今は俺らのリーダーなんだ」

 

 と、ここでフォルスが声をかけたのは部隊に選ばれた残りのメンバー男女の二人に声をかける。

 きょどきょどしている女性は人見知りなのかフードを目深に被っているのでうかがい知れないが、横の男が擁護するように前に出てきている。

 こういう組み合わせは決して珍しいものではない。アルカやカゲロウの例もあり、世界が混沌としていた世界で如何に周りが未知で溢れていようと一人で生きていくのは困難だ。故に、二人ないし複数人のパーティーが組まれる事もなくはない。勿論、全体からみれば少数派なのは確かであるが―――連合に選定されるメンバーはある程度パーティーを容認できる者が集っているので彼等の様な者もいるだろう。

 

「いや、そう大げさなものじゃないけど―――うん、まあそう言ってくれるなら――」

 

 などと、フォルスがこれからの方針をまとめようとした時である。

 

「キャーーー!!!」

 

「「!?」」

 

 

 ―――和やかそのものだった村の雰囲気を劈く悲鳴が響き渡った。

 

 

「ど、泥棒っ!! 誰かその人を―――」

 

 悲鳴の元に5人が各々視線を見ければ、売り子姿の女が追い剥ぎにあったのか手荷物を散乱させて叫んでいる。事態を把握するにはそれで十分であり、善悪の区別が明確なら彼等に迷いはなく――こちらに逃走してくる窃盗犯に対して一様に構えを取った。

 

「っ―――手前ラ! そこをどきやが――」

 

 そして誰よりも早く、一歩前に出たのは――女性二人の内の一人、イェンファだった。

 

「野蛮。こういうのを見てるとつい手元が狂いそうになるわね」

 

「――は?」

 

「ま、やり過ぎるなとはいっとくが……女性を狙ったっていうのが最悪てなら同感だ」

 

 その動きはまさに神ががかっているという程に繋がりに無駄が無く。イェンファが収めたままの剣で盗人を転倒させた後、倒れ込む男に動く暇を与えず、アベルトが手に持っていた短刀でその衣類を縫い付ける。しかも一本や二本ではない数の刃に、男は逃走する気もそがれたのか大人しくなっている。

 一連の退治劇の鮮やかさに、思わずフォルスは犯人に同情しかけるが、悪事は悪事である。現行犯である以上言い逃れは出来ず、また彼の末路を決める者は別にいるのだからその先の思考は余分でしかない。

 もはやその必要があるのかも怪しい有様だが、残りの三人で男を取り押さえ再度闘争する気がおきないよう、その四肢を縛って然るべき機関の到着を待つ。

 その淀みの無い寸劇に周囲から拍手が漏れたのは完璧に余談であるが―――

 

 

 

「ほん、と―――――にっこの度はありがとうございました!!!」

 

「あいや、そんな大したことした訳じゃないし」

 

「ほんとに、貴方は傍観して縄で縛っただけだものね」

 

 亜麻色の髪をした女性に感謝の言葉と共に深々と頭を下げられ、フォルスが恐縮していると横から容赦のない零点の突込みが飛んでくる。本当に、彼のまわりの女性は要y差が無いというか、彼が自身の星回りの不遇さに嘆いていた時だった。

 

「あの、それでこれ、お礼という訳ではないですがよかったら―――」

 

「コレは―――茶菓子、か?」

 

 女がおずおずと差し出したバスケットには、手作り感がありながら綺麗に整えられた焼き菓子が一杯に詰まっていた。

 

「いいの? 見たところ売り物みたいだけど」

 

「いえいえ! 助けてもらった手前、こんなものしか渡せるものが無いのが申し訳ないくらいですからっ」

 

 手作りといってもそのクオリティは決して安いものではないだろう。

 助けてもらったお礼と言われれば行為を無下にするのもはばかられるが――かと言って素直に手に取るには敷居が高いように感じてしまっていた。そんな彼等に待ったをかけたのは、意外な人物だった。

 

「か、彼女がそういうならもらってあげてもいいんじゃない?」

 

「イェンファ?」

 

 横を見れば興味を隠せずバスケットの中身をちらちらと見ていた彼女の様子が見て取れた。

 それを見れば、指摘するのも無粋だろう。もともと善意で助けたものであるし、くれるとわざわざ渡してくれるのだからその行為を無下にすることもないだろうとフォルス達が菓子に手を伸ばした。

 

「じゃあ、折角だから一つ」

 

「―――っ、―――っ」

 

「うん! コレ、すっごくおいしいね」

 

 約一名喜びにプルプル震えている事からも察してもらえるだろうか。その焼き菓子は相当に美味しかった。村の概観を見るにそこまで技能が発達している様には見えないのだが、素朴故の味の奥深さとでもいえばいいのか、見た目もさる事ながら味も申し分ない。

 

 ―――のだが、思わずフォルスが二つ目に手を伸ばした時である。

 

「―――あれ? 君達は食べないの?」

 

「わ、私はお腹すいてないから」

 

「俺も、というより甘いものはあんまり好きじゃねえ」

 

 何に遠慮しているのか、5人の内の二人の男女が輪から離れる様に遠巻きに見ている。

 一応興味が無い訳ではないのか女の方はバスケット方を注視してるが、そこから一歩も動かない辺り意志は固そうである。確かに強要するような事でもないかと割り切り、売り子の女性に断わって数枚包みに詰めておく。確かルエリィも甘いものは好きだったはずなのでこの手吞み上げは喜ぶだろう。何しろ見知らぬ土地の食文化には抵抗を示すだろうが――食わず嫌いに捨て置くのは勿体ない味だった。

 

「そうか、もったいない。けっこういけるぞ?」

 

 横で食べていたイェンファは言うに及ばず、アベルトまで進めるのだから相当の出来だ。その手に数枚持っている事からも察せられ、そこでついにフードの女が興味に屈したのか足を延ばした時だ―――

 

「うん。これならルエリィも喜んで―――!?」

 

「フォルス!?」

 

 突然フォルスがその場に蹲って倒れ込む。

 その体は苦しみを訴える様に痙攣しており、尋常な事態ではないのは確実だった。

 そして、フォルスが倒れたのを契機にイェンファ等もその場に膝を屈する。連続で起こった異常、しかもその症状が現れたのはこの場にいる6人中、3人で、その症状の前に取っていた行動が売り子の焼き菓子を食べていたとなればつまり―――

 

「―――、これってっ」

 

「ああ。やっぱりこの程度―――本当に、他愛無い」

 

 ――そう、答えなど考えるまでもない。

 

「この程度の罠も見抜けないような細胞どもに何を聞くというのか」

 

 独特の籠ったような声には聞き覚えがある。高さだとか女性らしさなど差異はあるが、そのエコーがかかったものは嫌な情景を髣髴させる。

 そう、海岸を襲撃したが怪物らと同じ特徴を持った声だった。

 

「所詮分かり切った押し問答にしかならないというのに――■■■の好奇心にも困った物ね」

 

 全体的に血の様な赤みのかかった衣装に黒い布で顔を半分覆い隠してるそれは、立ち姿こそ別個体だが、その身が放っている歪みは見間違いようがない。この島に来て彼等が遭遇する。三体目の異形が彼女だった。

 

「テメェ、何もんだっ」

 

 残った男が隣にいた女を庇うようにして前に出て鎖付きの短刀を握る。

 だが、一応に応戦の構えを取っていた彼だが、現状が不利であるのはもちろん承知していた。

 後ろで倒れているフォルス達は不用心極まりない自業自得であるが、彼等を見捨てようと今現状で自分たちが目の前の異形から生き残れる確率は数えるまでもなく低い。

 故に話を繋げて場を繋ごうとするが――彼もうすうすは気付いていた。この目の前の怪物は最近身近にみるわ無を聴かない類の生き物だ。

 

「――あら、何者だとはご挨拶ね。ここは私達の土地、招かれざる客はそっちでしょう? それと――そうね後ろの女、何をしようとしてるのかおおよその見当つくけど、やめておいた方が賢明よ。どうせ私達には利かないし、折角苦しまずにいられるのだから、せめて大人しくしてなさい。そうすれば少なくとも、あの人に引き渡すまでの安全は保障してあげる」

 

「あの人?」

 

「ええ、要は私は単なる案内人なの。彼女が用があるのはそこの三人で事足りるけど―――だから悪いけど、ここから逃がすつもりはないの……というより、今更逃げれるつもりなのかしら」

 

 そして、異形が周囲に視線を巡らせると――そこらかしこから村人がのろのろと現れる。

 よく見るまでもなく尋常でないのは明らかで、紅く光る目から鍬から包丁、大凡井戸端会議に出てきたというには無理がある有様だ。付け加えれば、口を開けば許すものか、殺せなどと物騒な単語をぼそぼそと呟いている。とてもじゃないが友好的な雰囲気ではないのは言うまでもない。

 

「ねえ、だから大人しく武器を捨てなさい。その方が貴方達の為だから」

 

「そうかよ。で、俺がソレに素直に従うとでも思ってるのかよ―――だったらワリィな。俺は別にそこのヤローどもがどうなろうが別に――」

 

「ああ、別に、私も煩わしいのは嫌いだから、抵抗してくれるならその方が助かるわ。話を聞くだけなら一人いれば事足りるでしょうし、■■■にはそれで納得してもらいましょう」

 

 暗に攻撃、逃走にでれば容赦はしないという怪物を前にすれば途端に手に持つ武器が頼りなくなってしまう。後ろに控えてい女も肝が据わったのか、戦闘態勢を整えてはいたが、如何せん状況は悪い。口ではどうでもいいといった彼ではあるが、現状二人でどうにかなると楽観する程彼も馬鹿ではない。

 

「そう――利口ね。ああ、貴方達にも用があるから、大人しく来てもらいましょうか――別に貴方には慣れ親しんだことでしょう? ねえ―――■■■」

 

 そして舌打ちしながら武器を投げ捨てた男に、異形は何か聞き取れない言葉を漏らす。

 その言葉に。聞き捨てならない何かを覚えつつも、今は従うほかないと二人は城へと連行されていった―――

 

 

 







【速報】サモンナイト5、出演者勢揃いのお知らせ。

「え?」「は?」「オイ……」

「私達(俺達)の出番は?」

 ども! ギリギリ今日中に投稿できましたtontonです!
 いやー場面的にはあまり進んで無いように思えますが、これもキャラを出し切るまではこの流れなのでご理解ください。そしてついに、サモンナイト5側が出演者決定(仮)です! もともと主要キャラは8人で選定していますので、前記の彼等の出番はお察しというやつです。大人の事情です―――失敬w ですが、まだまだ終盤まではありますし、彼等を選び、他のキャラを捨てた理由もコレから徐々に明らかにしていくのでその点もお楽しみに!

 所で……前話と今回にでてくる異形の正体って把握できてます? 前回で解らない人も今回で解るかも?

 では、この辺りで短編の方は失礼しますデスー
 よければ感想下さい。お疲れ様でした!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。