少年は花を喰らう。少女は花を喰らう。それは全て、自らが生き残るために。
イノチに寄生した花、自らの運命を紡ぐために他者のイノチを喰らう、そんな花人たちの物語、そのほんの一部分・・・

さて、どんな物語なのだろうね?










これは、『しいな』さんという方が行っている、世界観共有で小説や漫画、イラストなどを投稿する企画に参加させていただいたものです。なので、唐突に消える可能性は大いにあります。問題があった際には消すことになります。
また、企画が気になった方や参加したいなと思った方、大元の設定が気になった方はしいなさんのTwitter、『@crow0551』に行ってみてください。そして興味がわいたら書いてみてください。こういう世界観大好きなのでbiwanoshinが喜びます。小説形式だとなお喜びます。

また、個人で何かあった際の責任は個人でお願いします。自分も自分で起こしてしまった責任は自分で取りますので。


また、原作名を『オリジナル作品』としていますが、これは企画名を原作名としていいのか分からなかったが故の対処です。

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設定的にかなりやりたい放題してしまった感はあるので、唐突に消える可能性大です。
あと、サブタイトル『壱』とかなってるけど、続きも他のキャラのお話も何にも考えてません。この壱話で完結する、くらいのつもりでいてくださると大変ありがたいです。




曰く、その花は命に寄生するという。

いつの時代からなのか、体に花が咲く人間が現れだした。

あるものは頭の上に、帽子のように。

あるものは首に、首飾りのように。

あるものは腕に、バンクルのように。

あるものは手首に、腕時計のように。

あるものは足に、アンクレットのように。

 

されどその花は、装飾具(アクセサリ)などという生ぬるいものではなかった。

時がたち、開花した花の苗床となって死ぬものが現れた。

時がたち、死者の花を喰らったものが中毒症状を催した。

時がたち、超常的な力を振るう魔法使いが現れた。

そして、時がたち……欲望のみをもつ化け物が、現れた。

 

死人が出だした辺りから研究が本格的なものになり、中毒患者が現れた段階で花に蝕まれた人間が保護の対象となり、魔法使いが現れた段階で保護対象から隔離対象となり、化け物となった段階で、それは人類の敵となる。

 

当然の結末。当然の展開。当然の帰結。

自分たちの手で管理できないものが、彼らの敵とならないわけがないのだ。

 

そうして始まった、人とバケモノの争い。魔法すら使えるバケモノが有利とみられていたはずのその争いは、しかし人の勝利で終わる。

未だ能力を持つものが少なかった、花を持つものが少なかった。そう言った要因から、数で攻めることのできる人が強かったのだ。

 

そうして、結局世界の覇権は人が握った。ではその後、世界はどうなったのか。

まず、数で有利となれるとしてもバケモノの淘汰は不可能であった。その後も原因不明で増える花に対処できるはずもなく、故に隔離という道を選んだ。

隔離先は、廃墟と化したかつての首都周辺、トウキョウ。

 

これは、花に寄生された花人(かじん)、異能力者となった彩花(さいか)、バケモノと化した徒花(あだばな)、そしてそれらに関わる変わり種の健常者(けんじょうしゃ)

彼らによって織りなされる物語だ。

 

 

 

 F

 

 

 

「フンッ!」

 

背後から襲い掛かってきたヤツの顔面に足を叩きこんで気絶させる。鼻が潰れているところを見ると、ちょっと力を入れすぎたかもしれない。とはいえ、そう大きな問題ではないだろう。

 

「さてっと、お花はどちらに……あったあった」

 

気絶しているのをいいことに上半身の服をはぎ取って蹴り転がすと、背中に咲いているのが分かった。薄くくすんだ紫のジャスミンの花。花には詳しくないし実際にあるかないかなんて関係なく様々な色の花が咲くので、それが実際にあるものなのかどうかは分からない。

というかそもそも、そんなことは関係ない。

 

「あー、色欲かぁ……我慢できなくなっちゃったんですかね、っと」

 

もしかすると情状酌量の余地があったかもしれないけど、しかしまあ他で被害者が出るだけかとその背に寄生している花をつかみ、引く。苦しむような声がして、それに構わず引き抜いていくとそれに合わせて体が皮と骨だけになっていく。完全に抜けるころにはもうミイラのようになっていた。これはまた、大分と手遅れだったようだ。徒花一歩手前である。

 

「さて、それでは。いただきます」

 

手を合わせて、そのまま丸っと一飲みする。そのまま首筋に手を伸ばすと、より蕾に戻っているのが分かる。しばらくはなくても問題なかったんだけど、まあ思わぬ収穫ってことで良しとしよう。

 

「しかしまあ、今日みたいなことがあるんだったらもうちょっと露出抑えた方がいいのかも……ジーンズでも見つからないかなぁ」

 

今殺した相手のものはサイズが合わない。色々面倒があるのは事実なのでどうにか探そうと心のスケジュール帳に記してからもう少し物色し、何か持っていないかだけ探る。

 

「カギとサイフ、腕時計に……これだけか。カギはどこのか分からないし、サイフと腕時計だけでいいや」

 

こんな廃都では店なんてものは存在しないが、廃都とその外との間を行き来する密売人、なんてものは存在する。外で禁止されている行いをしているのは事実だが、それでも今隔離された私たちへ行っていることは善だ。花が生え、人間をやめたなどといわれるが異能を除けば必要な栄養素が一つ増えただけだ。食を失えばいずれ死に至る。

 

「多少割高なのが珠に瑕ですが……まあ許容範囲でしょう」

 

外でバレれば処刑されかねないことではあるのだし、手間賃とみておくことにする。人は十の善で成り立つことはできず、できてしまったものはただの狂人でしかない。八の善と二の悪。これが最適解であり、バランスが崩れるにつれその存在は悪となる。あの売人たちは七対三と言ったところだろう。

 

「……うん?」

 

と、作業を終えたところで無駄に騒がしく感じた。大多数の声ではなく、二人ほどのもの。逃げるものと追うもの、それに伴った足音。はっきり聞き取るために聴覚に集中すると、少なくとも追っているものは悪だ。

 

「……どうして、齢17の私でも分かるようなことが分からないんでしょうかね、人間って」

 

このような状況、心がすさむからこそ善であらなければならない。善を失った先に残るものなんてそれこそ死んだ方がいい。聖都と変わらない考えだと何故気付けないのだろうか。呆れかえりながら足元へ集中。駆ける。特別必要というわけでもないが、食べておいて困ることはない。何かの工場跡。その側面にある階段を上っているところだったため跳び、一気に追いついて……

 

「ち、地下から女性が!?」

「んだ(アマ)ァ!」

「うっさい!」

 

柵に手を置き、眼鏡の男性を超えた先で足を振りぬく。いつも通りの感触と共にそれを蹴り落とし、しばらく転がった先で頭を打って動かなくなった。今度はこれで死んだかもしれない。しまった、花を抜く前に死んでしまったら栄養を吸い取ってくれなくなる。

 

「やらかしたかなぁ……まあ、仕方ないか。どう見ても悪十だったし、うん」

「あ、あの……」

 

近づいて首筋に指を当て、しっかりこと切れていることを確認する。がっくりしながら花をむしり取る私に対して、背後から声が。そう言えば、なんか追われてる人いたな。

振り返ると、私より年上そうな、ひょろっとした明らかに弱そうな人が。なるほど、確かにこれは狩りやすい獲物として狙われそうだ。

 

「どうしました?これが欲しいのでしたら差し上げますけど」

「ああ、いえ。そうではなく。そちらについては足りてますから」

「……意外ですね、正直」

「あはは……徒花の方だったら、罠にはまってくれやすいんですよ」

 

なるほど、罠か。そう言った方面では技術も道具も足りていないから、考えすらしなかった。たまに異能持ちの徒花と当たってしまいすっごく苦労するので、正直羨ましい。

 

「そうじゃないなら、何?」

「あー、いえ、その……」

 

と、そう言い悩む男の袖から覗いた花はマツバギク。だらしなく生きるような奴が何を提案するのか、面白いものが見れるのではないかと少しばかり期待してみると。

 

「ちょっと、ある組織について、話を聞いてくれませんか?」

 

どうやら少しばかり、面倒事になるかもしれない。

 

 

 

 L

 

 

 

体のどこかへ咲いた花について、分かっていることは極わずかだ。

感染理由は不明。人に咲き、開花と共に苗床の命を奪い、その死体に咲き乱れる。

花に蝕まれた人間は花人(かじん)と呼ばれ、基本ただの人間と変わらず、むしろ病床に伏せる場合が高い。

そのなかで鮮やかな花を咲かせたものは彩花(さいか)と呼ばれ、ビックリ異能力を保持する。これはまさしく、化け物だ。

そしてその先に。その運命を歪にたどった先として、徒花(あだばな)と呼ばれるものとなる。七つの大罪、それに沿った人生を送ってしまえば、待っているのは真のバケモノである。大罪の七感情、それに忠実に生きるだけの、異端者。

 

これが、花に蝕まれた者たちについての情報。では、花について何か分かっていることはないのか。

 

まず健常者が食せば、それは麻薬となる。行き過ぎれば毒となるだろう。

また、様々な種の花が咲く中で七種だけ、宿主の性格を如実に表す花がある。

 

怠惰の感情を強く持つものは、マツバギクの花を。

色欲の感情を強く持つものは、ジャスミンの花を。

傲慢の感情を強く持つものは、デルフィニウムの花を。

嫉妬の感情を強く持つものは、シクラメンの花を。

憤怒の感情を強く持つものは、シャクヤクの花を。

強欲の感情を強く持つものは、グロキシニアの花を。

暴食の感情を強く持つものは、ルピナスの花を。

 

しかしこれらは、あくまでも宿主の性格を示す指標にしかならない。徒花は必ずこの中のどれかを咲かせているが、だからといってこの花を咲かせていることが徒花であると一致するわけではない。必要条件にはなりえても、十分条件とはならないのだ。

 

たったこれだけしか分かっていない状況で人間が花を許容できるはずがなく、また同時に花人たちですら自分たちを許容できるわけがない。

うん?花人たちで協力して人間に勝てないわけがない、って?おいおい、そんなはずは……っと、まだ教えていないことがらがあった。本当に申し訳ない、最近物忘れが激しいんだ。

 

開花と共に宿主の命を奪う花。その開花を送らせる方法は、ただ一つ。

 

 

他人の(イノチ)を、喰らう(ウバウ)こと。

 

 

ただそれだけでしか命を繋げない者たちが、滅びの運命をたどらないだなんて。そんなはずないだろう?

 

 

 

 O

 

 

 

「で。話ってのは、何?組織って何のこと?」

 

場所を変えて。あの男の隠れ家だという場所にやってきた私は、ソイツの……キミヒトの出したお茶を口にしながら話を促す。こうしてそいつのホームに来たことは少しばかりうかつだったとも思うが、問題ない。そも、私の能力ならどんな状況からでも脱出できる。

 

「う、うん。僕を追ってたやつ……あ、ミナミさんが蹴り飛ばしたやつね?アイツも参加してる組織なんだけど、色々とやってるっぽくて」

「その色々ってのを聞いてるんだけど?」

 

出されたクッキーをかみ砕きながらにらみつける。お手上げのポーズを取りながら、口を開いた。利口なのは嫌いじゃない。

 

「まず一つ目に、花の収集。さっきのみたいに、弱そうな花人を一人か、もしくは複数で狙って狩ってる。まあこれは、」

「よくあることよね、廃都では。ある種悪ではあるけれど、それでも自分たちが生きていくのに必要な狩りは必要悪よ。六対四くらいね」

「まあ、うん。ボクもそう思う。徒花とはいえ罠にはめて花を奪ってるわけだしね」

 

それはそうだろう。見たところ首筋の花は少し開きかけ、と言ったところだ。ある程度定期的に食しているのは間違いない。

 

「でも、それだけじゃない。その狩りの量と目的が異常なんだ」

「異常?」

「うん。組織の人数なんかはアジトにしてる倉庫を見張っておおよそ割り出したんだけど、先月だけでその人数が生き残るのに必要な量の約五倍」

「……どうやってその量を知ったのかは、聞かないでおいた方がいいのかしら?」

「あ、大丈夫。さっき追われてたのが侵入してそれを探ったからだから」

 

なるほど、それはあれだけ追われるわけだ。二人そろって狩ってしまってもよかったかもしれない。まあ、後の祭り、後悔先に立たずだ。気にしないことにしよう。その必要があるなら終わってから狩ればいい。

 

「それで、目的が異常、って言うのは?」

「うん、それについてなんだけど……その、過剰に反応しないでね?ボクがやってることじゃないからね?」

「分かったからとっとと話しなさい。これ以上引き延ばすならそれこそブッ飛ばすわよ」

「わぁ!分かった、これ以上もったいぶりません!」

 

であればよろしい。私は腕を降ろす。

 

「えっと、ですね。年若い彩花じゃない女性を、花人健常者問わず浚っていまして」

「なんとなくわかったからそれ以上は口を閉ざすように」

「ハイ」

 

手に口を当てるその様子がおどけているようで、少しイラッとした。しかしまあ、若い女性を、というのなら目的は分かりやすい。つまりは、いたすつもりなのだろう。

この上なく反吐が出る。間違いなく、九か十で悪だ。

 

「なんとなくわかった。それで、まだ何か情報があったりする?」

「えっと……さっきのの続きなら、1つ。それもとびきりのが」

「ふぅん?さっきのの続き、ねぇ……」

「睨まないで下さーい。ボクが何かしたわけじゃないでーす。むしろボクは無実でーす」

 

いい加減イラッとしてきた。命の危機かそれに殉ずるものを感じるとこうなるっぽいし、そう言った言動は避けるべきなのかもしれない。私がするのは癪だけど、かといって毎度毎度イライラするのでは割に合わないだろう。

 

「それで、なにがとびきりの情報なの?」

「えっと、その、さっきのやつの続きで、その先で生ませた子供がいまして、ですね」

「ほうほう、子供が。なるほどそこまでする、と」

「落ち着いてくださいお願いします。えっと、その子供なんだけど……かならず花人らしくて」

 

瞬間、私はその言葉の意味を理解できなかった。

花人がこうして隔離されている最大の理由は、感染原因が不明ということだ。だというのに、生まれてくる子供全員に花が咲いている……?

 

「私、この花は母子感染はしないって聞いたことあるんだけど、何?両親ともに花人だと子供にも花が生えるの?」

「そんなことはないよ。ボクの知り合いに花人の夫婦がいるけど、子供はなんともなかった。二人とも、『自分たちみたいな人生を送らなくて済んでよかった』って安堵してたし」

 

だとすれば、やっぱり。その状況は異常だ。それにさっき健常者であっても連れ去っているって言ってたし、ってことは親がどうなのか、ってところは大して関係ない。

 

「つまり、そこが謎で、最も異常、と」

「そう言うこと。ちなみにここからは想像つくかもしれないけど、生まれた子供の花は当然毟るし、禄に子供を生めなくなったら女の花も毟る。そうして自分たちが生きる以上に集まった分は塩漬けにして販売、って寸法」

「ふーむ……」

 

花の塩漬けは考えたことがない、って言うのは置いといて、だ。

販売する、って考えだけは認めてもいいと思う。それでも、採集もとは徒花出会ったほしい。花人、彩花からの採集という点が大いに悪だ。生まれたばかりの赤ん坊からって言うのは……どうだろう。圧倒的に弱いものから奪い取るという観点から見れば悪だけど、生きるということの意味が分かっている者から奪うのに比べればまだ何も分かっていない者から奪う方が善なのかもしれない。

 

「とまあそんな組織があるわけなんだけど、ここからが本題です」

「導入だったわけね」

「はい、導入でした。んでまあぶっちゃけ本題なんだけど、一緒に潰すの手伝ってくれませんかね?」

「ふむ……」

 

ある程度予想通りの提案に、私は自分の中で判定を始める。判断基準は、共存すべき善であるのか、許容すべき悪であるのか、打ち倒さなければならない悪であるのか。それを、まず目の前の男、キミヒトについておこない、その評価をもとにその組織とやらについて行う。

まず、キミヒトについて。現状私に対して毒物を出す気配はなく、同時にその存在に対して我慢ならない事情がある。その事情については不明だけど、現状それを邪魔なものだと判断する思考は正しいものだろう。

であれば、コイツは善だ。六四か七三くらいの。

 

そう考えると、その組織とやらについて教えられたことは事実だろう。都合の悪い情報は流しているだろうけど、それだけ。嘘の情報を流してしまえばその分だけ不利になるのだし、だとすれば言われた情報はすべて真実。その情報だけでも、悪と断ずるのは容易い。

まだ知らない事情、そしてそう言った行動を取っている理念が不明なので、三七で悪だとしておこう。

 

であれば。方針は決まった。次に決めるのは、方針を実行するための手段だ。それがなくては何もならない。

考えるまでもない。キミヒトにも何らかの手段があるはずだ。そもそも罠を主に用いるようなヤツが何も決めていないはずがない。

もしそれがなかったとしても、私の能力を使えばなんとでもなる。組織である以上使用量は増えるだろうしその分花も開くかもしれないが、その組織にいるのが花人ならば、開花した分程度には摂取できるだろう。

 

「悪を喰らい、善が残る。これが、世界の理」

 

自然と口から洩れた、一つの思想。この考えが正しいことは歴史が証明している。

歴史家の一部やそうでない知識人を名乗るだけの腑抜けどもには、間違った歴史であると言う者だっているが、現在まで続いている中で行われた勝者の行いは、全て正しいものに決まっている。でなければ現代まで滅ぶことなく続く世界があるものか。

 

「分かった、その考えに乗る。なにか現状決まっている作戦はある?」

「ありがとう、直感だけどそう言ってくれると思ってた。罠に武器、一通りボクが保有してるものを見せながら説明するから、来てもらってもいいかな」

 

差し出された手を取る。協力者としっかり握手しておこうというこの考えは、大いにプラスだ。善だ。

今回の作戦の結果、内容次第では今後もつながりを持ってもいいかもしれない。

 

 

 

 W

 

 

 

おや。君、まだいたのかい?物好きな人だな。

しっかり説明したはずだよ?あの花に囚われても、魅入られても、何の利益もないってことは。それとも、あれくらいでは何の脅しにもならなかったのかな?だとすれば、君はここから先に進んでも大丈夫かもしれない。

まだ先があるのか、って?あるにきまっている。だってまだ、花についてしか説明していないんだからね。命に寄生する花、その特性については全て説明したけれど、まだ宿主についての説明が済んでいない。そう、その命を花に握られた人間のお話だ。

いや、もしかすると犬や猫と言ったものに寄生していることもあるのかもしれないね?そういった動物たちがどんな生涯をおくるのかは……正直、想定の範囲外だ。花を喰らうことのできない肉食動物がどんな生涯をおくるのかとか、大いに興味があるのだけれど。

 

おっと、しまった。せっかくの聞き手を放置してしまうとは、大変失礼な真似をしてしまったね。どうか許してほしい。これほどまでに話せる機会というものは、あまりないんだよ。

 

さて、それでは。今度こそ語ろうか。寄生された人間の行く未来について。

まずは、簡単におさらいしようか。

 

花人。多くは病床に伏せることとなる。そうでなかった者も身体能力は人間と変わらない。

彩花。花人の中でも特殊な能力に目覚めたもの。その花はとっても鮮やかできれいなことだろう。

徒花。これは悲惨だ。ただただその欲望にのみ忠実に生きるバケモノ。もはや人間には戻れないと考えた方がいいね。

そして全ての花人に共通するのが、他人の花を……他人のイノチを喰らうことでのみ生き残れる、ということ。

 

そう、重要なのは最後の一つだ。生き残るには、他人のイノチを喰らうしかない。すなわち、殺し合いの運命が決定づけられているわけだ。

ほら、想像するのも容易いだろう?他者の命を奪うしかない存在なんて、ロクな人生を送られるはずがない。

 

それしかないとなれば、人間が次にとるのはその生き残るための行動を取れるよう、自らに許可を出すことだ。

最も簡単なのは、強者の下につくこと。徒花を、又は彩花、花人を狩れるだけの強者の下につき、その加護を受ける。その分差し出すものも生まれるだろうが、生存への対価と考えれば安いとする者も多いだろう。

 

次に考えられるのは、善人の善意にあやかること。このような世の中、ありったけの善意のもとに花を徒花から奪い、配るものもいることだろう。見つけるまでが難しく、またそういった無償の善意を受け入れることは非常に難しいが、それをクリアできるのであれば比較的容易な手段だ。

 

そして、この次。このような非日常的な状況であればハードルは下がるが、人殺しを容認してしまえばいい。仕方のないことなんだ。生き残るにはこれしかないんだ。あの人のためにするしかないんだ。あの人が生き残るためなんだから仕方ないよね。様々な理由があげられるが、そう言った理由で行えばいい。この枷が外れてしまった人間は、容易に狂う。いずれ徒花へと至るであろう運命にすら気付かず、走り抜けるのだ。

 

最後に、最も難易度の高い方法。自分の中に、ルールを作り出してしまえばいい。例えば彼女のように、善悪、みたいな感じでね。それで何が変わるのかって?大いに変わるとも。しっかりとブレーキはかけられる。こんな状況で明確なルールを定められるような人ならば、踏み外す可能性もないしね。だから、ある意味では最も生き残れるのかもしれない。徒花へと駆け抜ける、ということもないだろう。

 

まあ、そうはいっても。

自分についても、他人についても、社会についても。その全てについて善悪を決めるだなんて、そんなの……『傲慢』以外の何物でもないんだけどね。

 

 

 

 E

 

 

 

「ちゃんと準備できてるんでしょうね?」

「大丈夫、罠は全部設置してきたしおびき出す準備も済んでる。『運送屋』に時間指定で届けてもらうから」

 

だったらいい。ここまでして準備不足でした、では済まないのだ。怠惰を身に宿すような奴が何でここまでとは思うけど、まあそれはいいだろう。誰しも事情があって、誰しも譲れないものがある。得てしてそれは復讐劇とかの分かりやすいものであり、かつ消し去ることのできない悪であるものだ。

人はそれを否定するかもしれないけれど、その考えをこそ否定する。内容次第ではあるんだけれど、復讐は人がその後を生きるために必要なものだ。そうしなければならないものだ。故にそれは、善ではなくとも必要な悪であろう。

 

「じゃあそれまでの間に内容を確認しておきましょうか」

「そうだね。まず、あの手紙である程度人数を外におびき出す。さっき侵入したときに盗み見た情報を載せておいたから、是が非でも殺しに来るはず」

「そうして一定量戦力が消えた倉庫に殴り込みをかける」

「そう。必ず消すために主力を出してくれるはずだし……そうなれば、残りの戦力くらいならミナミさんと武器ひっさげた僕で何とかできる」

「当然よ。むしろ私一人でも十分なくらいだもの」

 

一体これだけの武器をどこから持ってきたのだろうか。前科を探ったらどれだけのものが出てくるのか気になるところだけれど、まあちゃんと使い道を誤っていないのだから問題ないか。

 

「……来た」

 

と、そう言う先では確かに運送屋が手紙を届けている。あれはここら一帯で最強といってもいいレベルの彩花であり、報酬さえ払っておけば情報を漏らすこともない。喧嘩を売れば間違いなく潰されるようなやつだからこそ、こんな世界で運送屋をしていられるのだろう。

 

渡し、そのまま立ち去る運送屋。そしてそれに続くように、しかし異なる方向へ向かう集団。殺気立った様子からしてしっかり中身を見てくれたようだ。しかしここまであっさりとおびき出されるとは、頭の中身が非常に残念なんじゃないだろうか。

 

「さあ、それじゃあ……」

「始めましょうか」

 

十分に距離が開いたのを見てから、立ち上がる。正面から馬鹿正直に攻め込むつもりはないので裏に回り、裏口をピッキングして入りこむ。

さて、始めよう。悪を喰らい、善が残る。そんな当然の結末を。

 

 

 

 R

 

 

 

全く、君は一体何度ここに来るんだい?もうこれ以上語ることなんてないって言うのにさ。

え、結局この後あの二人がどうなるのか、だって?それは君、ちゃんと自分の目で確かめなくちゃ。他人からの伝聞で済ませようとしてはいけないよ。

でも、そうだね。途中経過くらいであれば、教えてあげよう。これくらいなら、サービスの一環としても大丈夫だろうし。

 

まず二人は、首尾よく忍び込むことに成功した。裏口を開けたらそこに何人かいて早速バトルとかそう言うこともなく、中で移動している最中に空き缶を蹴ってしまい音が響くようなこともなく。首尾よく、本当に何事もなく侵入を果たし、暗殺を始めた。

 

ああ、暗殺と言ったけど毒を使ったとかそう言うことではないよ。あの二人にそんな能力はないし、傲慢な彼女は回りくどい手段を肯定してくれない。忍び込むこともだますことも肯定しているのに、その方法は肯定してくれないからね。本当に、面倒な性格をしているものだよ。

 

だから、取った手段は単純だ。その中にいる人物を発見するとその人数次第で奇襲した。傲慢の少女の能力『強化』は身体能力を腕力、脚力、視力、聴力等々、体にまつわる全てを強化できるという、単純にして強力なものだ。それくらいのことは、何とでもなった。

 

それだけでは足りない相手に対しては、少年がもってきた武器の出番だ。消音器を取り付けた銃でもって簡単に無力化していく。彩花が相手であればどんな手段で防がれるか分かったものではないけれど、花人レベルであれば銃の一丁もあれば殺すことに困らない。

 

そうして的確に、しかし迅速に狩りを進めていったが、当然終わりはくる。出ていった者たちは騙されたことに気付き、戻ってきたのだ。気付いてとっさに隠れたとしても、それが長続きするはずもない。そして、戻ってきた連中はその多くが彩花、そうでなかったとしても戦闘能力を持つ花人だ。死体だらけの隠れ家を見て、油断を見せるはずがない。予定では戻ってくるまでにもう少し時間がかかり、その時間を使って囚われている女性陣を開放、わなを仕掛け、罠によって一網打尽にするはずであった。それが実現不可能になってしまった以上、計画は破綻した。

 

元々穴だらけだった計画、それに乗った少女もまた傲慢極まりなかったが故に、死は目の前に迫ってしまったのでした。おしまい。

 

さあ、最後の幕を見ていくといい。命を花に握られた、哀れな者たちの物語を。

 

 

 

 1

 

 

 

「……ボクが、囮になる」

 

そろそろ隠れている場所も見つかりそうになったところで、キミヒトがそう口にした。確かにこの状況では一人が囮になりその隙をつくのが最も可能性が高そうだ。

 

「……大丈夫なの?相手は彩花、そう簡単な相手じゃないわよ」

「分かってる。けど、もうこれしか手段はないし……ミナミさん、切り札隠し持ってるでしょう?」

 

確かに隠し持っている。だが、まさかそれをコイツに見破られているとは思ってもいなかった。

 

「もしよければ詳細を教えてほしい。それに合わせてボクも囮として巻き込まれないように動くから」

「……そんなに難しい、複雑な切り札じゃないわ。肺、気管支、気道何かを強化して放つ空気砲。まっすぐしか飛ばないから射線から外れてくれれば大丈夫」

「どれくらい撃てる?」

「何発でも。使いすぎると花が開いてくるけど……それは、終わってからここのヤツらのを食べれば解決するわね」

「賭けになるけど、それでも大丈夫?」

「ええ、もうそれしか生き残る手段がないのだもの。手段を選べない以上、躊躇いはないわ」

 

はっきりそう宣言して、その後にキミヒトをまっすぐ見る。時間はあまりない。ないが、それでも聞いておかなければならないことがある。

 

「それでも、怠惰なあなたがなんでここまでするの?復讐?」

「……そんな大そうなものじゃないよ。怠惰なボクらしい動機だ。生き残るために苦労するのなら、一回で済ませてしまいたい、って言うね」

「……なるほどね。それなら確かに、納得できるわ」

 

怠惰なくせになぜ、とは思ってたがそれなら納得である。むしろ怠惰だからこそと言えるだろう。そして、納得できる動機だったからこそ、この後の行動をためらわない。

 

「じゃあそう言うことで、あとは任せます」

「任された。……全部終わったら、お茶でもしましょうか」

「いいね。さっきは出せなかった美味しいお菓子を出すよ」

 

そして、キミヒトは飛び出した。銃で挑発しつつ、不意打ちだったために二、三人仕留められた様子で、駆けていく。ほんの少し待って、ある程度距離ができたのを確認してから大きく息を吸って、跳び出した。

強化を重ねて、吐き出す。それだけでキミヒトを追っていた連中とそれを支援していた連中がまとめて潰れた。キミヒトを見ると、彼は未だ無傷。驚くことに、あれだけの状況で追われて無傷だ。なんということだ。

 

しかし、今の音で何かあったのは察せられる。すぐに他の連中もここに集まってくるはずだ。来るとすれば階段からだとは思うが、私たちが知らない通路がありそうで怖い。

 

「ここから、どうする?」

「ボクはそこから狙撃する。邪魔極まりなかったけど、持ってきてよかったね」

 

そう言って狙撃銃をセットしているので、これで狙える限りは狙ってもらおう。さて、それなら私は……

 

「階段、いっそ壊しましょうか」

「それがいいと思うよ。さっきの空気砲、上手いこと絞れば長距離狙撃にも使えそうだし。でも、背後の警戒をメインにしてほしい」

 

そうと決まれば行動は早い。階段に触れて引きちぎり、残骸を投げ飛ばして早速向かってきていた集団を潰す。そのままさっき言われたとおりのことを試しにやってみると、確かに何とか出来た。まだコントロールが難しいけど、それでもなんとかなりそうだ。

そう見切りを付けて、キミヒトの後ろにつく。視力、聴力を強化する限りそちらからは誰も来そうにないが、相手は彩花だしキミヒトの銃声もある。どんなミスがあるか分からない。

と、そこでキミヒトが立ち上がる気配が。数が多いから手榴弾を投げるつもりなのだろうか、だとしたら私の方で何とかするので言ってほしい。建物内での爆弾はこちらも巻き込まれる可能性が……

 

「……え?」

 

と、そこで。一つの違和感。自分のイノチが、吸い取られていくかのような感覚。体験するのは初めてだけど、こんな感じの……イノチが吸い取られていく様子って言うのは、何度も見たことが……

 

「なん、で……」

 

そうだ、思い出した。それは、花を引き抜くときの光景だ。視界に入る自分の腕がどんどん皮と骨だけになっていくのも、その光景にそっくり……ではなく、そのままだ。無理矢理に首を回せば、私の花をつかみ引き抜いているキミヒトがいて、私は状況が理解できなくて、死んでいくことだけは理解できて、でもなんで私が死ぬのか分からなくて、だって私は全なんだから、悪を喰らって生き残る立場のはずで、なんで私は死んでいくのか、だって私はぜん―――――――

 

 

 

 s

 

 

 

「ふぅ……まさか、ここまでうまくいくとは」

 

引き抜いたデルフィニウムの花を食らいながら、倒れた死体を蹴る。イノチを全て吸い取られたその体は、簡単に砕けた。

 

「先ほど出ていった人数全て死んだのは確認しましたけど……まあ一応、警戒だけはしておきましょうか」

 

狙撃銃を肩にかけて、ピストルを腰から外す。念のための装備として持っておいて、これまでに殺した死体から花を回収しに行く。最上のものにはならないが、それでも死んだばかりの死体からであれば延命に仕える花を取ることが出来る。

 

「ああ……そうだ。この花も、そろそろ食べておく必要がありますね」

 

服の袖、その中。そこへ固定しているマツバギクの花を取ってそれも口に運ぶ。せっかく生きている人物から取ったエネルギーに満ちた花です。食べないなんてもったいない。

と、そこで。そう言えば一応能力を使ったので背中の花に触れて確認します。

 

「ああ……やっぱり、すこし開いてますね。まあでも、これくらいなら……」

 

と、すこし念じる。私の能力は『貯蔵』。食べた花をエネルギーとして消費せずに保存する能力。花が開いて来たらそのエネルギーを使うことで成長を戻すことが出来る、酷いけがをしたらエネルギーを使って直すことが出来る。前者は能力を使うことによる成長以上の速度で閉じられるので問題ないのですが、後者はそれなりに花が開きます。さっき襲われた時にそれなりに怪我を治したので、貯めこんでいたエネルギーもそれなりに使ってしまいました。まあ、ミナミさんの花で十分おつりがきましたが。

 

「さて、ここの死体はこれくらいですね。あとは下の死体と、地下の牧場、保管庫にある花を全て食べれば、それで終わりです」

 

赤ん坊がいるといいんですけどね。さすがに抵抗が怖いので、捕まっている女性の花人は射殺してから花を回収するしかありませんし、抵抗する能力の無い赤ん坊から回収できるのがベストです。

まあ、できなかったとしても塩漬けにされてる花だけで今回の戦果としては十分なんですけど。

 

「……そう言えば、悪を喰らい、善が残る、でしたか」

 

と、ミナミさんが言っていた言葉を思い出す。全くもってお笑い草ですね。

 

「最後に生き残るのは、狡猾な人間ですよ」

 

ああ、そうだ。偽装のための花も探しておかないといけませんね。怠惰だと今回と同じ設定を使えるので、楽なんですけど。

 

 

 

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ああ、最期まで見てきたのか。で、どうだった?想像通りだったかい?それとも、悲惨な結末にびっくりした?なんにせよ、どちらの未来も十分にありえる、そんな物語だっただろう。

 

最後に生き残った少年、背中に鮮やかな赤のルピナスを咲かせた暴食の彼。彼は果たして気付いているのだろうか。そうして喰らうことを生き残る手段としている間はともかく、欲望として行ってしまえば、その先にあるのは徒花だということに。

 

最後に裏切られた少女、首筋に鮮やかな黄のデルフィニウムを咲かせた傲慢の彼女。彼女は果たして気付いたのだろうか。自らの行いが傲慢なものでしかなく、どこからどう見ても悪のそれだということに。自己正当化がもはや正当化ですらなく、当然の常識へと変化していたことに。そんなだから、信じた相手を疑うことが出来ず裏切られたのだという事実に。

 

まあ、二人そろって気付いてはいないのだろうね。それに気付けるくらいなら、彼らはその花を咲かせていない。もっと別の花を咲かせていたはずだ。まあ、その精神性のあり方によって徒花にはなりにくかったようだけど、非常に危うい綱渡りだ。

 

というわけで、これにておしまい。語れることはなくなったし、君たちに見せられる光景というものももうない。さあ、早くこの場を立ち去るといい。何も残っていない荒野に、それでもまだ何かあるのではないかと残り続けるのは……

 

 

とっても、『強欲』なことだからね。

 




自分が書くとこんな感じになりました。長い・・・くどい・・・もっと短くまとめられる才能が欲しいです。
また、これは設定の下biwanoshinの趣味が大いに出ています。こういうお話結構好き。でも自分で書いて自分で読んでも面白くない不思議。これって一生何ともならない問題なのかな?



では、最後に。これはあらすじでも述べていますが、しいなさん、という方がTwitterで行っている(この認識もあってるのか自信ないです)企画です。ですので、自分が自由に書いた面は非常に大きいと思います。
ですが、それでも。大元の設定には準じているはず、少なくとも世界観はちゃんと設定に準じているはずですので、興味を持たれた方はしいなさんの企画Twitter「@crow0551」へ行って見てください。そちらでもっとしっかりした内容で知ることが出来ると思います。
また、なにか思いついたら書いてみるのも面白いのではないかと、biwanoshinは思います。世界観的にハッピーエンド難しいけど、それでもここまで酷い終わりにする必要はないからね。もっといい世界を書こう、みんな。
あ、でももっとヒドい終わりもそれはそれで面白いんじゃないかなーってbiwanoshin思うよ。

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