次のイベントへの景気付けの意味で書きました。
駄文ですがそれでもよろしければ読んでやってください。
「五十鈴、君の艤装を解体処分にする。その後の処遇については追って連絡する。」
彼の冷たい声が執務室に響いた。
「待って、どうしてそんな急に…」
「これは命令だ!」
私は執務机の椅子に座っている彼につめ寄ろうとしたが、彼に遮られてしまった。
「どうして…」
私は言った。
「今までたくさん、あなたのために頑張ってきたのに!」
ジリリリリリリ!
目覚ましが鳴っている。
「あーもう、うるさいわね!」
目覚ましを止めようと手を伸ばす。
ガタン!
私はベッドから落ちた。
痛さにしばらく悶えた後、ため息をついた。
「またこの夢か…」
寝汗がヌルヌルして気持ち悪い。
目覚ましを止めて時間を見ると、ちょうど総員起こし五分前だ。
また寝るわけにはいかないので、気をとりなおして制服に着替える。
服を着替えていると後ろから声がかけられた。
「おはよう、五十鈴お姉ちゃん」
振り返ると、ルームメイトの阿武隈が笑っていた。
私は長良型軽巡洋艦、2番艦五十鈴という誉れ高き名を受け継ぐ少女だ。
深海棲艦との闘争により、妖精たちが生み出した存在らしい。
「今日の朝ごはん何かなー」
「確か昨日のカレーが余ったらしいからまたカレーかもね」
「本当!やったぁ♪」
「食べ過ぎないようにね。」
「そんなことしないんですけどー!」
妹の阿武隈を弄り…可愛がりながら食堂まで一緒に歩く。
私たちのような存在を艦娘と呼ぶらしいが、自分たちがどういう存在なのかは私にはわからない。
人間と同じようにお腹は空くし、感情もある。
「ねぇ、あたしの話聞いてる?」
「聞いてるわよ。あなたの前髪をぐしゃぐしゃにしていいってこと?」
「そんなこと言うわけないんですけどー!」
あんな夢を見たせいか、考えごとが多い。
しっかりしなければと反省しつつ阿武隈の髪をわしゃわしゃする。
「やめてよ!セットしたばかりなのに!」
今日も阿武隈は元気だ。
朝ごはんは意外にもカレーじゃなかった。
間宮さんによれば
「あまったカレーはカレードリアにして、晩御飯で出します。」
とのこと。
「今日の夕ご飯楽しみー」
「なんで今から夕ご飯の話ししているのよ…」
夕食がカレードリアと聞いて阿武隈は今から楽しみにしていた。
今日の朝ごはんであるご飯、納豆、お味噌汁、アジの干物をトレーに載せる。
席を探すと、4人がけのテーブルが空いていたので阿武隈と向かいあって座る。
「あの、お隣よろしいですか?」
いざご飯を食べようとしたとき、後ろから声がかけられた。
振り向くと護衛空母大鷹と海防艦占守が立っていた。
この2人は最近鎮守府に着任した2人だ。
「もちろんよ」
2人の頼みを了承すると大鷹は私の隣に、占守は阿武隈の隣にすわった。
しばらく無言で食べていたが、沈黙に耐えられなくなったらしい大鷹が
「五十鈴さん、今日の出撃はよろしくお願いしますね。」
と言うと
「よろしくお願いするっしゅー。」
と占守も追従した。
この2人は対潜を得意としていて、今日初めて鎮守府近海に出撃する。
今まで演習しかやってこなかった子の面倒を今日は私が見るのだ。
「そんなに気負うことはないわ、いつも通りやればいいの。こっちこそよろしくね。」
きっと、今日わざわざいっしょに座ったのも不安だからだろう。
初めてのときは誰だってそうだ。
「対潜番長がいれば安心っしゅ!大船に乗ったつもりで行けるっしゅ!」
「気を抜いてはだめですよ占守さん。戦場では何が起こるかわからないのですから。」
自慢ではないが、私はこの鎮守府でも古参の部類に入る。
彼から対潜部隊を預かることが多いので、練度が自然と高くなってしまった。
それでついたあだ名が対潜番長。
私はこの名前が好きじゃないけど、いちいち訂正するのも面倒なのでそのままにしている。
「そうよ占守。戦場じゃ私だって常にあなたに眼を向けてられないんだから。自分の身は自分で守れるようになりなさい。」
私は占守をたしなめながらも、別のことを考えていた。
今朝の夢のことだ。
「ん、占守の顔に何かついてるっしゅ?」
実のところ原因はわかっているのだ。
「なんでもないわよ。」
多分私は不安なのだろう、対潜要員が増えることが。
「食べ終わったからもう行くわね。」
逃げるように席を立つ。
阿武隈は甲標的が積めるからいい。
何もしなくても彼に気にされる。
私は対空も対潜もできる。
しかし鬼怒や由良が防空巡洋艦になったことで、対空は負けてしまった。
しかも大発動艇が積めない。
今の私には、対潜しか優れているところがないのだ。
もしそのアドバンテージがなくなったらどうやって彼に見てもらえるというのだろうか。
「五十鈴、出撃します!」
出撃の時刻となり、大鷹と占守に戦艦伊勢を加えて出撃する。
「馬鹿ね、私には丸見えよ!」
いつも通りの出撃、いつも通りの敵、何もかもいつも通りで私はいつも通りヨ級を沈める。
「五十鈴さん、すごいっしゅ!」
「ふふっ、当たり前よ。」
成果は出ているはずなのに気が晴れない。
私はいつまで1番が当たり前だと言えるのだろう。
「艦隊が帰投したわ。」
鎮守府に帰投し執務室に入る。
「そうかご苦労だった。各艦の損害は?」
「伊勢が少し食らったわ。小破には届いてないけど」
彼は今日も忙しそうだ。
机に書類が山積みになっていて、机の横には今日の秘書艦の由良が立っていた。
「全員お疲れ様。五十鈴以外は解散でいい。五十鈴は少し残ってくれ。」
自分だけ残されたことで、嫌でも今朝の夢を思い出してしまう。
いつもなら執務室にいるのは好きなのだが、今日に限っては早くでたいと思っていた。
「何?なんの用事?」
今の気持ちが声に出てしまったのか、少しぶっきらぼうな返事になってしまった。
「ちょっと待ってくれ。」
と彼は言ってから
「由良、すこし外に出ててくれないかな。」
と言った。
それに対して由良は
「わかりました。でも、あまり長く話しすぎると執務に差し障りがありますからほどほどにして下さいね。ね?」
といって出て言った。
彼がわざわざ2人きりになろうとするのには意味がある。
「なあ鈴、阿武隈から聞いたんだが毎晩うなされているんだって?」
彼は、私と2人きりになった時だけこの名前を使う。
「ちょっと夢見が悪いだけよ。裕人が心配するほどのことじゃないわ。」
私と彼、高須裕人は鎮守府創設期からの付き合いだ。
メンバーが少なかった頃はこの愛称で呼んでも問題なかったが、鎮守府が大きくなった今は体裁があるのでプライベートでしか使わなくなった。
「ここ最近、毎晩だそうじゃないか。」
「私は大丈夫だってば!本当よ!」
阿武隈は随分余計なことを言ったようだ。
あとで前髪をぐしゃぐしゃにしてやろうと心の中で誓った。
「それで、用事がそれだけなら帰るわよ。」
「待った、もう一つ用事があるんだ。」
部屋を出ようとすると彼に引き止められた。
「実は大本営から、艤装の強化装置が届いたんだ」
彼は机から小さな箱を出した。
「妖精が作ったらしいんだが、どうも使うには条件があってな。しかもひとつしかない。」
彼が箱を開けると、中にはひとつのシルバーリングが入っていた。
「綺麗な指輪ね。」
そしてその指輪は白く光っていた。
「この指輪をつけることができる奴の前では光るらしいんだが、もう光っているな……」
なぜか彼の顔が赤くなった。私の中で違和感が膨れ上がる。
「ねえ、この指輪を使える人の条件って聞いてもいいかしら?」
「言わなきゃだめか?」
「だめよ。」
彼は少し迷った後、先ほどより小さな声で
「愛だ。」
「え?」
「その指輪を使える奴の条件は、俺に恋愛感情を持っているかどうかなんだよ!」
最後の方は何かヤケクソになっているような感じだったが、確かに恋愛感情だと言った。
「それ、本当なの?なんかのどっきりじゃなくて?」
「どっきりじゃない!本当のことだ!大本営から『頑張れよ』って激励つきできたんだよ!」
彼の慌てているところを見る限り嘘だということはなさそうだ。
嘘ではないと分かったところで、大変なことに今更気づいた。
「なんでそんな大事なこと先に言わないのよ!私の気持ちが分かっちゃうってことじゃない!私だって心の準備が!違うそうじゃなくて、そもそも人の気持ちがわかるってどういうことよ!」
「だから妖精が作ったんだよ!そんなこと俺が知るか!」
勝手に気持ちを知られた怒りと、気持ちを知られてしまった恥ずかしさがせめぎあっている。
頭の中がグチャグチャでうまく思考が回らない。
彼も同じような状態なのかお互い無言になった。
「俺はお前の気持ちが知りたかったんだ。」
しばらくして彼は言った。
「俺も鈴が好きだから。」
そう言いながら、彼は私に近づいて来た。
頰が熱い。
「なあ鈴、上司と部下以上の関係にならないか?」
こんなことがあっていいのかと考えてしまう。
「私で…いいの?金剛さんとか榛名さんじゃなくて?」
私以外にも彼を想っている子はたくさんいる。
「鈴がいい。鈴じゃなきゃ嫌なんだ。」
彼は私の目を見てそう言った。
「だから、君の答えを聞かせてくれ。」
私は彼に抱きついた。
「わたしもっ…裕人が好き!」
彼の目を至近距離で見つめながら、
「私をあなたの一番にして。」
答えを、返した。
そのまま見つめあっていると、彼が顔を近づけて来た。
何をされるのか本能で理解し、目を閉じてそれに答えようとした。
バタン!
突然大きな音がしたので、音源の方を向くと、
「ちょっと金剛さん、飛び出しちゃダメだって。あと少しだからね。ね?」
「うう〜、テイトクゥーー!」
「榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です榛名は大丈夫です」
何かいた。
私も彼も突然の乱入者に思考が止まってしまっている。
「あ、提督さん。どうぞ続きを」
「「できるか!」」
私と彼の声が完全に被ったのは、これが初めてだった。
翌日、私はまたしても執務室に呼び出された。
「大本営から、リランカ島に奴らが再集結しているという連絡があった。」
今回は他のメンバーも呼び出されているので出撃の話らしい。
「なお、この海域は敵の潜水艦が確認されている。五十鈴は対潜特化装備で出撃してくれ。」
だから、私が呼ばれたのだなと納得する。
「後、旗艦は五十鈴に頼みたい。」
「え?」
私が旗艦になるのは久しぶりだ。
「どうした五十鈴?不満か?」
彼が私に尋ねる。
以前の私だったらなぜ軽巡を旗艦にするんだと言っていただろう。
「いいえ、大丈夫よ。」
でも私は彼の1番になれたのだ。
軽巡だからなんだというのだ。
「五十鈴にまかせて。」
全力で彼の期待に応えよう。
いい成果を出せたら、彼に思いっきり褒めてもらおう。
だから、初めてあった時よりも強い想いで
「全力で艦隊を勝利に導くわ!」
うわあああああ!
やってしまったああああああああああ!
ゴロゴロゴロゴロゴロ
できれば感想をいただけると助かります。
五十鈴の可愛さを皆で共有したいです。