作者が空いた時間に書いていた練習文を手直しして、短編にしたものを載せています。
あくまで練習として書いていたものなので、拙い出来かもしれません。
又、練習用文なので、批評、助言、感想など大歓迎です。
※様々な分類の短編を書くので、二次創作や、警告タグに含まれる要素などが入る場合は、サブタイトルや前書きで警告致します。読まれる際は前書きやタイトルに目をお通しください。
※上記で警告した要素は、追加されるたびにタグとして書き加える予定です。
※原作名は一応オリジナルとしておきますが、二次創作を載せることがあれば、その際に変更する予定です。
この作品には、
・オリジナル
・勘違い
の要素が含まれています。ご注意ください。
その一【ツいてる?】
朝だ。
早々に登校を済ませ、教室の窓側にある自分の席に向かう。
椅子を引いてやや乱暴に座り込み、鞄を机に置いて伸びをする。
昨日に夜更かしをしていた所為だろうか、思わず欠伸が漏れた。
「ふぁ~あ。」
「大欠伸ね、おはよう。」
欠伸によって出た涙で曇った視界、その端に、靡く黒髪を捉える。
僕のだらしない所作をとがめるような響きの挨拶に、僕はおはようと気の抜けた返事をした。
それを聞いた彼女は微かに笑い、しかしすぐに真面目な表情を作って僕を見る。
徐々に険しくなっていく表情を見ながら、僕は困惑し問うた。
「な、何?」
「……貴方、ツかれてるわよ。」
いきなり疲労していると断言されてしまった。
まあ、朝一番に大欠伸をしていれば、そう思われてもしかたないか。
「ああうん、ちょっと疲れてるみたい。」
僕がお茶を濁すように笑うと、彼女の目が一段と鋭くなった。
そのままじっとこちらを見つめた後、数瞬瞼を下ろすと、彼女は大きく目を見開いた。
「最近、変わったことなかった?」
こちらの顔を見るなり放たれた言葉に、僕は首を捻ってしまう。
「いや、特に思い当たる節はないな。何でそんなことを?」
質問の意図が分からなかったため聞き返してみると、彼女は眉を顰めた。
「ツかれてるようだったから、原因が何か知りたくて。」
その言葉に僕は、成る程、気を遣ってくれたのかと一人納得する。
それと同時に、友人の気遣いを嬉しく思った。
彼女は、僕が疲れた様子だったのを心配して、声を掛けてくれたのだろう。
僕は彼女を安心させるために、笑顔で返事をした。
「いや、大したことじゃないよ。このくらいならいつものことだし。」
「い、いつもツかれてるの……!?」
僕の軽い返答に、彼女は盛大に顔を引き攣らせた。あれ?
「それって大変なことじゃないかしら。お家に何かあるんじゃ……。」
深刻な表情で呟く彼女。お家って、いったいどうしたんだろうか。
あ、もしかして、僕が家庭の事情で疲れていると勘違いしてるのか。
まったく、心配性だな。
僕は軽く肩を竦めつつ、彼女を安心させるように言った。
「大丈夫だって、前はちょっと喧嘩してたけど、今は仲良くやってるし!」
「な、仲良くなったの!?いけないわ、連れて逝かれちゃう!!」
「えっ。」
僕の言葉をどう捉えたのか、彼女は必至の形相で僕の腕を掴んだ。
そのまま掴んでいる腕を抱き込むように体を寄せ、彼女が僕の顔を覗き込む。
鼻先二十センチのところにまで顔と顔が近づき、僕は恥ずかしさに頬が熱くなるのを感じた。
「近い近い、いきなりどうしたのさ!?」
「死人と仲良くなるくらいなら、私と仲良くなればいいじゃないっ!!」
「ワケわかんないよっ!!」
「嫌よ、幽霊なんかに貴方は渡さないわ!!」
「何の話ィ!?」
抱え込まれた腕ごと揺さぶられ、視界のピントが一向に合わない。
ただ、周囲のクラスメイトが呆れた顔をしているのは、見えなくても不思議と分かってしまう。
「お、おち、落ち着いてよっ、皆見てるって!」
「皆ですって!?いったい何人ツいてまわってんのよ!スケコマシ!!」
「意味わかんないしその表現古いよ!あと揺さぶるの止めて、死んじゃう!」
「貴方が死んだら私も死ぬわ、死後の世界なら手を出せないだなんて思わないことね!!」
「何それ怖い、ちょ、まじで、しぬ……!!」
薄れる意識が最後に捉えたのは、彼女の泣き顔だった。
なお、その数時間後に僕は復活。
保健室で泣きじゃくる彼女と意思疎通を図り、見事成功。
帰りに寺へお祓いに行って、憑いてたものを全部落としてもらいましたとさ。
おしまい。
その二【売れた?】
「ちょっと、お兄ちゃんっ!!」
甲高い声が、一般家庭の居間に響き渡る。
激しい怒気を含んだそれは空間を遍く蹂躙し、ソファに横たわる男の耳を打った。
「な、何?」
いきなりの大声に身を竦ませた男は、明らかに不審な挙動でもって声の主に応える。
すると、居間の奥にあるテーブルの向こうから、一人の少女が姿を現した。
栗色の髪を頭の両側で結んだ幼い少女は、怒りに目を吊り上げながら己の兄を睨んだ。
「何で私の勝手に取ったの!?」
怒りのあまり主語が抜けているその問いかけは、しかし、身に覚えのある男にとっては刃の如く鋭く刺さる。
彼は妹とよく似た色の頭髪をかき回すと、視線をあちこちに泳がせながら口を開いた。
「あ、あー、あれな。イヤその、魔が差したというか、何というか……。」
汗まみれになりながら弁明の言葉を探す男に、少女は再度詰め寄る。
「言い訳すんなし!!最悪、なんで自分の分だけで満足できないの!?」
多分に軽蔑の念を込めて放たれた言葉に、男は鋭敏に反応した。
「それは誤解だ、別に俺はお前のが欲しかったわけじゃねえよ!!」
慌てた様子で口早に弁解する男に、少女は指を突き付けて言葉を被せる。
「でも実際、あたしのが消えてんじゃん!これって結局あんたの仕業なんでしょーが!!」
謝んなさいよ!!と吐き捨てるように言った少女に、男は眼前で手を合わせながら言い訳を連ねる。
「仕方なかったんだ、お前の物だったら高値で買うって言われたんだよっ!!」
「は?」
「え?」
殺伐としていた居間に、奇妙な空白が生じる。
困惑の表情でお互いを見やる兄妹。
そのうちの一方、妹が、戸惑いがちに沈黙を破った。
「……売れたの?」
恐る恐るといったふうに、はの字に眉を傾けながら問う彼女に、兄は厳かに頷いた。
「ああ、売れた。しかも、二万で。」
「二万!?嘘、なんで!?」
心底驚いた様子の妹が、両手で兄の肩を掴む。
その、あまりの剣幕に怯んだ兄は、自分が何を言っているかも分からずに再び弁解を始めた。
「ああいやその、うん、お前のことが好きな奴が友人にいてな、そいつが二万までなら出すって言うんで……。」
興奮で大きく見開かれた目から逃れるように、視線を右に流す兄。
それに構わず、妹は再度彼に詰め寄った。
「いや、おかしーでしょ!?なんでアレが二万に化けるのよ、原価の何倍っ?」
「でも、そいつにはそれだけの価値があったんだよ……多分。」
「え、でもアレって、そんなに良い物でもないのに。」
「お前にとってはそうでも、あいつにとっては宝物に等しい価値なんだよ。」
「なら、自分で買えばいいのに。」
「お前のだから良いんだってさ……。それに、あいつが自分で買ったら、多分その場で捕まっちまうよ。」
「えっ?」
「えっ?」
再度訪れる認識の齟齬。静まり返る居間に、どちらかは分からない嚥下の音が微かに生じた。
お互いに何か勘違いをしていることに気付いた兄妹は、暫し見つめあい、そして再び口を開いた。
「なあ、お互いに、〝今頭の中にある物〟を、せーので言い合わないか。」
「うん、あたしもそれがいいと思う。じゃあ――――」
「ああ――――」
〝せーの〟
「――――お前のパンツ。」
「――――あたしのプリン。」
「えっ。」
「えっ?……おい。」
妹の放つ強烈なボディブロー、所謂〝腹パン〟が、兄の鳩尾を正確に捉える。
激しい殴打音が居間中に炸裂し、打撃の衝撃は兄の腹筋を貫通してソファを揺らした。
あまりの痛みに声を上げることすら叶わず、ソファ上で打撃痕を抱え蹲る兄。
無様を晒した『ソレ』に構わずに、妹は兄の財布の中身を根こそぎ奪い取って去って行った。
愚かなる企みは打破され、平和な休日の午後は続いていく。
――――可憐な少女のパンツと、愚劣な男の腹筋を犠牲にして――――
なお、後日談。
兄は誠心誠意を込めて土下座し、パンツを取り返して焼却処分。
その後、三か月に渡り妹に貢ぎ続けてようやく許してもらえたそうな。
おしまい。
読了、ありがとうございます。
今回書いたのは勘違いモノでした。
勘違いとすれ違いのさせ方に苦労しました。その所為で、会話が不自然になっていたり。
勘違いモノを長編で書ける人は、きっと頭の回転が早い人なんだと思います。
以上、あとがきでした。