真剣で人生を謳歌しなさい!   作:怪盗K

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皆さまおはこんばんにちは。

感想、評価、お気に入りありがとうございます。

第22話となります。

猟犬部隊の話を書いてると、ついつい話が長くなってしまうのには、注意しないといけませんね。

それでは、駄文ですが、どうぞよろしくお願いします。


第22話

 帝が俺の顔を見に来てからさらに二週間、旨い飯を食って、いい女を抱いてれば、傷はすっかりと言っていいほどに癒えていた。

 俺が世話になってるフランク氏に会ったのは、そんなある程度動き回れるようになった頃であった。

 

 

「はじめましてだね、織原修二くん。まずは、娘を助けてくれ、ありがとうと言わせてくれ」

 

 

 第一印象は声が渋い。

 品位とその人物が積み重ねてきた人生を感じさせる、そんな落ち着いた大人の声だった。

 

 

「あーいや、体勝手に動いただけだから……そんなに畏まらないでくだ……さい」

 

 

 俺はついつい、小惑星を地球に落としかねないような雰囲気に敬語を使ってしまう。なんだろう、俺、こういうまっとうな大人って苦手なんだよな。岡本のばあちゃんとか、その代表格だ。

 

 

「それでもだ。君は娘たちの恩人なのだから……改めて、礼を言わせてくれ」

 

 

 深々と頭を下げるフランク氏に、俺は気恥ずかしく頭をかく。

 

 

「……分かりやした。その礼は受け取っておきます。まあ、傷の手当てや、色々世話になってますから、それでチャラってことで」

「そうか。なら君がドイツにいる間の面倒は、私が見させてもらおう」

 

 

 嬉しそうに、フランク氏は椅子に腰を下ろす。背後に控えさせていた部下を退室させると、改めて俺へと向き直る。

 

 

「さて、今日私が君のもとに来たのは、君に礼を言うほかに、君に頼みたいことがあったからだ」

「へぇ……俺みたいなチンピラに、頼みたいことすか?」

 

 

 正直さっぱり分からん。

 確かに俺は、フランク氏の娘であるクリスちゃんを助けたが、言ってしまえばそれだけだ。

 今目の前にいるこの男が求めるものを、俺が持っているとは思えん。

 

 

 

「ふふ、チンピラか。私からすれば、君は傾奇者というべき無頼なのだがね。まるで、歴史上の前田慶次のような、破天荒っぷりだ」

 

 

 ニヒルな笑みを浮かべ、フランク氏はどうやら俺を買いかぶっているらしい。

 

 

「ジークルーン・コールシュライバー、リザ・ブリンカー、テルマ・ミューラー」

「ぶッ……」

 

 

 そして、そんなフランク氏から三人の名前が出てきたとき、俺はむせかけた。

 

 

 

「今名前を挙げたのは、現在君が肉体関係を結んだ三名の隊員たちだ」

 

 

 なんでバレたし。

 人目をつかないように気を付けていたし、彼女たちにも秘密にするように伝えていた。

 ぶっちゃけ三人とも男性経験の無さからチョロすぎとか思ってたけど、なんかマズったか?

 

「君たちは隠そうとしていたようだが、テルマがね、深夜君の部屋の前でうろついているという報告を受けてね。少し念入りに調べてみたら、三人の名前が出てきたという訳だ。英雄色を好むとは言うが、まさか、一ヶ月も経たずにとは信じられなかったよ」

 

 

 テルマちゃんェ……、キミ、チョロすぎるから心配だったけど、やっぱり我慢できなかったかぁ。男相手の初恋に、舞い上がりすぎたか?

 これは不味いか? 流石に、部下を食い散らかしたとか普通に考えてブチ切れ案件なのでは? 

 しかし、フランク氏の表情に怒りはなく、ただだだ静かな願いだけが感じられた。

 

 

「お互いが同意であった以上、私からとやかく言うつもりはないが。お願いだから、彼女たちを悲しませるようなことはしないでくれないか?」

 

 

 あくまで真摯にお願いするようなフランク氏に、俺はどうすっかなと頬をかく。

 

 

「察してるかもしれないですけど、俺はまともな奴じゃないです。悪いこともしますし、女好きのクズ野郎です」

「……」

 

 

 彼は、彼女たちの上司であるが、それ以上の父性とも言える情を彼女たちに抱いてるのだろう。怒るでもなく、嫌悪するのでもなく、ただ託すようにたのむ。

 そこまで、俺を高く買ってくれているなら、俺も筋を通すべきだろう。

 

 

「でも、抱いた女に責任取れねぇほどの小さい男じゃねぇつもりで、今まで生きてきました」

「なるほど……やはり、君はサムライなのだな」

 

 

 フランク氏は何か思うところがあるのか、瞳を閉じて小さく息を長く吐いた。

 いや、急に侍とかどないしたんよ。俺の実家ただの庶民だったぞ。もう何処にあるかも知らないけど。

 

 

「私にとって、彼女たちのことは大切な部下なのだ。それだけは忘れないでくれ」

「……あいよ」

 

 

 やっぱ、まともな大人というか、親ってのは苦手だわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞー! とぉおりゃー!」

 

 

 小柄な少女、コジマ•ロルバッハが真っ直ぐに突っ込んでくる。その勢いのまま握りしめた拳を、俺になんの躊躇いもなく振るってくる。

 手のひらで掴むように受け止めるが、踏みしめた足が地面を捲り上げながら滑る。

 

 

「捕まえたぞー」

 

 

 コジマちゃんは自分の拳を掴んだ腕を、さらにもう片方の腕で掴まえる。

 万力のような力で掴まれた腕が軋みをあげ、俺はわずかに顔を顰める。

 

 

「動きを止めた! 畳みかけろ!」

 

 

 好機を逃さず、赤髪の猟犬、マルギッテ•エーベルバッハが駆けてくる。その後ろには鉄の巨人と複数の猟犬部隊の隊員たちが続く。囲みを作る様に素早く部隊を展開させる手腕は、マルギッテちゃんの指揮能力の高さを感じさせる。

 

 

「甘いね、甘い甘い!」

「わ、わわっ!」

 

 

 俺は腕を掴んだコジマちゃんを、強引に持ち上げる。そのまま、突っ込んでくる一団めがけて、放り投げる。

 さぁて、どう対処する? マルギッテちゃんよ。

 

 

「リザ!」

「あいよ!」

 

 

 一団の中から、リザちゃんが飛び出し、コジマちゃんを受け止める。そのままくるりと回転することで勢いを殺すとともに、再び俺の方へと飛ばしてきた。

 マジか、投げ返してきやがった。

 

 

「コジマミサイルー!」

 

 

 投げられながら体勢を整えたコジマちゃんは、鋭い蹴りを放ってくる。俺が投げた勢いに加えて、遠心力も一緒になれば、その破壊力は侮れない。

 俺はそれを見切り、体を半歩ずらして躱す。コジマちゃんは、そのミサイルのまま、後ろへと飛んでいってしまう。

 

 

「外れたー!」

「だが、こちら側まで対処できるか?」

 

 

 コジマミサイルを無理に避けたせいで、体勢が崩れたところにマルギッテちゃんたちが襲いかかってくる。トンファーの猛攻に、各隊員の援護も加われば、良い一撃をもらいかねない。

 振り下ろされたトンファーを、ショルダーブロックで受け止める。続いて発砲された銃弾を、トンファーで吹き飛ばされるようにして後ろに飛ぶことで回避する。

 

 

「おー、こっちに来たぞ!」

「げっ、マジか」

 

 

 飛んだ先には、待ち構えていたコジマちゃんが拳を構えていたのが見えた。俺は空中で身を捻り、拳を握り込む。

 

 

「コジマメガトンパンチ!!」

「英語じゃねぇか!?」

 

 

 ドイツ人なのに英語かぶれな必殺技に気が抜けながらも、俺はそれなりに全力で殴りつける。拳と拳がカチ合ったとは思えない、大型車両同士の事故のような重低音が響き渡る。

 コジマちゃんは踏ん張りが効かなかったのか、気の抜ける声を上げながら吹っ飛ぶ。

 それに息つく間もなく、飛んでくるダガーを振り返らずに指先で掴み取る。そのまま飛んできた方向へと投げ返すが、硬い金属に弾かれる音がする。

 

 

「テル! 援護するから、突っ込め!」

「承知! この鉄壁、容易く砕けると思うなよ!」

 

 

 へぇ、今度はリザちゃんとテルマちゃんのコンビか。いいねぇ、相手を休ませることなく、数の利を活かして波状攻撃。マルギッテちゃんは、コジマちゃんを連れて下り、体力を回復させる。

 

 猟犬部隊、中々どうして、軍として、群として格上との戦い方を研究してるみたいじゃねぇか。

 

 

粉砕(Zerquetschen)!!」

 

 

 鉄の挙兵が棍棒を大きく振りかぶり、躊躇うことなく破壊を執行する。俺は、それを真正面から受け止める。地面に大きく足がめり込む。そのまま棍棒を引き寄せ、引きずり倒そうと試みる。

 

 

「そうはさせん! 憤怒(Zorn)!」

 

 

 次の瞬間、鋼鉄の鎧から高温の水蒸気が噴き出す。一瞬にして、肌が爛れるほどの熱量が、俺を襲う。

 慌ててテルマちゃんと距離を取るが、腕が痛々しく火傷していた。痛みを我慢し、笑みを浮かべる。

 

 

「……っ、やるねぇ」

 

 

 気での回復はせず、ただただ俺を油断なく見つめるテルマちゃんを称える。

 

 

「私も忘れてもらっちゃ困るよ!」

 

 

 テルマちゃんの背後から、声が聞こえるとともに、再びダガーが複数飛んでくる。速度は上々、数も精度も悪くない。だが、俺に対しては、緩い。

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」

 

 

 ダガーを百年以上生きた吸血鬼の気分で弾き飛ばしていく。んん〜、テンション上がってきたなぁ。

 ダガーを二十本ほどだろうか。弾き飛ばした後に、リザちゃんは俺の前に姿を出す。テルマちゃんはその後ろに下がる。

 

 

「なあ、修二。今から私はこのダガーをどうすると思う?」

「俺に投擲物は効かないってのは分かっただろうし、突貫して、その腰元の煙幕で撹乱、テルマちゃんと一緒に乱戦に持ち込むって感じか?」

「ふふ、そうか。まだ気付かないか。修二、お前の足元をよく見てみな。既に状況は出来上がってるだぜ?」

 

 

 待て……乱戦に持ち込むにしても何故、明らかに前衛のテルマちゃんが下がった? 何故、俺の周りにはダガーが散乱しているだけじゃなく、俺を囲むように突き刺さっている? 

 

 何故、俺の足元から、微かに火薬の匂いがする?

 

 

「答えは簡単。リア充爆発しなっ!!」

 

 

 リザちゃんはダガーを手元で振り下ろす。それに連動し、俺の足元に刺さっていたダガーの柄が抜ける。

 恐らくはダガーの形をした手榴弾。がむしゃらに投擲したと見せかけて、その実俺の逃げ場を塞ぐ。爆発の結界を作っていたのだ。

 

 

「ぬぉおおおおお!」

 

 

 今度は波紋使いな吸血鬼な気分で、爆発に巻き込まれる。

 一つ一つの威力は低くとも、まとめて食らえばひとたまりもない。

 

 

「……やったか?」

 

 

 リザちゃんのそんな声が爆炎越しに聞こえる。

 

 

 

「そいつはフラグだなぁ。リザちゃんよぉ」

 

 

 俺が声を出した瞬間、爆炎を切り裂くように黒い一閃が走る。それを腕でガードすれば、至近距離まで詰めてきたマルギッテちゃんがトンファーを振るってきたのだと分かった。

 

 

「下がりなさい、リザ! テルマ! コジマ! 援護しなさい!」

了解(Jawohl)!!」

 

 

 そこからは、猟犬部隊の前衛三トップの猛攻が始まった。

 攻めに秀でたコジマちゃんを主体に、マルギッテちゃんが要所要所で俺の隙を突くようにトンファーをねじ込んでくるし、反撃しようにもテルマちゃんが攻撃を出し切る前に潰しにかかる。

 

 うーむ、これは中々に厄介な上に、

 

 

「おっと!」

 

 

 遥か後方、針の穴を通すかのような狙撃が飛んでくる。チラリと目を向ければ、腹這いになったスナイパーと、側に観測手として指揮を取っているフィーネちゃん。

 

 それに、いつの間にか、リザちゃんが加わり影から攻撃が、ついに俺の身体に傷をつける。

 うーむ、連携されるとこうも厄介とはな。流石に特殊部隊ってだけはあるな。

 

 ぶっちゃけて言えば、俺はこの猟犬部隊の面子と戦っても十割負けないだろう。これはマルギッテちゃんたちが弱いとか、策が足りないとか、そういう訳ではない。

 シンプルに、猟犬部隊にはマスタークラスを相手取るには火力が足りないのだ。

 そりゃあ、コジマちゃんのパワーはワンチャン作れるかもしれないが、それだけしか矛がない相手など、壁越え連中にとっては脅威ではない。

 

 壁越えは壁越えにしか倒せない。

 いつだったか、ヒュームの爺が言ってたのを思い出す。

 

 

「とぉりやぁー!」

 

 

 コジマちゃんが焦りからか攻めっ気を出し、揃えていた足並みから、一人だけ前に出てきてしまう。それを援護しようとマルギッテちゃんたちも、前のめりになる。

 俺はコジマちゃんを捕まえ、俺は悪戯好きな笑みを浮かべる。

 

 

「コジマちゃん、アウトー!」

「おわ、おわわわ!?」

 

 

 我慢できない子のコジマちゃんは、戦線を崩壊させかねない行動の報いとして、後ろに控えているフィーネちゃんの方へと放り投げる。

 だいぶ強い力で投げたので、受け止めようと構えたフィーネちゃんも交通事故にでもあったかのような衝撃で吹き飛んでしまう。

 

 これでまず二人。

 

 マルギッテちゃんとリザちゃんはコジマちゃんが掴まれた時点で、冷静に引き下がったが、テルマちゃんはその巨体のせいか引き下がるのが遅れてしまった。

 

 

「川神流! 電気鼠(ピッピカチュウ)!!」

 

 ちなみに、川神流にこんなふざけた技名の技はない。

 

 テルマちゃんの甲冑の隙間に腕を突っ込み、電撃に変換した気を放出する。いくつかの回路がショートする音が聞こえ、鉄の巨体が膝をつく。

 

 

「ちょっと!? どんな電圧流したのよ!」

 

 

 中からテルマちゃんの抗議にも近いが聞こえるが、無視する。

 これで三人、あと残った主力はマルギッテちゃんとリザちゃんかな?

 

 

「リザ! 援護は任せます。正面は私が立つ!」

「分かった! 直ぐにやられんなよ!」

 

 

 二人が息を合わせて向かってくる。

 さながら、魔王に立ち向かう勇者のような勇ましさだ。

 

 

 あれ? 俺主人公だよな? なんでこんなボスムーブしてんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は〜い、みんな、お疲れ様〜」

 

 

 ジークちゃんたち医療班が、訓練を終えた隊員たちに手当てを施していく。重傷者は居ないが、誰もからも切り傷、擦り傷、打撲などの怪我を携えている。

 

 

「修二くんも、お疲れ様。めっちゃカッコよかったよ〜」

「何を当たり前なことをおっしゃる、ジークちゃんや」

 

 

 一通り隊員たちの治療を終えたジークちゃんが、少し離れた場所でビールを呷っていた俺のところにやってくる。

 ふぃー、やっぱ昼間っから飲む酒は最高だぜェ。

 

 

「隊員たちの目の前で、見せつけるようにビールを飲むのはやめなさい。織原修二」

「いいじゃねぇか。こちとら強い猟犬たち相手取って大立ち回りしてたんだぜ? これくらい、多めに見てくれよ」

「あ、隊長! もう、大丈夫なんですか?」

 

 頬にガーゼを当て、腕に包帯を巻いた上半身タンクトップ姿のマルギッテちゃんが険しい顔をして近づいてきた。その腕には包帯が巻かれており、他の隊員と比べても傷が多いのが分かった。

 うーん、エロい。ナチュラルボーンドスケベなお犬様だな。

 

 

「ええ、ジークもご苦労様です。治療が済んだのなら、他の隊員とともに休んでてもいいのですよ?」

「まだ、修二くんの治療が残ってますので〜。ほら、修二くん、脱ぎ脱ぎしましょうね〜」

 

 

 ジークちゃんが興奮したように、俺の服を脱がそうとする。手がなんかワキワキしてるし、本当に治療目的かは怪しい。俺の火傷とか、既に治りかけてるし。

 ちょっと興奮気味なジークちゃんは、近くに怖い怖い隊長さんが居ることを忘れちゃいないだろうか。

 

 

「ごほん! 修二、後でテルマが鎧の修理を手伝えと言ってました。何でも、回路どころか配線まで焼け焦げてしまっているとのことです」

 

 

 マルギッテちゃんが、大きく咳払いをする。

 あー、割とノリで使った技だったから、加減が分からなかったからなぁ。

 しゃあない、猟犬部隊でテルマちゃんの機械趣味に、追いつける奴おらんしの。

 

 

「あと、ジーク。他の者の目がある場所で、そういう事は控えなさい。噂になってます。あまり度が過ぎる場合は、制裁と心得なさい」

「う〜、ごめんなさぁい」

 

 

 しょんぼりとするジークちゃん、可愛い。

 

 

「さて、修二。今回の演習、あなたからの感想を聞きましょう」

 

 

 マルギッテちゃんは俺の対面に座り、俺が飲んでいたビールを奪い取り、一口で飲み干す。

 おいおい、いい飲みっぷりだねぇ。

 

 

「……このビールは美味しいですね。っ、それより、貴方から見て、今回の演習はどうでしたか?」

「んー、まあ、大分強くなったと思うぜ? 壁越え相手に、持久戦持ち込めるくらいには。それこそ、普通の軍隊とか傭兵相手なら鎧袖一触だろうさ」

「みんな、めっちゃ強くなったよね〜」

 

 

 そう強くなった。俺がこの一ヶ月の間してきたことと言えば、おせっせと猟犬部隊との演習、あとはクリスちゃんの勉強の面倒を見たりだ。

 ぶっちゃけ、俺がマルギッテちゃんたちに教えられることなど、正直あまりないのだ。せいぜいがこうやってマスタークラスの仮想敵として、演習に付き合うくらいだ。

 

 

「まあ、強いて言うなら、火力が無いところじゃないかネェ。壁越えに連携で粘れるなら、今度はワンチャンを作るための必殺技が欲しいところだ」

「なるほど。たしかに、コジマの攻撃以外、貴方はそれほど警戒してませんでしたね」

「そこまで分かってれば、上々だろ」

「つまり、コジちゃんの攻撃を当てれるようにするか、コジちゃん並みの攻撃力を他に用意すればいいんだよね?」

 

 

 ま、そう言うこった。それが一番大変なんだろうけどな。

 何か考えているのか、マルギッテちゃんは難しい顔で腕を組む。はち切れんばかりの胸が、腕の中で窮屈そうに歪んでいるのについつい目がいってしまう。

 

 

「んじゃ、俺はクリスちゃんと約束の時間だから、そろそろ行くわ」

「……ええ、分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修二〜、大和丸が見たい〜」

「おうおう、宿題終わったらな。ったく、ハマるとは思ってたが、中毒になる程だとはなぁ」

 

 

 クリスちゃんの成績は、ぶっちゃけ微妙だった。なので、俺が頭の出来も顔と一緒で素晴らしいと知ったフランクさんから、そっちの面倒も任されたのだ。

 

 

「なあ、修二、日本にはやっぱり、修二みたいなやつが多いのか?」

「正気か? 俺みたいな奴らばっかりな国とか、三日で滅ぶぞ?」

「あ、いや、そういう意味じゃなくて、修二みたいなサムライの魂を持つ者が多いのか、って意味だ」

 

 

 サムライ、ねぇ? 川神には武家は多いが、サムライとかより、ぶっちゃけ変態と犯罪者の方が多いような気もする。

 

 

「んな大層なやつは、居ねぇよ。お前さんたち親子がサムライなんて言う、大和丸みたいな奴はよ」

「……そうなのか。でも! 私にとって修二は尊敬すべきサムライだ!」

「サムライ、ねぇ」

 

 

 日本勘違い親子どもめ、まったくもって節穴としか言いようがない。

 

 

「ほら! 終わったぞ! 大和丸、大和丸〜」

「あいあい、採点してやっから。それまで待っとけ、お嬢様」

 

 

 クリスちゃんの終わらせたノートに俺は赤ペン先生を走らせる。きちんとワンツーマンで教えてやれば、地頭はいいからだいぶ勉強も身についてる。実際、俺が作ってやった日本語のテストとか、大分いい点数だったしなぁ。

 興味のある分野は、のめり込んでる分覚えもいいのだろう。

 

 

「修二、どうだった?」

「花丸だよ。褒美だ、くのくの」

「わわ……」

 

 俺はクリスちゃんの頭を、金の髪を梳くように撫でてやる。クリスちゃんは顔を赤くして、大人しく俯く。

 暫く撫でてやれば、クリスちゃんは茹で蛸のようになりながら、俺の服の裾を掴む。

 

 

「ん……」

 

 

 言葉少なに、俺をテレビの見えるベッドに座らせ、自身もその隣に腰を下ろす。触れ合った膝同士から、相手の体温が伝わってくる。

 クリスちゃんの高い体温が、その小さな体に持つ熱と感情を教えてくれる。

 

 

 画面の中の大和丸夢日記を見ながら、俺はそろそろ一度帰らねぇと思っていた。百代ちゃんとかが、そろそろ限界になりそうだと、送られた手紙から分かっていた。

 俺たちは、それぞれ一緒に画面を見ながらも、内容は全く頭に入ってこなかった。

 

 

「……クリスちゃん」

 

 

 大和丸が終わった後、俺はクリスちゃんの肩をを掴む。

 

 

「しゅ、修二……?」

 

 

 クリスちゃんと見つめ合う。雰囲気に酔ったような潤んだ碧眼に、俺が映る。クリスちゃんの中にあるそれを認めた俺は、ニィッと意地の悪い笑み浮かべる。

 それに気づかず、クリスちゃんは瞳を閉じて瞼を震えさせる。

 

 

「日本に行くか、クリスちゃん」

「へ……?」

「一度日本に顔出しに戻ろうと思うんだが、クリスちゃんも一緒にどうかなってな。興味あったろ? 日本」

 

 

 クリスちゃんは肩透かしを喰らったかのような呆けた顔をしたが、すぐに慌てるように顔を赤くしてアタフタする。

 

 

「あ、ああ! そう言うことだな! うん! いいんじゃないか!」

「んじゃ、フランクさんに話をしなきゃな」

 

 

 誤魔化すように捲し立てるクリスちゃんに、俺はその頬にそっとキスを落としてやる。

 悪戯が成功したかのような笑みを浮かべ体を離し、クリスちゃんの唇に人差し指を当てる。

 

 

「ちなみに、今のは秘密な?」

 

 

 あの人にバレたら、マジでドイツ軍相手にするハメになっちゃうからな。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

前回後書きにて、ドイツ編を次回で終わらせると言ってましたが、申し訳ありません、終わりませんでした。
キャラが多い……! 猟犬部隊好き過ぎる……!
と、言うわけで、もう少しドイツ編というか、クリス&猟犬部隊編は続きます。優しい心でお付き合いください。

ではでは、これからもよろしくお願いします。


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