前回更新から、まぁた間が空きまして、申し訳ない(汗)
今回もあまり進まないけど、次回以降は割りとシーン飛ばしていくかもしれない…(汗)
「―――さて、それじゃ次は國次君の詳しい検査結果の説明と行きましょうか♪」
翼が退室し、僅かな沈黙が広がる室内の空気を変えようと、了子は少し明るめに声を上げる。
そして画像を響のレントゲン写真から國次の検査結果へと切り替えられ、―――國次と了子以外が息を呑む。
腹部にある丸い影を中心として、複雑に絡まり全身へ根の様に伸びていく糸状の物体を映した画像。
この二年間、純に何度も検査して貰いもはや見慣れたものとなっていたソレを眺め、國次はちょうど丸い影が収まっている腹部に手を当てる。
「複雑に絡まり過ぎ、手術での摘出は不可能。まるで寄生されているかのような状態に見えるでしょうけど、メディカルチェックの結果としては全く異常無し。むしろ同年代の男性の平均データと比べると元気過ぎる結果が出たわ。で、この影の正体なのだけど……確認の為に変身して貰って観測出来たデータからして……」
「やはり聖遺物で間違いない、か」
弦十郎の言葉を肯定する様に、頷き返し了子は続ける。
「それも、おそらく完全聖遺物。國次君の話からして、取り込む前の状態は全く欠損の無い状態だったそうだから。で、この聖遺物、國次君の証言によると『ネフィリム・エルバハ』だったしかしら? 見ての通り寄生……いえ、糸の末端部分ではほとんど神経系や骨と一体化しているようだから、実質融合している状態なの」
で、ここからが本題なんだけど、と前置きをして再び画像は切り替えられる。
映し出されたのは異形の姿と、その際のレントゲン写真。
だが、異形の姿の時に取ったレントゲン写真は、先程のモノと違い、人の骨格と明確に違う部分が散見していた。
例えば、頭蓋からは顎は消え、初めから口や歯など存在しないような一体成形になり、触角か、あるいは鉤爪の様な形状をした角の部位が増えていた。
肘や膝より先の骨は多少長くなり、クリーチャー感漂う体格となっていた。
そして何より目を引くのは腹部にある丸い遺物の影を除き、人の姿の時には体中に蔓延っていた糸状の影は一切消えていたという点だ。
「異形の姿の時には、それまで全身に伸びていた糸状の物質が消えて、こうして外見はおろか中身すら変質していることから、アレは聖遺物の力を引き出す為に肉体を適した形に造りかえる為の器官と思われるわ」
「うわぁ、異形の時僕の体、中はこうなってるんだ」
「……いや呑気に言ってる場合じゃないだろ。外殻みたいなものを纏っているだけと思ってたけど、中身から造り替えるって……これじゃあまるで……」
自分の体とはいえ、ちょっと引き気味に感想を述べる國次に、藤尭がツッコみつつも思った事を言いながらも、しかし同じく聖遺物と融合しているに等しい響に配慮し最後の言葉だけは口にしなかった。
まるで、人間から外れて行っている。
そうとしか言いようのない、中身すら『ヒト』の形から外れつつある異形の姿。では、いま目の前にいる國次は、果たして『ヒト』と呼べる存在なのだろうか?
「藤尭君の言わんとしている事は解っているわ。一応念の為にと、変身解除直後にもう一度念入りに検査し直したけど、國次君の体は殆ど人間のままだったわよ。ただ……」
一旦黙り込み、ちらりと検査データ群を一瞥し僅かに考える素振りをしてから了子は言葉を紡いだ。
「変身を解除する度に激痛が走って動けなくなるのは、ちょっと問題。推測だけど、『ネフィリム・エルバハ』との適合率が低いが為の代償だろうから、あまり無茶させられないわね。それにその代償を二年間、ずっと負い続けてきたんだから何時何かしらの形で深刻な異常が起きても可笑しくはないし……。今まで通り積極的にノイズと戦うってのは、止めておくべきでしょうね」
そう言い終わると同時に画面を閉じ、「さて、何か質問ある?」と周囲に声を投げかけると、
説明の間、ずっと腕を組みながら聞き続けていた國次が手を挙げる。
「はい國次君、何かしら」
「えーと、もし今後融合、というか侵蝕具合が進んだら、人間辞める事になるんですかね?」
「んー……何とも言えないわね。何によって融合率が上がるのかまだ見当もつかないし、これ以上悪化するのか、しないのかすら分からないんだもの。今後の検査次第でその辺が分かればいいんだけど……でも、君が今宿しているものが本当にネフィリムの名を冠するモノだというのなら、ちょっと危ないわね」
天から堕ちし巨人、あるいは堕天使と人の間に生まれた巨人。共食いを行い、本能の赴くまま暴れ、暴食の限りを尽くす超人、ネフィリム。
加えて、旧約聖書外典のヨベル書に名前ぐらいしか出て来ない三種の巨人の一つ、エルバハ。
後者は情報が無さすぎるので何とも言えないが、前者のネフィリムは創世記等での記述などから鑑みるに、かなりの劇物ともいえる。
今はまだ何とも無い様ではあるが、もし國次の中に眠るネフィリム・エルバハの本能を呼び覚ますような状況にでもなったとしたら、確実に不味い事になるだろう。
本能のままに暴れる怪物となるか、全てを食らう獣となるのか。それとも、本能に抗い人の心だけは失わずに済むのか。
融合が進んだら、身体は完全にイルミネイザーとしての、異形の姿に固定となるのか。
もしそうなった場合、人間の姿に戻る事は可能なのか。
了子の言葉を聞いた後、車椅子の背もたれに身を預け、それらを考えながら國次は目を閉じる。
―――でも、それ以上にどうしても気になる事がある……っ。
ほんの僅かな間の瞑目の後、どうしても
「あの、もう一つだけ。これは個人的に、割と重要な疑問なんですけど……」
「……何かしら?」
『……』
重々しく、慎重に口を開く國次の様子に、了子は気を引き締めて言葉を返し、一同は固唾を飲んで見守る。
「その……」
平時であれば、口にするのは正直躊躇う。
だが、國次にとってそれは、たとえ人間を辞める事になろうとしても、とても重要な事で。
―――人間を止めるかもしれないのは怖い、でもそれ以上に、気掛かりな事がある……それは。
それは……他の人にとってはどうでも良い事かもしれない。
「人間を辞める事になったとしても……」
それは。
「なったとしても?」
「―――エッチ、出来るんですかね? その、いつか金髪巨乳の嫁さんゲット出来たとしてもその辺出来なかったら困るし……」
『エッ……はあああああああ!?』
それは、異性と性交出来るか否かという、若い男によくある煩悩塗れの願望。
金髪巨乳の嫁をゲットしたいという夢を持つ國次にとって、死活問題でもあった。
◆■◆■
「―――今の悲鳴は一体何事でッ……いや本当に何があった……?!」
室内に響き渡る困惑の悲鳴。そこへ、それを聞いて先程暗い顔をして通路に出て行った翼が血相を変え飛び込んでくるが、各々が浮かべている表情を見て更に困惑する。
ガングニールを宿した少女は赤面してアワアワしており、オペレーターの友里は赤面しつつも引き気味の視線を國次に向け、もう一人のオペレーターである藤尭は呆けた表情を。
自身の叔父であり二課の司令である弦十郎は額に手を当て、盛大に溜息を吐き……國次の対面に立つ了子に至っては引き攣った笑みを浮かべつつ、「ま、まあそこまではちょっと解らないかなー……というか、それ本当に大事な事……なの?」と声を絞り出していた。
そして、この状況を生み出したであろう國次はというと。
「はい、かなり。真面目に大事です、人間辞めちゃっても金髪巨乳女性とエッチ出来るか否かは、ハイ」
「なっ―――ほ、本当に何を言っているんです貴方は!」
やたら真剣な表情で、女性も一緒の空間にいるというのにセクハラ発言をした國次に、翼は柄にもなく頬を赤く染めながら叫んだ。
「……いやいやいやいや! 普通、このままじゃ人間辞めるかもしれないってのにそんな質問する!? もっとこう……怖いとかそういうのじゃないか!?」
そして、そんなふざけた発言に藤尭が物申す。
彼の反応は当たり前だ。
もし人間を辞めてしまい、完全に怪物になるかもしれないなどと言われれば、恐怖などを感じるのが普通だろう。
だがこの
隣の少女を見ろ、赤い顔しながら「すけべなのはダメだと思います……っ」と言ってるぞ。
國次はというと、藤尭のもっともな言葉を受けて、僅かに困ったような顔をしながら笑った。
「いやまあ、確かにそれは怖いとは思ってます」
「なら……」
「でも」
ひとつ息を吐き。
「でも、ノイズが出たら自分よりも怖い思いをしている人達が居るんです。なら、怪物になろうと、怪物扱いされてしまおうと……
そんな、自身に満ちたような笑顔で言われて、誰も言い返す事が出来なくなった。
そして納得してしまう。彼はどこまでも馬鹿正直にまっすぐな、お人好しなのだと。
「まあそれはそれとして、完全に怪物になった後もエッチ出来るかどうかは割と本気で重要な疑問ですけどね!」
「だから、そういうスケベな発言はダメだと思います……!」
……ただ、割と良いこと言った後にすぐ
そして、途中から戻ってきた翼に対しても國次が抱えている代償や危険性、出撃に関してある程度制限を掛ける事等を説明し、響や國次にはシンフォギアや聖遺物を宿したことによる姿等に関し決して口外しないようにと言いつけられた。
現状唯一ノイズに対抗出来るシンフォギアの力と、それと同等の事が出来ている完全聖遺物を宿した存在。
そんな、強力無比且つ所有していれば他国に対し多大なるアドバンテージを持ち得る
大国であれば内政干渉はもちろん、その力を手に入れる為に強引な方法……それこそ秘密裏に拉致や、関係者を人質に交渉などといった方法をとってくる可能性が高い。
更に問題として、國次や響は聖遺物を取り込んでその力を行使しているという点。
これが露見すれば、年若き少年少女が無理矢理戦場に立たされてしまうという事すら起こりかねないのだ。
強すぎる力の露見、その代償にもし大事な人が巻き込まれたりしたら……。
機密より、人命を守りたい。故にその力を誰にも口にはしないで欲しいと告げる弦十郎達の言葉に、響は俯きながらも頷いた。
だが、國次の方はというと、既に職場の店長の娘である鏡花に変身の一部始終や力についてもある程度バレている。
一応、口止めはして貰ってはいるものの、確実性に欠ける為彼女の事も二課に説明をしておく。
そして、必要なやり取りなどを終え、改めて弦十郎から告げられる。
「立花響君、国津國次君。君達の力を、対ノイズ戦に役立ててはくれないだろうか?」
國次としては、ここまで来ればもはや問われるまでも無い。
だが、と隣の響を見やる。
妹と同じ学年で、まだまだ青春真っ盛りな年頃である彼女に、無情に、無惨に、無慈悲に命が奪われ苦しみと悲しむ、無力感を味わうあの場へ立てと言うのは、國次的には気が引ける。
「私の力で、誰かを………助けられるんですよね?」
その言葉を聞いて弦十郎と了子が頷く姿が見える中、翼の表情が険しくなっていくのを國次は捉えた。
かつて共に戦った人物の置き土産、それを戦いも知らない少女が纏い、共に戦うかもしれないとなれば、心穏やかにいられないのは無理もない。
―――下手すると、あとで大荒れしそうだ……。
嫌悪感はともかく、拒絶反応は確実に出るだろう。あの様子からして、前ガングニール所持者の天羽奏との関係は並々ならぬものであることは容易に想像がつく。
故に、良からぬ事になりそうな気がしてならない。
國次としては、出来れば自分の様に非日常の世界に飛び込み、戦うのが当たり前になるよりは普通の学生として過ごして欲しいと思う。
……しかしその思いは通じる筈もなく、只の少女だった筈の彼女は。
「―――わかりましたッ!」
躊躇いを見せる事なく、真っすぐな瞳を向け承諾の言葉を告げ、翼の方へ向き直ると「私、戦います!」と言いながら手を差し出していた。
「慣れない身ではありますが、頑張ります! 一緒に戦えればと思います!」
よく言えば元気よく、はきはきと。
しかし、あまりにも積極的に命の危険があるかもしれない場へ加わろうという事に対し、前向き過ぎる様の響に、國次は妙な不安を覚えた。
―――もし、この後すぐノイズが出たりしたら今にも飛び込んでいきそうな調子だ……出来れば、そうなって欲しくはないけど……。
差し出された手から顔を逸らす翼と、口籠りながらももう一度「一緒に戦えれば、と……」呟く響の姿を見ながらそう思うも―――
國次の思いを嘲笑うかのように、警報が鳴り響いた。
なおスケベ発言に関しては國次的には場を和ませることも考えてのモノ。
なので、今後頑なな態度とる方が、優先的に被害を食らいます()