もう一つのネフィリムーエルバハー   作:赤い変態

4 / 14
前回より大変間を空けてしまい申し訳ありませぬ(汗

とりあえず今後も不定期更新となりますが、どうかご容赦を(汗

さて、今回から無印編となりますが一応プロローグ(またです)なので量も少ないですが、次回以降からはまた増やしてく来ますので(汗

それでは、無印編プロローグ、開演です


1章 だから僕らはこの手を繋ぐ
そして二年、変化、異形と蒼き剣


二年も経てば何かと変化はあるものだ。

 

例えば、普段の日常。

例えば、ノイズの出現率。

例えば、自身以外にもノイズに対抗出来る存在。

 

一番目は、鏡花が中学生になったということもあってか店長の「さすがにこれから思春期の女の子と同じ屋根の下というのも不味いから」という一言で居候の身ではなくなったり、それに合わせるようにこちらの高校に通うとのことで妹が上京してきたのでマンションの一室を借りて久々に一緒に暮らすことになったり。

 

二番目は、ライブ会場の惨劇以降月に三、四回くらいの間隔で出現するようになった。特に出現率が高いとされている地区においては多いときは月五回以上も出現すると聞く。その近隣にある國次の新居や『秋都』がある地区もそれなりの頻度で現れるようになってきてはいるが、大抵は数が少ないうえに出現する時間帯も夜間である場合が多く、仕事中に現れないでくれているだけ幸いか。

 

そして三番目は―――

 

 

 

『さて……と、これで全部かな?』

 

夜間の山中。極彩色(ノイズ)の残骸であろう塵と、先ほどまでこの場でノイズを引き止めていた自衛隊特異災害機動部(特機部)による攻撃の余波で火の手が回り始めた木々や家屋の残骸に囲まれる中。闇に紛れてもなお黒く、そして黄色く発光する器官と輝く青い眼を持った異形(國次)は、先程までノイズを殴りつけていた拳を揉むように(ほぐ)しながら視線の先で、最後の一体と思われる巨体の人型が蒼い軌跡と共に真っ二つに裂け、塵へと返っていくのを見てそう呟く。

そして塵と炎をバックに、蒼い軌跡を走らせた張本人がゆっくりと、太刀らしき獲物を片手に近づいてくるのを見ながら、さて今日も上手く逃げれる(・・・・)かなと考えを巡らせ始めた。

 

 

◆■◆■

 

 

それは、妹がこの春から通うようになった学園、私立リディアン音楽院へ向かう途中の事だった。

海を臨む高台に位置するリディアン、そこへ通う生徒の大半は近隣の学生寮から通うことが多いが、寮暮らしでない者の自宅、特に國次の妹と國次が暮らすマンションまでは結構な距離がある。

一応、学園付近で停まるバスもあるにはある。が、生憎そのバスは國次達の自宅のある方向とは真逆の方向を走るので、実質使えない。なので、あとは自転車か國次がバイクに乗せて送り迎えするかの二択。しかし早朝から『秋都』へ行かなければならない國次に毎朝学院まで送る事は出来ない、故に自転車を買わせ通学するようにさせたのだが。

 

(しかし入学して早々に、パンクかぁ……)

 

どうやら帰宅しようと学園を出てすぐのところで前輪後輪、共にパンクしてしまったらしい。その連絡が入った時は運の無さに呆れたが、流石にそのまま自転車を押しながら徒歩で帰らせるわけにもいかないので、迎えに行くことにしたのだ。

もっとも、その日は『秋都』で翌日の仕込みの準備もあった為迎えに行く頃には十九時過ぎになっており、学園の近くまで来た時にはすっかり日も落ち空には星が見え始めていた。

 

そして学院までもう目と鼻の先という所でだ。リディアンからそう遠く離れていない山間部から燃える赤が見えたのと、ノイズ発生を知らせる警戒警報が聞こえたのは。

その場でバイクを止め、火の手が上がっている方を見据えると、僅かにだが極彩色のような輝きが見えた気がした。距離があるとはいえ木々や炎に紛れても見えるという事は、それなりの巨体を誇るノイズが居ると分かる。

何故あんな山間部で、という疑問が浮かぶがあの周辺には確か民家が幾つもあったのを思い出す。恐らく、既に特機部によって避難誘導は始まっているだろうが、障害物をすり抜けるノイズ相手に足場の悪い山中で避難を促したところで、時間は稼ぐには少々無理がある。

 

(ここからじゃまだ規模はわからないけど、仮に突破されたら近場のこっちに来る可能性もあるか……どちらにせよ、被害が広がらない内に行った方がいいかな。何より……)

 

この手が届く範囲内で今救えるのなら、行かない手はない。

そう思うや否や、素早く携帯を取り出し妹にもう少し遅れることと、ノイズが現れたので近場のシェルターに避難するようにと内容を纏めたメールを送る。

無事送信が完了したのを確認した國次はバイクから降り、全身に力が巡るのをイメージしながら極彩色が見え隠れした火の手が上がる方へと一直線に走り出す。視界が眩い光に包まれ手足から異形へと変わっていくのを実感しながら、ガードレールを飛び越えた。

 

 

現場に着いた時には、特機部に誘導されるように歩を進めるノイズの群れがもうかなり集まっていた。そしてその後方には更に大きな、十数メートル程の巨体を持つのが一体。注意を引き付ける為とはいえ、浴びせられる通常兵器をすり抜けさせながら迫る姿は正に、悪夢以外の何物でもないだろう。特機部の攻撃の余波により火が移った民家を押し潰しながら進む巨体は、まるで嘲笑うかのような唸り声を上げながら取り巻きのように足元に居るヒト型やカエル型と共にじりじりと特機部を追い詰め始めていた。

『こりゃ、デカブツより先に数の多い小型を先に潰さないと特機部の人達も不味いかな』

 

そう考えるや否や、黒い異形(國次)は軽く跳躍し特機部と小型ノイズ達の前に躍り出る。

その姿を見て、「イルミネイザー! 来たか!」等と、いつの間にか彼らの間で勝手に命名、定着していた異形(國次)の名称を口々にしだす特機部の隊員の声を背に受けながら、何とも言えない雰囲気を出しながら硬質な殻となった頬を指先で掻く。

この二年の間、特機部以外にも偶然異形の姿を捉えたものはそれなりに居り、その見た目から様々な名称をつける者はそれなりに居たが、この半年でその名称も完全に固定された。

以前、上半身の発光器官の多さから異形(國次)本人は「上半身電飾お化け」等と比喩した事はあったが、どうやら他人から見てもその印象は強いらしく、電飾愛好家を意味するイルミネーターをもじり、「イルミネイザー」という呼称で決めたそうだ。

 

(でも、だからとはいえそんな、電飾愛好家(イルミネーター)みたいな名前はなぁ……)

 

せめてもう少しいい名称はなかったのだろうかと小さく溜息を吐きながら振り返り、すぐ近くに居た隊員に尋ねる。

 

『あの、避難の方は?』

「え、あ…あぁ、既に完了している。もうこの場に残っているのは我々だけだ」

 

話し掛けられた隊員は、一瞬話し掛けられたこと自体に困惑の色を露わにしたが、すぐに答えを返す。それを聴いて國次は小さくうなずくと、ダッとノイズ目掛けて駆け出し一番手前に居たヒト型目掛けて拳を炸裂させ、他の個体を巻き込みながら巨体ノイズの少し後方まで吹き飛ばした。

少し遅れて塵と化し消えていくのを見届けずにそのまま次々と押し寄せてくる極彩色達に拳を浴びせ続けていると、ふと頭上からこの二年で既に聴き慣れた歌声が聞こえてきた。

 

《―――Imyuteus amenohabakiri tron》

 

群がるノイズ達をいなしながら聞こえてきた方へと視線を向けると、太刀のような獲物を持った風変わりな出で立ちをした蒼い少女が、巨体ノイズの少し手前へと降り立つ。

そして僅かに異形へと振り向くも、特に何も言わず、すぐに目の前のノイズへ向かって駆け出していった。

 

(話はいつも通り、後ってわけか……)

 

そして、『歌』を歌いながら目の前に塞がる小型ノイズ達を次々と塵にと返していくという、既に(・・)見慣れてしまった光景を目の当たりにしながら、遅れまいと異形も極彩色の波へと突入していった。

 

これが三番目。己以外にノイズに対抗出来る存在……それがこの、ノイズとの戦闘中や終了後等に現れる、刀剣持ったコスプレチックな出で立ちの、有名歌手(風鳴翼)にそっくりなというかご本人が、ノイズと戦っているというものだ。

 

 

 

 

出会いの始まりは異形の力を得てから二ヶ月後の事だったか。「手の届く範囲だけでも」という考えのもと、自身の生活圏内で出現したノイズの対処をし終えたとある休日の夕方、『秋都』に戻るかと新たに購入し直した大型自動二輪を駐輪している場所にまで戻ろうとした時だった。

不意に前方へ、太刀とも取れる妙な剣を持った蒼い壁―――もとい、少女が立ち塞がる形で現れこう告げた、「漸く出会えましたね、アンノウン。いえ、イルミネイザーとでも呼びましょうか。とりあえず、大人しく投降して下さい」、と。

いきなりの事に國次は困惑したが、明日の仕込みがある事や今日の夕飯当番が自分だったことを思い出し、その場では丁重にお断りすると伝えた。

……伝えたのだが、

 

―――そうですか、では仕方ありませんが少々実力行使と行きましょうか―――

 

まるで聞く耳無しとでもいうかのように、無表情で太刀を振りかざしながらそう告げたのだ。

 

 

 

 

(まあ最近になっては斬りかかって来るような事は無くなってきたし、多少は態度も軟化してきたのかなぁ―――って、やっぱりこっちに来た……)

 

ノイズの殲滅が終わり、異形の数メートル手前辺りで立ち止まった太刀を持った蒼い少女―――ツヴァイウイングの『元』片割れにして現在国内で最も売れている若手歌手、風鳴翼はその手に握っていた太刀の切っ先を異形に突きつけ、僅かながらの苛立ちを宿した瞳を向ける。

 

「さて、今日こそ答えて貰います、イルミネイザー。いい加減此方に来ていただきたい」

 

この二年で繰り返し続け、おおよそ十数回以上に到達しているであろう問いかけに、後頭部を掻きながら答える。

 

『……いやだから、今まで何度もお答えしたように何も説明されずについていくのは嫌ですって。あと今日はちょっと急ぎの用もあるから、その……また別の機会にでも、ね?』

「そう言って、その別の機会でもいつものように断るのはどこの誰かしら」

 

はぁ、と小さく呆れ交じりの溜息をつきながら翼は太刀の切っ先を下ろす。ただそれでも、仮に異形が動き出しても即座に対応出来るよう態勢を崩さないでいるのは、二年近く経った今も警戒されている証拠か。

そんな、苛立ちと警戒の色はそのままに呆れの混じった視線を送り続けている翼に対し異形は『まあとりあえず』と切り出した。

 

『ノイズは全部倒せたわけだし、今日はもう解散ってことで……ダメかな?』

「……はぁ。勝手になさい……」

 

溜め息一つ。今度こそ本当に呆れた表情を浮かべそう云いながら剣を収めると、翼は背を向け歩き出した。

あれ? いつもならここで『では実力行使に』って言いながら斬りかかってくるのに……。

いつもとは違う反応と意外な返答に異形は困惑していると、その様子を察したのか数歩進んだ所で翼は足を止め振り返った。

 

「二年近く交渉し続けても首を縦に振らない相手に、これ以上続けても無意味でしょうし」

 

果たして断る度に斬りかかってきたのを交渉と呼んでいいのだろうか、などと零しそうになるのを堪えながら異形は申し訳なさそうに手を合わせる。

 

『いやまあ、ごめんね?』

「……謝るくらいなら、せめて拒み続ける本当の理由を教えて欲しいのだけれど」

 

遠くからヘリコプターのローター音が聞こえてきた。鼻が利くマスコミが飛ばしたのか、それとも翼のお迎えなのか。恐らくは後者だろう。

気付くと翼の姿は既に見えなくなっており、一課の隊員たちも既に事後処理に動き出している。

ノイズを倒し太刀を持った有名歌手とのやり取りまではいつも通りだったのに、何とも締まらない終わり方になってしまった。いつもなら交渉決裂後、即実力行使に移り異形を連行しようとする筈の相手がすんなり帰ってしまった事に安堵半分、疑問半分。

少なくとも漸く放置していい程度には大丈夫な存在と認められたと、前向きに考えるべきか。

ただ、とりあえず――――今日も無事帰れるという事には変わりなかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。