もう一つのネフィリムーエルバハー   作:赤い変態

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何とか5月中に更新は出来た模様……(汗)

とりあえずいろいろと見直しながら書きあげましたが、大丈夫だろうか……(汗)





そして少女はその日歌を詠った

特異災害対策機動部―――通称、特機部。

その主な任務はノイズの出現に対し、民間人の避難誘導やノイズの進路変更遠、そして被害状況の処理・把握を行う……というのが、表向きに一課と呼ばれ、一般人や報道関係に知られている特機部のイメージである。

 

―――そしてもう一つ、二課と呼ばれる部署が特機部には存在する。

その役割自体は一課同様にノイズによる被害への対策を主としているが、決定的に異なる点が、二課だからこその役割がある。

 

「市街地東部にあったノイズの群体反応が新たに一つ消失、同時にイルミネイザーと思われる高エネルギー反応、移動を再開しました」

「すでに出動している一課隊員に現場への派遣要請、同時に到着後生存者の保護を依頼します」

 

その二課の本部、オペレーターやスタッフの声や現場からの通信などが飛び交う司令部に、リディアンの学生服姿の風鳴翼が駆け込んできた。

昨夜異形と共にノイズと戦っていたように、彼女も特機部の、二課の一員である。

 

「―――状況を教えてください!」

「現在、市街地各所にノイズが出現。群体一つ一つの数は少ないですが、同時多発的且つ広範囲に出現しているので、位置の特定及び反応の絞り込みを優先中です。また、既にイルミネイザーと思われる反応が出現、移動先でノイズ反応が減少しているので、既に対処に動いていると思われます」

 

男性オペレーター、藤尭朔也の声を聞きながら視線を上げた先、司令部の大型3Dモニターに映る市街地のマップに、赤い円と点が多数且つ広範囲に広がっているのが表示されていた。

そのマップの右側、市街地東部辺りから、今また、新たに赤い光点と円が一つ消失しオペレーターの一人、友里あおいが報告する。

 

「ノイズ反応、再び消失。現場付近の監視カメラより映像、来ます!」

 

マップ画面の上に、新たに映像用のモニターが映し出されると、画面には黒い塵が風にあおられ宙を舞う中、少年を抱えている黒き異形の姿があった。

少年を下すと、異形はしゃがみ込んで視線の高さを合わせながら、何かを言い聞かせるように人差し指を立て、少年が頷くのと見ると彼の頭を撫でた。そして、画面端に映った特機部のモノと思われる車両が近づいて来ているのに気付いたのか、少年の背を押し、車両の手前まで行くのを見届けると同時に跳躍し、画面から消えた。

 

「現場より少年の保護をしたと入電、またイルミネイザーはそのまま現場から離脱、ノイズの反応が近い南東へと移動した模様」

「イルミネイザー、流石に街中ともなれば動くのが早くて助かるな」

 

藤尭からの報告に、筋骨隆々で長身の赤いカッターシャツを身につけた男、二課の司令である風鳴弦十郎は異形の働きに頷きながら指示を出す。

 

「確かイルミネイザーが向かった方面に慎次が出ていたな? ならイルミネイザーに接触、協力の要請をするように連絡してくれ。勧誘ならともかく、協力の申し出なら即決してくれる筈だ」

「おじさ―――いえ、司令。私も出ます」

 

自身の叔父であり、二課の司令である弦十郎に向き直り出動しようと伝える翼だが、「今は待て」と制止される。

 

「今は抑えてくれ、翼。今回のこの広範囲での出現、おまけに群体一つ一つの総数が少ないのもあって反応の特定がし辛い。現場に出ているイルミネイザーとお前が合流して対処しても、事を収めるには無理がある。それに一課による避難誘導もまだ始まったばかり……被害を最小限に留めるにも、確実にノイズの位置を特定してからでないと投入出来ん」

「わかっていますが……でも……ッ」

 

唇を噛み、今は見ているだけしか、待つだけしか出来ないという事を悔しく感じながら翼は思う。

こういう時、自由に動けるあの黒い異形(イルミネイザー)が羨ましい、と。

 

約二年間、現場では互いにノイズを倒し時に協力をしながら、という関係を続けてきたが、あの異形の事は正直、信用出来ていない。

同行を拒否された時等は実力行使を取るようなことはしたものの、何度も相手をし、戦闘時に接した事もあって一応どういう人物かの把握は出来ている。

表情は判らないものの、言動や声音、行動からして悪い人物ではないのだろう。

ただ、それでも信用は出来ない。

そもそもその力と姿については一切語らず、そして何より……。

 

何より、歌い手として、そしてノイズを倒す者としても最高の相棒であった少女、天羽奏が失われたあの日、あの時に、ライブ会場のすぐ近くにあった博物館にてノイズの群れと共に現れていたというのだから。

 

 

◆■◆■

 

 

茜色の空の下。赤子連れの女性が近場のシェルターにたどり着くのを確認した後、異形(國次)は変身を解除するのに人気の無い場所を探す為、街中を移動していた。

 

道中、何度か小規模のノイズの群れを排除しながら。

 

『―――これでもう五回、いや六回目か』

 

オフィスビルや商業施設が建ち並ぶ大通り、今し方倒し終わった本日遭遇六回目となるノイズの小規模な群れ”だった”塵が舞う中で國次は、鳴り響く緊急警報以外に発せられる音が一切存在しない周囲を見渡す。

路上に転がる自転車を覆う様に、直前まで建物の壁際に寄りかかっていたような形に、倒れこんだところを其の侭押し潰された様にと、少し前まで人が()()に居たという痕跡が辺り一面に広がっていた。

 

どうしてたった一日の内に何度もノイズが出現しているのか。否、何故今日に限って広域に亘って小規模の群れが至る所に出現しているのかという疑問が浮かぶ。

だがそれ以上に、助けられなかった後悔の念や、間に合わなかった自分自身に対する憤りが胸の内を締め付ける。

全く被害を出さずに終わらせるのは到底無理な事だと、この二年で既に分かり切っていることだ。

しかし、それでも思わずにはいられない。

もしもっと早くに駆けつける事が出来れば。

もし早期にノイズの出現場所が判れば。

幾つもの『もし(IF)』を思い浮かべるだけなら幾らでも出来る、でも。

 

―――思い浮かべたところで、既に失われた人々()は戻ってこない、助ける事も出来ない。

そんな(IFを考える)のは、目の前の理不尽を、誰かの当たり前が失われる事から目を逸らしているようなものだ。

 

『だからって、割り切りたくもない……』

 

呟き、拳を握り締める。

硬質化した爪が掌に食い込もうとも、痛みは無く血も流れず、ただギチギチと硬い音が鳴るのみ。往々として、ノイズを相手にするというのはこういう事を直視せざるを得ないという事だ。

どれだけ手を伸ばそうと、届く範囲であろうと、足掻こうと。目の前の惨状(結果)が現実を突き付け、「いくら頑張ろうと救い切れない」という無力感が心を蝕む。

 

―――でも、それでもだ。

 

それ以上に、納得したくない、認めたくない。

こんな理不尽な現実を、受け入れてたまるか、打ちひしがれて折れてたまるものか。

 

『……そうだ、ここで立ち止まっている暇なんて、無い』

 

後悔と憤りと、無力感で冷えかけていた胸に再び熱が生まれる。

ここで悲嘆に暮れている間に、もしまだ他にも小規模の群れが発生していたら、また同じ事の繰り返しが起きてしまう。

また誰かの日常(当たり前)が、笑顔が失われてしまう。

 

『とにかく今は、見つけ次第片っ端から潰していかなきゃ……』

 

自身に言い聞かせるように呟きながら、國次は眼前に建つビルの屋上へ向かって跳躍する。

瞬き程の一瞬で屋上に降り立つと、街の数か所から煙が昇り、炭のような臭いのする塵が風に運ばれ空を舞う光景が視界に入ってきた。

 

『……煙が上がっているところは交通量の多い大通り付近か。他に目ぼしい場所は……ここからじゃちょっとわからないな……ん?』

 

ふと、車がブレーキを掛けたような音が下の方から聞こえたのに気付き、先程自分が立っていた場所へ目を向けると、黒塗りの乗用車一台と特機部のジープが二台止まっているのが見えた。

特機部のはともかく、黒い乗用車はいったい……? 訝しみながらもせめて現状ノイズの出現場所について何か情報が得られないかと思い、國次は屋上から飛び降り乗用車の前に着地した。

着地と同時にジープ二台からは特機部の隊員が六人、乗用車から茶髪で温和そうな顔つきの、恐らく國次と同年代か少し上と思われる黒服の青年が降りてきた。

特機部の隊員はこちらを見て僅かに驚きの表情を浮かべるも、すぐに周囲の確認を始め、青年はというと降りてきた異形に声をかけてきた。

 

「イルミネイザーさん、ですね?」

『いつの間にかそう呼ばれているのは知ってますが、まあそうです。で、貴方は?』

「特異災害対策機動部の者とだけ、としか今は……すみませんが、協力を願いたいのですがいいでしょうか?」

 

特機部の人間であることに、隊員を連れて来ていたことから恐らくは嘘はないのだろう。

僅かに安心すると同時に、その申し出に対し、特機部も今回の広域に亘りノイズの小規模な群れが各所に出現している現状にかなり手を焼いていると察する。

 

『わかりました、それで状況は?』

 

とにかく今は積極的に特機部と協力して事態を収束させねばと思い、現在の状況の確認を急いだ。

 

 

◆■◆■

 

 

「奏音ちゃぁん! まだ来てるぅ!?」

「絶賛付いて来てるよ、山盛り沢山! いやぁもう、モテモテだねぇボク等!?」

「ノイズにモテても嬉しくなぁあい!?」

 

幼い少女を背負いながら自分の前を走る響の嘆きを聞きながら、ふと思った。

今日はおそらく厄日だ、そうに違いない。

距離がある程度取れているとはいえ、背後から追いかけて来ている極彩色(ノイズ)の波を時折振り返りながら、奏音は今の自分の状況に困惑していた。

 

―――おっかしいなぁ……響ちゃん追っかけていた筈が、一緒にノイズに追われるって……今日の運勢大吉だった筈なんだけどなぁ……!? 

 

全力疾走を続け、途中水路に飛び込み泳いだり、その後濡れて重量が増した制服を着たまま再び全力疾走で走り続けてきた事でふらついてきている足を、ひぃひぃ息を吐きながら前に動かしながら、奏音は事の発端である数十分前を振り返る。

 

―――確か、響ちゃんを追いかけようと学園を出て、自転車壊れたままだったから走って追いかけて、コンビニ辺りで何とか追いついたんだったかな、うん。

 

 

■◆■◆

 

 

コンビニ付近で追いついて、肩で息をしながら響に話し掛けようとした時だった。

周囲の異様な静けさと、炭のような臭い、そして風に運ばれて宙を舞う黒い塵に気付いて、周囲を見た。

 

辺りには。

 

()()()ものが、人ひとりくらいの量がありそうな炭の臭いがする塵の山が、辺りにあった。

 

少し前まで人であったであろう黒い塵の塊が路上や、路地の壁に寄りかかる形や、窓の割れたコンビニの中など幾つもあった。

 

身を庇おうとしていただろう人だった物があった。

 

逃げ出そうと背を向けていただろう人だった物があった。

 

親子連れだったのだろうか、大きな人だった物と小さな人だった物があった。

 

……日常だった筈のそこは、すでに地獄だった。

悲鳴を上げそうになるのを押さえ、無理矢理にも湧き上がる恐怖感を捻じ伏せながらまだ周囲にノイズがいるかどうかを確認しようと周囲を見回す。

もしまだノイズが居たら、次は自分達がこうなる。早急に逃げなければ、足掻く間もなく、其処らの炭の山のように。

だから、周囲に居ない事が分かってすぐにその場から離れようと足を踏み出した時だった。

 

―――助けを求める悲鳴が聞こえた。自分達より幼い、女の子のものらしき悲鳴が。

 

聞こえた、聞こえてしまった。

恐らく、まだ残っていたノイズに遭遇でもして、襲われているのだろう。

助けなければ、と思ったと同時に嫌な考えが浮かんでしまった。

 

ここで見捨てれば、時間稼ぎ程度には使える、と。

甘ったるく、仄暗い悪魔のような囁き(誘惑)だった。

 

ちらりと視線だけ動かして隣を見ると、一瞬だけ呆然とし、しかしすぐに声が聞こえた方へと走りだそうとした響の横顔が見えた。

……死にたくはない。今声の元へと走りだそうとしている友人も死なせたくない。

でも死にたくないのは、悲鳴を上げた少女も同じだ。

 

再度、仄暗い誘惑が見捨てて逃げてしまえと囁いてくる。

……あぁ、確かに、そうすれば自分は助かるだろう。

でも、でもだ。

それをすれば一生自分を許せない。

誰かを見捨てて生き残った自分を、一生許せない。

そして、すぐ近くで、今にも理不尽な暴力によって失われそうな誰かを、見捨てたくない!

 

「―――っ」

 

それは時間にしては一秒にも満たない逡巡、僅かな誤差。

響の背を追う形で、奏音も声が聞こえた方へと、走り出した。

 

 

■◆■◆

 

 

―――で、女の子拾って逃げ回って、水路にダイブして、またこうやって走って……今に至るわけだけど……。

 

後ろを振り返り、未だに追ってくるノイズを見て嘆息する。

此方はもう体力の限界が近いというのに、向こうは疲れ知らずとでもいうかのようにずっとペースを崩さず追いかけてくる。というか、最初より増えているように思うのは気のせいだろうか?

 

というか、このままノイズが自然消滅するまで逃げ続けるとしても、あとどの位逃げればいいのだろう? コンビニ周辺で遭遇したノイズに加え、途中で合流してきた追加のノイズがあとどの位で自然消滅するのか……。

もうすぐか、それともまだまだ当分先か。

それさえ判れば、このいつ終わるかすら分からぬデス・マラソンをもうちょっと頑張る事が出来そうなものだが。

 

……それと、シェルターからだいぶ離れてしまっているのも問題なんだけどね。

 

一応、少女を拾った付近にはシェルターが幾つかあった筈なのだが、ノイズから逃げ回ることを優先していたせいか既に街中を抜け、周囲の景色はいつの間にかコンビナート等の工場群ばかりに。

日が沈みかけ茜色から藍色へと変わりつつある空と、フェンス越しに見えるポツポツと明かりが灯り始めていく工場群溢れる地上という組み合わせに、マニアでもないが見惚れながらも周囲を確認しながら走る。

此方へ越して来た時、兄と共にどこにシェルターがあるか地図で確認したことがあるが、確か工場区域付近にはシェルターを設けている場所は無かった筈だ。覚えている限りで、一番近場にあるシェルターに行くとなると、今まで走ってきた道を逆走する必要がある。しかし、後方にはもはや数えるのも億劫な数のノイズが、自分達を追いかけて来ているのだ。それを突っ切って、シェルターのある場所まで行くほどの体力や気力、度胸もないのだ。

 

ではこのまま道なりに進めばいいのかと問われても、ここは工業区域。闇雲に進んでも行き止まり、入り組んだ場所に迷い込めば足も遅くなり追いつかれてしまう可能性大だ。

 

あぁ、本当に厄日か何か今日は。

 

「きゃっ!」

「うわぁ!」

 

と、前方からの悲鳴に気付き視線を向けると、少女を背負い走っていた響が転んでいた。

「―――って、大丈夫!?」

「ッはぁ、……ッはぁ、へいき、へっちゃらぁっ!」

 

過呼吸気味になりながら平気と答え、しかしヨロヨロと立ち上がりながら響は、転んだ拍子に背から落としてしまった少女に駆け寄り、手を引いて再び走り出す。

しかしその足は、先程よりも遅くなっていた。

 

「はっ、……というか、はっ、このまま、どこに逃げる!?」

 

スピードダウンした響に合わせ横に並び走りながら、後ろから追ってくるノイズに注意を向けている奏音の質問に、「とりあえず、今はちょっとでも遠くに!」と返してくる。

結局は今のまま走り続ける事に変わりないのでは、と突っ込みたくなるのを押さえ空を見上げ、そして気付く。

……そういや、空を飛ぶタイプもいるとは聞いたことがあるけど、今の所追いかけて来ているのは地上を移動するのばかりだよね……?

後方を振り返り、そしてもう一度空に視線を向ける。

茜色から藍色へと変わりつつはあるものの、ノイズらしき極彩色の姿はその空には今の所見受けられなかった。

ということは、だ。

 

「そうだ、高い場所なら!」

 

 

 

 

「……だ、らっしゃあああッ! 疲れ、たぁぁぁ……ッ!」

 

既に茜色から完全に藍色へと変わった空の下、響と奏音、そして幼い少女はコンビナート施設のタンク付近にある建物の屋上に辿り着くと同時に倒れ込み、仰向けになっていた。

ここに登り切った時に、一応下を覗き見たが流石に登るのは無理なのか、群がったまま動こうとしないノイズを見て、一応高所が安全というのは間違いではなかったようだ。

 

「あー、もう足が、棒切れみたいで……ボクもう走りたくなーい……」

「私お腹すいたよぉ……」

「ブレないねぇ、響ちゃん……!」

 

疲労困憊、全身擦り傷だらけ。肩で息をするのもやっとな状態で、とりあえず一時的にとはいえ安全な場に着いたことによる安堵からか、軽口を叩ける程度には響も奏音も余裕を取り戻していた。

 

「……ねぇ、死んじゃうのかなぁこのまま」

 

そんな中、響の横で同じく仰向けに横たわる少女の、今にも泣きそうな声が聞こえた。

それを聞いて、響は上半身を起こし、柔らかな表情を浮かべ首を横に振る。

 

「大丈夫、お姉ちゃんが守るから」

 

出来るだけ安心させるように笑みを浮かべながら、少女の頭を撫でる響を見て奏音も上半身を起こしながら周囲を見回す。

 

「まあもう特機部の人らも動いてるだろうし、とにかく今はこの状況が、すぐに終わるのを待つ……だけ、だね……」

「……? 奏音、ちゃん?」

 

奏音の声がゆっくりと、そしてぎこちなく途絶えたのを不審に思いながら、奏音がいる方へと視線を向けると。

 

其処にいる()()()を認識して、体が恐怖で強張った。

 

「……そうだった、こいつら(ノイズ)、どこにだって突然現れるんだったね……」

「うわぁあああああ!?」

 

ちくしょう、しくったなぁ。

そんな奏音の悔しそうな声を聞き流しながら、響は叫ぶ少女をすぐさま抱き寄せる。

―――いくらなんでも、そううまく事が進むとは思ってなかったけど、そりゃないよ!?

 

先程自分達を追いかけてきたノイズに劣らない量の極彩色(ノイズ)が、すぐ目の前に広がっていた。まるで自分たちが無事逃げ切ったと信じ切っていたのを、あざ笑うかのように。

 

『――――――』

 

後退ろうとしても、後ろにあるのは数十メートル下にアスファルトの地面が広がっているのみ。いや、アスファルトとキスをする前に今も下で蠢くノイズ達とキスして灰と化すのが先か。

 

―――何か、何か私に出来る事は?

 

「……あぁもう、厄日だ厄日だなんて思ってたのが失敗だったかな? 本当に厄日、というか命日になっちゃうなぁこれ……!」

 

奏音が響と少女の前に立ち、震えながら軽口を飛ばすのを見ながら。

少女が強くしがみつき、抱きしめてくるのを感じながら、響は考える。

この状況を抜け出す何かを、自分に出来る事を。

 

―――出来ること……きっと何かあるはずだ。

 

「でもさ、こういう時、諦めたら負けだって、教えられてるんだよね、こっちはさぁ……!」

「――――――」

 

虚勢にも聞こえるそれは、だが確かに奮い立たせるには上等な言葉だった。

ジリジリとにじり寄ってくる極彩色の群れを前にしながらも、二人を護るように立つ奏音の言葉に、響の胸のうちにある言葉が浮かんだ。

 

――――生きるのを諦めるなッ!!――――

 

それは二年前、ツヴァイウィングのライブ会場で起きた惨劇の際に掛けられた言葉。

瀕死の自分を助けてくれた、()()()から貰った言葉を思い出しながら、それでも諦めてたまるかと思いながら、私は叫び、

 

「―――生きるのを、諦めないでぇ!」

 

―――()()()受けた胸元の傷が疼くのを感じながら、そしてこの状況に対し私が出来る何かを強く求めながら、()()を無意識ながら詠った。

 

《―――Balwisyall Nescell gungnir tron……》

 

 




とりあえず奏音ちゃんは下手したら國次より主人公出来るかもしれないメンタルはあります。
まあシンフォギア纏わせる予定もないし、聖遺物とも関わらせるようなことは……

ウェル博士(にやっ)

…いや、大丈夫なはず(汗)
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