不器用な先輩と後輩の青春物語。


あの時の青春を。



気持ちは、伝えなければ分からない。

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初投稿

僕っ子の白夜みあです
最近このサイトを知ったので昔書いたものを投稿します。




『このままで』

 

 

--------放課後の教室

 

いつものように私は一人で外を見ている。

 

「太陽だ・・・。」

頬を赤らめながら一点を見つめて・・・どれくらい経っただろうか。

私はふと我に返り真ん中の席に座る。

委員会の仕事をするため此処に残っているのだ。

 

「早く終わらせなくちゃ!」

とは言ったものの、分厚い資料と書類の山々が物語っている

さっそく作業に取り掛かった。

 

グラウンド。俺はそこに居た。

2年生の教室の窓を彼は見ている。しかし視線には窓に映る教室。

 

『あそこ窓開いてる…』

 

---おい!危ない!!

 

声がした方を向くと顏にサッカーボールが命中。

尻もちをつき、大丈夫かとメンバーは駆け寄るが・・・笑っていた。

 

部活が終わり彼は制服に着替える。

 

『しまった…!!』

忘れ物に気づいた俺は後輩らに挨拶し急いで教室へ向かう。

いつもならこのまま帰るのだが彼はふと気になった。

 

『まだ…いるかな。』

俺は1つ下の階の教室へ向かうことにした。

 

教室をおそるおそる覗いてみると、

そこには熱心に勉強をしているあの彼女がいた。

 

邪魔してはいけないと思うと同時に

声をかけたい…話したいという気持ちが増していた。

 

 深呼吸をして勇気を出して扉を開ける。

『よっ!まだ教室にいたんだな』 後ろから声を掛けてみる。

 

後輩の肩がピクッと反応する。

 

「せ、先輩…!?お、お疲れ様です!」

こちらを振り向いた後輩は驚いて一礼する。

その反応がちょっと可愛らしくて俺の心はくすぐられた。

 

『こんな遅くまで勉強なんて偉いな。』

 

「い、いえ!委員会の仕事が終わって少し時間があったのでちょっとだけやろうかと」

 

『それで集中しすぎたってわけか。』

 

「そんなところです…」

 

初めてこんなに会話が続いた…。嬉しくてお互い笑顔で話していた。

 

 

「『あの!……先にどうぞ!…ぷっ、あははは』」

 

後輩もこんなふうに笑うんだ…。

 

後輩はいつも大人しい感じで物静かな人だと思っていた。

 

「すいません、なんかおかしくて」

 

『わりぃ、俺もなんかつられて』

 

「いえ、そういえば先輩なんて言おうとしたんですか?」

 

そうだ、忘れていた。

 

『あのさ…俺に勉強教えてくれないか?』

 

「はい!……え!?勉強ですか?」

 

『来週復習テストみたいなのがあってさー。

2年の時の範囲も出るらしくてよ。

どうしても数学だけは苦手で…だから教えてほしいんだ!頼む!』

 

私なんかが先輩の役にたてるのかな・・・。

 

「いいですよ、私でよければ…。」

 

『本当に!?助かるよ。場所は俺の家でいいかな?』

 

「先輩の家…ですか!?」

 

『あー!嫌ならいいんだ。…その方が落ち着くかなって

ほら、俺がそっちに行くのもなんか、悪いだろ…?』

 

本当は俺が緊張しちゃうからなんだけど・・・。

 

「そ、そうですね…」

 

私、部屋汚いかもしれないし・・。

 

『あ、タダでとは言わないよ!

えっと…確か父さんの出張の土産に洋菓子があったような。』

 

「行きます!!」

 

目を光らせてまるで子供のように無邪気になる後輩。

 

『じゃあ、行くか!』

 

「はい…!」

 

 

学校から出て二人並んで下校。

お互い緊張しているからか無言で歩き続けている。

 

手が触れそうで触れない距離・・。

 

いつもの帰り道が長く感じた。

 

不思議な感覚がなんともいえないくらい気持ちがよくて・・

 

相手を好きな気持ちがいっぱいいっぱいになり

 

お互い顏が熱くなっているのを感じた。

 

 

-----そして先輩の家に着いた。

 

「先輩の家から私の家、結構近いかもです。」

 

『まじ!?』

 

「はい、あそこの角を曲がって少し歩けばですけど」

 

こんな些細なことでも嬉しく思ってしまう。

 

『そうなんだ!とりあえずあがって、あがって!』

 

「は、はい、お邪魔します!」

 

先輩の家・・・広いなあ。

 

「初めて男の人の家に入った……。」

 

『ん?何か言った?』

 

「いえ、なんでもありません!!!」

 

『そう。あ、リビングこっち。適当に座ってくれていいよ。

俺、ちょっとお菓子出してくるから』

 

スタスタとキッチンの方へ行く先輩。 

後輩は床にちょこんと座る。

 

『おまたせ!ごめんね…今お茶しかなくて。』

 

「お構いなく!!…いただきます。」

 

後輩は一口、洋菓子を口にする。

 

「おいひいです!!」

 

『よかった!どれどれ…俺も』

 

先輩も一口、洋菓子を口にする。

 

『本当だ、これすっげぇ美味い!!』

 

なんか甘いもの食べてる先輩、ちょっと可愛いかも。

 

『ん?俺の顏になにかついてるか?』

 

「いえ!…勉強始めませんか?」

 

『あ、あぁ。そうだな!』

 

後輩は丁寧に分かりやすく教えようと必死で、

先輩は後輩との距離が近くて緊張していて必死に聞こうとする。

 

ダメだ・・全然頭に入らない。

こんなに頑張って教えてくれているのに!

かすかに後輩から香るシャンプーのにおい。

 

俺は何をやっているんだ。

 

 

 

数時間後。

 

『ありがとうな。教え方上手いし…分かりやすい。』

 

「そう言ってもらえてよかったです!」

 

『そうだ。なぁ、夕飯食べてくか?俺作るよ』

 

先輩の手料理!?・・・食べたい!食べたいけど。

 

「悪いですよ。そんな。」

 

『いいって。これも勉強教えてくれたお礼!まあ口にあうか分からないけど』

と言って彼は立ち、キッチンへ。

 

「ではお言葉に甘えて…あ!でも何か手伝わせてください!」

 

ずっと座るのも落ち着かない。

私もキッチンへ行く。

 

『じゃあ冷蔵庫から材料出してくれないか?』

 

「分かりました!」

 

そしてまた無言の時間に・・・・。

 

 

手際のいい後輩を見て俺は

 

 

『なんだか…恋人みたいだな。』

 

 

後輩はまた肩をピクッと動かし頬を赤らめる。

 

本当は嬉しいけれども

 

「な、何言ってるんですかー。」

 

流してしまったのだ。

 

自分に気がないのかと思った俺は

 

『そうだよな…変な事言ってごめん。』

 

 

終わった・・・・。俺の青春さようなら。

 

そうか、そうだよな。

 

 

私何やってるんだろう。

 

後輩もやってしまったという罪悪感にかられ逃げ出したい気持ちになり

 

「…すいません。先輩、私やっぱり帰ります。」

 

 

その場から離れて帰る準備をし始める。

 

 

諦めたくない。

 

 

俺は後輩の腕をとっさに掴む。

 

 

 

『…待って!!今は…行ってほしくない。なんていうか…』

 

 

「な、なんでしょう……」

 

 

戸惑う後輩。 

 

お互い顏は見れていない。

 

 

今更引くわけにはいかない。

 

もういっそ思い切って言ってしまおう。

 

 

『俺…ずっと、お前が傍にいたらいいなと思ってた。』

 

 

「え…。」

 

 

後輩は振り向く。 

 

 

泣いていた。頬に涙が流れている。

 

 

 

やべ・・。

 

なんで泣いているのか分からない。

そんなに嫌われてたのか俺。

 

泣かせてしまった。

 

想定外のことに動揺する。

 

 

気がついたら後輩を抱きしめていて、

自分でも何が起こっているのか分からなくなった。

 

後輩は抱きしめられたことに嬉しくて泣き、

 

後輩は抱きしめ返す。

 

心臓の音聞こえてないかな。

 

『今言わないと、二度と言えないような気がして』

 

小刻みに震えている後輩が強く抱きしめてきて

俺もまた強く抱きしめ返す。

 

後輩は深呼吸をした。

 

私も言わなくちゃ。

 

抱きしめながら涙目で見つめてきた・・・。

 

 

 

「先輩…私嬉しいです。」

 

 

『…え。それ本当か!?』

 

今にも泣き崩れそうな顏をしている後輩。

 

俺まで嬉しくて泣きそうだ。

 

 

 

またゆっくり抱きしめる。

 

抱きしめられてこれは本当なんだと自覚する。

 

 

「私もずっと…先輩が傍にいてくれたらいいなって思ってました。」

 

 

抱きしめて後輩のあたたかさにほっとする。

 

 

 

いつも遠くから横顔を見てた。

 

後輩が一生懸命、本を読んでいる顏・・

勉強している顏・・凛とした表情に見惚れていた。

 

 

 

 

永遠にとどかない存在だと思っていた先輩が

今、目の前にいる。

 

わざと遠回りして廊下ですれ違ったり、

遅くまで学校いるのも先輩のキラキラしてる姿を見るためだったり。

少しでも先輩を見ていたかった。

 

 

 

「先輩…?」

 

ボーッとしているので話しかけてみる。

 

「…んぱい?」

 

声が響いて、ふと我に返る。

 

『ん?』

 

どうした、と言いかけて足がふらついてしまった。

 

 

「…!!危ないっ!」

 

 

慌てて立て直そうとするが自分の方に引っ張りすぎてしまい

 

彼と一緒に彼女の方に倒れてしまい、

 

お互い顏が近くなる。

 

 

「『…!!』」

 

 

 

目の前に、後輩の顏。

 

 

好きな人の顔。

 

 

・・・いつもより大きく開かれた目に吸い込まれそうになる。

 

 

『えっと…』

 

手は繋いだまま動けずにいた。

 

「あぁ、す、すいません!」手を離す後輩。

 

離された手を繋ぎ直して、彼女を起こす。

 

 

今度はちゃんと顏が見たい・・

 

これから先。ずっと彼女の顏を見ていよう・・そう思った。

 

『大丈夫?怪我…してない?』

 

「だ、大丈夫です…!先輩こそ大丈夫ですか?」

 

恥ずかしさが込み上げてくる。

 

顏が赤いのを感じた。

 

後輩は恥ずかしそうに目をそらした。

 

繋いだ右手はそのままに、

左手で彼女の頬を撫でる。

 

ピクッと一瞬震えたのが伝わる。

「ふぇ…」

 

ひとつひとつの動作が表情が愛しく思える。

 

 

無意識に繋いだ手をぎゅっと握り返す。

 

 

彼は彼女の名前を呼んで、顏を近づける

 

「っ…」

 

顏を赤らめながら目をゆっくり閉じる。

 

 

俺は目を閉じて…唇に触れる。

 

柔らかくてあたたかい。

 

夢みたいだ。

 

彼女はまた身体が震える。

色々な感情が込み上げてくる。

 

 

二人は何度も、何度も短くキスをする。

 

唇が触れるたびに後輩の身体が震えて、右手を握り返してくる。

それが嬉しくて何度も触れたいと思う。

 

「せん…ぱいっ…!これ以上は、恥ずかしいです…」

 

『ん…ごめん、反応が可愛くてつい…』

 

目を開けずにそう小さく返す後輩がとても愛しくて可愛らしくて。

 

左手で後輩を抱きしめる。

 

 

 

窓の向こうが暗いことに今更気づいて・・

 

どれだけ時間が経ったのだろう。

 

 

 

「大丈夫です…ってもうこんな時間!」

 

たくさんのことが起こったのに一瞬で時間が過ぎたように感じた。

 

嬉しくてまだ信じられない。

 

少し寂しい気持ちになり、ぎゅっと抱きしめる。

 

 

こうして抱きしめているとずっとこのままでいれたらいいのにと思う。

 

今はただ、こうしていたい。

でも、きっとこのままだといけないような気もして、

繋いだ手を離した。

 

 

後輩は両手で俺を抱きしめてきた。

 

 

「少し…もう少しだけこうさせてください…。」

 

本当は後輩の声が、ぬくもりが、何より愛しくて。離したくなくて。

 

包み込むように、後輩を強く抱きしめる。

 

 

このぬくもりがずっと感じられたらいいのに・・私はそう思った。

 

 

『…これからよろしくな。』

 

「…はい。」

 

『あと敬語禁止ね。』

 

「ふぇぇ!?」

 

『お願い。もっと距離を縮めたいんだ。』

 

そんな子犬みたいにお願いされたら…ずるいです。

 

「わ、分かった。な、慣れるまで時間がかかるかもしれないけど」

 

『俺にまかせとけ!』

 

「あぁ!!先輩!外、見てください!」

 

無邪気に笑う後輩が窓の外を見る

 

『お、どした…?』

 

「すごい!私初めて見た!!綺麗…。」

 

『あぁ…本当に。綺麗だな。』

 

 

窓の外には遠く青白い天の川。

 

 

 

今まで遠くから見てきた後輩の姿、声、無邪気な笑顔。

どれほど後輩を想い、想われていたのか。

ふわりと宙に浮いたような、そんな落ち着かない感覚に俺はいる。

 

そんなふわりとした気持ちは心地よく・・とてもあたたかい。

 

 

 

遠くから見るだけでいい。それでいいと思ってた

でもやっぱりこうして傍にいると分かると安心する。

 

 

 

「先輩、大好き!」

 

『お、おう。俺も…大好きだよ』

 

二人はまた手を繋いだ

 

 

 

 

今日は七夕。

二人の願いは……きっと同じだろう。

 

 

 

END☆

 

 

 






ここまで読んでくれてありがとうございます。
いかがでしたか?キュンッと少しでも感じていただければ嬉しいですw
名前はあえて考えませんでした(笑)


僕もこんな青春してみたかったー!!

よかったら感想やリクエストなどがあれば…
これから息抜きにちょこちょこっと投稿していきますので
よろしくお願いします!☆


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