決して真似をしないでください。


身近に潜む霊

戦場で一度も幽霊を見たことがない日本軍人をして恐怖に陥れた本国の怨霊たち

彼、彼女たちはなぜそこに潜むのか

いつから、そこに
いつも、そこに
いつ、そこに

そこにいることに気付いてしまったら、貴方はもう見過ごすことはできない。
最後まで、最期まで気付かないほうが幸せなのに。


決して真似をしないでください。
そこに、います。

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思い付きでばーっと書きました。


幽霊判別法

 皆さん、幽霊とか信じてますか?

 おそらく、信じている人は過少でしょう。

 私も信じていない方です。

 

 霊感なんて、特に信用なりませんよね。

 

 そんな。私がちょっとだけ幽霊を信じるようになったきっかけがあります。

 

 それをお話ししたいと思います。

 

 事の発端は、なんてことのない祖父との会話です。

 祖父は今は亡く、20年以上前に鬼籍に入っております。

 

 そんな当時の祖父は、とても善人で孫が好きな良い祖父でした。

 

 そういえば、祖父は、私が母や祖母に物を買ってもらったり、お小遣いをもらったりしたときは、「お、うまいことしよった!」なんて、ニコニコと好々爺然(こうこうやぜん)とした雰囲気で笑っていたことを今思い出しました・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

――う、泣いていい?懐かしくて・・

 

 

 

 

 

 

 

 と、それはともかく、

 私が聞かなかったこともあり、あまり昔の思い出話をするような人ではありませんでした。

 

 しかし、当時小学生だった私は社会の授業の一環で戦争中の話をご近所や親族から聞いて子供新聞にするという体験型授業があり、その流れで、祖父に昔の話を聞いたことがありました。

 

 戦争

 

 平和に過ぎる日本ではとても想像もつかない、壮絶な時代。

 たった半世紀前に、国を挙げて、世界中と大喧嘩をした時代があったのです。

 これを読んでいる人なら、活字になじみがあるだけに、こういった話を知っている人も多いでしょう。

 しかし、あえてまとめるならば、1941年の開戦以来、日本はアメリカ、イギリス、中国、オランダ、オーストラリア、他多数と戦争状態にあったのです。さらに、後にはソ連(昔のロシア)とも戦争になります。

 想像ができますか?今でいう「超大国」ばかりを相手に大戦争です。

 もはや無理ゲーですよ。

 アメリカ一国だけでも無理なのに、イギリス、中国、ソ連とか、どんなクソゲーだよと・・・

 当時の政府の偉いサンの考えることはよくわかりませんな。??軍部のせい、という人もいますがね。一応当時の日本は民主主義国家ですよ。ちゃんと選挙もありますからね。ナチスドイツも然(しか)り。

 せめて、アメリカだけでも敵に回さなければな~っと考えますよね。

 当時のアメリカは孤立主義という、引きこもり万歳みたいな考え方があったので、手さえ出さなければ攻撃されることはなかったはず・・・甘いかな?

 

 と、また脱線した。

 

 え~っと、なんだっけ。

 あ、おじいちゃんね。

 

 私の祖父も当時の状況から、当然のごとく軍人として出征していたそうです。

 場所はシンガポール。

 そこで衛生兵として勤務していたそうです。

 シンガポールは初期に攻略され、大戦中は比較的安全な後方地域という扱いでした。

 近隣には油田もあり、重油に事欠かないため多数の艦船が詰めていたそうです。

 陸軍もシンガポールを経由して西はインドから、東はニューギニアまで幅広く分布していたとか。

 

 そして、大戦末期になると、激戦が続きビルマ方面、ニューギニア方面、いわゆる南方地域から負傷者が続々と集まってきては入院し、時には死に、時には回復して再び戦地へと赴いていったそうです。

 

 祖父は軍医の助手をする傍ら、入院患者の世話もしていた。看護婦も足りなければ猫の手も借りたいような忙しい日々が続いたそうです。

 しかし、激戦を生き抜いてきた戦友達を無下に扱うこともできず、話を聞き、看病し、看取って言ったといいます。

 そんな中、今際の瀬戸を歩く者ばかりでもなく、比較的軽いけがや病気で入院して来る者もいて、彼らとは退院するまでよく、郷里の話なんかをしていたそうです。

 

 そして、ある日のこと。

 一人の軍人が入院し、おじいちゃんとやはり郷里の話をしていたそうです。

 

「ウチの家は代々農家でさぁ。そこそこ大きな田んぼと畑があったおかげで、食うには困ってなくてね。このご時世でしょ?いや~助かったもんですよ。じっさまは欲目かいて日露戦争のあと、米の売り渋りなんてして、村でかなり嫌われたもんでさぁ。ハッハッハ!」

「うらやましいね。ほい、今日の薬。ちゃんと飲んでや」

「きょうび薬が手に入るだけでも有り難いね。ビルマはひどいもんだったで・・・」

「じゃ、俺は次のとこ行くで」

「あ~、そんな急がんでも・・・暇なんよ」

「俺は忙しいだけど」

「まぁまぁ、ウチの話でも聞いとくれや。さっき、ウチはそこそこ大きい言うたやろ。そんでさ、まぁ広いもんだから、思い出すのも一苦労でさ。こう~目を閉じて、家に帰って母ちゃんに挨拶するとこをいっつも想像しとるんよ。ガラガラ~ただいま帰ったぞ!ってさ」

「はぁ、まぁ皆はよ家には帰りたいもんだな。俺もここにきて何年経つやら」

「そやろ?そして、そのまま頭の中で家の中をこう~散策するんやわ。そしたらさ、一番奥にある納戸(なんど)なんやけど、なんか変なんよ」

「ん?何の話や」

「奥にある納戸(なんど)には、季節物の服とか、火鉢とか入れてるんやけど、人の気配っちゅうんかな。・・・あるんや」

「ふむ、それで」

「前々から、目を閉じて家のことを思い出してたんやけど、その納戸(なんど)だけ、どうも変な感じがしてな。まぁ、ある日開けたんやわ」

「想像の中やろ?」

「そうなんや。頭の中で家を思い浮かべて、母ちゃんに挨拶して、家をドカドカってあがってその納戸(なんど)を開けるとこまで想像したんやわ」

「そしたら?」

「ん・・・なんていうか、女がおった」

「はぁ?女?母ちゃんが間男連れ込んでたんとちゃうんか?」

「それも嫌やけど、そういうんなん違おうてさ、ボロボロの白い服着た髪の長い女が暗い納戸(なんど)の奥におって、なんや天井をじ~っと見とるねん。こっちに気付いてるんか気付いてないんかわからんけど、身じろぎもせんで、こう、じ~っとな」

「なんや気持ち悪いな」

「そやろ、これは人間と違うなと思ってな。想像の中やけど、あんまし見んほうがええなって思ってな。納戸(なんど)閉めたわ」

「そら幽霊やな」

「そうかもな、そんでも気持ち悪いもんが家におる気がして母ちゃんが心配でな、時々やっぱり想像の中で家に帰るんやけど、最近はあの納戸(なんど)が勝手に開いとるんやわ。中は見んようにしてるけど、多分おる。そのうち想像の中でも、納戸(なんど)から出てきよる気がしてな。気持ち悪いんよ」

「そら、気味が悪いな。あんまし、家のこと心配してるから余計やな。思い出すないうのも酷な話やしな」

「ほうなんよ・・・あんまし想像せんほうがええんやろと思ってるんやけど、入院してからは特に暇でな。戦場では、忙しいときは考えんでもすんだんやが・・・」

「まぁ、家のこと考えるんやったら、母ちゃんに挨拶したくらいで辞めといたほうがええな」

「そうやな」

 

 そんな会話をしていたそうです。

 

 祖父も勤務の傍ら時々様子を見ていたのですが、いよいよ退院する日が来て、またどこかの戦地に行くことになっていたらしい。

 そのためか、その軍人はあまり元気がない様子でした。

 退院日に、祖父が土産としてバナナを渡してやると寂しそうに笑って礼を言ったそうです。

 そして、別れ際、

「納戸(なんど)から出てきよった・・・」

 ボソリと語って、退院していったそうです。

 

 その軍人のことが気になりましたが、一衛生兵にできることなどなく、安否を窺うのみです。

 いずれにして、戦争はますます厳しくなり、後方地域と言われたシンガポールもいよいよ安全とは言えなくなってきた。

 時局の話は暗いばかりで、沖縄の疾患や本土空襲の話で夜も眠れないほど不安な日々だったそうです。

 あの軍人もどこかの激戦地で戦死しているかもしれない。

 そう考えていたといいます。

 そして、南国の暑い夜のこと、祖父も時局や残してきた家族のことが心配で、床に着くと家のことを思い出すようになったといいます。

 あの軍人のいうように、家のことを隅々まで思い出そうと、思いを巡らせていたそうです。

 

 小さな玄関

 狭い廊下

 左右に並んだ4畳半と6畳の居間

 番奥の勝手口を開くと女房が小さな庭で洗濯物を干している。

 ―?ただいま戻ったぞ

 ―?おかえりなさい。ご無事で何よりです

 家を振り返る。

 離れには、年老いた祖父と・・・ん?

 離れに隣接する便所

 そこに何かが・・・

 

 そうして、違和感を覚えたといいます。

 離れの便所に。

 

 あの軍人の話を思い出し、もしかしてという思いがあったそうです。

 ただ、無理に確かめるような真似はしたくなくて、想像の中ですら、離れのほうには近づかないようにしていたといいます。

 

 不安な戦時中の夜。

 灯火管制のため真っ暗な中、寝苦しく、退屈な夜。

 想像を巡らせるしかやることもなかったので、度々家に帰ったそうです。

 そのたびに、違和感を覚える離れの便所

 どうしても気になり、何度か想像の中で離れのほうまで行ったことがあるそうですが、ついに離れの便所を開けることはしなかったそうです。

 

 

 

 そして、終戦。いや、敗戦・・・か。

 

 

 

 日本はとうとう力尽き、連合国に膝を屈したそうです。

 祖父も悔しかったといいます。

 ただ、それ以上に戦争が終わったことが嬉しかったとも言います。

 皆、そういった気持ちは多少なりともあったのでしょう。

 口には出さずとも、郷里に戻れることが現実味を帯びてきたのだから当然です。

 負けたとはいえ、もう殺し殺されることはないのだから。

 

 そして、約1年後、復員船で日本の地を踏むことができた。

 

 家に帰ってみれば、女房は無事でしたが、祖父は半年前に亡くなっており、葬式もすでに済んでいました。

 無人となった離れが寒々としていたことを今でも思い出すそうです。

 そして、離れの便所も変わらずそこにあった。

 とはいえ、離れも離れの便所も祖が亡くなって以来誰も使っていなかったそうです。

 なんとなく、いやな感じがしたので、当時のおじいちゃんは離れに近づかないようにしたと言います。

 

 戦争が終わり、家での貧しくとも安寧の日々。

 戦争の記憶の少しづつ薄れていきました。

 

 そうした日々に、闇市で偶然の再開があったそうです。

 そう、あの軍人です。

 高値で米や野菜を売りさばいて、なかなかに儲けを出しているようです。

 しかし、顔には覇気がなく。

 彼に声をかけられるまで気付かなかったそうです。

 

 偶然の再開に喜ぶと、

 男二人寄れば酒を飲む。

 

 なかなかに羽振りのいい元軍人の男は、祖父の分までおごってくれた上、いくつかの野菜なども融通してくれたそうです。

 そして、語る戦地の思い出。

 苦労の話。

 郷里に帰った日の嬉しさ。

 納戸(なんど)の女・・・

 

「ウチに帰ったらさ、まっさきに調べようと思ってたんよ、だけど、怖くてね。想像の中のことだし関係ないと思ってたんだわ」

「その話し方だと・・・」

「ん、まぁ」

「開けたのか」

「・・・たまに、夜に戦地のことを思い出してたらさ、その時の癖か、家の中を散策する想像してしまうんだよ。変だろ家にいるのにさ」

「あ~なんか分かるかもな」

「そしたらさ、あの納戸(なんど)のとこまで来てたんだわ。そしたら、納戸(なんど)がこう、ギーって独りでに開いて、中から・・・」

「・・・」

「まぁ、あんまし気味が悪かったもんだから、すぐに飛び起きて想像をやめたんだわ」

「まさか」

「ん、なんていうのか、暗い家の中で、蒸し暑い日のはずなのに、ヒンヤリしててさ、想像の中が続いてるような感じだったんだよ。気味悪いもんだから、母ちゃん起こして電気つけて回って、家じゅう明るくしたんだけど、それでも、なんていうか変な感じなんだよ」

「どんな?」

「気配っていうんだろうかな。あの白い女の気配がさ、あるんだよ。そして、気になってしょうがないから納戸(なんど)のとこまで行ってさ、開けたんだ」

「・・・(ゴク)」

「いたんだよ・・・白い服の女がさ、こっち見てるんだよ・・・ジーってさ、もう、あれは・・・もうもうさ、あぁ」

「いい。いい。話さなくてもいい」

 

 それから、別れた男がどうなったのか、白い服の女を見てから家でどうやって過ごしているのか、聞けずじまいで、その後再開することもなかったといいます。

 闇市ですら、その後姿を見かけないうえ、あれほど羽振りのいい男を誰も知らないという。

 

 

 祖父も気になっていましたが、探しようもなく。

 ただただ、安否が気になるばかりでした。

 そして、自分自身気になることもあったそうです。

 

 そう、離れの便所。

 

 なんとなく、元軍人のいうことと、どこか似たような雰囲気を感じ取っていたのです。

 だからある日、家で寝ているときに、想像の中で家を散策してみたそうです。

 今まではなるべくやらないようにしてきたこと。

 それをどうしても、やらなければなならない気がして、

 

 

 目を閉じる。

 

 

 小さな玄関

 

 狭い廊下

 

 左右に並んだ4畳半と6畳の居間

 

 奥の勝手口を開くと女房が、小さな畑を世話している。

 

 ―?ただいま

 ―?おかえりなさい

 

 家を振り返る。

 

 無人離れ

 

 離れに隣接する便所

 

 

 

 そこに、

 明り取りの小さな窓がついている。

 そこに、

 小さな顔が、こっちをじっと見ている。

 そこに、

 おかっぱ頭の少女が、いる。

 

 

 

 かつて感じた違和感。

 

 

 あの時も本当は気づいていた。

 見ないふり、

 気付かないふり、

 いないふりをした。

 

 病的なくらい白い顔。

 白い・・・いや青ざめた生気を感じさせない青白い少女。

 

 離れの便所が、

 開く、

 ギー・・・

 

 思わず、目を開け飛び起きる。

 

 音がした。

 ギー・・・

 

 どこかで押戸が開く音。

 

 我が家のほとんどはスライドさせる襖(ふすま)だ。

 食器棚を除き、家の中に押戸はない。

 

 音は、家の中ではなく、外で聞こえた。

 

 外にある押戸は、

 一か所

 

 あるのは、離れのみ。

 

 その便所のドアだ。

 

 あぁ、

 やっぱり、

 

 ギー・・・

 

 暗い夜のこと。

 祖父は起き、

 奥の勝手口まで歩くと、戸を開ける。ガラガラという立て付けの悪い音が夜の庭に響く。

 

 小さな、狭い庭のこと。

 暗い闇夜に沈む、無人の離れ。

 

 そこに隣接する、便所。

 

 

 ギー・・・

 

 ゆっくり、ドアが動き、開いたり、閉まったりと独りでに動いている。

 

 風・・・

 

 風はない夜。

 

 バタン

 

 閉まるドア

 

 きっと、

 きっと風なんだ。

 

 ガタが来たドアが動いてるだけなんだ。

 

 

 ツカツカツカ

 

 ギー!

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 ・・

 

 

 ・・・

 

 

 少女がいた。

 

 

 

 ・・・・

 

 

 

 病的なくらい白く。おかっぱ頭の少女が、

 青白い少女がそこに、

 

 いた。

 

 

 

 

 ガラス玉のようなツルリとした黒い眼球には白目の部分がなく、じっと見つめることに特化したその眼が、祖父を見ていた。

 汚い、何年も前の汚物が溜まった便所でしゃがむように座り込んだ少女がじっと見ていた。

 そこに佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 祖父から聞いた戦争の話は、そこで終わりでした。

 

 あの時、祖父はどうしたのか。

 結局聞けずじまい、当時の祖父の家の庭には離れも便所もありませんでした。

 小さくともきれいな庭があったことだけは覚えいます。

 たしか、祖母が庭木を植えたり、洗濯物を干したりと活用していたと覚えています。

 

 社会科の授業に使える話とは思えなかったので、シンガポールで衛生兵というところだけ、ピックアップして発表したのを思えています。

 

 そして、今日これを語っているのは、ふとした拍子に祖父の話を思い出したからです。

 

 あの、家の中を想像の中で散策するというものです。

 何かの拍子にそれを実践したときに祖父の話を思い出したのです。

 

 じっと、目をつぶって小さなアパートの一室を思い浮かべた時の事。

 2LDKの小さな部屋。

 キッチン兼居間と、寝室兼物置。家賃34,800円。ペット可。駐車場付き。

 

 アパートの玄関の戸を開ける。

 狭い玄関には靴が散らばる。

 そこにキチンと靴を脱いで上がる。

 さらにすぐに扉右手は便所、正面はキッチン兼居間。

 居間に入る。

 TVがドン、冷蔵庫かブーン、洗濯機はシーン、PCがウィーン。

 いつも通りの部屋、山積みになった詰みゲーに詰み本。なんとなく実際よりもきれいに見える部屋。

 

 ??これが美化か。

 

 奥の寝室にはスライドドア。

 そこには隙間がある。

 我が家の猫にため。

 ニャンコは居間にはいない。

 寝室で寝ているはず。

 

 ガラリとスライドドアを開けて、狭い寝室を見回す。

 ニャンコはいた。

 布団の上で香箱座りをして起きている。

 じっと私の顔を見ている。

 ・・・・

 ん。

 ちょっと視線が合わない。

 猫が見ているのは私の顔ではない。

 それを外れてちょっと上。

 なんだろう。

 部屋に入り、ニャンコを抱き上げる。

 それでも視線は私に合わない。

 

 注視しているのは部屋に入った私よりも上、そして、後ろ・・・

 

 猫の視線を追って振り返る。

 

 

 

 

 

 

 寝室に入った私の死角

 

 天井の四隅

 

 振り返った私の左上

 

 その天井の一角に、老婆が張り付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ゾッとして目を開ける私、

 想像をやめて現実に戻る。

 

 狭いアパートの一室。

 居間でTVを正面にしてビッショリ汗をかいている。

 寝ていたわけではない。

 ちょっと、家の中を想像で散策していただけ、膝の上のニャンコがピョンと飛び跳ねると、少し開けた寝室の戸から中へと入っていく。

 

 祖父の話お急激に思い出した私は、嫌な予感を感じる。

 暗い寝室は、まるで黄泉戸のよう。

 

 気配

 

 それが、

 確かにあった。

 

 祖父や、元軍人の話を思い出す。

 

 ニャァ

 

 とニャンコが呼ぶ声がする。

 恐る恐る寝室の戸を開ける。すぐ手前の電気のスイッチを入れると明るくなる。

 部屋に入らず、ニャンコを探すと、布団の上。

 

 

 そして、視線は私ではなく、天井の一角を注視している。

 

 見ないほうがいい。

 

 見ないほうがいい。

 

 見ないほうがいい。

 

 ミナイホウガイイ。

 

 

 

 ヒョイっと、顔だけ中に入れて、そこをみた。

 

 

 

 

 

 老婆がいた。

 

 

 

 

 

※※

 

 それから、今もその部屋に住んでいる。

 

 老婆今もそこにいる。

 

 

 

 皆さん、

 

 くれぐれも、自分家を想像の中で散策なさらないように。

 もし、散策するなら、余計なものは見ない。

 余計なことを考えない。

 余計なことをしない。

 

 幽霊の判別法はこんなにも簡単なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギー・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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