仮面ライダーAP   作:オリーブドラブ

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◆今話の主な登場人物

◆アレクサンダー・アイアンザック
 北欧某国の陸軍中将であり、マルコシアン隊の指揮官だった人物。部隊の壊滅後、絶海の孤島である海上要塞「シャドーフォートレス島」への異動を命じられた。圧倒的な体格を持つ巨漢であり、傲慢な野心家でもある。当時の年齢は45歳。
 ※11年後に新世代ライダー達と敵対する孤島編(https://syosetu.org/novel/128200/130.html)のメインヴィラン。

◆ニッテ・イェンセン
 マルコシアン隊の隊員だったニコライ・イェンセン少尉の一人娘であり、現在は孤児。父親亡き後、観光都市「オーファンズヘブン」の市長であるドナルド・ベイカーに養女として引き取られた。同じ孤児仲間の少女達の中でもリーダー的な存在であり、勝ち気な性格。当時の年齢は8歳。
 ※原案はダス・ライヒ先生。
 ※12年後に新世代ライダー達と共闘する北欧編(https://syosetu.org/novel/128200/97.html)のヒロインの1人。

◆ヴィクトリア・フリーデリーケ・フォン・ライン・ファルツ
 マルコシアン隊の隊員だったヴィルヘルム・フリードリヒ・フォン・ライン・ファルツ中佐の一人娘であり、現在は孤児。父親亡き後、観光都市「オーファンズヘブン」の市長であるドナルド・ベイカーに養女として引き取られた。この時はまだ気弱で、大人しい性格だった。当時の年齢は4歳。
 ※原案はG-20先生。
 ※12年後に新世代ライダー達と共闘する北欧編(https://syosetu.org/novel/128200/97.html)のヒロインの1人。

◆エヴァ・バレンストロート
 マルコシアン隊の隊員だったエドガー・バレンストロート大尉の一人娘であり、現在は孤児。父親亡き後、観光都市「オーファンズヘブン」の市長であるドナルド・ベイカーに養女として引き取られた。ニッテと同様に負けん気の強い性格であり、大柄な大人が相手でも怯まない気丈な少女。当時の年齢は8歳。
 ※原案は神谷主水先生。
 ※12年後に新世代ライダー達と共闘する北欧編(https://syosetu.org/novel/128200/97.html)のヒロインの1人。

◆レオナ・ロスマン
 マルコシアン隊の隊員だったレオン・ロスマン中尉の一人娘であり、現在は孤児。父親亡き後、観光都市「オーファンズヘブン」の市長であるドナルド・ベイカーに養女として引き取られた。ベイカーを慕っており、心優しく臆病な性格。当時の年齢は5歳。
 ※原案はRerere先生。
 ※12年後に新世代ライダー達と共闘する北欧編(https://syosetu.org/novel/128200/97.html)のヒロインの1人。

◆ミロス・ホークアイザー
 北欧某国の陸軍少尉であり、シェードに左眼を改造された元被験者。マルコシアン隊の壊滅後、絶海の孤島である海上要塞「シャドーフォートレス島」への異動を命じられていた新任士官。寡黙で冷徹な印象の美男子だが、情に厚い一面もある。当時の年齢は21歳。
 ※11年後に新世代ライダー達と敵対する夜戦編(https://syosetu.org/novel/128200/137.html)のメインヴィラン。



黎明編 仮面ライダースパルタンズ 第32話

 

「ふざけるなァアッ……! なぜこの私が、あの流刑地……『シャドーフォートレス島』に更迭されねばならんのだァッ! マルコシアン隊の愚図共がァッ……! 私の出世街道を台無しにしおってェェッ!」

 

 ――2009年、8月上旬。まだ戦いの傷が癒えぬ、エンデバーランドの陸軍基地。その司令室に、1人の男の怒号が響き渡っていた。屋外にまで轟いている彼の絶叫に、廊下を歩む兵士達は恐れ慄いている。

 

 立派な髭を蓄えた、2mもの体躯を誇るその巨漢の名は、アレクサンダー・アイアンザック。スパルタン計画を提唱した開発責任者にして、マルコシアン隊の指揮官でもあった陸軍中将だ。本来ならばジークフリート達と同様に、救国の英雄と称されていたはずの彼は、上層部から下された「異動命令」の内容に憤怒を露わにしている。

 

「政府も政府だ……! 『スパルタン計画は国防予算の無駄遣いではなかったのか』、だと……!? この街の惨状を知らぬばかりか! ここが戦場となった途端に、我先にと街から逃げ出し! 遥か遠くの安全地帯から数字だけを見ていた連中に何が分かるッ!? 私のスパルタンシリーズなくして、この国の存続はあり得なかった! なぜそれが分からんのだ、あの肥え太った豚共はァァアッ!」

 

 アイアンザックが開発したスパルタンシリーズの活躍と犠牲により、この国は間一髪滅亡を免れたのだが、政府上層部は「試作機の全壊」という今回の結果に納得しなかった。並の幹部怪人よりも遥かに強力なグールベレーを倒したと言う実績も、「ろくに変身も出来ないシェード戦闘員を倒せたところで」と評価しなかったのである。

 

 現場の惨状を知ろうともせず、ただ結果という数字のみを目にした彼らは、「民意」を汲んでマルコシアン隊を「英雄」として祭り上げたが――自分達が望む成果に届かなかったスパルタンシリーズを認めようとはしなかったのである。

 

 莫大な予算を投じていながら、思うような戦果を挙げられなかった責任者には相応の報いを与えねばならない。その判断に基づいた彼らはアイアンザックに対し、この国の最果てに浮かぶ要塞島――「シャドーフォートレス島」への異動を命じた。それは左遷、などという生易しいものではない。事実上の生殺し。島流しであった。

 

「おのれェェッ……! 政府の豚共が、我が真の最高傑作(ミサイルスパルタン)を建造出来るだけの予算を寄越してさえいれば……! そもそもマルコシアン隊の愚図共が、壊滅などしていなければァアッ……!」

 

 アイアンザックがこの判断に納得するはずがないということは、政府上層部の人間達にも分かり切っていた。だからこそ、決して刃向かえないような場所へと追いやることにしたのだろう。

 

「終わらん……私は絶対にィッ、このままでは終わらんぞぉおおッ……!」

 

 上層部の魂胆を見抜けないアイアンザックではない。だが、もはやどうすることも出来なかった。彼はただ煮え滾るような憤怒を込めて、司令室のデスクを殴り付けている。

 

「……」

 

 そんな「父」の醜態を「副官」の立場から見つめている金髪碧眼の美男子――アイングレイザー・アイアンザックは、取り乱している彼の様子を冷ややかに見つめていた。地位と名誉に囚われ、かつての「愛」を失った哀れな父。そんな男を見遣る彼の双眸は、どこか複雑な色を帯びた「侮蔑」の感情を湛えていた。

 

 ◆

 

 ――同時刻。観光都市「オーファンズヘブン」のとある大通り。そこに居合わせた通行人達は互いに顔を見合わせ、僅かにどよめいていた。

 歩道を歩いていた幼い少女達が、昼間から酒を飲んでふらついていた非番の陸軍兵士達にぶつかってしまったのである。その弾みで少女達が持っていたケーキがひっくり返り、兵士達の靴がクリーム塗れになっていた。

 

「おぉ〜い……どうしてくれんだぁガキ共ぉ、この靴ぅ! おめぇらのせいで汚れちまったじゃあ〜ねぇかぁ〜?」

「こりゃあ、てめぇらのパパやママに弁償して貰わね〜となぁ? あのマルコシアン隊のように、この国のために毎日命張ってる陸軍兵士様の靴を汚しちゃいましたぁ〜ってよぉ〜?」

「うっ……うっ、ひぐっ……!」

「えぐっ、えぅうっ……」

 

 陸軍を代表する英雄――マルコシアン隊の威を借りて声を荒げる2人の兵士は、赤らんだ顔で少女達に詰め寄ろうとしていた。彼らに睨まれた2人の少女は、小さな肩を寄せ合い身を震わせ、啜り泣いている。

 

 だが、エンデバーランドの戦いで実父を失った孤児である彼女達――ヴィクトリア・フリーデリーケ・フォン・ライン・ファルツと、レオナ・ロスマンが涙を流しているのは、兵士達に凄まれているからではない。

 

 父親代わりの恩人(ドナルド・ベイカー)の誕生日を祝うために、同じ孤児の仲間達と小遣いを出し合って買ったケーキを、台無しにしてしまった罪悪感。その感情に胸を痛め、涙しているのだ。

 

「ちょっと、いい加減にしてよっ! ケーキをぶっ掛けちゃったのは謝るけど……最初にぶつかって来たのはそっちじゃない! 変な言い掛かりはやめてよっ!」

「ニッテの言う通りだっ! ……だいたいあんたら、真っ昼間っから酒臭すぎだろっ! そんな奴らが父さん達をっ……マルコシアン隊の皆を語るなっ! 知った風なことを言うなぁっ!」

 

 啜り哭くヴィクトリアとレオナを兵士達から庇うように立ち、臆することなく両手を広げて怒号を上げる2人の少女――ニッテ・イェンセンとエヴァ・バレンストロート。彼女達2人は孤児達を纏め上げる年長者として、ヴィクトリアとレオナを守ろうとしていた。

 

 自分達の父が所属していたマルコシアン隊の名を、こんな横暴のために利用する。そんな卑劣な行いが許せなかったのか、まだ幼いニッテとエヴァは圧倒的な体格差を目の当たりにしてもなお、一歩も引くことなく兵士達を睨み上げていた。

 

「……あァ? 何言ってんだ、このクソガキ共。どうやら、てめぇの立場ってモノを理解してね〜みてぇだなァ?」

「こりゃあ、ちょっと躾けてやる必要があるみてぇだ……!」

 

 そんな彼女達が、マルコシアン隊の隊員達の「忘れ形見」であることを知らない2人の兵士は、こめかみに青筋を立たせている。その様子から危険な気配を感じた通行人達は、ニッテ達の身を案じて動揺し始めていた。

 

「……っ!」

 

 ――この生意気な子供に、目上に対する態度というものを教えてやる。そう思い立った彼らは、ニッテとエヴァの胸ぐらを掴もうと手を伸ばしていた。その「悪意」を敏感に感じ取ったニッテ達は、小さな身体を思わず強張らせる。

 

「うぉっ!? なっ、なんだてめぇっ!?」

「……そこまでだ」

 

 だが――兵士達の無遠慮な手が、彼女達に触れることはなかった。2人の兵士の背後に現れたもう1人の男が、彼らの襟首を背後から掴み上げたのである。予期せぬ「新手」の登場に目を剥いた兵士達は、酔いが覚めたかのように慌てふためいている。

 

「ぐひゃあぁっ!?」

「……!」

 

 凄まじい膂力で身体を持ち上げられた兵士達は、そのまま後方に軽く放り投げられてしまった。屈強な兵士1人を、腕1本で簡単に投げ飛ばしてしまうほどの力を持った男の登場に、ニッテ達も通行人達も唖然としている。

 

「……」

 

 その男は兵士2人を同時に投げ飛ばすほどの腕っ節なのだが、そんな豪快さとは裏腹な容姿であった。艶やかな銀髪を靡かせる、色白な美男子だった。軍服を着ているところを見るに、彼も陸軍の軍人であるらしい。

 

 士官用の制服に袖を通しているその端正な姿は、まるで美術館の絵画から飛び出して来たかのようだ。その身長はかなり高く、190cm以上はある。さらに彼の左眼(・・)は、痛々しい包帯によって隠されていた。恐らく、先日まで続いたシェードとの戦いによるものなのだろう。

 

「おっ、おい、てめぇっ! いきなり何しやがっ……!?」

「……階級章が見えないのか? 伍長」

「し、失礼しました少尉殿っ!」

 

 投げ飛ばされた兵士達は尻餅をついたまま、自分達を投げ飛ばした銀髪の男に食って掛かろうとする。だが、彼の制服姿と階級章を目にした瞬間、青ざめた表情で背筋を正し、慌ただしく敬礼していた。そんな彼らの様子を、銀髪の男は右眼で冷ややかに見つめている。

 

「……貴様ら。そこの少女達に対して、何をしていた」

「ハ、ハッ! このガキ共が我々にぶつかって来て、靴を汚したので然るべき注意をっ……!」

「そんなことは聞いていない。……()。子供相手に、何をしたのかと聞いている」

「ひっ……!?」

 

 銀髪の男の詰問に対し、兵士達はしどろもどろになりながらも、この場を何とか誤魔化そうと目を泳がせて答えていた。しかしそんな彼らの口八丁は、この男には全く通じていない。幼い少女に暴力を振るおうとしていた瞬間を、この男はしっかりと目撃していたのだ。陸軍兵士として、人間として決して許されてはならない所業の瞬間を。

 

「……ここでは話し辛いか? ならば河岸を変えよう。クランツ軍曹、ミルド上等兵。こいつらを憲兵隊に引き渡せ」

「ハッ!」

「け、憲兵隊ぃ!? ま、待ってください少尉殿ォッ! 憲兵隊だけはどうかご容赦くださいぃいッ!」

 

 銀髪の男は右眼をスゥッと細めると、自分が連れていた2人の部下に目配せする。その「合図」に深く頷いた2人の若い兵士は、ニッテ達に乱暴しようとしていた同胞達を、両脇から容赦なく拘束していた。

 

 一方、拘束された兵士達は狼狽した様子で銀髪の男に許しを乞うている。この近辺の基地に所属している憲兵隊は、「苛烈な取り調べ」で有名なのだ。だが、銀髪の男は全く聞く耳を持たず、眉一つ動かさない。

 

 その代わり――左眼(・・)を隠していた包帯を取り払った彼は。照準線(レティクル)を想起させる模様が刻まれた異形の瞳で、愚かな男達を射抜いていた。

 

「……取り調べの前に、一つ覚えておけ。この俺の『眼』に誤魔化しは効かんとな」

 

 彼の名は、ミロス・ホークアイザー。士官学校を過去最高の成績で卒業した()エリート士官であり――シャドーフォートレス島への「左遷(はいぞく)」を命じられた、曰く付きの新任少尉であった。

 






【挿絵表示】

※たなか えーじ先生に有償依頼で描いて頂いたイラストをここぞとばかりに再掲! 本章から12年後の某国が舞台となっている北欧編(https://syosetu.org/novel/128200/97.html)における、メインヒロイン達4人の集合イラストになります! 左からヴィクトリア、ニッテ、レオナ、エヴァの順になっておりますな。本章ではか弱いロリっ娘だった彼女達も、12年後の北欧編では立派な戦乙女に成長しているのです。たなか先生、彼女達をカッコ良く描いて頂きありがとうございました!m(_ _)m

 今話は本章の戦いの後日談となりました。アイアンザックやホークアイザーは後の事件で悪堕ちしますが、ニッテやエヴァ達は後に物語のヒロインとして活躍することになります。それらのエピソード群は北欧編(https://syosetu.org/novel/128200/97.html)や孤島編(https://syosetu.org/novel/128200/130.html)、夜戦編(https://syosetu.org/novel/128200/137.html)で描かれておりますので、機会がありましたらこちらもどうぞよしなに。ではでは、次回もどうぞお楽しみに〜!٩( 'ω' )و

 さてさて、それではここで大事なお知らせ。現在、X2愛好家先生が本作の3次創作作品「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil(https://syosetu.org/novel/316771/)」を連載されております。本章から約10年後の物語である外伝(https://syosetu.org/novel/128200/44.html)から登場した「仮面ライダーオルバス」こと忠義・ウェルフリットが主人公を務めております!
 こちらの作品の舞台は、本章から約12年後に当たる2021年7月頃のアメリカ。悪魔の力を秘めたベルトを使う、ジャスティアライダー達の活躍に焦点を当てた物語となっております。気になる方々は是非ともご一読くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 さらに現在は、ダス・ライヒ先生の3次創作作品「仮面ライダーAP アナザーメモリ(https://syosetu.org/novel/313018/)」も公開されております! 本章から約11年後に当たる2020年8月頃を舞台としており、こちらの作品では数多くの読者応募キャラ達が所狭しと大活躍しております。
 多種多様なオリジナルライダーやオリジナル怪人達が大暴れしている大変賑やかな作品となっており、さらには本章の主役であるジークフリート・マルコシアン大佐も登場しております。皆様も機会がありましたら是非ご一読ください〜(*^▽^*)

Ps
 ベタといえばベタなのですが、ヴィランが意外と女子供には優しい……みたいなのが結構好きだったり(о´∀`о)
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