久しぶりに真帆の家のバスケットコートをお借りしてみんなでバスケをすることになった。
元々今日は男バスが体育館を使用する日なので、部活自体もお休みだけど、昴さんがここ最近とても忙しくため、直接ご指導頂けないため練習不足になっていないかが不安だった。
――指導して頂けない分せめてしっかり自主練しないと。と考えていたら、みんなも同じ気持ちだったみたいで、
真帆が「どうせなら久しぶりに家でみんなでれんしゅーしよーぜ」と私たちを誘ってくれた。
今日の朝練の時に昴さんにもこの話をしてみたら、「頑張り過ぎないことと、ケガに十分注意すること」という条件で笑顔で許可をして頂いた。
そして、せっかくみんながやる気になってくれてるのに、コーチすることができないことを本当に申し訳なさそうにされていた。
「昴さん……」
どんな時でも私たちのことを大切に考えてくれている。
――昴さんがいらっしゃらない時でもしっかりがんばらないと。
そんなことを考えていたら突然真帆に抱き着かれてしまい、からかい混じりに「すばるんとの約束守んないとダメだかんな」と体中を撫で回されてしまい思わずドキドキしてしまった。
いつも以上に念入りにストレッチを行い、ダッシュで身体を温めてから、基礎動作の反復練習。
そして、最近昴さんが私たちのために考えてくれた特別訓練の準備をする。
私と紗季のコンビネーションと真帆と愛莉とひなた三人のディフェンスを重点的に強化するために、私と紗季の二人と真帆、愛莉、ひなたの三人に分かれてミニゲームを開始した。
*
場面は真帆と紗季が今日二回目の正面対決を迎えた。
真帆は紗季を絶対に通すまいと。紗季は正面で構える真帆の動きに警戒しながら、じっくりとその状況下で自分が取るべき最善手を考えている。
私がひなたと愛莉の動きに注意しながらも、紗季を見ているように、紗季も私の動きを。そして、私に動いて欲しい場所を伝えるように視線を送ってくれている。
「紗季!!」
「トモ!!」
お互いにフェイクを混ぜて作りだした一瞬の隙を突き、私は愛莉とひなたを一気に振り切り、紗季のパスは真帆の足元を潜り抜け、一直線に私が駆け抜けた先へと届く。
受け取ったボールを構えシュート体勢に入る。
自分が常に思い描き続けている理想のフォームへの想いを込め――放った。
みんなの視線を釘付けにしながら放物線を描いているボールは、ボードやリングに触れることなく、ただネットを擦る音だけを立てながらゴールを通過した。
ボールが二度三度と地面にぶつかり転がり出すのと同時に真帆が溜めていた息を大きく吐きながら、その場に仰向けに倒れ込む。
「あーつかれたーすばるんもガンバリすぎんなって言ってるし、今日はこんくらいでいいじゃねぇ?」
「そうね。ちょうどきりもいいし。私もだけどみんな疲れただろうしね」
「うん。それじゃ、今日はここまで」
『お疲れ様でした!!』
みんなで自分と相手への労いの声を掛け、今日の部活動を締めくくった。
「ちぇ~せっかくサキを一回止めれたから、今日はあたしの勝ちだと思ったのにー」
「ま、引き分けがいいところでしょ。私も真帆に止められたままなのはイヤだし、どうせなら今度は直接抜いてあげるわ」
「やっぱ智花ちゃん、すごく上手いし羨ましいなぁ~」
「おーひなとあいりのだぶるちーむでもかてなかった」
「そ、そんなことないよっ。二人ともどんどん上手くなってるよっ」
反省会。というほどのものではないけど、自然とみんなで今日の部活のことを話しながらお風呂場へ向かう。
*
「うわぁ……汗ベトベトで気持ちわるいー」
みんなで脱衣場に着くや否やすぐに真帆が服を脱ぎ出す。
上も下も一緒に脱ごうとしているため汗で湿っている体操服は肩の途中で引っ掛かり、下は同じく汗をたっぷりと吸ったスパッツとパンツが片足に引っかかっている。
すごく脱ぎ辛そうだが、お構いなしに強引に脱ぎ捨てていく。
「おー。まほはやーい。これはひなも負けてられない。あいりーてつだってー」
両手を上げ万歳の姿勢で愛莉を見つめている。
「うん。ひなちゃんいくよー」
「おー」
スポーンという音が聞こえそうなくらい綺麗にひなたの体から体操服が引き抜かれていった。
「――ってひな。愛莉に手伝ってもらわないで自分で脱ぎなさい!」
「えっと、下の方は私も恥ずかしいから自分で脱いでね」
「おー。まかせろー」
そういってスルスルとスパッツと一緒に下着も脱いで脱衣カゴに入れると真帆の後を追いかけていった。
先にお風呂場へと向って行った二人と同じく、汗で少し衣服が張り付いているけど、ゆっくり順番に脱げば特に苦労なく上も下も脱げる――脱げてしまう私と紗季……
それに対して、ひなたを手伝っていた愛梨は汗でべったりと肌にくっつく服を脱ぐのに手間取っているようだ。
胸が引っかかって窮屈そうになっていたり、大きなお尻と長い脚に体側服やスパッツがまるで自分の意志で愛莉の体から離れまいとしているかのようだ。
「……トモ。愛莉置いてって先に行こっか」
「ふぇ!? そ、それはちょっとかわいそうだよ……羨ましいけど……」
紗季と羨望の眼差しで見つめてから手伝ってあげると、「うぅ…二人ともごめんね」と顔を赤くした愛莉が忌々しげに自分の体を撫でていたけど、その動作すら羨ましく思えた。
「あーあー。すばるんも来れば良かったのに~」
五人揃って湯船に浸かったところで真帆がみんな内心で思っていても、あえて言わなかった不満を声に出す。
「もぅー、仕方ないでしょ。長谷川さんにだって都合があるんだから。いくらご指導して頂いてるからって、ずっと付きっ切りってわけにもいかないでしょ」
紗季の言うとおり、昴さんは今はテスト勉強中だ。私一人だけ朝練でお会いしてしまっているため、一日中会うことができないみんなに少し後ろめたさを感じてしまう。
みんなは自分たちにはそれぞれ用事があるから気にしなくてもいい。とは言ってくれてるけど、みんなだって本当は昴さんと会いたいと思っているのに。
私がしんみりした表情になったのを知ってか知らずか真帆が話題を変えてくれる。
「……にしても、やっぱアイリーンのおっぱいはずりーよなぁーフコーヘーだー!」
「あんた、みんなでお風呂入るたびに毎回それ言ってるわね。言ってて虚しくならないの?」
「あたしは将来、ゼッタイ巨乳になるから大丈夫だ。」
私も人のことは言えないけど、真帆がない胸を張っている。どこにそれだけの自信があるのかはわからないけど、それでもあの自信は私も見習わなきゃ……きっと大きくなるもん。
「なんの根拠があって言ってるんだか……でも、私も真帆に負けてられない!」
「私だって大きくなるもんっ……なるんだもんっ……」
「おーひなもあいりみたいに大きくなって。おにーちゃんをのうさつするー」
「うぅ……背だけじゃなくて胸までこれ以上大きくなっちゃったら困るよぉー」
気づくとみんなが自分の胸を揉み始めていた。
真帆は必死の形相と気合で叫びながら力いっぱい自分の胸を押しつぶし続ける。あれじゃ逆に余計ぺったんこになっちゃいそうな……
紗季は無言だけど、隣で必死に胸を揉んでいる真帆に対抗心が燃えちゃってるみたいだけど、少し力が入り過ぎてるんじゃ……
ひなたはおっとりした様子でマイペースに鼻歌交じりで自分の胸の感触を楽しむように揉んでいる。せめて私もひなたくらいあれば……
愛莉は……みんなに釣られて少しペタペタ触ってる感じだけど、これ以上大きくなったらどうしよう。とか、そんな心配してそうな表情だ……羨ましいよぉ……
私も、もっと大きくなって欲しいのに……大きくなれば、きっと昴さんも喜んでくれるかな?
それぞれの思惑で自分の胸を触っていた時に、唐突に真帆が口を開いた。
「あーあー、もっかんはいつもすばるんにしてもらってんだろうしいいなぁー」
「え!? と、智花ちゃん、長谷川さんとそんなことまで……」
「ふぇぇぇ!? そ、そんなことしてもらってないよっ!!」
とっさに否定しながらも真帆の一言で昴さんに私の胸を揉まれている様子を想像してしまった。
「おー。ともかお顔まっかー。でもいいなーひなも、おにーちゃんに大きくしてもらいたいー」
「だからそんなこと一度もしてもらってないんだってばっ!!」
「じゃー、今度すばるんに頼んでみよーぜ!」
「真帆にしてはいい案ね。トモの胸だったら、きっと長谷川さんも喜んで協力してくれると思うわよ。してもらってない。ってことは本当はトモだってして欲しいんでしょ?」
「ち、ちがっ!? そういう意味で言ったんじゃないよっ!」
さっきから昴さんが優しい笑顔で私の胸を揉んでいる姿が頭から離れない。
頭の中の昴さんが囁く――智花……智花のおっぱい。いっぱい揉んで大きくしてあげるからね。
――違う。昴さんはそんなこと言わない。変な想像してしまって本当にごめんなさい。
「よーし! それじゃーみんなですばるんにおっぱいマッサージ頼んでみたらどうなるか考えてみよー!」
その一言で私だけでなく、他のみんなまで自分の胸を昴が揉んでいる様子を想像してしまっていた。
変わらずにこにこ笑顔のひなた。
両手で庇う様に胸を抑えている愛莉。
どこか自信に満ちた表情をしている真帆。
抑えきれずニヤニヤとした笑い声が漏れてしまっている紗季。
みんな戻ってきてーーー
そんな願いが通じたのか再び真帆が高らかに宣言する。
「よーし! みんな準備おっけーだな! そんじゃー誰から発表するー?」
――ダメだ。全然通じてなかった。何も知らない昴さんをこんなことに巻き込んでしまって本当にごめんなさい。
「おー。まずはひながはっぴょーするねー」
「お、さすがヒナ早いな。じゃーさいしょはヒナからだー」
私と愛莉がどう逃げるかを考えている間に羞恥心とは無縁のひなたが高らかに宣言してしまった。
心なしか真帆もわずかに頬が赤くなっているみたいだったけど、勢いそのままに突っ込み過ぎて引くに引けなくなってしまっているようにも見える。
「おー。まかせろーえっとねー」
いつもの調子でマイペースに自身が考え作り出した独特な物語が少しずつ紡がれていく。
*
「ひなたちゃーん。入るよー」
「おー。おにーちゃんいらっしゃーい。ひな、まってましたー」
腰にタオルを巻いただけの恰好で風呂場のドアを開けると、ちょこんとイスに座っていたひなたちゃんが笑顔で出迎えてくれた。
俺がすぐにでも始められるように。と気づかってくれていたのか、とても細く白い透き通った肌には、タオルなどという余計な装飾など一切身に着けていない。
そう、今ひなたちゃんは俺の目の前に生まれたままの姿をさらけ出しt――
――って、それはダメーーー!!!
いきなりひなたの話が危険な方向に脱線したことに思わず大声を出してしまい、ひなたの発表会が中断させてしまった。
「ぶー。今はひなの番なのにー。ともか、ひなのほーこくかいのジャマしちゃだめー」
「そうだぞーもっかん。せっかくヒナが、みんなに話してくれてるんだから、ジャマするなー」
「ぅぅ……ひなた、途中で大声出しちゃってごめんね……で、でも昴さんの前では、ちゃんとタオルで隠さないとダメだよっ」
「そ、そうだよ、ひなちゃん。男の人の前なら、せめて隠さないと恥ずかしいよぅ」
すぐに愛莉もこちらの意見に賛成してくれた。
例え話だとしても、す、昴さんに…は、裸を見られるのは……
「おー。たしかにー、おにーちゃんなら、別にいいけど、たけなかだったら少しイヤかもー」
「あぁ、ひな。長谷川さんにはもちろんだけど、間違っても夏陽にも絶対言うなよ。多分あいつ本気で泣いちゃうと思うから」
「おー。りょうかいー。たけなか泣かしちゃったら、ひな悪い子になっちゃうー」
無意味に巻き込まれた竹中君を不憫に思いながら、相変わらずひなたの無防備さに羨ましさと同時に危うさを感じる。
今までだって何度も昴さんが、すぐに目を逸らして頂いてるから良かったものの、もしかしたら何度か見られちゃってるんじゃ……
「でもさータオル巻いてると、まったいらな奴らはすばるんに、どこがおっぱいか気づいてもらえないんじゃないかー」
「ふぇ!? ……いくらなんでもわかると思うよ……思うよね……?」
「自分のこと棚に上げて何言ってんのよ。じゃーあんたもひなと同じくすっぽんっぽんで長谷川さんに胸を揉まれまくったらいいんじゃない?」
あまりにもな大胆すぎる物言いだと思ったけど、そのおかげで真帆もその様子を想像してしまい恥ずかしくなったのか、ほんの少しだけ冷静さを取り戻してくれたみたいだった。
「や……さすがにそれは……す、すばるんには刺激が強すぎんじゃないかなーあ、あたしは全然平気だけどさ!」
声が少し震えている。
いくら真帆でもひなたみたいに裸を昴さんに見られても平気だとは思わない。
ひなたには悪いけど、これで発表会がうやむやになってくれる。そう思った矢先、唯一の味方だと信じていた愛梨から飛んでもない爆弾が投下される。
「あ! でも、前に本で直接触らないとあまり効果が出ない。って読んだことが――っ!?」
「なにー!! アイリーンそんな大事なじょーほーどうして黙ってたんだーっ!!」
「ごめん!! 今の忘れて! ホントに何でもないからー! 多分読み間違えただけだから!!」
「うそだー! 絶対大事な話だろー! 包み隠さず全部教えろー!!」
無意識に出てしまった一言に頬を赤らめながら、必死に真帆の追求から逃げようとしている愛莉。
「ぶー。ひなのはっぴょーかい。いつになったらさせてくれるのー?」
「悪いな、ひな。ちょ~っと愛莉が隠し持ってた最重要機密を聞き出したら、すぐに再開するから。トモも気になるだろう? あ、聞いたからにはもう発表会に参加しないなんてことは許さないから覚悟しろよ~」
目をギラつかせた紗季が真帆と愛莉の元へ音もなく近づいていくと、すぐに愛莉を後ろから羽交い絞めにした。
「愛莉ー自分には必要ないからって。なんでそんな大事なことを隠してたんだー」
「え!? ……さ、紗季ちゃん……!! 隠してたわけじゃないよー」
マンツーマンからダブルチームとなり、愛莉はそれ以上逃げられない。
「ナイスだ紗季! ほらほらーアイリーン。さっさとはいて楽になっちまえよー」
「きゃあ!!……お、お願いだからそんなに揉まないでー!! ひなちゃんもダメぇ~~!」
いつの間にかひなたまで参戦してトリプルチームになっていた。
なかなか口を割らない愛莉。だけどあともう一人分くらいの力が加わればもしかしたら……
「……ねぇ、愛莉。さっきお風呂入るときに服を脱ぐの手伝ってあげたよね――だから……ごめんねっ」
「智花ちゃんまでーーー!?」
――この後みんなで、めちゃくちゃ愛莉のおっぱい揉んだ。
ことが終わり、すっかり長湯になり火照ってしまった身体を丁寧に拭きながら、私服へ着替える。
思ったよりも話に夢中になり過ぎてたので、のぼせてしまうといけないからと、紗季の提案で続きは真帆の部屋ですることになったためだ。
「おー。やっぱ愛莉のおっぱいが一番気持ちよかったー」
「クッ……やっぱあれの前では、いかに自分が小さな存在か思い知らされてしまう」
「まーいーじゃんかー。ちゃんと愛莉からも聞き出せたんだし。これであたしもきょにゅーの仲間入りだー」
「ごめんね。愛莉。私まで夢中になっちゃって……あ、でも、あれだけ動かされたんだったら逆に脂肪が燃焼されて小さくなるんじゃないかな?」
「それならいいんだけど……すごく恥ずかしかったよぉ」
*
引き続き行われた秘密の発表会は、みんなで恥ずかしながらも自分の想像を語り合った。
みんな自分が話す時も聞く時も顔を真っ赤にしてしまっていたけど、みんなとたくさん話すことができて、すごく楽しかった。
みんなの胸を揉む昴さんを想像するのは、恥ずかしいような、なんだか寂しいような感じがしたけど、みんなの中の昴さんを知ることができたのも嬉しかった。
そして、最後に私が想像してしまった、昴さんが私の……を話し終わったところで、みんなの考えが一つになった。
――これは私たち五人の秘密にしよう。
ひなただけ少し不思議そうに首をかしげていたけど、紗季が「長谷川さんには内緒の私たち五人だけの秘密だ。」と話すと嬉しそうに納得していた。
昴さんには申し訳ないことをしてしまったと思うけど、みんなとの絆をもっと深めることができた感じがして、すごく嬉しかった。
その後、ひなた以外の私達4人は、この時の話がいつまでも記憶に残ってしまい、恥ずかさで昴さんの顔をまともに見ることができなくなってしまった。
不思議そうな、どこか申し訳なさそうな顔をしている昴さんに、こっちが申し訳なさを感じてしまっていたけど、すぐに昴さんの優しさと時間が、私たちの溝をあっさりと埋めてしまった。
以降数話はひなた→愛莉→真帆→紗季→智花の順に、それぞれが想像した妄想話を語る話になります。