知識・経験不足もあり構想はあっても敬遠してましたが、書かないと他の話に繋げられない部分ができてしまったため、挑戦してみることに。
とりあえず、浮かんでるシーン毎になんとか繋ぎ合わせながら完成を目指したいと考えております。
マッチアップ1
「はぁ? またあの子らと試合がしたい? そもそも小笠原先生にとってはあの子らのバスケはお遊戯なんでしょ? そのお遊戯の時間を奪ってまで自分達の事を優先しようとしてたくせに、今更何言ってんの?」
「あの時の私の判断が間違っているとは今でも思っていない。だが、今の女バスのレベルに対しては評価を改めざるを得ない。もし私が彼女達の指導に当たれていたのであればと思うと悔しくて仕方がない」
「はっ! ずいぶんと好き勝手な事を言ってくれてるわね。子供達の大切な時間を潰そうとしてたくせに、あいつらの価値に気づいた途端に手の平クルーですかっ?」
「篁先生の言い分も、もっともだと思いますが、私自身の考えも改める気はありません。……ですので、これは純粋に私からのお願いです。地区予選優勝を決めた我が男バスチームが次の県大会に備えて、少しでもよりベストな状態で挑めるための」
「……ま、子供達が受けても言いっていうなら、別に細かい事に口出すつもりはねーけど、お願いって言うからには、当然そっちの部活の時間でやらせてもらうわよ? こっちだって残り少ない大切な時間をあの子達に悔い無く過ごしてもらいたいんだからさ」
*
もしかしたら、二人の間にそんな会話があったのかもしれない。いや、実際はもっとミホ姉が過激な事を言ってカマキリを煽っていたのかもしれないが、
まぁ、俺としても心情的にはミホ姉に同意せざるを得ない。
危うく小学生達――中でも智花にとって本当に大切な物を奪われかけてしまったのだから、こればっかりは許せそうにない。
彼女たちが頭の中が真っ白になるくらいの気持ちの中で何度も飛んだり、体中を突き抜ける快感や悦びに心を躍らせている、あの愛くるしい表情を見る事ができなかったかもしれないのだ。
たとえどれだけバスケに情熱を注いでいようと、だからといって、他の人がバスケをする権利を奪う理由にはならないのだ。
そんな事もあってか、それ以来、多少は個人同士での付き合いはあったものの、基本的に男バス女バス共に互いに――主に両顧問の不仲が原因で不干渉を貫き続けていたわけだが、
男バスが地区予選優勝を決めてすぐに、何故かカマキリの方から男バスと女バスで再試合をしたい。と試合を申し込まれた。
最初は、初戦敗退した女バスは勝ち残っている男バスにコートを明け渡せ。みたいな事を勘ぐったが、どうやら違うらしい。
純粋にこちらのレベルを評価したうえで、交流戦を行って欲しい。と、なんとミホ姉に頭を下げてまでお願いをしてきたそうだった。
「――で、昴としてはどう思う?」
「う~ん、俺は別に受けてもいいんじゃないかな? って思うけど……別に今回は何も賭けていないんだろ?」
カマキリから出された試合条件は、本当に一番最初の時のものそのままだった。
強いて言うなら、勝敗の勝ち負けでこちらの練習時間を男バスに明け渡す。みたいな部分だが、当然そこは削除されている。
・途中交代なしの五人対五人の前後半を六分ずつの計十二分間。
・ファールの取り決めも以前のままだけど、これはもうみんなもルールを熟知してるから抵触する事もないだろう。
「だけど、もし向こうが勝った時に、いきなり変な要求突きつけられたりしたら、イヤじゃん?」
「そんなミホ姉みたいな事しないと思……いでっ!?」
うっかり口を滑らせてしまったら、耳を思い切り抓られた。
「すばるぅ~なかなか愉快な事抜かしやがんなぁ~あぁん?」
「ででででっ!! ち、ちぎれるっ!! マジ千切れるから離せ……離して下さいっ!!」
「ま、あいつがそこまで姑息な事するとは思えんし、あいつもあいつなりに男子共の事を考えてんだろうな」
「つ~~~っ そう思ってんなら、変な事言うなよ」
危うく今後、俺の心の癒しと日々の活力となる小学生達の甘い声を半分しか聴く事しかできなくなってしまう体にされるところだった。
激痛を発し続けている耳を抑えつつ、俺の中では少しだけカマキリの印象が変わってきていた。
バスケに対しての情熱はもちろんの事、竹中の話によるところだが、男バスの子達からの信頼も厚いし、監督としてもすごく優秀だと思う。変則的な搦め手を使う相手は苦手そうだったが。
そして、俺と同じく小学生――どちらかというとカマキリは男の子の方が大好きなんだろうな。
「とりあえず、昴としては試合を受けるのは賛成と思ってるんだ」
「別に断る理由はないだろ。カマキリの本心はわからないけど、多分、試合前に今までの雪辱を果たして竹中達に自信をつけさせたいんじゃないのかな? 確か前の県大会で初戦敗退したって言ってたし」
お互いにベストコンディションで、というわけではないけど、これまで行われた男バス対女バスは二回とも女バス側が勝利している。
でも、それは男バスは慢心や油断があったり、球技大会ではエースや監督不在という不利な状況での二度の敗北。
こちら側も、まだチーム全体のプレイスタイルを確立する前の、はったりや奇策ばかりに頼っている状況だったし、正面を切っての全力勝負となると、どうなるかわからない。
正直かなりいい勝負になりそうだと思うし、俺自身も彼女たちが純粋な実力で地区優勝したチームとどれだけ渡り合えるか見てみたくもある。
もちろんこちらだって、初戦敗退とはいえ優勝候補と言っていい硯谷女学院とギリギリの接戦を演じる事ができたのだから、負ける気はない。
きっと智花達の事だから答えは決まっているだろうけど、まずはちゃんと確認してからだな。
「男バスと試合ですか?」
「いーじゃんっ!! 受けてやろーぜっ! ゼッテー今回だって勝って、ナツヒにホエヅラかかせてやる!!」
「面白そうね。今の私達なら、きっと正面からぶつかっても負けないわよ」
「男の子とするのは、ちょっと怖いけど……ううん。きっと大丈夫っ」
「おーたけなかたちと、しあいひさしぶりーひなもやりたいかもー」
男バスから試合を持ちかけられた事を話してみたが、五人とも驚いた様子ではあったけど、みんな乗り気のようだ。
「うん。男バスからは君達六年のレギュラー五人との試合をご所望のようだ。問題なさそうだし、受けるけどいいかな?」
「あの……本当に試合だけでしょうか?」
すぐに紗季がそれ以外を懸念した様子で俺に確認を求める。
同時にみんなも気づいたのか、息を飲むように俺の言葉を待つ。
「それは大丈夫。この試合の勝ち負けで俺達の大切な時間も場所も奪われる事は絶対にないよ。いつも通り思いっきり楽しんでくるといい」
安心させるように告げると五人は安堵すると同時に輝かんばかりの笑顔が溢れ出す。
「うっしゃーーっ!! ゼッテー勝つぞーー!!」
『おーーーー!!』
五人の心から楽しそうな声が体育館中に響き渡る。
「まったく……また五人だけで盛り上がっちゃって」
「アホ達だけ、にーたんと試合するなんてずるいよなぁーひー」
「だよねーつば!」
「あはは、ごめんね。でもあの子達にとって、きっとすごく大切な試合になると思うから……それに、もしかしたら、これからはあなたたちも一緒に混ざってやる事になるかもしれないんだよ」
「ウィ。シショーたちのゴカツヤクしっかりとこの目に焼き付けさせていただきマス」
「私も、姉様の大切な試合。ちゃんと最後まで応援しなくてはっ」
五年生達の少しばかり不満そうな声とそれを宥めている葵に申し訳なさを感じつつも、俺自身が五人の試合を楽しみで仕方ないくらい心が躍っているのを自覚していた。
慧心学園女子ミニバスケ部が本当の意味で初めての一歩を踏み出す事になった対戦相手だ。
今度だって絶対に負けるわけにはいかない!!