「トモ。実は調子悪いとかってわけじゃないわよね?」
「う、うん。大丈夫だよ」
さすがに不調を隠してっていう事はないよな。後半開始前のハーフタイムだってみんなで抱き合ってベストコンディションで後半戦に臨めてたんだし。
ケガや病気といった万一の懸念要素もないとなると、やっぱり……俺も予想はついていたけど、まずはみんなにお任せかな。
コーチの俺が言うよりも、大切な友達の言葉の方がよっぽど心に届くし信用できるだろうしな。
「もっかん。あたしらにエンリョする必要なんかねーぜ? 思いっきり動きまくって、なつひ達、負かしちゃえよ」
「うん。私達じゃ男バスの子達にはまだ敵わない事も多くて、智花ちゃんに迷惑掛けちゃってるけど、智花ちゃんなら、絶対に竹中君達に負けないと思う。」
「おー。ひな、ともかのすごいバスケみるの好きだよ。ひなはまだまだヘタッピだから、あまりお役に立てないけれど、それでも頑張ってともかのお手伝いするよ」
「どーせトモのことだから、せっかく試合してるのに自分ばっかりボール持ってるのが気になっちゃったんでしょ」
「う、うん……みんなごめんね。大事な試合中にこんなこと考えちゃうなんて変だよね? みんなが教えてくれて、昴さんが育ててくれた私達のいつものバスケで勝ちたい。って思ってたのに、気づいたら私ばかりボールを持って一人で勝負を挑んでばかりで……」
智花に頼らざるを得ないこの状況が、智花自身に昔の自分を思い出させちゃったか。
敵も味方も振り回しながら、自分一人で強引に勝利をもぎ取るバスケ。
確かに智花の個人技に頼ったバスケを作戦として組み込んだり、彼女自身もそれを望んだこともあったけど、あくまでも意識を自分に向けさせた状況で仲間との連携をするための伏線として活用するくらいだったからな。
たとえボールを持っていなくても絶対に彼女をフリーにさせてはいけない。
相手にそんな意識を植え付ける事で、他のみんなが動きやすくなる。
うん、やっぱり智花はみんなのためのバスケを大切にしてくれてる。
「そんなの気にしなくていいのに。トモが活躍するせっかくのチャンスを減らしてまで、わざわざ私達の見せ場を作ろうとしなくたっていいのよ?」
「そうだぞーもっかんっ。あたしらはあたしらでチョー楽しんでるし、思いっきり盛り上げてやるから、もっかんもエンリョしねーで、ダイカツヤクしちゃえ!!」
「おー。ともか、がんばれーっ。たけなかに負けるなーっ」
「智花ちゃんが私達にパスをくれたように私達もがんばって智花ちゃんに繋いでみせるよ。だから、智花ちゃんも私達の事、引っ張っていってくれるかな?」
聞いたろ、智花。みんなの気持ち、ちゃんと伝わっただろ。
智花が好き勝手に個人プレーをしたって誰も文句は言わない。そりゃ目に余るくらいだったら、さすがに注意するけど、智花がそんな事するわけないだろ。
この場で昔を思い出して引け目を感じる必要なんてないんだ。
……とは言っても、まだ決心し切れないよな。だから、俺がその小さな背中をもうひと押しだけさせてもらうよ。
「智花」
「す、昴さんっ!?」
「長谷川さん。最後の一押しお願いしますね」
「すばるん、おせーぞ。はやくもっかんをその気にさせちゃえよ」
はは。別に俺が言わなくたって、みんなが気持ち伝えるだけで、もう十分智花はその気になってるだろうに。
ま、せっかくみんながお膳立てしてくれたんだし、ちゃんとコーチらしく……いや、大切なパートナーのために俺の想いをしっかりと伝えさせてもらうとしよう。
「智花達は本当にすごいと思うよ。みんなに教えさせてもらった俺の支え合うバスケがどれだけ強くて素晴らしいものかをみんなが証明してくれて、すごく感謝してる。――だからさ、そろそろいいんじゃないかな? 智花にとっては辛い事を思い出させるものかもしれないけどさ、智花が元々持っていた、智花本来のバスケも同じくらいすごいものだっていうのも智花自身が認めてもいいんじゃないかな?」
「……でも、私は……あの頃の私は勝手にバスケを知った気になってたせいで……」
そのバスケのせいで一人ぼっちになってしまった辛い過去があるのも聞いた。でも――
「智花は、もう一人じゃないよ。たとえ智花がどんなに一人で突っ走ろうとも、絶対にみんな着いてきてくれる」
「あ……」
智花の瞳が見開かれる。
確かに個人プレーが過ぎるのは、俺はあまり好きじゃないと思っていた。
他人を自分が活躍するための道具みたいに扱っている須賀のようなプレーは。
きっと昔の智花はそんなプレーをしてしまったり、どこまでも一人で突き進もうと頑なになってしまっていたのだろう。
でも、智花はもうみんなを裏切るような事もしないし、みんなだって智花の事をどこまで信じきれるだろう。
「さっきまで智花がみんなを活躍させようと一生懸命にがんばってるんだからさ、同じくらいみんなも智花が思いっきり伸び伸びと自分のバスケができるように手伝いたいって思ってるよ」
「トーゼンじゃん!!」
真帆の元気な声と同時に俺と智花を囲んでいた四人が優しく智花に頷きかける。
「だからさ、ちょっとくらいみんなにわがまま言ってもいいと思うし、みんなだってそれを望んでると思うよ。せっかく智花が頼ってくれるんだ。しかも智花が得意なバスケでだぜ? みんな乗り気で手伝ってくれるに決まってるだろ――それでもまだ決心が固まらないっていうなら、コーチ権限でちょっとだけズルい事しちゃおうかな?」
「ふぇ?」
とっくに智花の決意が固まったのはわかってる。
でもさ、ちょうど相手が男バスで、しかも後半の最終決戦間近のこのタイミングなんだぜ。
これはもうやれ。ってことだろ。
「智花。このサイン覚えてる?」
「――!! あはは。すごく懐かしい気がします。……でも、昴さんにこのサイン見せてもらった瞬間すごいドキドキしてきちゃいました」
智花の個人技解放。
あの時は土壇場で体力が尽きてしまって、それだけでは勝てないところだったし、球技大会では開幕早々完全に封じられちゃったよな。
それなら、みんなや俺としっかりと練習を積んで、体力も技術もあの時以上の今ならどうだ?
コートの外で見てる俺ですら考えただけで、めちゃくちゃ興奮するんだから、智花本人なんて、もうそれ以上だろ?
智花のすごいところを俺だけが知ってる。っていう優越感に浸りたい気持ちもあるけど、それ以上に智花のすごさをみんなに知って欲しいしさ。
そのうえで、こんなにすごい子と毎日いっぱい気持ちいい事してんだぜ。って自慢できるしな。
「よし。それじゃ、タイムアウトの時間がもう終わっちゃうから手短に伝えるよ」
『はいっ!!』
「まずは智花。言った通り、智花の判断で自由に全力で動いていい。でも、全て自分一人でプレイし続ける必要はない。智花は自分が動きやすい様にみんなにパスを出したり、パスを求めればいいんだ。きっとみんな応えてくれるし、もしかしたら智花の予想以上の動きを見せてくれるかもしれないからね」
「はいっ!!」
もう迷いのない瞳と力強い返事を返してくれる。
「次に真帆とひなたちゃん。君達はフォワードの要だ。別にコートが広くなったり、マンツーで着かれたとしても一対一に拘る必要はない。二人のコンビプレーだったらきっと男バスにだって通用するはずだから、ガンガン勝負を挑んだっていい。その上で智花のサポートをするんだ」
「おっしゃーっ! やってやるぜ。ヒナっ。もっかんにもガンガンパス回すぞー!」
「おー。オフェンスも、ともかのサポートもまかせろー」
真帆とひなたちゃんは変わらずにやる気十分だな。期待してるよ。
「紗季は、いつもより広い範囲でコートのみんなを見渡さないといけないから大変だと思うけど……紗季だったら、みんな事をまとめられると信じてるから。しっかりね」
「私にまで期待をかけて頂けるなんて、ありがとうございます。ようやく少しずつ周囲の見方がわかってきた感じですので、これからはきっと長谷川さんのご期待通りの働きをしてみせます」
「愛莉もこれまでと同じく両方のゴール下をしっかり抑えて欲しい。愛莉がいてくれるおかげで、みんな積極的に攻められるし、相手にもプレッシャーを与えられるんだ。愛莉にいっぱい負担を掛けちゃうけど、なんとか最後までゴール下を守り切って欲しい」
「はいっ。最後まで絶対に諦めませんし、ボールだって、しっかり守り切りますっ」
紗季がチームをまとめあげてくれて、そのまとめたチームを愛莉が全体を支える支柱となってくれてるおかげでみんな安心して自分のプレーに集中できている。
そして、強い意志と強固な結束で結ばれたチームを――
「うん。みんな、ありがとうっ。みんなが私を信じてくれてるんだったら、私も自分を信じるよ。だから……どうか、みんな着いて来てねっ!!」
「智花の最高のプレイに、みんなもそれ以上のプレイを見せてくれるかもしれない。そう考えたらさ、もっともっとみんなとするバスケが楽しくなると思うよ」
最高のエースが全力で引っ張って行ってくれるんだ。
そんなチームが弱いわけないだろ。
タイムアウトが終了し、後半残り3分で試合再開。
悪いな竹中。智花が本気になっちまった以上、またお前は惨めに負けちまう――だから、その悔しさでもっともっと強くなれよ!
「へっ……なつひ一人でもっかんに敵うと思ってんのか?」
「ったりめーだろっ! 湊がタケを抜けるってんなら、タケだって湊を抜けるに決まってる! タケはどこまで食らいついて行くし、最後には絶対にタケが勝つに決まってんだろっ!」
トラッシュトークを交わし虎視眈々と互いの隙を狙い合う真帆と深田。
はは。自分だって目の前の相手を抜く事に燃えてるじゃないか。
「ぶー。ともかのところに行きたいのに、ぜんぜん通してもらえないー」
「タケにはわりぃけど、まだお前を会いに行かせるわけにはいかないんでな。……試合後ならいくらでも会わせてやるぜ?」
「ぶー。それだと意味ないー」
すぐ隣でひなたちゃんも和久井相手に同じ事をしていたのだが……竹中お前は泣いていい。
真帆とひなたちゃんによる、静と動というよりは、動と動のあまりにも落差が激しいドタバタコンビプレイ。
片やトップスピードに達するまでの加速力の高さで、相手を一気に抜き去ろうとする真帆。
片や独特な感性や間を持ち、一つ一つの挙動のタイミングや動きを徹底的に読ませないひなたちゃん。
正直俺から見ても二人が好き勝手に動いているようにしか見えないし、実際そうなのだろうけど、二人は確かに繋がっていた。
そうじゃなければ、対極的な動きをするこの二人が、パッと見、一切の合図なしで絶妙なタイミングで連携するなんて無理だろう。
「香椎。気にしてること言っちまって悪いとは思うけどさ、お前ほど高い奴じゃねぇけど、俺達だって自分より高い奴らを今まで何度だって経験してんだ」
「うん。気遣ってくれてありがとう。戸嶋君の今までの動き見てればよくわかるよ……でも、私だって負けないからねっ」
男子相手にも挑まれた勝負に一切ひるむことなく受けて立ち続けている愛莉。
初めて出会った頃の愛莉を想うと、その成長に思わず目頭が熱くなる。
「あい――」
「うぉーー!! 愛莉ーーっ! そんな奴なんかに絶対負けんな!! 思いっきりすごい奴ぶちかましてやれーーっ!!」
……ってか、嬉しいのはわかったから、俺の肩を掴みながら耳元で騒ぐな。薄れてしまった俺の感動を返せ。
「俺達が他の四人を抑えればタケは絶対に相手のエースを抜いてシュートを決めてくれる! それが俺たちのバスケなんだ!
「ふふっ……それなら、しっかり私達の事を抑えなさいよ。私達は別にあんた達の拘りになんて付き合う義理なんてないんだから」」
周りが熱くなっている状況にも関わらず、どこまでも冷静に全体を俯瞰するように見渡す紗季。
そうだ。例え戦場が広がったとしても、ならその分だけ自分も知覚領域を広げればいい。
自分自身も含めて全体の動きを一つ一つ丁寧に見極めた上で、どう動くかを決めればいい。
再び試合の流れは完全にこちら側へと傾いていた。
エース対決どころか、試合そのものを完全に智花が制してしまっていた。
試合を引っ掻き回し滅茶苦茶にする?
そりゃ相手側からしたらそんな印象を受けちまっても仕方がない。
だけど、今の智花は暴走なんかしてない。
それを負けず嫌いの闘志に満ちた瞳と、どこまでも楽しそうに活き活きとしている彼女のプレイが何よりも雄弁に物語っていた。
仲間との絆の糸を引き千切る事無く、力強く引っ張り続け、みんなも決して智花が一人にならないようにと彼女の隣を走り続けていた。
この日竹中率いる男バスは、俺に新たな可能性を見出させてくれた女バスに再び大敗を喫する事となるのだった。
――だが、例え大局が決してもなお、せめて一矢報いようと男バスのエース竹中が動き出す。
「へっ。最後の最後で体力切れまで同じか。だらしねぇな。ま、お前にぼろ負けしてる俺も人の事言えねぇけどさ。でも、せめて最後くらいはお前に勝たせてもらうぜっ」
誰よりも激しい運動量で動き続けた結果としては必然だが、試合終了間際に遂に、智花の体力が底を尽いてしまったようだ。
すでに女バス側の勝利は揺るぎない状況ではあるが、負けず嫌いの彼女にとっては最後の最後に負けるのは手痛い授業料になっちゃうかもな。
もはや竹中を抜くはおろか、例えシュートを打ったとしてもゴールに届かせる事もできないくらい彼女は疲弊していた。
「はぁ……はぁ……。私に勝ちたいのなら、別に構わないよ。勝ち負けなんて些細な事だもん。――でも、最後まで絶対に諦めないからっ!!」
智花がシュートモーションに入ると、すぐに竹中が今の彼女には無理だとフェイクの可能性を完全に捨ててブロック体制に入る。
智花自身も竹中のブロックは予想していたのだろう、最後の力を振り絞り後方に飛ぶフェイダウェイシュートで竹中のブロックをかわす事に成功する。
だが、普段の彼女からは考えられないくらい弱々しく打ち上げられたボールは、竹中の上を飛び越える事が精々で決してゴールへ届く事は叶わないだろう。
「――! 香椎をマークしろっ!! 絶対にシュートを打たせるなっ!!」
すぐに振り返り自分の頭上を越えて行ったシュートを眼で追いながら、愛莉を警戒するよう指示を飛ばす。
おそらく竹中も仮に自分がブロックに失敗しても、このシュートが絶対にゴールに入る事はないと確信していたからこその仲間への指示だろう。
智花から放たれたシュートはゴールに届くよりも前に、すでに高さがゴールよりも低くなってしまっている。
そこへ誰よりも早く落下地点に辿り着いた愛莉が跳躍し、ボールを捕える。
ボールを取った愛莉がゴールを決めるか、戸嶋が防ぎきるかが、最後の勝負だな。
――そんな俺の予想は大きく裏切られる事になるのだった。
「え? まさか……」
「うっしゃーーっ!! 愛莉ーーっ! ぶちかませーーっ!!」
空中でボールを捕えた愛莉の手が、ボールに掴んだ後もまだ上へと上昇を続けていた。
そして、再びボールがゴールの高さを超えた直後、愛莉の腕が一気に振り下ろされた。
愛莉から放たれたガンという音が体育館中に響き渡ると同時に全てが静まり返る。
ははっ。マジかよ……
「うおぉぉぉーーーーっ!! アイリーンすっげぇーーーぞ!!」
「え? ……マジ?」
俺が心の中でそんな呟きを漏らすと同時に、誰かがいち早く叫び出し、それに釣られて周囲も思い出したように大歓声を上げる。
アリウープダンク。確かに愛莉なら可能だって思ってたけど、本当にやっちまうなんてな。
「どうだ昴っ!! 俺の妹は最高だろっ!!」
こいつ。俺に内緒で愛莉に仕込みやがったな。マジで最高すぎんだろ!! よくやったぞ!
「愛莉……すごいよっ!!」
「智花ちゃん。えへへ……」
直前までの智花一色だった空気を愛莉が根こそぎ奪い去ってしまっていた。
どうだ智花。自分ばかり注目されるのがイヤだなんて言ってたら、友達に集めてた視線全部持ってかれちまったぞ。
「和久井っ!! すぐ戻せっ!」
「――!! おうっ!」
愛莉が見せてくれたダンクの余韻に浸っていると、空気を読まずに突っ込んできた男が一人。
ここまで決定的なものを見せつけられても、決してその場の空気に飲まれずに己を貫き続ける姿勢は賞賛しよう。
そう。まだ試合終了間際であって、終了ではないのだ。
全員が直前の出来事に完全に浮き足立ってしまい、思考が止まってしまっている。
だからこそ、例えチームとしての勝利は無理でも、自分の拘りと相手チームに一矢報いる事ができる最高のチャンスをものにしようと駆け出していた。
竹中からすれば、ひどく簡単な事だっただろう。
相手は突然の出来事に対応する事ができず、ほとんど棒立ちしているだけの案山子と同じだ。
その案山子を避けながら、最短距離でゴールを目指せばいい。
辛うじて体勢を立て直せた智花もすでに体力が枯渇しているため、ほんの少し大きめに避けるだけで簡単に抜けてしまう。
そのため、竹中は速度を最優先で突っ込んでいった。
そして、抵抗らしい抵抗ができない智花とすれ違う瞬間に、竹中が持っていたボールは、不自然に浮き上がりあっさりと彼の手から離れてしまった。
「……は?」
「……え?」
続けざまに起こる予想外の出来事に、二人が慌てて誰からの制御も受けていないボールの行く末を目線で追いかけると――
「やったー。たけなかからボール取れたー」
竹中からスティールしたボールを両手でしっかり受け止め、無邪気な笑顔で掲げるひなたちゃんの姿があった。
直後、試合終了を告げるブザーが鳴ると、竹中がその場で尻餅をつくように座り込んでしまう。
「はは。こんなん勝てるわけねーって」
これはもう笑うしかないよな。
ここまで完璧に智花以外に決められて、防がれちまうと、負けを認めるしかないよな。
なんて事はない。油断大敵とばかりに奇襲を仕掛けた竹中自身もまた、奇襲が成功したとで油断してしまったのだ。
でも、ちょっと意外だったな。ひなたちゃんもすぐに真帆と一緒になって愛莉に駆け寄るかと思ってたのに、しっかりとカウンターに備えていたなんて。
なんにしても竹中からボールを取るなんて大金星だぞ!! さすがひなたちゃん。マジ天使!!
『ありがとうございましたっ!!』
試合終了後、整列した十人に体育館中から大きな拍手と歓声が送られる。
女バス対男バスの試合は、今回も女バス側の勝利で幕を閉じた。
あれ?
五人が男子達と健闘称え合っているのだろうか? なかなかコートからこっちに戻ってきてくれない。
俺も万里も、みんなの事をいっぱい労いたくてうずうずしてるのに……
お、真帆とひなたちゃん達は戻ってきてくれた。愛莉は……万里がいるんだし、仕方ないな。あとで万里がいない時にいっぱい褒めてあげよう。
智花と紗季はまだ込み入った話でもしてるのかな?
*
「竹中君もスクープ練習してたんだね」
「ま、まぁな。あのロリコン野郎の真似すんのはシャクだったけど、できないよりはできた方がいいし。ま、肝心なとこで外しちまっちゃ意味ねーけどな。下手くそがシュート打つな。なんてよく俺が言えたもんだぜ……」
「そのことだけど、後で真帆にお礼と、あの子に謝りにいきなさいよ。まだ言ってないんでしょ?」
「なんで真帆に礼を言わなきゃいけねーんだよ」
「真帆の奴。あんたの事フォローしてたのよ。『なつひの奴。バスケにチョーシンケンで前に初めてレギュラーになったらしいんだけど、思うように活躍できなかったみたいなんだ。それでまた大会が近付いてきたからピリピリしてたんだと思う。だから悪く思わないでやってくれ』って」
「なっ!?」
「真帆ってみんなの事、本当に良く見てくれてるよね。私の事だってすごく気に掛けてくれてたし」
「……ったく。普段はバカなくせして……あーもうっ! 情けなさ過ぎてホント泣きたくなってくるぜっ」
「――あっ! ごめんね。みんな呼んでるから、そろそろ戻るねっ。……県大会頑張ってね。私達も応援してるから」
「行っちまったか。……お前らだって、もっと早く真面目に練習してたら、全国だって目指せたんじゃねぇのかよ? ま、今更そんな事言っても仕方ねーか。湊……いつか絶対にお前に勝ってやるからな」
*
その後、長谷川家で祝賀会を行ったのだが、結局参加者は六年生五人組とみほ姉というお馴染みのメンバーだけとなった。
葵はどうやら早くもやる気に火がついてしまったらしい五年生組を引き連れて秘密特訓に行ってしまった。
ちょっとだけこっちに参加したそうに見えたけど、多分気のせいだろう。……というか、もう敵も味方もないんだし、五年生達も少しくらいは一緒に行動してくれてもいい気がするんだけどな。
万里は愛莉の友人との水入らずを邪魔したくないという理由で辞退してしまった。
遠慮しなくてもいいのに……っていうか、辞退するくらいなら、『絶対に妹に手を出すなよ』と、無意味な釘を刺すんじゃねぇ。お前に睨まれるとマジで怖いからっ。
ま、何にしてもみんなお疲れ様。本当に良くがんばってくれたよ。
いつまでもこんな風に小学生達に囲まれた生活を送り続けたいな。
そんな事を願いながら、俺は夜遅くまで小学生達と楽しいひと時を過ごさせてもらう事となったのだった。
原作で仄めかされつつも結局一度も使われる事のなかった愛莉のダンクを時系列を無視した感じで使ってもらう事に。
次回は祝賀会後のSNS回予定です。