問題児たちと白黒バカップルが異世界から来るそうですよ? 作:夢泉
「本当は・・・あなたに死んでほしくない!出来ることなら永遠に一緒に暮らしたい!」
泣きながら叫ぶメイビス。その絶対に叶わない慟哭は虚しく響く。
「嫌い!嫌い!大ッ嫌い!」
ゼレフを叩きながら大声でゼレフを罵倒するメイビス。必死に、必死に。彼の命を繋ぎ止めようと。
「ギルドを破壊した!友達を傷つけた!マカロフを殺した!」
「今すぐ死んでよ!あなたの顔なんて見たくもない!」
「もう愛してなんかない!愛してなんか!」
本心ではそんなこと思っていないことは、ゼレフにも、メイビス自身にもよくわかっている。そして、もうどうしようもないこともわかっている。それでも彼女は必死に叫ぶ。叫ばずにはいられなかった。抱える気持ちは、怒りか、悲しみか、……愛、なのか。ともかく胸が張り裂けそうに痛く、切なく苦しかった。
メイビスは、ゼレフに口づけを交わす。
その瞬間、二人の矛盾の呪いが発動し、彼らの体が光に包まれる。
呪われ、苦しみ続けた少年は思う。
(とても暖かい。僕たちは今、フェアリーテイルの中にいるんだね…それが何を意味しているか分かってる……不死者でさえも打ち勝つことができなかった力)
(それは……愛)
(究極の魔法……)
二人の体は煙のように消え、あとには何も残っていなかった。
「…………っ?」
「ゼレフ!目が覚めたんですね!」
「…メイ、ビス……?メイビスなの、かい…?」
「はい!正真正銘、メイビス・ヴァーミリオンです!」
僕はいつの間に眠っていたのだろうか?目を開けると僕の顔を覗きこむメイビスの顔があった。
「ここ、は……?」
「私もわからないです」
周りを見渡すと、ひたすらに黒が広がっている。右も左も、上も下も漆黒。足を含め体がどこかに触れている感覚もなく、宙に浮いているようだ。ただ、眼前には、愛しいメイビスの顔がある。それだけで、この恐ろしい黒の世界でさえ、少しも怖いとは思わない。
「僕たち、死んじゃった、よね?」
僕たちは死んだはずだ。愛し愛されること。その答えを見つけて、
「ええ。そのはずです。私も、貴方も、呪いから解き放たれ、消滅したはずです」
でも、だとしたら今の状況はどういうことだろう。ここは一体どこだろう。だけど、
「その…ごめんね…」
少年は、小さな声で、絞り出すように言った。
「何故謝るのですか?」
対して少女は、何も無かったかのように、明かるい声で話す。
「…僕は君の命を奪ってしまった」
「これは私が望んだことです。それに、私も貴方の命を奪ったのですからお互い様です」
「………ありがとう……メイビス」
「どういたしまして。ゼレフ」
「「……………」」
二人が沈黙し、無音の空間は、完璧な静寂に包まれる。しかしその静寂は、少しも恐ろしくもなく、気まずくもない静寂だった。静寂の中で、二人は暫し互いを見つめる。それだけで、言葉を交わさずとも、多くを伝えられ、受け取れた。
「……ここは天国、かな?」
「私たちが落ちるとしたら地獄、ではないですか?」
「…そうかもね。でも、ここが天国でも地獄でもいいよ。君がいてくれるなら僕は幸せだから。」
ゼレフは淡々と、恥ずかしげもなくそんなことを言う。彼自身は本当に、心の底から自然と出した言葉だったのだろう。だが、
「っ…!と、とりあえず歩きまわってみませんか?」
その言葉を聞いた少女は、急に少年から顔を反らして話題を変えた。暗くてよくわからないが、少女の顔は真っ赤になっていることだろう。
「そうだね。もしかしたら何かあるかもしれない。」
言いながらゼレフは立ち上がり(この空間では立ち上がっているのか、寝ているのかの定かではないが)、メイビスと共に歩き始めた。
暫く歩いてから、メイビスは隣を歩くゼレフの方に、自分の手を差し出しつつ言った。
「さっきの仕返しです♪」
「っ…!…ど、どういうこと?」
「秘密です♪」
終始飛びっきりの笑顔で言うメイビス。これには流石のゼレフも恥ずかしいようで、言葉につまる。ゼレフをギャフンと言わせられて満足した様子のメイビス。だが彼女は知らない。この後にゼレフがメイビスの手を取り、彼女は面白いぐらいに動転してしまうことを。
「あれは…光…?」
「そのようですね」
暫く歩いていると、遠く離れた所で、小さな小さな光が見えた。暗闇にただひとつの異質。それは、夜空に輝く星のようでもあった。
「いってみましょう」
メイビスの提案に無言で頷く。この空間が何かわからない以上、あれが善いものなのか、はたまた危険なものなのかわからない。慎重に進んでいくことにした。
あったのは「穴」であった。そこから光が漏れていた。それはゼレフがフェアリーテイルの出入口に作った新世界への扉にもにていた。
「どうやら別の世界に繋がっているようですね」
「…そのようだね」
「ゼレフ……」
少年の名を呼びつつ振り向いた少女の顔は、輝いていた。幼子が初めてみるものに示す反応のようであった。目を輝かせる彼女の顔を見れば、好奇心が飽和状態なのがよくわかった。
「メイビス……君は変わらないね」
呆れたように言うゼレフ。
「む~。どういうことですか~!」
対してメイビスは、頬を膨らませて抗議する。
「………行こう。メイビス」
「えぇ、ゼレフ」
二人は、光の中へ飛び込んでいった。
「っ……!?」
「へっ!?」
いきなりのことに、ゼレフは息をのみ、メイビスは間抜けな声をあげる。
それもそうだろう。何故なら二人は、落ちていたのだから。物凄い勢いで、高い高い空の中を落ちていたのだ。