問題児たちと白黒バカップルが異世界から来るそうですよ? 作:夢泉
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能、ギフトを試すことを望むのならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの″箱庭″に来られたし』
これを受け取った少年少女は、光に包まれ、その体は、煙のように消えた。
「「「「「うわあああぁぁぁぁ!!!」」」」」
空を落ちていく五人の人影。眼下に広がる広大な土地。そこに敷き詰められた自分の眼を疑うほどに巨大な無数のドーム。その景色はまさしく異世界。
ゼレフは、自分達が落ちていく先が湖だとわかると、掴んでいた手を引き、隣を落ちていくメイビスの体を引き寄せる。
「…えっ!ゼレフ!?」
急に抱き寄せられて顔を真っ赤にして慌てるメイビス。
バシャン!と、水面に激突した大きな音が
「信じられないわ!いきなり空に放り出すなんて!」
全身をびしょびしょに濡らした高貴な見た目をした少女が怒った様子で続ける。
「下手をすれば地面に衝突して即死よ!」
「あぁー全くだ。場合によっちゃぁゲームオーバーコースだぜ、これ」
赤い炎のマークがついたヘッドホンが特徴的な金髪の少年が不機嫌そうに言う。この少年もまた、びしょびしょに濡れていた。彼は同じように服を濡らした少女二人に問いかける。
「で?誰だよお前ら」
「それはこっちの台詞よ。目付きの悪い学生さん?」
先程の少女が彼に答える。
「一応確認しておくが、もしかしてお前らにもあの変な手紙が?」
「そうだけど。そのお前って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後気をつけて」
飛鳥は高圧的に言ってから、金髪の少年から顔を反らし、これまたびしょびしょの少女に声をかける。
「それで。そこの猫を抱き抱えているあなたは?」
「春日部耀。以下同文」
春日部、と名乗った少女は、猫と戯れたまま、興味無さそうに答えた。
「で?野蛮で凶暴そうなあなたは?」
手短すぎる耀の自己紹介が終わり、飛鳥は、柄の悪い金髪の少年に自己紹介を求める。
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と、三拍子揃ったダメ人間なので、用法と要領を守った上で、適切な態度で接してくれよ。お嬢様?」
大袈裟なジェスチャーをしつつ、十六夜はそう言った。
「取り扱い説明書をくれたら、考えておいてあげるわ」
「はっは、マジかよ。今度用意しておくから覚悟しておけよ?」
バチバチと火花を散らす飛鳥と十六夜。耀はまだ猫と戯れている。
不意に二人が同時に顔を反らし、同じ方向を向いた。そして、十六夜が口を開く。
「で?そこのリア充さんは?」
十六夜は、真っ黒な服と真っ白な服、というチグハグな格好をした二人組を指差し言う。彼が彼らをリア充、と称したのも致し方あるまい。何故なら、黒い服に身を包んだ少年が、白い服に身を包んだ少女を、「お姫様抱っこ」している状況なのだ。
「「…………」」
キョロキョロと辺りを見回す、奇妙な格好をした二人組。ちなみに、彼らの服は、全く濡れていなかった。
「お前らだよお前ら」
「……僕たちのこと?」
「みたいですね」
少年はやっと自分たちが話しかけられていると気づいたようだ。抱き抱えた少女に確認をとり、少女が肯定した。
「…僕はゼレフ……ゼレフ・ドラグニル」
「私はメイビス・ヴァーミリオンといいます」
黒い服に身を包んだ少年、ゼレフはやっと聞き取れるほどの小さな声で言い、白い服に身を包んだ少女、メイビスは明るく元気な声で言った。
とりあえず、全員の自己紹介が終わった。そんな彼らを見つめる影が1つ……
(うわぁ。見るからに問題児だらけですねぇ。お呼びした覚えのない方々も混じっていますし……)
彼らを見つめていた影であり、十六夜達をここに呼んだ張本人である黒ウサギは、以後のことを考え、頭を抱えるのであった。
「何でお前らはちっとも濡れてないんだ?…いや、いいや。ここにいるやつらは、どいつも普通じゃない、そうだろ?詳しいことはそこに隠れている奴にでも聞こうか」
十六夜は全く別の方向、少し離れた茂みの方に顔を向けつつ言う。
「あら、貴方も気づいていたの」
飛鳥も同じ方向を見つつ言う。
「当然だ。かくれんぼじゃ負けなしだぜ。お前らも気づいてたんだろ?」
「風上にいられたら嫌でもわかる」
と、耀は言い、
「とても面白い力をお持ちのようですね。皆さんも、そしてそこに隠れている方も」
メイビスはそのように言い、
「………ウサギ」
ゼレフは一言呟いた。
(ひゃあぁぁぁ!皆様にばれてるじゃないですかぁ!どうしましょうどうしましょう!完全に出ていくタイミングを逃してしまいましたぁぁぁ!)
出ていくタイミングを逃した黒ウサギは、プチパニック状態。アワアワと慌てている。
だが、無理矢理自分を落ち着かせ、意を決して出ていこうと動き出すと……
「出てこないのなら……」
十六夜はおもむろに足下の石を拾い上げ、
「危ないからどいてろよ」
周りの人間が離れるのを見届けると、十六夜は手に持った石を、……投げた。それも物凄い勢いで。
第三宇宙速度で放たれた石は、隠れている人物の付近の木を吹き飛ばし、地面にクレーターを作り出した。
可愛さと美しさが合わさったようなうさみみ少女。赤のミニスカートと、黒のガーターソックスで扇情的に魅せられた美しい脚。ベストのような服で、谷間を魅せるエロいボディ。
少女は怯えながら、彼らの前に現れた。
「や、やだなぁ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んでしまいますよ?
ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵で御座います。
そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いて頂けたら嬉しいで御座いますョ?」
「断る」
「却下」
「御断りします」
「………ウサギ」
「可愛いです!!」
「あっは、そちらの御三方に至っては取り付くシマもないですね、黒い服の方はそれしか言葉がないのでございますか!?白い服の方は黒ウサギの可愛さを理解してくださるのでございますか!?」
バンザーイ、と降参のポーズを取るうさみみ少女。
彼女は明るく接しながら、どこか冷たい眼で五人を値踏みする。
(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝気も買いです。扱いにくそうですが……。そして呼んだ覚えのないイレギュラーな御二人。黒い方は無口かつ無表情過ぎてよくわかりませんが……白い方は仲良くできそうです♪)
そんなことを黒ウサギが考えていると……
「えい」
「ふぎゃ!?」
耀が黒ウサギの横にたち、黒ウサギのうさみみを根っこから鷲掴みにし、そのまま、力一杯引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでならまぁ黙って受け入れますが、初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
黒ウサギが泣き叫び、耀が淡々と答える。
「へー。これって偽物じゃねぇんだ」
「面白いわね」
「可愛いです♪」
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
耀に続いて、十六夜、飛鳥、メイビスも、思い思いに黒ウサギのうさみみをいじり始め、黒ウサギの悲鳴が異世界に轟いた。
「……この世界の説明をしてくれないかい?」
「この状況でお聞きになられますか……」
耀、十六夜、飛鳥は手を離したが、未だにメイビスは、幸せそうな顔でうさみみを撫でていた。
「メイビス、そろそろ……」
「む~。もう少しお願いしますぅ~」
「…メイビス」
「……は~い…」
ゼレフに言われて、しぶしぶといった様子で離すメイビス。ゼレフはそれを見届けると、再度、黒ウサギに尋ねた。
「この世界の説明をしてくれないかい?」
「……そうですね」
黒ウサギはおもむろに立ち上がり、
「予想外のこともありましたが・・・・・・。では、改めて。」
黒ウサギはこほんと1つ咳払いをし、両手を広げて、
「────皆様。ようこそ!修羅神仏が集う箱庭の世界へ!」
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