問題児たちと白黒バカップルが異世界から来るそうですよ? 作:夢泉
「ようこそ皆様!箱庭の世界へ!」
「箱庭…?」
ゼレフが尋ねる。
「YES!我々はそちらの御三方に、ギフトゲームへの参加資格をプレゼントさせて頂こうかと思いまして、この世界へとご招待しました!こちらの二方は呼んだ覚えが無いのですが…」
黒ウサギは、十六夜、耀、飛鳥の方を指して、彼らを呼び寄せたのは自分だと言い、続いてゼレフとメイビスの方を見て、二人はイレギュラーなのだと言った。
「ギフトゲーム?」
耀が、黒ウサギの言葉に出てきた、聞きなれない言葉について質問する。
「既にお気づきかも知れませんが、御三方は皆、普通の人間ではございません。そちらの御二方も、特別な力を持っていらっしゃるようです」
「皆さんの持つ特異な力は、様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられたギフト。つまり、恩恵なのでございます」
「ギフトゲームとは、その恩恵を駆使して、あるいは賭けて、競いあうゲームのこと!この箱庭世界は、そのためのステージとして、作られたのでございますよ!」
「自分の力を賭けなくてはならないの?」
飛鳥が手を挙げて尋ねる。
「そうとは限りません。ゲームのチップは様々。ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間。賭けるチップの価値が高ければ高いほど、得られる商品の価値も高くなるというものです。…ですが当然、商品を手にいれるためには、ホストに提示される条件をクリアし、ゲームに勝利しなければなりません。」
説明を終え、新たな質問が出てこないことを確認すると、黒ウサギは一つの提案をした。
「さて、聞いただけではわからないことも多いでしょう。そこで一つゲームをしませんか?」
「ゲーム?」
十六夜が呟いた。黒ウサギはカードをきりつつ話を続ける。
「この世界には、コミュニティというものが存在します。この世界の住人は必ずどこかのコミュニティに所属しなければなりません。いいえ、所属しなければ生きていくことさえ困難なのです。」
パチン!と黒ウサギが指を鳴らすと、どこからともなく大きな机が落ちてきた。黒ウサギは続ける。
「皆さんは、黒ウサギの所属するコミュニティに入れて差し上げてもよろしいのですが……
ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。むしろお荷物邪魔者。足手まといなのです」
大袈裟な言い回しと身ぶりで挑発するように話す黒ウサギ。
「俺達を試そうってのか?」
「ちょっと待ちなさいよ。私たちは一言も………」
十六夜が挑戦的に言い、急な展開に飛鳥が抗議しようとする。だが、
「自信が無いのであれば、断って下さっても結構ですよ?」
この言葉がすべてを決定づけた。おそらく、問題児たちは皆負けず嫌いなのだろう。皆やる気なようだ。すべては黒ウサギの予想通り、なのだが……
(何て言ってしまいましたが、ここで激怒されたり、帰られたりしたら黒ウサギ大ピンチです~)
黒ウサギは心のなかで悲鳴をあげていた。
「面白そうですしやってみましょう!」
「そうね」
「うん」
メイビスが目を輝かせて言い、飛鳥、耀が肯定する。十六夜は目をギラつかせて言う。
「なかなか面白い挑発してくれるじゃねぇか。で?どんなゲームなんだ?」
「この53枚のトランプから、一枚だけ手にとって、絵柄のカードであれば、皆さんの勝利。それ以外であれば私の勝利でございます」
そこまで説明をして、黒ウサギは自分の赤い目と、長いうさみみを指し示して続ける。
「ちなみに、黒ウサギはジャッジマスターという権限を持っていまして、黒ウサギの前で不正は行えません。ウサギの目と耳は、箱庭の中枢と繋がっているのです!」
「私たちは何を賭ければいいのですか?」
メイビスが問い、黒ウサギが答える。
「皆さんは箱庭に来たばかりですし、チップは免除致します。強いてあげれば、皆さんのプライドを賭ける、と言ったところでしょうか」
「報酬は?」
飛鳥が問う。最初は渋っていた彼女も、プライドを賭ける、という状況に自分からルールを聞いていく。
「皆さんが勝ったら、この黒ウサギが、何でも一つあなた方の言う通りにしましょう」
「……何でも?」
黒ウサギが提示した答えに十六夜が獰猛で不敵な笑みを浮かべて確認をとる。彼の目線は、黒ウサギの豊満な胸に向いていた。
「せ、性的なことはダメですよ!」
「「「………」」」
黒ウサギは自らの胸を手で隠し、黒ウサギ以外の女性三人は冷たい目で十六夜を見た。
「ははっ冗談だよ冗談」
女性三人の剣幕に少々冷や汗を流しながら、十六夜はおどけた調子で言い、突然ゼレフに話しかける。
「…だけどまぁ、あの体は男のロマンが詰まってるよなぁゼレフ?」
「……ノーコメント」
「おいおいつれねぇこと言うなよ~」
ゼレフは十六夜が必死な目をしているのに気づいた。助けを求める目だ。確かにこの空気はきつい。そう思ったゼレフは彼に助け船をだすことにした。
「……まぁ確かにね」
「だろ?」
「……男のロマン……」
二人の会話を聞いていたメイビスは自らの胸を見つつ呟いた。耀、飛鳥の二人はそんなメイビスの肩に手をおき、意味深に一度大きく頷いた。音は一つもないが、様々な思いが伝わるようなそんな頷きだった。
「でも、メイビスの方がいいな」
「「「「………」」」」
何気なくゼレフが呟いたその一言。おそらくゼレフは危機回避のために何気なく言ったのだが、場は妙な静寂に包まれた。
「ゼレフ~!」
「メ、メイビス!?」
メイビスがゼレフの後ろから抱きつき、ゼレフが狼狽える。そんなゼレフに十六夜は一言。
「……ひょっとしてお前…ロリコンか?」
「……?」
言葉の意味がわからずポカンとするゼレフ。
「いや、何でもねぇや。おあついのご馳走さま。黒ウサギ!さっさと始めようぜ!」
「あっ…はい!わかりました!では……」
十六夜が黒ウサギに、ゲームを始めるように言い、黒ウサギは盤上にトランプを並べ始めようとするが、
「おっと、並べる前にそのトランプを見せてくれ」
「いいですよ」
十六夜のトランプを見せてくれ、という提案を、黒ウサギが素直に受け入れ、5人の挑戦者が思い思いにカードを見始める。
しばらくして準備が整い、順番をじゃんけんで決めることとなった。
じゃんけんの結果、一番ゼレフ。二番十六夜。三番耀。四番飛鳥。五番メイビス、となった。
「…じゃあ、やるよ?」
「どうぞ」
「………」
目を閉じ、沈黙するゼレフ。妙な静寂が辺りを包む。
「…ッ!」
突如ゼレフが全身に力を込めると…
「なっ…!?」
いきなり黒い風が吹き荒れ、トランプがすべて巻き上げられる。そして一枚がゼレフのもとに落ちていき、
「僕はこれにするよ」
ゼレフは落ちてきたカードを取る。
「じゃ、俺はこれ」
「私はこれ」
「私はこれ」
そして、十六夜、飛鳥、耀も、思い思いに空中で舞う絵柄のカードを取っていく。
「えぇ!そんなのありでございますか!?」
驚く黒ウサギ。彼女は耳を澄ますが、期待する箱庭中枢からの反則の知らせはない。
「……箱庭の中枢から有効である、との判断が下りました……」
黒ウサギは肩を落としながら小さな声で言った。
「これは…?」
一方、メイビスのもとには一枚のカードが落ちていく。それは、ハートのクイーンだった。
「……ハートのクイーン。ユディトをモチーフにしたカード。天才軍師と呼ばれた君にはぴったりじゃないかな」
ゼレフはメイビスに言う。
「なら何故貴方はジョーカーなのですか?」
「神の怒りに触れ、永遠に近い時を矛盾に縛られた僕はまさしく
「全く。俺が考えていたのが無駄になっちまった」
「私もよ」
十六夜と飛鳥が言い、耀が頷く。彼らもまた、このゲームのそれぞれの必勝法に気づいていたようだ。十六夜は続けてゼレフに問う。
「約束通り、何でもやる、でいいんだよな?何をやらせるんだ?」
「せ、性的なことはダメですよ!?」
必死な様子で言う黒ウサギ。そんな黒ウサギに、ゼレフはある質問をする。何の変てつもないただの質問。されど、それは黒い少年と白い少女にとってはとても意味のある大切な質問であった。
「……一つだけ答えてほしい。君にとってコミュニティのメンバーとは何だい?」
「……コミュニティ、ですか………」
黒ウサギの顔が僅かに曇る。が、すぐにもとの顔に戻り、思案しつつ続ける。
「仲間、いえ…それよりももっと繋がりの強い、そうですね…家族、家族です!」
「…そうか、ありがとう…」
最後はとても明るく、大きな声で家族だと語った黒ウサギ。それを聞いて、ゼレフは一言礼を言った。感情を表情に出すことが少ないゼレフであったが、この時は僅かに口角をあげ、微かな笑みを浮かべていた。まぁもっとも、本当に微細であり、彼をよく知るもの、つまりこの場ではメイビスだけがやっとわかるくらいの僅かな変化であった。
「これだけ、ですか?」
「うん」
「なぁ、俺からもいいか?」
黒ウサギの確認にゼレフが頷き、続いて十六夜が言葉を発する。
「えぇ、貴方も勝者ですから。」
「俺も一つ聞きてぇ。
この世界は面白いか?」
この質問に、黒ウサギは満面の笑みで応えた。
「YES!ギフトゲームは人を越えた者だけが参加できる遊戯。箱庭の世界はあなたたちを絶対に退屈させることはございません!黒ウサギが保証します!」
その応えを聞いて、十六夜もまた笑みを浮かべて、
「ならいい。さぁ!案内してくれ黒ウサギ!」
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