ぼくのかんがえたわるいかんりきょくをヘイトする話 作:NonaIn
それが俺達の書き方だったな。なあ、読者たち……
N.D.75.5
MID-CHILDA ;Task Force 6 Office
「それで、何が分かったんや?」
そもそも組織人としての気質が大いに欠けているナナにとって、管理局での上役と言うのは常々口煩く感じているものだった。まず顔を合わせれば小言、呼び出して説教、最悪OHANASHI――は、実力行使が伴う場合は逆に返り討ちにしている。
しかし今回は八神司令官――はやてが直接、休暇上がりと言う名のラスト・リゾート帰りなナナをとっつかまえて、何かを探りに行っていた事を確信していたような口調で問いただしに来た。ヘルメットを脱ぐのは個人的な主義によって寝る時とシャワーを浴びる時と個人的な友人と会う時だけなナナは、幸いにも大いにしかめっ面したのを見られる事は無かった。
「何が、って何が?」
「トボけたらアカン。わざわざクレジット予算をがっつり使った上に、フォワードを一人連れてったんやで? 何か有用な情報くらいは手に入ったんやろ」
なるほど、思ったよりは確りしているのかもしれない。とナナは彼女の評価をこっそり上方修正し、その直後にリィンフォースツヴァイが一緒に居ない事から仕事を押し付けたのだと察して下方修正した。
「例の闖入者についてと、それから……あんまり関係無さそうな"レリック"について」
「はァ!?」
何を驚いているのか、と首を傾げる。はやてはその様子に、またか、と小さくうめくしか無かった。
ロストロギアについて、ナナはどうにもその危険性を軽視し過ぎるきらいがある。それははやてら管理局局員としては大いに説教したくもなるものだったが、逆に『刺激して持ち出さなければ何も起きない、でなければ死んでいる』と言われて唖然とするしかないのでやめておく。
はやての様子を、またいつもの発作かな、と思いつつ眺めていたナナだったが、すぐに情報を展開した。空中投影式のホロウィンドウに文章が流れる。
「闖入者はTENNO、正しくは彼等の使う戦闘体WARFRAME。駆動原理も何もかも不明だけれど、上位か最上位の陸戦魔導師とそう変わらない身体的基礎性能、そして1機種5種のユニークな能力を持っているみたい」
「1機種て、他にも居るみたいな言い方……いや、居るんやな」
一つ頷き、ナナはデータを更に展開していく。
「私達が遭遇したのは【EXCARIBUR】タイプ。機動性と剣戟能力に偏った、それでも近中距離で隙のない能力を持つ、強力で古くから稼働している機体みたい。……それから、非殺傷設定攻撃はほぼ間違いなく利かない」
「……アレか、ミリシアがつこてた個人用シールド装置と同じ防護機構があるんか。やとすると、」
「SLB(スターライトブレイカー)かPLPS(フォトンランサーファランクスシフト)くらいに"極まった"非殺傷攻撃か、殺傷設定の魔法攻撃くらいしか通用しないはず」
「でなければ、アンタやな、PM-745」
その通り、とは言わないし頷きもしない。それはある意味で苦渋の選択だと察しているからだし、嘱託よりも関係性的に"遠い"傭兵に頼る癖をつける事も避けるべきだと判じたからだ。
「それ以上に警戒すべきは、WARFRAMEの中には光学的、機械的に透明化する潜入特化のものもある、と言う事。 彼等の揚陸艇でもある宇宙船"ライセット"はそもそも超光速で動くらしいから観測した瞬間には接近されてるし、魔法での認識は不可能だと思う」
「入り込まれるだけなら何とでも、いや、……そうかハッキング能力もあるんやったな」
「透明化しうるWARFRAMEは認識できてるだけでも【LOKI】【ASH】【IVARA】【OCTAVIA】【WUKONG】の5機種。特に【LOKI】は潜入特化で、戦闘能力は程々だけど、潜入と隠密に関しては並ぶものが無いみたい」
「どないせえっちゅうんや。まあ、でも、希望的観測をするなら今の所は敵対しに来とるワケやないから、潜入諜報はともかく暗殺は警戒せんでもええっちゃええんか。 味方になってくれるかもしれんしな!」
概ね、意見は一致しているとみてよさそうだ。していないとしても一人だけなら生き延びる自信もあって、ナナは特に何もツッコまない。ちょっとだけ寂しそうなはやてを放置して、話を進める。
「彼等の目的は不明。少なくとも、コーパスは何も知らない。 ……強いて言うなら、オロキン……こっちだと"アルハザード"の遺産は回収したがるようだけど」
VOID、つまり虚数空間。魔法という魔法が発動しないが、向こう側にはまた別の宇宙が存在すると言われる概念的な世界の裏側。いや、舞台裏(バックグラウンド)か。
そこにアルハザードは存在すると伝説では言われ、そしてオロキンはそこに避難したという歴史が存在する。遺物もまた、二つが同質である事を示している。
フロンティアでは常識だが、全く知らなかったはやてはまたも頭を抱えてうがぁと呻いた。ナナはただそれを冷ややかに見つめた。
「それと、休暇のお土産。はい」
「何やこれ、赤い宝石で……なんや、どっかで見た事あるなぁー」
「それね、レリック。MESO-S6だって」
「そうそう丁度レリックがこんな感じーって、ロストロギアやないか! え、何? そんなポンポンポンポンとロストロギアが売ってるん?!」
胃痛を感じ始めたのかお腹に手を置いて顔色を青くしはじめたはやてに、ナナは首ごと目を逸らしながら答える。ついでにそっと局内薬局で一般に売られている胃腸薬も渡して置く。
「……こっちに来てからその形になったから、こっちに来たらロストロギアになる、んじゃないかな」
「信じられん。ホントやったらフロンティアはとんだ魔境やな……報告はこんだけか?」
渡しついでにデスクを立とうとしたナナに、はやては薬を飲みながら訊ねた。
ナナは、ひとまずは、と頷く。
なお入手経路について言及していないので、嘘はついていない。そもそも騙す気も無い。
「フロンティアでならタイタンを動かしても咎められないから、前々から話してた通りにメディヴェル級の試験運用もしてきた。データは教導官経由で渡す、先にあっちに見せないと」
「わかったで。 ……あんな、ついでやけど、頼むからもうちょいうちの事も労って動いてほしいんやけど」
「前向きに善処する」
「おぉん!」
なんでや! とツッコみを入れているはやてを放置して、ナナは訓練エリアへと足を運ぶ事にした。会話というより事務連絡でしかないのでナナが彼女の望む反応をする事は極稀であり、そのせいで時々絡まれるので、今後はどうしようかと少しだけ考えながら。
考えたところで結論の出る問題でも無く、とりあえず次は何か思いついたらいい返しをしておこう、程度の事を頭の隅のさらに隅に投げ捨てておく。つまりは何も変える気はない。
しかし移動中のちょっとした暇をつぶす程度の思考にはなったらしく、訓練区画の管制室のような場所に到着していた。誰かが見ているワケでもなく、幸か不幸かナナ一人が見ているような状態だ。
窓越しに見えるのは魔導文明と言うある種の先進を極めたにも関わらず、肉体をイジメてデバイスと言う名前の近接武器を振り回す、高機動性と遠距離攻撃が上位である環境を考えれば時代錯誤な訓練風景である。ついでに言えばイジメるにしてもやり方がぬるい、と超人製造(と書いてパイロット訓練と読む)過程を経験し継続しているナナは思わざるを得なかった――身体なんて体組織を壊してからの治る過程で強くなるのだから。
何にせよ、そうして彼女らのスポ根的訓練を見ている時間はそう長くなかったようにナナには感じられた。補助装備として常時携行しているMk-4スマートピストル(パイロットヘルメットと連動し視界内ロック可能なホーミングピストル)の分解整備をしていたからだ。
組み立て終わってスライドを引き全動作の正常を確認したところで、教導官が管制室に入ってくる。新人組四人は休憩だろうか、談話しつつも機能性飲料を摂っているようだった。
「お疲れ様、高町教導官。 パイロットスバルの実戦データと、メディヴェル級タイタンの実戦稼働データを送信する。機械式無線ポート解放許可を」
「あ、うん。 ……えっとね、共有してくれるのは嬉しいんだけど、」
「その話は、」
ナナは知っていた。少なからず、その後に続くのはパイロットとしての訓練に対する否定的な言葉だ。やれ質量兵器を使わせるのは、やれ魔法戦と関係ない訓練をさせるのは、と。管理局はエースオブエース様に対してしっかりと刷り込みができているようである。
その度にそれらに対する明確な反論と証拠を提示していると言うのに、だ。ナナは少なからず彼女の境遇に対して理解もしていたし、だから彼女の思想がどうこうとは言わない。魔法が全て、と少なからず考えているだろう事に対しても特に何かを言う事はない。
どれこれも全部、管理局って奴が悪いんだ!
とまでは心にとどめ口では言わずとも。少なくともそう言った思想の違いによる不毛な言い合いを避けるために、少し強めに言葉を続けるのを止める程度にはナナは個人として彼女を嫌いではなかった。
「既にそれなり以上にこなした、既定路線。時間の無駄。 要点だけ伝える」
「時間の無駄、って。そんな事ないと思うんだけど……」
「パイロット候補ティアナ・ランスター、及びパイロット候補生スバル・ナカジマは、ミリシアのパイロット基礎訓練の修了を訓練課程記録の提出によって公式認定。ただしティアナは執務官希望と言う事なので、これ以上の維持訓練は自主に任せる」
既にこれらの情報は、ナナにとっては仕入れていたモノだ。パイロット技能は邪魔にはならないしバディだから一緒に育てただけで、まさか修了するとも思っていなかったのだが。
教導官ことなのはも、それ自体は特に異論ないらしい。無言で続きを促してくる。
「パイロットスバルは管理局、ミリシア両側の安全基準を満たした新造試作タイタン"メディヴェル級FS-1041"を取得、ニューラルリンクを形成済み。魔法を限定された環境においても、パイロット戦、タイタン戦共に優良可で言えば良以上優以下。無制限であれば恐らく優でもいい。ただし、CSR発症の可能性も否定できないので留意を」
「CSR?」
「戦闘ストレス反応。PTSDの一種になりうる……まあでも、多分無い。武装局員なら誰でもあるものだろうし、既に戦闘そのものには適応していた。人類種の殺害に対してもストレス耐性は叩き込んだし」
「……そういうの、あんまり良くないと思うの」
ナナはなのはの言葉に、否定はしなかった。彼女たちはどこまでもまだ子供であり、兵士という"数字"ではない。ナナがスバルに施したのは、彼女を兵士に作り替える過程でもあり――ナナと同じ境地に至らせ得る蠱毒でもあったのだから。
その一方で悪い事ばかりでない。既にスバルはパイロット訓練課程を経て戦う事、そして選択肢として殺す事に対して、一定の価値観を持たざるを得なくなっていたようだからだ。
「私見だけれど、彼女はもう、揺るがない。"逃げも隠れも許容するが不屈の心"を持っている」
ナナがヘルメットを被ったままほんのちょっとドヤ顔をしたのが分かったらしく、なのはは引きつった笑いを浮かべていた。
自分の訓練で身につけさせようとしていたものの一端をあっさり押し込んだ事に対してもそうだが、人を兵に変えると言う事にたいする技量もそうだし、何より――それを当たり前のように"処理"できる事にだろう。
それでもまあ、一応は協力体制にあるのだし、お互い悪気が無いのも知っている。決定的な線を互いに踏みにじってはいても、敵対すればどっちもただでは済まないし、そもそも傭兵という人種が契約外では好き放題するのが得意だと言う事も承知の上だ。
「うん、だいたいの事は見たよ。 それでだけど、……このメディヴェル級っていうタイタン?は、魔力が無いと不十分にしか動けないんだよね」
「そう。だからその時は増槽を付けた。1戦分くらいなら戦闘可能になる」
「それデバイスじゃなくて魔導兵器じゃないかなって思ったの」
「戦闘用タイタンは分類上、陸戦兵器」
あっさりと悪びれもせず応えるナナ、思わず頭痛を堪えるなのは。傭兵だからだとかそう言う問題ではなく、ナナには著しくコミニュケーション能力が欠けていると言う事をたったひとことで再確認してしまうハメになったようだ。
しかしそれでも訓練課程についてのミーティングは必要になる。師が二人いると言うのは、思った以上に面倒で手間がかかり、その一方でなのはの教導スキルの向上も促している。――ナナの対話能力は一切向上しないようだが。
一通りの打ち合わせを既定路線と定番で済ませ、ミーティングも終わろうかと言う際。
「……それで結局、スバルはどういう進路を希望してたの?」
「メインはパイロット。サブで陸戦魔導師。だから教導の主軸をこっちに欲しいのと……いずれ1年ほどの長期休暇が取れるよう下準備が要る」
六課での生活では十分とは言えない、と言う事なのだろうとなのはは一応の納得を示した。
「わかったの。 それにしても。パイロットになりたい子、はまだいいけど……。レリックを狙って来る何者かに、TENNO、WARFRAME。対策、手伝って貰ってもいいかな」
「それは契約に含まれる。教導過程を補助すればいい?」
「お願い。仮想敵とかしてもらうから」
「ん。……高町教導官、じつは地球のギリシア産まれだったりしない?」
「なんでなのっ!?」
好きなように書き、理不尽に評価される。それが私だ、原作の有無ではない。
原作ブチ壊しな二次創作はいい。私には、それが必要なんだ……