ぼくのかんがえたわるいかんりきょくをヘイトする話   作:NonaIn

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思った所までは話が進まなかったけれど前回投稿からちょっと日にちが空いたので初投稿です。




Chaptar.6 The Archwing.

N.D.75.6

???

 

 

 宇宙の如く昏い空に、無数の世界達が星として煌めいている。その空のただ中に、一隻のオービターが浮いていた。どことなく"カブトガニ"を彷彿させる揚陸挺を貼り付けるようにドッキングさせているその軌道船が周回するのは、ミッドチルダと呼ばれる世界(惑星)の高高度軌道である。

 

『オッペレーター(Operator)! オッペレーター!』

 

 どことなく調子の良さそうな、男声の声が響く。いや、正しくは声の主はその船そのものと言っても良い存在で、肉体は持たないのだが。

 

『間も無く降下時間ですよオッペレーター! 瞑想に耽るのも良いですが準備をしてください! イツマデモネテルンジャネエゾコノヤロウ』

 

 ぬるり。と表音するのがまさに適切だろう。オービターに接続されたランディングクラフト(揚陸艇)の中で宙に浮きつつ胡坐をかいて座禅めいた瞑想をしていた一体のWARFRAMEが、地に足を付け武装を確認する。

 

 そのWARFRAMEは一度既に姿を見せていた白い剣鬼、【EXCALIBUR】ではない。

 頭部は両側方から横に向けて伸びる角を持ったような、独特の複雑な形状で――そこからはENIGMAと言う単語が何故か思い浮かぶ。胴体の紋様はまるで一種の男物の着物を思わせた。全体的なカラーリングは、薄青がかった灰色を基調に青と赤のライン。

 

 【LOKI】、と呼ばれる種類のWARFRAMEである。

 

「起きてるよ、Ordis(オーディス)。いつでも行ける、それがTENNOでしょ?」

 

 しかし男の形のFRAMEにも関わらず、発せられたのは女の子の声であった。――その声を"T"の姓を持つ機動六課の彼女が聞けば、きっと驚きと恐れとで固まってしまうだろう。あまりにも似ているのだから。

 Ordisと呼ばれたセファロン――オロキンAIは、素直に感心したような声をあげた。

 

『流石ですオッペレーター! あまりにも見事な瞑想ですからワタクシ、ついつい寝てしまっているのかと……WARFRAMEを使っている間って寝てるんじゃないでしたっけ?』

 

「今はもう起きてるままだからね!?」

 

『そうなのですか? まあ何でもいいんです、それでは早速降下しましょう。そして敵ヲ血塗レニ……いえ、何でもありません』

 

「そういう作戦じゃなかったような気がするけどなぁ……Lotus(ロータス)、そうだよね?」

 

 虚空に向けて語り掛ける【LOKI】。通信が飛んできたのか、大人びて抑揚の弱い女性の声が聞こえる。彼女こそが全TENNOを統括し、作戦指揮を執るLotusである。

 しかし通信先とかなりの距離があるのか、声にはノイズが混じり、ホロウィンドウがその姿を映す事は無い。仮に映っていれば独特の、しかし上品な姿が見れただろうが。

 

『そうですTENNO。今回の作戦は、コーパスなどが"こちらの宇宙"でオロキンの遺物(Orokin Relic)を手に入れられないようにする事と、長期的な回収の下準備。そのための第一段階として――』

 

 

N.D.75.6

MID-CHILDA ;Hotel AUGSTA

 

 

 この日、ナナは思っていた以上に意外な人々と会っていた。いやまさか警備業務の途中にコーパス社員がゾロゾロと連れ立ってくるのは(そして彼らが悪目立ちするのも)想定内としても、"人でなし"と"飛鉄塊乗り"がわざわざ会いに来るとは思ってもみなかったからだ。

 

 ここで言う"人でなし"は一般的な意味ではない。魔導師では無く、"幽かな存在"を知覚し操り、空を飛び弾を撃つ存在の事である。

 ナナの知り合いは"グレイヴヤード"にてパイロットを兼任するたった2人だけ。ローニン乗りの古くたびれた青年"デッドライアー"と、古臭く格式ばって直接的な物言いの両性にして虹彩異色の少女"蓑亀"だ。(※なお蓑亀が虹彩異色かつ両性というのは拙作の独自設定ではなく原作からである、ということを念のため記しておく。)

 

 ついでに記すならば、"飛鉄塊乗り"と言うのは惑星テンカクに於いて主力となっていた、人体改造を要する高負荷な小型飛行戦闘機の操縦者の事だ。なお大型の機体は仏鉄塊と呼ばれている。

 ナナが面識を持っているのは斑鳩の"森羅"、同じく斑鳩の"篝"の二名のみである。しかしこの日来ていたのは"篝"のみであった、森羅は仮にも一部隊を率いる立場であり忙しいからだろう。

 

 久しぶり、元気だった?

 などと差しさわりの無い会話をしつつ、周囲の意識をそれとなく逸らす。特に警備任務についている機動六課の面々の意識が逸れきるまでは、一般人と同じ差しさわりの無い会話のみで場を繋いだ。

 が、逸れた瞬間に四人の間のみの空気が音を立てて緊張する。

 

「それで。こんなに物々しい面子が集まって、私なんかの所に来て。何があったの」

 

「ははッ。なんか、と言われては我等"タイフォンの傑物"の呼び名も地に落ちるな。予想はだいたい合っているだろうよ」

 

 黒のタンクトップにショートスパッツと短パンと言う少年染みた服装で、淡い金髪を長く長く伸ばした蓑亀がさもおもしろげに笑う。トレードマークの大きなベレー帽がずり落ちそうで落ちないのは彼女が"微かな存在"で固定しているからだろうか、と気になって聞いたものは誰も何も言わないという噂もあったりなかったりする。

 

「仕事だよ、七四五(ななしご)。我等の因縁は終わって等いなかった、そら、こいつが斃れていないのがその証拠よ」

 

「あまり"それ"は口にしてくれるな、蓑亀」

 

 薄刃のついたガントレット(風切り笛、と言うらしい)を両腕に着けた外は何処にでも居そうな、と姿を形容するのが正しいだろうに、どこにも居る訳がないほど剣呑かつむっすりと何かを止めさせるデッドライアー。

 すまないな、と芝居じみてすら居る古臭い口調の割に軽く謝る蓑亀。

 

「10年と言う時間をかけて、"斑鳩"と"グレイヴヤード"は管理局について調べていたの。そしてつい先日、管理局の先兵としてやってきた"ある存在"から、決定的な証拠を得た」

 

 簪で髪を後ろで纏めた、東洋系の美女である篝。今は少々厚着をしていて見えてこそいないが、上着を脱げば金属の塊を神経に直接打ち込むと言う痛々しい飛鉄塊乗り特有の接触型インターフェース"楔"が見える事だろう。――なお飛鉄塊乗りの寿命は"楔"のせいで劇的なまでに短いと言われる。

 その彼女達が10年、という時間を丸ごと使って調べ、そして今動いた。その意味はナナにはよく解る。

 

「――"遺物"が?」

 

「ええ。それも"祈り手(PRAYER)"付の"石のような物体(The Stone Like)"よ」

 

「我等はそれを封じるのではなく、壊さねばならぬ。この惑星の何処かに在る事は間違いないのだが、場所が特定しきれぬのだ」

 

 なるほど。とナナは深く納得した。

 旧くからの"燦々たる銀の銃(Radiant Silver Gun)の伝承"によれば、"石のような物体"と呼ばれるソレは自ら神の如く振る舞い、人々に己の理想を押し付け、気に食わなければ人類世界の再初期化も辞さない存在であると言う。

 そして"祈り手"は己の理想を実行するために只々祈り、祈って、祈るだけの存在。祈りの過程として"人でなし"と同じ行動もとる事があるが、それはあくまでも余分な行動(サブルーチン)に過ぎない。

 

 この二つが噛み合ってしまえば、何があってもおかしくはない。

 知る限りの本質は同じであり、行動も酷似しており、故にその行末も同じだからだ。

 

 そしてこの二つはいずれも古の遺物であり――ならばその処理のプロである"グレイヴヤード"と、母体となった組織が"燦々たる銀の銃"の後継でもある"斑鳩"が対処に来るのは自然な事だった。

 そしてそれをナナに伝えたと言う事は、いずれ彼等からの依頼がくると言う予告に他ならない。そうなればナナは今の依頼を完遂する事よりも、フロンティア全域に関わる事である彼等の依頼を優先するだろう――"石のような物体"を探し壊す、と言う依頼を。

 

「ゲイツの了承は?」

 

「おうおう、既に取ってある。優先順位は此方が上とも言って居った、だが暫くは獅子身中の虫を成してくれ」

 

 はて、獅子身中。と言う事は管理局に。

 そこまで考えてナナはヘルメットの中で驚愕に目をひん剥いた。

 

 そしてその反応を見透かしたように呵々大笑し、そうだ、と頷く蓑亀。

 

「彼奴は管理局の最上、最高評議会に憑いておる。否、彼等こそが"祈り手"に為って居ったのだ。考えてもみろ、彼等の行動に人間味が在るか?」

 

「なるほど。……了解、内偵を務める」

 

「貴様も程々人間味が薄いな。くれぐれも祈り手などに堕ちてくれるなよ……否それこそ要らぬ心配か」

 

 後ろからデッドライアーに睨まれ、流石の蓑亀もフォローするような言葉を口にはする。しかしその左右で色の異なる瞳は、それを撤回してなど居なかった。

 ナナもそれには何とも言えなかった。事実、自身の人間味がどこか薄い事は自覚があったからだ。その代りにか首元のスイッチを押してヘルメットの前面を開き、顔を曝すとその目をじっと見返した。

 

「心配してくれてありがとう。――あなたたちのような友人がいる、だから大丈夫」

 

「お、おおう。 そうか、それならば、まあ、よい」

 

 気圧された訳ではない。真正面から、友人、などと言われては"人でなし"は戸惑ってしまうものだ――人であることを棄てているのだから。

 そして戸惑った事を隠しきれなかった蓑亀の様子に、デッドライアーも篝も思わず微笑ましくて笑みが浮かびそうになっているのだった。

 

「それからもう一つだが、"エイペックス・プレデターズ"の連中が何者かに雇われたようだ。それも、密航船での密出国つきでな」

 

 続いて焦りながら紡がれたその言葉に、ナナの元より藪睨み気味な目が細まりながらギッと吊り上がる。それはパイロットとしてのそれではなく、もっと強い、人間味を帯びた感情によるもののようだった。だが、無理もない。

 

 エイペックス・プレデターズ(APEX PREDETORS)。

 10年前の管理局との戦いの折、フロンティアを裏切って管理局へと戦力を売り込んだ傭兵集団である。そのトップに立つ男である"ブリスク"にとって、戦争とは何よりも儲かるビジネスに他ならない。いや、管理局とミリシアの戦いですら彼にとっては戦争ではなかった。

 そして更に言えば、ミリシアによって戦争犯罪者であると認定され指名手配されてなお、彼は荒稼ぎをやめなかった。

 彼とその部下が行った犯罪行為は数知れない。武器や麻薬の密売、捕虜の拷問・虐殺、物資の略奪……などはまだ序の口であるとまで言われる。到底口にすることもはばかられるような犯罪も一通り総なめしていると思った方が良いだろう。

 

 が、彼等は管理局法では『罪人ではない』。

 

 管理局に協力し、惑星"デメテル"などフロンティアにおける幾つかの惑星での戦いを管理局の勝利へと導き、報酬とは別に罪状に関する恩赦を受け取り続けた結果、彼等は管理局法の裁定の下では無罪……それどころかごく一部だが支持ある英雄とすらなってしまったのだ。

 ミリシアもそうなれば易々と手を出す訳にも行かなくなり、新たな犯罪行為に手を染める事を待っては居たのだが。

 

「奴等は残忍で、狡猾で、非情。何をするかわから――」

 

 ふと口を閉ざすナナ。他の面々も同じモノに気づいたのか、難しい顔をする。

 

「俺達はどうすればいい」

 

「一般人として、避難した方がいい。潜伏はするんでしょ。 ……ガジェットドローンの相手は、六課と私がする事になる」

 

「解りました、ご武運を」

 

 そう言葉を交わす彼女達のはるか上空。一瞬、太陽をカブトガニのような影がよぎった。




なおホテルアグスタにおける交戦は、密輸品の辺りをLOKI=サンが守ってた以外は何も無かったのでバッサリとカットする模様。
冗長になるだけだからね。仕方ないね。蟹になりたいね。
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