ぼくのかんがえたわるいかんりきょくをヘイトする話 作:NonaIn
サブタイトル考えるの難しいし疲れましたよもぉおおん!
N.D.75.7
MID-CHILDA ;City Area
「全く、今日は厄日だな。俺達も、お前らも」
どう見ても一般人には見えない、コンバット・ボディアーマーを身に着けた人相の悪い男は、検査衣を身に着けジュラルミンケースを手首に手錠で繋がれた金髪の少女(いや幼女か?)を背後にかばうエリオとキャロを睨むようにしながら言う。
しかしその視線に明らかに竦み怯える幼女に、休暇であったがゆえに普段着かつ装具の一つも持ってきていない年少二人はぐっと身構える。その様子に大げさなまでに溜息をつき、口調こそ変えないものの語気を強めて男はもう一度言った。
その瞬間、キャロには地下水道特有の湿った空気が、一瞬にしてぴりりと乾いた気がした。
「いいか、もう一回だけ言うぞ。俺はソイツの"臨時の護衛"だ、抜け出しやがったからこんなところまで追いかけてきただけだ。今すぐこっちにそいつを寄越せ。時間が無い、金が掛かってるんだ」
「そうはいきません。管理局局員として、ロストロギアの反応があるモノをこんな子供に持たせておくような相手には――ッ!?」
するり、と警戒をすり抜けるように男はいつの間にかエリオの目の前まで近づいてきていた。身構えていた事すら無意味な距離で、寝起きの熊のような顔で睨みつけられれば怯みもする。
だがそれ以上に、遠くから響く地鳴りのような音がエリオとキャロの危機感を煽った。重厚な金属が二本足で歩くような――タイタンだ!
そう解った瞬間、エリオは改造中のためにストラーダを持ってきていない(そろそろ完了するはずだが出かけた時はまだだった)事も無視して、先ほどからこっそり溜めていた魔力を変換しつつ掌からサージ放出する。雷光による目くらまし……の、つもりで。
しかし実際は別の効果を発揮した。どういった訳か電気が電磁に変換され、紫がかった青白いアーク放電光となり、男を強くひるませたのである。
「アーク……グレネード……ッ!?」
一時的な痺れで上手く体が動かないのだろう。放った方も少しびっくりしていた。
その隙を見るまでも無く待機状態のケリュケイオンを介して
人の足ではタイタンに追いつかれてしまうが、そこは魔法の力によるゴリ押し。通信できるのがキャロだけと言う事もあって、時間稼ぎも兼ねて網の目の如く複雑な地下水道を出鱈目に折れ曲がり走り回る。
「ロングアーチ、こちら……っ、キャロ=ル=ルシエ三等陸士。 現在、先刻連絡したロストロギア反応追跡の途中で迷子と、それから正体不明のタイタンとパイロットと遭遇――」
『こちらロングアーチ、シャリオ一等陸士。正体不明のタイタン、ですか?』
「はい。迷子にロストロギア反応の出ているケースを手錠で保定してあって、それを追いかけて来たと……状況的にあまりにも怪しいので独断で保護し、現在撤退中です」
『わかりまし……あ、八神司令』
『キャロ、そいつは髭面のクマみたいな男やったか?』
急に通信に割り込み、声色だけでも解るほどに真剣に問われてキャロは一瞬足が止まりそうになった。デキる人なのは知っていたが、真面目な人だとはあまり思えていなかったせいもある――比較対象が
「ええと、はい。クマはクマでも野生のクマって感じでした。静止画像、送ります」
『受信しとるで。ああ、念話に切り替える。 ――ええか、こっちから救援を送るけど多分、間に合わん』
これがただの通信であれば、運んでいる子にも聞かれていただろう。それを考慮したのか、あるいは。
どちらにせよパニックを起こされるよりはマシである事に、キャロは気づいていない。遠くから響くタイタンの足音に気を取られているせいもあるが、助けが来ないと言う事に軽く絶望を感じたからでもある。
「じゃあ、じゃあどうすれば……」
『逃げなあかんな。そこからやと……貯水槽が近くにあるからそこは避け、ん、なんやナナ? は? 貯水槽に? ……ああ、雨も降ってへんかったし行けるか。なるほどなあ』
不安が募る。タイタン相手なのだから狭い場所に隠れる必要があるのではないだろうか、と思ったのだが。それを否定するようなプロの提案である。
何か策でもあるのだろうか。
『ホント
まさかの魔法を爆薬程度にしか扱わない作戦である。ああ、ナナさんらしいなあ、とぼんやり思わされた。なおはやてが呻くのはもういつもの事と慣れてしまった所がある。残念ながら。
『……こほん。とにかく、聞こえとったね? そしたら合流座標とルート案内をするから、皆気張りや!』
こうして地下では、命をかけた追いかけっこが始まった。
一方、地上ではスバルが独自魔法である"フローティングウォール"を併用して、壁を蹴って跳躍する事を繰り返して合流地点へと近づいていた。合流予測時間まで少々時間がある。
そのためか、ナナから秘匿回線によって通信が入っていた。なおティアナはジャンプキットを持ってきていないせいもあり、完全に置いてけぼりとなっている。
『パイロット・ナカジマ。現状、タイタンフォールに使う再突入殻は一つしか用意できてない。私も今から輸送機で向かうけど、間に合わないと思った方がいい』
「その程度、っなら、秘匿じゃ、なくって、もっ」
近いと言っても500m以上は離れた場所からの全速移動である。軽く息が上がっていた。逆に言えば軽くしか上がらない程に余裕はあったが。
故に、多少頭を回す余裕はある、と言う事である。全くパイロット技能は身体だけでなく脳まで酷使するものだ。
『これからあなたが相対するのは、クーベン・ブリスク』
「……へっ? それって、あの"エイペックス・プレデターズ"のですか」
スバルは過去にパイロットに憧れを抱いた際、その存在を調べた事がある。
それ故に管理局からひっそりと表彰までされていた彼等の事はある程度把握していた。そのせいでパイロットという存在に対する尊敬や憧憬が強まった事もあるので、何事も善しあしであるが。
『多分、そのエイペックス・プレデターズの。こっちでどう言われているかは解らないけれど、全て忘れて。依頼のためなら、無辜の民間人を街ごと殺す事も厭わない連中。……証拠は要る?』
「要りませんよ、パイロット・ナナは今まで誇張や比喩は少ししても、本当の意味での嘘は言わなかったから。証拠を出せるなら多分大なり小なりそうなんだよね……っと、到着っ」
とっ、と軽い足音を立ててスバルはARマーカーが示す合流位置に降り立つ。そこは裏路地にある、
幸いにも頭上に障害物は無く、足元のコンクリートは暗渠に被せられている特有ののっぺりとした質感を持っている。しゃがみこみ軽く右腕のリボルバーナックルの拳で叩いて、殆ど音が響かない事から顔をしかめる。
「これは砲撃魔法でも使わないと苦労しますけど、撃ったら余波で周囲まで巻き込み兼ねないですね。どうします?」
スバルとしては、
念のためロングアーチにたずねたつもりであったが、まだナナが通信ポートを占有したままであった。
『そこを中心に、8か所に
「――わかりました」
いともあっさりとは行かなかったが、聞いて、理解して、
――彼女はその力を疎んでいた時期もあった。こんなもの誰も救えない、誰も幸せにしない、
だがそれは
どんなに破壊と殺戮しかできない機能や能力であっても、
その事実にひっそりと気付き、ナナの背中を見て確信したために精神が非常にタフになったのでもある。
なおナナはとても早い段階で彼女が戦闘機人であるとは見抜いて
誰も見ていない事も、力を使う事の一助になったのかもしれない。
すう、はあ。と深呼吸をひとつ。脳裏のスイッチを切り替え、機械を叩き起こすイメージ。
魔法陣とは異なるテンプレートを展開し、
「噴ッ!」
気合い一声。それと同時にズシンと地面を揺るがす程に足裏で強く踏みしめる震脚。文字通り地面を振動させてしまうその一足によって、地面に深いヒビを入れた。もし彼女が本来使っていたストライクアーツであれば、こうは絶対にいくまい。
ゆっくりと脚をどけて、ヒビが広がり過ぎていないかを調べる。問題は無さそうだと判断すると、エネルギーを無駄にしないためにもあと7度それを繰り返す。
大ざっぱな計算ではあったが、周囲にひび割れが届かないよう、かつ八点の中心で重なり合うよう下準備を整え、リボルバーナックルの表面に指を走らせる。
『来たな、準備は出来とるで! タイタンフォール、スタンバイや! ……っくぅ、言ってみたかったんよコレぇ』
『八神司令……』
タイタンフォール予告線と、予告時間5秒のカウント。それらが表示されると同時に、何故かはやてによって号令がかけられる。わざわざ回線使用権を強引に上書きしてまで言いたかったのか、とナナとスバルだけでなく他の面々も少々呆れた。――地下でブリスクと対面している2名+1名+1匹を除いてだが。
若干微妙な空気になりつつも、上空からタイタンフォール特有の連続爆発音が聞こえてくる。突入殻が炸薬を使用して姿勢を制御し、精密に落下してくるためのものだ。
さすがに周囲の住民が騒ぎ始めるが、この際細かい事は気にしていてはいけない。そもそもからしてもしナナの言が本当であるならば、相手は一帯が崩落する事などなにも躊躇いはしないのだろうし。
そして正確地面を割り、地下へと
フォール直後の挙動を決めるフォールキットはドームシールド。粒子シールドドームにより、おおよそ全ての攻撃を無効化してしまうという代物。それによって、1機は1機と3人の間に正確に割って入る事に成功した。
『FS-1041"マキア"、到着。お待たせしましたパイロット。 ……モンディアル陸士、フィニーノ技師より届け物です』
「え。僕にですか」
戦況は膠着している、と言っていい。あるいはにらみ合いか。ドームシールドに守られたまま、FS-1041――"マキア"がデバイス特有の保存領域から文字盤が白、時針と文字が金の腕時計を取り出し、器用に投げ渡す。
『ストラーダ・プライムとの事です、確かに受け渡しました。プロトコル2任務を執行、サブプロトコルB、物資配送を完了。サブプロトコルA、民間人を保護しつつ撤退支援に戻ります』
「マキア、準備は」
『搭乗準備よし。いつでもどうぞ、パイロット』
ドームシールドの中、スバルはやや緊張した面持ちでマキアのコクピットに収まる。今までは
「……助けてね、マキア」
『勿論ですパイロット。力を合わせれば強力です』
広い空間とは言え、銃器を使えば柱が崩れ崩落の危険がある。そう判断し、ブロードソードを手に振り返った。
しかしブリスクが乗っているリージョンは、タイタンの身長ほどもあるガトリングガンを構えるのをやめてしまっていた。
『やめだ。割に合わねえ』
「へっ?」
一同、一気に気が抜けてしまう。特にやる気を出して相対したスバルなどは猶更。
揃って奇妙な声をあげてしまったのも仕方あるまい。
『お前らと今ここで
「逃がすと思って――」
『パイロット。
ほんの数秒の差を置いて、多くの赤い装甲の人間大の無人歩兵ストーカーと、幾数かの3mほどの白いずんぐりむっくりした肥大化したストーカーのような兵器リーパーが天井の穴から跳び下りて来る。
咄嗟にスバルはブリスクと無人兵器たちにマキアの背を向け、コクピットを開いて跳び下りた。
「――キャロ! マキア! こっちに!」
『推奨しませんが、了解です』
「え? あ、は、はい!」
すっかり状況について行けておらず、モノも同然の幼子が空になったタイタンのコクピットに座らされた。と言っても、ニューラルリンクが無いので本当に"入れた"だけである。
「ごめんね、そこなら安全だから大人しくしててね。 ……マキア!」
「えっ、あっ」
『了解。プロトコル2、任務を執行。 プロトコル3、パイロットを保護』
何か言いたげな金髪に虹彩異色の幼子を無視し、マキアのコクピットが閉ざされる。
一同は悠々と立ち去ってゆくリージョンの背を睨み、しかしこれから始まる激戦のために揃って身構えるのであった。
――なお増援のティアナとナナは、ほぼ同時に到着した。あと1分も遅れていればだれか怪我をしていただろう、という状況で。
ほぼ顔見せ回。
まあちょい役ってこたぁ無いです、あと1,2回は出てくるんじゃないかな?
たぶんね!