ぼくのかんがえたわるいかんりきょくをヘイトする話   作:NonaIn

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信じて!!





Chaptar.14-A Be Come

N.D.75.9.16 1922

MID-CHILDA OVER AIR ;The Great Thing "CRADLE OF HALLOWED MONARCH"

 

 

『こちらFS-1041"マキア"。『ゆりかご』内部への突入に成功、貴艦の援護に感謝する。幸運を』

 

 転移を併用した高速上昇によってゆりかごの下方へとつけるという、はやてとリィンフォースそして魔力ほぼすっからかんのシャマルの負荷と負担を一切考慮しない――つまり二度目を考慮しなくていい今だからこそ取りうるアホのような手法で以て接近し、そこからマキアのトリガーコアによって外殻を強引に打ち破り、強行突入したのである。

 そのせいかアースラは徐々に高度を失い、離れていく所だった。周囲のPRAYERからの攻撃は、ほんの短い距離ながらも激戦となってしまった故に撤退を命じられたヴィータら3人を含めた6人によって辛うじて防がれているのが見える。

 

『おうなのは、いいか、無茶だけはすんじゃねーぞ。フェイトも、スバルも、……あとそこの鉄野郎もな!』

 

 無機物故に痛みを感じないPRAYERの突進を鉄槌で捌きながら、ヴィータが激を飛ばした。しかし同時に、言外に『墜ちたら回収はできない』と言っているのである。

 

 ――故に、それは彼女らがどうしようもなくまだ生きている事を証明していた。

 

 飛び込んだ此処はゆりかご(CRADLE)などと銘打ってこそいるが、その実は墓石(GRAVESTONE)なのだと理解しているからこそ帰ってくる途として発した言葉なのかも知れない。

 理解しているからこそ『人でなし』を宛がうような事を良しとしなかったのかもしれない。墓を暴くのはいつでも生者なのだから。

 

 3人と1機は前へと進む。

 通路は無機物でありながら有機的な様相を見せ、一見無秩序に見えながらも合理的な噛み合いを行うブロック達によって構成されている。時折、そう本当に時折ふらりと迷い出て来るPRAYERが居る以外は何も無い。

 マキアの複合センサーを頼りに――魔力波動は干渉し過ぎていて人間の分解能では識別困難だった――奥へ進んでいるはずなのだが、通路のように見える空間にあるのは幾ばくの自動修復を担う機構らと寒々とした風ばかりである。

 それでいて上下左右は確りとした壁に閉ざされ、前後のうち前は開いているものの後は次々に不可思議な発光で作られた隔壁が閉ざされていた。ネズミ捕り、あるいは逆止弁という言葉がふと思い浮かび、スバルは小さく頭を振った。

 

「何だか、魔法の通りが悪い。なのはは大丈夫?」

 

「うん。でも、外殻を偽装していない純正のPRAYERがここまで魔法と相性が悪いなんて思ってもみなかった」

 

 そうだろうか。外に居たのも、純正のPRAYERである。唐突にスバルがぼんやりと呟いた。

 

「……マキア。機内魔力炉の励起率は?」

 

『スキャン中。……励起率が低下しています。原因としては、機材の不調、あるいは()()()()()()()()が考えられ――』

 

「――なのはさん、フェイトさん! AMFと、いえ、マナ(魔素)サプレッション(抑制)レディアス(円域)と似た状況です!」

 

 マナ・サプレッション・レディアス。

 

 『人でなし』たちが扱う基本的な防御行動であるサプレッションレディアスの魔法版であるが、その特性から他の防御魔法の方が重宝される領域(フィールド)魔法である。

 魔導師であればリンカーコアから半径数十センチ~2メートル程度の魔力の薄膜を展開し、その中に入って来た魔力素(ここには魔力として結合したものも含まれる)を強く抑制し不活性化すると言う代物だが、自身も魔法を扱えなくなる事と制御の難しさから訓練くらいにしか使われない。

 

 しかしそれを完全に魔力素に頼らない電子機器等で、広範囲に展開していたとなれば?

 

 下手なAMFよりもよほど脅威だ。展開していると知られる事なく、徐々に徐々に魔力素――つまり魔力そのもの、あるいはそれを蓄積するリンカーコアの機能を使用不能にしてゆく。しかも、毒のように気付かれる事無く、だ。

 

 その事に気付かされた魔導師二名は慌てて物陰に身を隠し、進行を停止した。放っておけば戦闘能力の一切を喪失する事になりかねない。

 その一方、幸いにもマキアから降りればスバルは()()()()()()()()()()である。

 

『不活性化魔力素の分布を解析中。 ……パイロット・スバル。あちらの方が不活性度が高い、恐らく発生装置があるのでしょう』

 

「わかった。 ……なのはさん、フェイトさん、分岐路も近いみたいです。別れましょう、わたしが一人で行ってきます」

 

 魔導師二名は思わず顔を見合わせた。危険だ、止めるべきか。でも行って貰わないと間に合わないし止められもしない。

 そんな事を視線だけでやりとりしたのだろう。しかし。

 

「――お願いできるかな」

 

 きっとその一言を出すのには、この上ない無力感があったに違いない。それでも魔法を使えなくなるよりはマシだ、まだ成功率はある。との判断でしかあるまい。

 

『パイロット。この先に大規模な亀裂を検知、PRAYERはここから外部へと放出されている模様。回り道をしている余裕はありません。 ――私の分析では、選択肢はただ一つ。行きましょう』

 

「……動けなくなる、ってことはないよね?」

 

『少なくとも純粋な魔導師よりは耐性があります。それでも急がなければ動力が低下する恐れはあるでしょう。ですが回り道をした場合は駆動可能限界予測時間を255秒超える計算です』

 

「了解、急がば回れとは言うけど、今は急がば突っ切れって事ね」

 

 マキアのフェーズストレージからアサルトライフルの"V-47フラットライン"とハンドガンの"B-3ウィングマン"を受け取り、送り出すと言っておきながら何か言いたげななのはとフェイトを置いてスバルはおもむろに壁に跳び付いて駆けだした。マキアも早足にそれに続く。

 その背中を見送る白と黒の魔法少女(?)たちもまた、先ほどまで進んでいた方向を頼りに進んで行った。

 

 曲がり角を2つか3つも超え、元は無かったと思われる『膜』の除去にやや手間取ったもののスバルとマキアは大亀裂に到達した。幸いにも、パンケーキにホイップクリームでも乗せたような形状のサプレッションレディアス発生装置がここから直接視認が可能である。

 が、やや遠い。壁も直進するには心もとなく、少々の回り道は強いられる事になりそうだ。

 

 亀裂の下にはPRAYERが海原の水面の如く『波打って』いた。それを生み出しているのは――見回せば、すぐに見つける事ができた。ゆっくりと右回転をする、針の無い時計板のような虚ろなPRAYER。

 それは今でこそ小型PRAYERを再生してはいないが、垂れ下がった鉄錆色の何かの『尻尾』を再生していると中である。

 

『"永久の暦"の同位体を検知。おそらく再生しているのは"錆びた竜"の同位体でしょう。 ――サプレッションの中心点を検知』

 

「でも、こっちからは行けそうに無い。どうするの?」

 

 マキアが指さした事で、改めてスバルはそれを見る事ができた。だが急がなければ"錆びた竜"が今にも生まれ落ちそうである。

 

『私の分析では選択肢はただ一つ、あなたを向こう岸へ()()()事です』

 

 思わずスバルはマキアを見上げた。

 マキアはそんな事お構いなしに、砲丸投げでも始めるような構えで片腕を低く下ろして待ち構えている――やめろ肩をくいくい動かして調子を確かめるんじゃない、と思わずスバルは思ってしまった。

 

「…………えっと、一応、聞くけど。自信は?」

 

『成功確率は61%』

 

「…………残りは?」

 

『失敗する確率が39%……その場合手足の複雑骨折、ないしは四肢の切断、あるいは激しい内出血、または落下してPRAYERに破壊される可能性があります』

 

 それでも、他に選択肢は無い。スバルにだってそう思えた。

 マキアの手に乗り、軽く身構える。武器を落とさないよう確りと握りしめた。

 

『距離約70m。方向、現方向より左右に0。微風影響皆無。投擲対象、重量……約70キロ』

 

 四捨五入されると凄く微妙な気分になる、と思い知った。スバルはこれでも意外と乙女なのである。

 しかしそんな事は相変わらずお構いなしのマキアは、指さし確認を終えるとグッと拳を握って見せた。

 

『信じて!』

 

「頼むよ……!」

 

 そうして、ミッドチルダで恐らく初となる『タイタンに投擲されるパイロット』にめでたくスバルはなる事になった。

 

 対岸は割れていたがゆえに、もし弾道が少しでもずれていたらむき出しの割れた建材に突き刺さる可能性もあっただろう。少しでもジャンプキットの整備を怠っていたら、着地もままならなかっただろう。

 幸いにも、そう言った悪い偶然は無かった。むき出しの床に数度ゴロゴロと転がって受け身を取るハメにこそなったが、何ら痛みを感じる事も無くわたる事に成功したのだ。

 

「――ッ、ナイスピッチング」

 

『ありがとうございます。私は一旦引き返して待機し、サプレッションが解除され次第迎えに来ます』

 

 そう言う彼女ら彼らは、既に立ち止まって会話などしていない。一瞬の遅れが致命傷となるからであり、それはパイロットとして動く際の最も重要な事として叩き込まれた事である。

 僅かに、だが明らかに先ほどまでに比べて迎撃密度の上がったPRAYERたちをフラットラインの射撃で叩き落とし、時には弾幕を潜り抜けてスバルは走る。床を走ってなどいられない、魔力など使う気もない。

 

 壁を走り、跳び、また壁を走る。その合間に射ち、撃ち落とし、狙いをかく乱する。

 

 一瞬とて澱む事の無いラン・アンド・シューティングは間違いなく、ガントレットで鍛えられたモノだ。

 幸いにも狭い通路故に小型のPRAYERしか居らず、それ故に実体弾でも十分に撃破可能である。

 

 だが、一瞬だけ亀裂に繋がった隔壁の隙間とでもいうべき場所から見えたそれは、スバルの精神を動揺させるのに十分だ。

 

「――"竜"が、もう生まれ落ちる……!」

 

 それは4つのユニットからなる大型PRAYERだ。中央のメインユニットは『尾』を垂れさがらせ、左右のサブユニットは見える程に"幽かな存在"を励起させている。

 なるほど大まかにみれば羽根つきの蛇か、竜といった形状だ。

 

 そしてそれに見つかればタダでは済まないだろう、ともすぐにわかる。

 何故ならば"竜"とはそう言う存在だからだ。――どこかでフリードリヒがくしゃみをした。

 

『見えましたパイロット、急いでください。遠隔解析によればサプレッションモジュールはデータナイフでハッキングできます』

 

「デバイスも開封に3秒かからない化け物ハッキングナイフね、了解」

 

『はい。私のようなタイタンとリンクすればインテリジェンスデバイスでもその水準です』

 

 褒めてるけど褒めてない、とツッコみを入れたくなったスバルである。

 だが今はそれがとてつもなく頼もしい。ハッキング待ちの間に撃たれるような事は考えなくていいし、これでダメならデバイス持ってきてもダメと言う事だからだ。

 

 "片翼"と呼ばれるPRAYERに撃ち切ったフラットラインを投げ捨て、ウィングマンを手にラストスパートをかける。距離残り10m、5m――

 

「タッチ、ダウン!」

 

 モジュールのコンソールに半ば跳び蹴りをかますような形で取り付くと、キーボードの隙間にナイフの刃を差し込みひっぺがして、側面にハッキング用の接触端子を出し、丁度良い端子が見当たらないので適当なもう少し大きい端子に突き立てる。

 リボルバーナックルを操作してマキアとのデータリンクを増強、ハッキングコードの埋め込みが始まる。

 

 ――その向こうで、"竜"が生まれ落ち、産声のような、錆び付いた機械の擦れるような耳障りな音を上げた。

 

 たった3秒。

 

 しかしその3秒がここまで長く感じられる事は、そう無いだろう。

 

 ゆっくりと回頭し、こちらを向こうとする"竜"。冷や汗をかきながらデータナイフの柄頭に浮かぶホロインジケータの進行を睨むスバル。

 もう少し、あと少しこちらを向いてしまえば――その時だった。ふっと、竜が高度を下げて行く。

 

『地上防衛部隊より入電。エイペックス・プレデターズと協働するも未確認()()()、及びヴァンガード級タイタン"()()"の出現を確認せり。 ――続けて地上本部攻略部隊より入電。篝、蓑亀両名が地上防衛の補助に回る模様』

 

「――たす、かったぁ……っ!」

 

『"斑鳩"の搭載されていた"不動明王剣"には自身、他者どちらにも使える超長距離転送機能が存在しています。恐らく()()()()してきたものかと』

 

「それは、今は、どうでも、……いいっと!」

 

 ホロインジケータの変動が止まり、埋め込まれたハッキングコードが3桁の英数字で表示される。それを確認して素早くデータナイフと連動させたリボルバーナックルから、停止指令を送り込む。

 

 ふぉぉん、と軽い音がして胸の辺り――リンカーコアに感じていた負荷が消えてゆく。スバルはようやくここで一つ大きな息を吐いた。

 

「これできっと、なのはさん達がヴィヴィオちゃんの回収はしてくれるはず」

 

『その通りですパイロット、見事な戦いでした。丁度迎えがそちらに行きましたので、彼女と合流してこちらへ来てください。戦闘が長引く事も想定して、アーク確保に向かった二人を追うべきです』

 

「……え? 迎え?」

 

 てっきりマキアがくるとばかり思っていたスバルである。しかし実際に来たのは、白と青の大柄なWARFRAME、つまりFROSTに入ったアリシアであった。

 

「アークウィングが使えたから、来ちゃった☆」

 

「アッハイ。ところで何で横抱きにして、ちょっと待ってなんでそっちにって言うかそっち亀裂亀裂アッアッ落ちるゥ!?」

 

 WARFRAMEはパイロットでは跳び越えられない亀裂を、あっさりとバレットジャンプとエイムグライドで跳び越えて見せた。

 それはスバルにとって――とても知りたくない感覚で、知りたくない事実だったと言う。

 

 

 ――ヴィヴィオを迎えに行ったなのは達については、特に何かしら語る事はあるまい。

 ただ皆の知っての通り、母娘のような会話をし、母娘のような絆を紡ぎ、フェイトとなのはの砲撃によって強引にヴィヴィオを取り戻した。それだけなのだから。





コレガヤリタカッタダケー
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