ぼくのかんがえたわるいかんりきょくをヘイトする話 作:NonaIn
読者のTENNOの皆さま、お待たせしました。ようやっと本格的にクロスオーバーが始まりますよ! 今頃トカ遅スギルゾコノヤロウ。
本編中で"彼"が何がしたかったのかよくわからねぇと言う場合は、LOTUSの思考をちょっとなぞってみると解ってくる可能性もあるんじゃあないかなぁーと。
N.D.75.5
MID-CHILDA ;High speed Railway Area
動体硬目標をサイトに入れる、ロックを待つ、リリース。追尾ロケットが飛ぶ、命中。
それだけの繰り返しで、非魔法重攻撃に対する耐性を一切考えられていなかったであろう機械は赤い華となって散ってゆく。
「エクスペディション・ロードアウトだと、まるで鴨撃ちね」
『作戦行動が楽な事は良い事です、パイロット』
しかし、友軍の支援、と言う言葉は口に出さない。そこまで気を回してしまえば、それは逆に現場に出ている少女達(約一名は少年)の成長を阻害する事になると言う事を言い含められ、理解していたからだ。
今、タイタンとパイロットに求められているのは、どこから湧いてくるかもわからないほどの数のドローンの後続及び高危険度標的に対する対処である。そのため、護衛対象となっている列車が高速で走っている事もあって、彼女らは随伴するように飛ぶミリシア製タイタン用無人輸送艇の側弦を開き、ほぼ誘導固定砲台と化して作業を熟していた。
しかし、それはあくまでも咄嗟に飛んで行く事のできない、パイロットとタイタンという組み合わせだからこそでしかない。
列車の外を如何にかする高位空戦魔導師は二人とも、AMF(アンチ・マギリング・フィールド)と呼ばれるある種の魔法無効化フィールドに苦戦させられていた。そも空を飛ぶだけでも魔力を使うのだから、こういった時に魔導師は非情に苦戦させられる。
それゆえ、かく乱しつつ誘導、固定砲台と化したレイとナナが非魔法攻撃で撃破という流れになっているのだ。
そして列車の中では、また違った阿鼻叫喚となっていた。無論、列車内にもドローンは入り込んでおり――幸いと言うべきか無人化された貨物列車であったため人的被害は無い――それの対処に思った以上に苦戦していたのである。
パイロット訓練をそれなり以上に熟したスバル、それなりに熟したティアナは、魔力を無駄にしない方針で動く事ができていたために疲労以外はさしたる被害も無く順調に何とかなっていた、はずだったのだが。
『あれ? この列車って、無人化されてたんじゃ……』
『違うわスバル、コイツ、侵入者よ。変なバリアジャケットで、顔まで見えないなんて、あからさまにおかしい』
通信から漏れ聞こえる情報からすると、何やら第三者が入り込んできていたようだ。作業と化している鴨撃ちは片手間でもできるが、逃げつつ誘導、あるいは撃破と言うシビアな戦闘を強いられている執務官と教導官は、思った以上の攻勢にやや押され気味であるとナナは判断した。
デバイス越しに通信・念話変換装置で声をかける事にする。デバイスで直接接触の秘匿性の高い念話に変換するよう予定されていたので、聞かれる心配もあるまい。
「その侵入者の映像をこっちにも。あと、ロングアーチにも一応回して」
了解の返事も無く、二つの視点からの映像がタイタンのメインモニターの左右に表示される。
それは異様であった。
まるで何か鋭いモノで切り裂かれたような、鋭利な断面を見せるガジェットの山。
そしてその中央にたたずむ、白いヒトガタ。ヒトガタ、としか表現のしようがない。
なめらかでありながら、あからさまにヒトが着ている事を示す特有の厚みのある、金属質なのに生物的な表皮。のっぺりとした、目も耳も鼻も口も無い、仮面のような顔面。しかしその額上部には、まるで途中で折れた角を思わせる突起が一本上向きに生えている。
手には今やアームドデバイスですら使われる事の稀な、弓。両太腿には何かを収めておくポーチと、そして背中には曲刀なのか和刀なのか判断のつかない鍔の無い刀剣が一振り。しかし弓を持っていない手には、まるでエネルギーそのものが形を取ったかのような白く清廉な輝きを持った刀剣が収まっている。
それ――恐らく、彼、は唐突に出くわした予想外の相手に多少の警戒心を持っているようだったが、唐突に弓を肩にかけて背負い、手の中の光の刀剣を鞘に納めるようなモーションで消す。映像の視点が少しブレた事から、身構えたのがわかった。
だが。彼の取った行動は予想外であった。
両手の掌を胸の前で合わせ、そのまま腰を深く折る。――お辞儀をしたのだ。
アイサツはとてもだいじ。古事記にもそう書かれている。もっとも、イクサの前のアイサツでは無さそうで、ポカンとしている二人を見届けるとそのまま武器を手に取りなおし、背を向けて走り出してしまったのだが。
ナナですら一瞬呆気にとられたが、すぐに思考が切り替わる。
「ソイツにドローンを取られると、拙い! 横取りされたら部隊の評価につながる、追って!」
『ッ! 了解!』
その一言だけである程度察する事ができたのは、当然のようにティアナの方だった。スバルは若干理解しそこねているようだったが、それでも数瞬の後に納得したようであった。
なおキャロとエリオには特に何を言うでも無い。それは保護監督責任者でもある執務官と、教育を一手に引き受けているであろう教導官の仕事だと考えていたからだ。――逆説、スバルとティアナにはナナはある程度の責任を持つつもりでいた。才能あるパイロット候補は、特に魔導文明の出の彼女達は非常に貴重なのだ。
しかし、アレは一体何なのだろう。バリアジャケットと言うには異様で、かといってああいう生物と言うには異形で、いずれにせよここに居る事に誰も気付かなかったのが異常。
追いついた先でドローンを弓矢と腰ポーチのクナイの投擲で射抜き、背負った実体刀と手の内から生やす光剣で切りすてる姿は見るだけでも魔導師と言うには遠い事が見て取れた。ジャンプキットも無しにそれを凌駕する跳躍力や機動力を見せる事も合わせれば、更にどちらでもないと予測はつく。
それどころか、手にした光剣を掲げれば周囲のガジェットが怯み、地面に突き立てれば見えない矢の雨が百舌の早贄よろしく射貫く。横振りに振りかぶれば恐ろしい勢いでダッシュしながらすれ違いざまに斬り捨てるその有り様は、アメリカンコミック(ミッドチルダコミックか?)のカートゥーン・ヒーローがそのまま出て来たと言われても納得できるものだ。
「ティアナ候補生。魔力計測を」
『してます、けど……魔力が感知できません、むしろ逆です。 虚数空間のエネルギー特性が検出されてます!』
「虚数空間……VOIDの事? じゃあアレは、コーパス関連……?」
通信越しに聞こえないよう呟く。
ミリシアに前大侵攻時から技術販売を行っている企業体の一つである"コーパス"は、全てではないがその一部にVOID――虚数空間のエネルギーを用いているとは聞いた事があった。しかし。
『パイロット。映像越しではありますが、アレからはコーパスの構造特性は検出されません』
「でも近しい何かはあるはず。……帰ったら問い合わせてみよう」
『了解。レポートを作成、送信準備』
こんな会話をする内にも事態は進んでゆく。大物をスバルとティアナに譲りつつ、小物の掃除をして、しかしそれでも二人を引き離すように高速で駆け抜けてゆく白い彼。
列車の外は大よその戦力が片付いており、事態の収拾も間も無くつくかと思われた。しかし事が起きるのは唐突であった。
ほんの少し鴨撃ちに集中した隙に、通信越しに小さな悲鳴が二つ。すわ何事かと思ってみやれば、二つの視点はどちらも足元に刺さった一本ずつの矢を見ており――そして視線が上がった時には既に白い彼は扉を潜り抜けてその先に進んでしまったのか、先頭車両へ続く扉が閉まる所。
半自動のはずのそれを、どうやったのかご丁寧にロックダウンまでして何かしているようであった。六課の面々に冷や汗が出る。このまま、列車が暴走したまま進んでしまえば、それほど多くの時間もかからず――首都のメイン交通インフラに大きな被害が出てしまう。
むろん、積み荷の中には奪われてはならない"レリック"と呼ばれるロストロギアなども存在し、それがどうにかなっている事も危険ではあるのだが。ドローンは丁寧に潰しているし、白い彼も何故か先頭車両に籠ってしまったので、奪われる可能性は低い。
そう、考えていた。
しかし焦る六課の面々とは真逆に、列車は異常化していたデータストリームを"一瞬で"正常化させ、通常運行に戻ったのだ。そしてその数秒後には列車の窓をブチ破って落ちてゆく白い彼と、それを超低空の物陰から上昇しつつ拾い上げるカブトガニのような形の小型の"船"。
むろん、停止勧告は出すもののそれは見事に無視され、船はあきらかに人が乗る事を考慮しない速度で加速しつつ宇宙にまで昇って行き、そこで反応を見失う事となった。
――異常があったのはそこまでで、そこからはいたって簡単なお仕事であった。
正常化した事で遠隔操作も可能となった列車を退避路線へ引き込み、内部の検分を総出で行う。無論、重機であるタイタンとそのパイロットも引っ張り出された――着陸させるのを面倒がって無人運送艇からタイタンで跳び下りたのには魔導文明側が皆して驚いていたが。
貨物の中には、RD-5013とFS-1041のためのパーツも幾らか存在している。ナナが特に重視したのはこれらだった。魔導師達はレリックを重視していたようだが、惑星が滅びる程度の遺産などナナの産まれたフロンティアでは割とそこらへんに転がっているモノであり、さほど危険性も感じなかったというのもある。
そしてついでに言えば傭兵という職業柄、そう言った危険物は正規の部隊に任せた方が問題が少ない事も知っていたので、ナナは通常の貨物のスキャンと確認にいそしむのであった。
ちなみにスバルは"ウィングロード"が"フローティングウォール"になってしまっている影響で、まだマッハキャリバーを受領してません。ティアナはクロスミラージュを受領してますが。
その辺りはもうちょい先で何とかなってくる、はず。
あとナナの産まれた場所とかについてはちょっと小話を書こうかと考えてます。
10歳でフルコンバット・タイタンパイロットとか異様ですもんね。