ぼくのかんがえたわるいかんりきょくをヘイトする話 作:NonaIn
そろそろ原作を蹂躙してイきますよーイくイく……ヌッ!
N.D.75.5
MID-CHILDA ;Task Force 6 Office
『レポートは読ませて貰った、パイロット。我々はアレを知っている』
甚だしいコーパス訛り、いやジャイヴトーク寄りの発声で通信がナナの耳朶を叩く。VOID通信の先はコーパス・フロンティア支社となっている巡洋艦、クレジット・ゲームスの外商担当だ。
独特の縦長い、ビルを思わせる帽子だかヘルメットだかよくわからないモノを被り、化学繊維の防護服を深く着込んだコーパス社員は幾ばくか――生粋の商人となるよう教育されている彼等には珍しい――機嫌悪そうな声で話す。
『アレは夢幻の類だ。少なくとも我々はそう認識していた……十年かそこら前まではな』
「……それで? そう言うって事は、既にコーパスの商品には」
『違う。一時期はアレ、WARFRAMEも商品にしようとはしていた。しかしTENNOの絆は強く、……ああ、これ以上は話せないな。タダでは、だが。ハハハ』
コーパスは生粋の商人であり、それ以上に金、特に次元世界にも最近流通し始めた先史時代の一般的な通貨である"クレジット"をもはや信奉していると言っても良い。大多数はどのような些細なモノでも、それがより大きなクレジットになると感じたならば気前よく渡すが、逆にクレジットにならないと感じたならば支払いを要求するのが常だ。
ナナももちろんその事を知っていたが、クレジットの手持ちはわずかだった。彼女への管理局、ひいては六課からの支払いはクレジットではなく、管理局の通貨によるものだったからだ。
「管理局機動六課に請求して。この件は司令官にも許可を取ってるから、公費で落ちるはず」
『ああ、ああ、なるほど、お役所お得意の口約束ね。払えないなんて言い訳は聞かないぞ。はず、なんて曖昧な言葉で騙されるほど我々コーパスは甘くない、目の前にクレジットを積まれるまでは話す事も無い』
「……もうすぐ大規模なロストロギアのオークションがあるから、それに入れるよう口利きしてみると言っても?」
『ロストロギア? ……先史文明、オロキン! いいだろう、そこまでしていただけるのでしたら信用いたしましょう。ヘヘヘ』
コーパスはクレジットと共に、先史文明、特にオロキンと呼ばれるVOIDに漂うある種のそれの遺産を信奉している。それらを手に入れるチャンスとなれば、それなり以上にクレジットを手放す価値も感じているのだ。
むろん、オロキン・アーティファクトがオークションに出てくる保証などないし、ただの一傭兵の口利きなどあってないようなものだ。しかしこの通信は六課の公式回線を一部使用しており、その事もあってはやとちり気味にあちらは確約されたものと思い込んだようだ。
むろん、いちいち訂正する必要も無ければ、してやる義理もない。
『WARFRAMEとTENNOについての情報でしたね、500万クレジットほど請求させていただきますがよろしいですか?』
なお入手しやすいが弱いと評判の装備一式ですら4万5千クレジット。つまり概ね100人分のフル装備に匹敵する価値となる。もっとも、質量兵器である以上管理世界ではさしたる価値を持たない装備たちであるし、未だに管理世界では一般通貨は管理局貨幣なので数値そのものに意味はないとも言える。
「400万」
『480万』
「430万」
『ふぅーむ。……まあ、仕方ないでしょう。お役所にも予算は限りがありますからな。450万』
「……通しておく」
『毎度ありがとうございます。ヘヘ、ヘヘヘ……』
守銭奴め、とつい言いそうにさせられるゴマすり笑いを見て、それでも何とかぐっと飲み込むナナ。
手元のコンソールで必要経費として計上したところ、まだクレジットを通貨として認めきることのできない管理局ゆえのガバ査定によって即座に通ってしまう。そして通った事を証明する電子文書を送信すると、文字通り初めから用意していたかのようにコーパス側からもデータが送信されてきた――ただしコーパス側のプロトコル(通信規約、異なるプロトコルで送信されると良くて文字化けなどを起こす)で。
『いやあ、翻訳代を削りましたからな。申し訳ない、ですが知る限りの情報は送信させていただきましたからね』
「十分。また何かあったらお願い」
『ええ、いつでもご連絡ください。たんまりクレジットを用意してね。ヘヘヘ……それでは失礼します、お客様』
通信が切れ、ふう、とナナは息を一つ吐いた。
本来ならこんな交渉事は彼女の仕事ではなく、上司に当たる八神司令官が行うべきものなのだ。連絡先と交渉のコツを教えて投げつけようとしたら、ユニゾンデバイスのリィンフォースツヴァイ共々の二人がかりの口撃で押し返されて予算上限をつけて投げ返されたので、こんな事をしていたわけだが。
パイロット戦であれ、タイタン戦であれ、それ以外の何かであっても、基本的には数は力である。人間の目は前にしか付いて無いので。
ともあれコンソールからデータのエンコードを指示しておき、出力待ちの間に格納庫に向かう事にする。ヘリが1台とタイタンが"2機"収まっているだけの、機動部隊としては及第どころか落第ものではあるのだが。――汎用可能かつ肉体に依存しないリソースを使える限りで使う、と言う考え方は果たして否定されるべきものなのだろうか。それとも肉体的リソースは自然回復するからそっちを酷使すべきだとでも?
途中、他のフォワードメンバーが管理外世界への遠征と言う名の休暇に行くと聞いて、自主的かつナナからも頼み込んで留めておいたスバルを連れてゆく事にした。――戦力を全部休暇に出すとは、もはや自殺行為であるという考えは傭兵だからこそか。
まあ、有効に利用させて貰う事にしたが。
実質的に一人だけ特別扱いする事になっている現状、その事は教導官も理解しているからかあまり強くは言われなかった。
「それで、わたしだけ置いて行かせたのは何でなんです?」
知らぬは本人のみなりけり。
ナナは足を止めず、かと言って聞かれて困る話でもないため通路を歩きつつ、ズレた返事をする。
「3年前、だっけ。4年前? 空港火災の時。 それから、主席卒業をした時」
「へっ?」
懐かしむように遠い目になるナナ。
そこに映るのは、燃え盛る建物。落下してくる建材、そして間一髪タイタンで身を挺して護った記憶。そして怯え竦む目が一転、憧れ煌めく目になったその瞬間。
その後の光線すらも、もはや見えていないほどの、純粋ゆえに盲目的となった姿。
「どっちも、見ていた。 あなたが火災の時にタイタンに何かを見たように、わたしもあなたに『次』を見て……それは教導官にも伝えてある」
「……へへ、えへへ。 ばれてました、か」
恥ずかし気に照れ笑いをする姿は、とうの昔に笑うと言う行為を攻撃的なものに昇華させていたナナにはとても尊く見える。思わず目を細めてしまっていた。
「1年。たった1年」
「ですね、ナナさんに師事してからまだ1年」
「私はあなたより幼いころに、同じ期間でパイロットになった。 体が出来ていて、心構えもできていて、ただ技術を学ぶだけのあなたなら……なれて当たり前の時間でもある」
「……はい」
「シミュレーションポットでも、既に並のパイロットは超えつつあるわ。 だから」
移動速度を重視するが故の職業病で早足に、しかし普段であるという意識からゆっくりと話している内、格納庫へと到着した。資材の他には輸送ヘリが一台、運送艇が一台、少数のM.A.R.V.I.N.(モノアイカメラと胸部に設置された感情表現モニターが特徴的な人間大の二足歩行型汎作業ロボット)、そしてタイタンが"二機"があるきりの物寂しいそこ。
二機ある内の一機は、スバルもナナも良く知るレイだ。しかしもう一機は、スバルの知らないタイタン。
モナークに似て、しかしロードアウトは今までに見た事のないもの。それだけはない。魔導師でもあるスバルだけは、そのシャーシの奥から魔力を感知していた。
「Factor Sorcery 1041。 私からあなたへのプレゼント」
「え、でも、そう言うのって」
驚いた様子の候補生に、パイロットは頷く。
「良くは無い。だからそのものはダメでもパーツは問題無いから、"1年かけて少しずつ贈与した"事にして、先月から組み立てていたの」
「何って裏ワザっ!?」
「そしてこれそのものの設計図は、管理局にも引き渡したモナーク級をベースにしている。 ……と言っても、かなりリワークしたけれど」
「リワークって。パイロットってそこまでできるのが普通……なわけないですよねえ」
「まあ、色々協力を受けているからね。 ……FS-1041はヴァンガード級を素体にした上で管理局法下での運用を視野に入れている、言うなれば"メディヴェル(Medieval/中衛)級"。
小型魔導炉を強引に詰め込む事で保護層がヴァンガードよりは少し薄くなったけれど、これそのものがインテリジェント・デバイスの一種として登録され、機能してる。だから管理局の、特に陸の一部との共同開発って事になって……試作機を押し付ける事になる」
しさくき。と純粋に目を輝かせる脳筋少女に、脳筋女はちょっとだけ頭痛を感じた。試作と言う事は無駄もアラも多く、素体が優れていても問題が幾らでも出てくると言う意味でもあると言う事を理解していないようだったからだ。
データコアを未だ埋め込まれていないメディヴェル級タイタンは、既に独自のロードアウトを装備させている。ソーサリー・ロードアウト、とナナはそれを名付けていた。
ローニン級のプライム個体が持つ細身の『ブロードソード』、モナーク級が持つ『XO-16』チェインガン、そして多数の動体対象にロックオン可能な『マルチターゲティングミサイル』が外から見える質量武装だ。この他にも背部の追加ブースターによって、限定的にだが立体的機動を可能とする『VTOLホバー』がオプショナル武装として使用可能である。
そう言った情報を一通り説明すると、スバルはようやく少々顔をしかめた。既存のタイタンロードアウトのいい所取りのように見えて、その実運用の幅が"広すぎる"事に気づいたからだ。
しかし、その後に続く言葉でそれはある程度払拭される。
「ソーサリー・ロードアウトのコアは攻撃用じゃないの。カートリッジ・コアと言って、使用する事で戦闘時に放出した魔力を再収束して魔導炉の出力を向上させ、全性能を一時的に向上させる物。 そしてこれそのものがデバイスでもある事から、全ての攻撃に"非殺傷設定が適用可能"……これが一番無駄な機能だけれどね」
「いやそれ一番重要ですよね!? 一体どうやって……って言うのは考えるだけ無駄なんだろうけど、なんだか複雑」
まあ、質量兵器が云々は非人道的だからと言う話だったのが、ここに来てその前提が覆されているのだからそれはそうかもしれない。とは言えまあ、アームドデバイスも質量兵器みたいなモンなのに非殺傷設定できているのだから、出力と式さえあればできない理由も無いのだ。
色々複雑そうに首をひねっているスバルに、ナナはタイタンのデータコアと、何かの見積もり書を手渡す。
「あの、これは?」
「撃破はされない前提でタイタンを1回出撃させるために必要な諸経費」
「……何か、わたしの給料の数か月分くらいの数字が……これって単位は」
「管理局の貨幣単位。 個人の所有物だから、個人で維持しようね」
そう言われて白目を剥いて茫然としているスバルの肩を、ナナはどこか粘着質な――強いて表音するならニチャァとした――表情を浮かべながら叩く。
「良いバイトなら教えてあげる。パイロットとしての経験も積めるけど……どうする?」
「……こっそり、お願いします」
正気を失った彼女の返事を聞くとナナは、偽名だけ用意しておいてね、とどこか楽しそうに伝えたのであった。
なおFS-1041のペットネームは特に考えてません。マッハでもキャリバーでもないんで、適当に考えなければ。
案などあれば、所以と共に感想欄にでもついでで気軽に投げてもらって大丈夫です(ただ規約的にはほぼ黒らしいから、感想もきちんとね!)。
案だけであればメッセージか何か……何が使えるんスかね。 ね?
チャプ4は長いです。
消耗戦と比べた時のFDくらいには長えっす。