ぼくのかんがえたわるいかんりきょくをヘイトする話 作:NonaIn
フロンティアディフェンスの実際の空気はタイタンフォール2を買ってプレイしてください。としか言い様が無い、非力な私を許してくれ……
N.D.75.5
FRONTIAR Planet"Garland" ;Area "Homestead" //Excavation MISSION -Easy-
五人も居ると立っていてすら狭く感じるVTOL輸送機の中、六人のパイロットが詰め込まれていた。内二人は義体化――パイロットはスペクター化と別称する――により性別不明、二人は男性、二人は女性。女性の内の一人は手に持ったEVA-8オートショットガンと、腰に提げたウィングマン・エリート、背負ったMGL、そして言い訳のように手首に接続されたグラップル・ワイヤーからも解る通り、必要以上にソワソワとしている初心者であった。
その様子を見て取ったのか、小隊司令をコンビで行っている男二人の内の片方、デービスと言う名の彼がそのソワソワしている少女の顔をヘルメットを挟んで覗き込んだ。
「よー新兵、お前童貞か? リラックスしろって、たっぷりイかせてやれよ」
「おいデービス、お嬢さんにソレは無いだろ。見ろよ、顔が真っ赤だぜ?」
「いやヘルメット被ってるから見えないだろドロズ。ちょっと緊張をほぐしてやろうとだな」
「お前にゃ後でよーく話をしておかないとな。 それよりパイロット、降下するぞ、さあ行け!」
コンビの相方、ドロズが輸送機の後部ハッチを開き、所定の降下ポイントに到達した事を知らせる。デービスも笑いながら近くに居たパイロット――片方は先の少女新兵であり、もう片方は義体化パイロット――の肩を叩き、送り出した。
ジャンプキットの補助によって通常ならパラシュートが無ければ地面の染みとなるような高度から無傷で着地する姿を眺めながら、ドロズがぼそりと相方のデービスにたずねる。
「なあドロズ。あの新兵のお嬢さん……エレクトラとか言ったっけか。生きて帰ってくると思うか?」
「お前らしくないなデービス。過ぎし日の残光(オールドデイズ・フラクション)たぁ言え戦略核と同等のエースクラスを落とした"タイフォンの傑物"の一人の愛弟子で、しかも本人が付いてるんだぞ?」
それもそうだな、と納得したような返事をすると、彼はすぐにいつも通りのオペレートに戻る。ハーヴェスターと呼ばれる発掘装置を遠隔で起動、パイロット達に端的にすべき事を二人で伝えてゆくのだ。
今回、ナナそしてエレクトラことスバルがバイトとして参加したのは、フロンティア宙域の星に存在する先史文明の遺産を発掘する作戦だ。それはフロンティアディフェンスと俗称され、魔力を持たぬがゆえに非公式の派遣であり、かつ先の大侵攻の際に切り捨てられた『管理局残留艦隊兵』が目の敵としている活動でもあった。
残留艦隊兵は終戦通達をされる事も無く廉価タイタンすら運用しだす海賊となり下がり、どちらの陣営からも賞金を懸けられているので、ある意味では被害者とも言えなくはない。――その活動のために略奪と殺戮を繰り広げていなければだったが。
それらの駆除と、希少遺物(時にはロストロギア認定される)の発掘のためにパイロットはたった四人で艦ひとつ分の人員を相手に立ち回る事になるのだ。残留艦隊による強制徴兵とミリシア艦の強奪で、艦隊そのものの懸賞金は年々上がり続けている事からも解るように、管理局の上が暴走しているように下も暴走している訳だが。それ自体はナナにはこれっぽっちも関係無く、六課に囲われているスバルらにもあまり関係は無い。
作戦開始と同時に、ナナは巨大な狙撃"砲"とも言えるクレーバーAPスナイパーライフルを手に無言で走り出した。スバル――もといエレクトラも、EVA-8を手に逆方向へ駆け出す。
今回の作戦領域となる"自作農場"エリアは食料を得るために残留艦隊が住民を皆殺しにして接収した土地だ。農場、と付くだけあってその大半は見通しの良い平地であり、残りは建物と高台、そして疎らな木くらいしかない全体的に平坦で見通しの良い土地である。
作戦前にナナがエレクトラに指示したのはただふたつ、魔法は使うな、装備を競うな装備の持ち味をイカせ、と言う事のみであった。この二つから導き出される結論として、エレクトラが走ってゆく先は小狭い崖道を裏に持つ、扉の壊れた資材倉庫の建っている高台となった。ショットガンは総じて射程が短く、それを生かすためには障害物が多く必要だからだ。
――なお、既に非殺傷に拘る精神はシミュレーションポッドでの殺人訓練で完膚無きまでに粉々にされている。それは惑星ガーランドやその周辺のように、魔力素の極めて薄い空間(ガーランドではその代りにか人魂菌/"微かな存在"が場を充たしているがそれ自体は共存しうる)に於いては質量兵器を運用しなければならない以上は必須とも言えた。
そもそも管理局武装局員であるならば、武装している以上はそれがヒトを殺す道具であると認識しなければならないのだが。どうしてこうも魔法という便利ツールはヒトの認識をずらして……と考えた所でナナは小さく頭を振って息を一つ吐き、思考を狙撃と状況確認へ研ぎ澄ます。
『ドロップポッドの特性を検出。第一ウェーブが来るぞ、準備はいいか!』
『いいに決まってるだろ、なあ皆!』
まったく、6-4だったころからデービスとドロズの軽妙な掛け合いの会話は変わっていない。その頃を知らないパイロットでさえも、思わずヘルメットの中で小さく噴き出しているのが通信越しに聞こえた。
しかし艦隊兵はだからと言って待ってくれる訳では無い。ミリシアの戦力が『正当な接収によって管理されている地域』に踏み込んだからなのか、歩兵やスペクター(戦闘用の機械歩兵)を投下するために使うドロップポッドがもはやにわか雨の如くに自作農場のあちこちに降り注いだ。
タイタンは彼等にとっても希少であり、こちらにとっても貴重だ。ゆえに、発掘ミッションことフロンティアディフェンスにおいて第一ウェーブは必ず歩兵戦となる。しかしそれは逆説的に、エレクトラの敵撃破童貞、いや処女を喪失する事を意味する。まあ血も出るし間違いではあるまい。
しかしそのショックを少しでも減らす事はできる。
最初の一人さえ乗り越えてしまえば、後はどうとでもなる。身分を隠して、そして隠した事を気付かれないよう宿泊や各施設の入場履歴を作ってまで参加させたアルバイトだが、これもやはりパイロットの実地訓練なのだ。訓練でなければ一人で敵地へ突入させていた。
にわか雨の如く降り注ぎ、氷柱の如く地面に突き刺さったドロップポッドからわらわらとという表現が生温い数の有人無人を問わぬ歩兵があらわれ、戦場に荒みきり自由な思考を奪われた独特の狂った目でハーヴェスターへと規律を保って殺到する。その数、一瞬を切り取ったとて30を下らない。多ければ50、ウェーブ内であれば総数100を超える。
魔導師どうしの魔法戦闘、非殺傷攻撃での戦闘とは全く違う。
その30が全て、数発当たれば運が"悪くて"戦闘不能、幸運ならば苦痛を感じる間も無く即死させる武器を手に、恐怖を薬と調教で押し込め、盲目的に歩み寄ってくる。
それはエレクトラもといスバルには、遠目に見ただけでも恐ろしく感じられるモノであったが――ほかのパイロットは何も感じていないかのように撃ち殺し、粉微塵にし、時に爆殺、感電死、パルスブレードによる脳シェイクなどなどバリエーション豊かな12種類のフレーバーで味付けをしていた。
狂っている。あちらも、こちらも。
戦場に確たる芯を持たぬまま憧れのみで堕ち、恐怖と畏敬に塗れた魔導師の感想はただそれだけだった。
『エレクトラ』
「はい、ナナさん」
『獣よ。あれは、ヒトの形を持ったままの、心を解さぬ獣。 食っていくために獣を狩る事は、罪?』
「……いいえ。 でも言わせて」
幾ばくか、エレクトラの緊張は解れた。まるで催眠のようにスッと入り込むタイミングと言う物を理解しているのだろう。だがスバルとしては言わなければならなかった。ほんのわずかに、ヘルメットの中で微笑みをたたえて。
「この外道」
四人一組で踏み込んできた歩兵におおまかに照準を合わせ、腰だめに三度引き金を引いた。運悪く生きのこった一人をグラップルで引き寄せ、おおお、と言葉ならぬ咆哮と共に次撃を考えぬ拳を叩き込む。パイロット神拳は対人間において一撃必殺。
これで、たったの$40。四人の――ちがう、四匹の命が。
きっと先の一言が無ければ、考え過ぎて吐いていただろうけれど。そんな暇も時間も無い今は、外道そのものの言葉が支えとなっていた。
ふとレーダーを見れば、赤い光点が納屋の屋上に陣取っていた。しかもヘルメットのAR表示によれば、花瓶のようなマーク――迫撃砲持ちであると解る。全く休む暇も時間も無い、すぐに武器を掴んだまま駆除に向かった。
幸いにか不幸にか、そうして忙しくハーヴェスターを守るためにカラダを動かしていれば、1ウェーブなどすぐに過ぎてゆくものだ。
ウェーブとウェーブの合間に、フロンティアディフェンスでは装備や防御装置を購入できる。とはいえエレクトラは殆ど稼げなかったため、強化バッテリーを一つ購入したきりだが。
『いいかよく聞け、お前達のタイタンの準備が出来た!』
『ああ出来た。要請してくれ!』
腰の後ろ、ジャンプキットの上に黄色く発光する強化バッテリーを背負ったまま、他のタイタンフォール予測線とかぶらない位置に視線を向ける。そして、タイタンフォールを要請した。
はるか空から落ちてくる。
それは星。それは鉄。それは死。
ただ一人、己の相棒となる存在のためだけに宇宙より来る力。
『お待たせしました、パイロット。RD-5013、スタンバイ・レディ』
『フォールシーケンス全行程成功。FS-1041、搭乗待機』
ナナの相棒たるレイは、今回はリージョンロードアウトを適用している。プレデターキャノンと呼ばれる重機関砲の使用のみに特化した、本来なら重量型のタイタンの装備だ。
一方でエレクトラことスバルの乗機、FS-1041のロードアウトはデフォルトのソーサリー・ロードアウトだ。ヴァンガード級よりも二門多いベクタースラスターにより、限定条件下であれば短期空戦も可能な特殊タイタン。AIボイスは若い男性の声質である。
他の二人のパイロットのタイタンはトーン級と、スコーチ級だった。トーン級は音響等による索敵とロックオンしてからの誘導ミサイル射撃を得手とする中量型、スコーチ級はテルミットを操りある程度の広さの地面を灼熱地帯へと変えてしまう重量型。
比較的近接攻撃ができるのは、現状FS-1041のみとなる。
ナナはそれにすぐ気づいた。エレクトラもそれを少し考えて理解し、誰よりも前へ出てゆく。その姿に少しばかりナナは心配をしたものだが、すぐに考えを改めて足止めに使う放電地雷ことアークトラップを敵の予測通路に仕掛けた。
一方、エレクトラはタイタンのコクピットで震えていた。いくら対人戦は経験したし、"殺し"も経験してしまったとは言え、自分ではない躯体で自分より大きい相手と渡り合う、と言う事は恐怖を抱くものだ。
『パイロット。極度の緊張状態は戦闘効率に悪影響を及ぼす可能性があります。深呼吸を推奨』
どこか機械的で、平坦なFS-1041の言葉。エレクトラとて仮想空間で幾体かのタイタンを相手に戦い、生き延びる訓練はしている。しかしこれは本番で、死ねばそこまでなのだ。スゥーッ、ハァーッ!と表音すべき出所不明の独特の深呼吸で何とか精神と肉体を抑え付け、既に続々と降り始めたタイタンの雨を見やる。
敵タイタンは幸いにも、比較的簡易なAIによって制御されただけの、フレーム強度までもケチった『廉価な』タイタンだ。戦闘用とは言え、使える機能は著しく制限されている。
「勝てる。……行くよ!」
『了解、ポジティブな思考は生存に優位です。XO-16発射準備』
どの距離でも、タイタン戦闘で重要なのは不意打ちとクロスファイアである。パイロット戦ではその状態でも何等かの手で抜けられる事は多いが、タイタン戦であればそうはいかない。一発の弾丸で足りないなら十発百発と撃つのだ。
進路上から少し離れた物陰に身を隠しつつ、ありったけの武装を叩き込む。正面はリージョン・ロードアウトのガンシールドによって多少なりとも引き受けられるナナとレイに任せて、気を引きつつ火力を当てれば良い。
幾度となく魔導師としての戦術を否定するかのように仮想の十字砲火に晒された、パイロットとしてのスバルことエレクトラが得た、数少ない戦術。
『敵戦力を解析。歩兵戦力、プラズマドローン、クロークドローン、廉価スコーチ級、廉価リージョン級、廉価トーン級、廉価ノーススター級、廉価ローニン級を確認』
「ほぼ全種類かぁ。でも、廉価は耐久力が低いって聞いたし何とか」
『警告。廉価リージョン級はニュークリアタイプです。危篤状態、あるいは任意でニュークリア・イジェクトにより大爆発を発生』
「ち、近づかなければ」
『警告。廉価ローニン級はアークタイプです。危篤状態に陥るまで、周囲にアーク放電を常時行います』
「それも近づかなきゃいいんでしょ?」
『警告。廉価トーン級は迫撃砲タイプです。遠距離からハーヴェスターに砲撃を加えるため、手早く撃破することを推奨』
「近づいて叩き込めばいいのね!?」
『警告。クロークドローンにより、その直下の敵戦力が視認及び視覚に基づくMTMLロックオンが不能になります。ニュークリアタイプ、アークタイプのタイタンに特に警戒を』
「どうしろっていうのよ!!」
『腕の見せ所です、パイロット。 ……ストレス増加を検知』
「誰のせいだと思ってんのよおぉ!!?」
少なくとも、先ほどよりはガチガチでは無くなった。むしろ良い感じにいつも通りまであり得る。
が、どちらもそんな意図で会話をしていたわけではない。FS-1041はただ情報を開示し返答をしているだけだし、スバルは特に何も考えていない。
しかしまあ何にせよ、そうして十分解れた上での初陣はとても楽なものだった。特に語る事が無い程度には、だ。
ちなみに報酬として、リリカル勢的にはとんでもない代物が出たようですが、それはまた次回以降で。
少なくとも原作が形無しにはなる、だろうなぁ。Prime版装備ほしす。