カルデアに生き延びました。   作:ソン

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超スランプかつ難産でした……。短くて申し訳ない。
練習とモチベ維持のために次回はとある作品のクロスオーバーみたいな、感じにしようかなと思ってます。ちなみに何の作品にするかは今話に単語出てます。原作でもちゃんとFateとコラボしてるので、きっと大丈夫……な、筈。


ある女の独り言

 

 

 

 

 今日もカルデアは忙しい。突然現れた特異点の特定と解決。これに奔走するだけで、気が付けば一週間があっという間に立っている。

 そして無論サーヴァントとの関係。これもマスターにとって大切なことだ。ただ、その、俺の一件はちょっと変わっていて……。

 

「マ・ス・タ・ぁ?」

「うわ、びっくりした」

 

 後ろから急に腕を伸ばして抱き着いてきたリリスに、思わず声を上げてしまう。どうにも未だに彼女の絡みに慣れない。と言うかボディタッチが多すぎるのだ。しかも結構きわどいことが多くて目をそらすこともしばしば。

 そんな彼女との出会いはつい先日の事。

 突然、召喚サークルが起動して呼び出されるや否や呆然と俺の事をマスターと呼んできたのだ。それからいきなり泣き出して困ったものである。

 おかげで彼女やアルトリア、ジャンヌに事情を聞かれるのだから俺もわからない。何やらアーチャー・インフェルノやカルナ、メイヴ辺りは事情が分かったような様子でいたのだけれど。

 今日なんて起きたら布団の中に潜り込んでいたのだから本気でビビった。下手なホラー映画より怖かった。立香の恐怖が分かった。

 

「んふー、いいじゃん別に減るもんじゃないしー」

「ちょっ、距離が近い……! 頬ずりは恥ずかしいって。ほら、オルタ達がすっごい目で見てるから……!」

「ほれほれー、実はうれしいんだろー。顔に書いてあるぞー」

「あっ、いやっ、やめっ、どこ触って……!」

「あの着物女と行くとこまで行ってるんでしょー? なら、アテシだって遠慮は無しだよー?」

 

 ニヤニヤと、彼女の可愛らしい顔が至近距離まで迫る。ついでにオルタ達が武装までしだしたが、リリスの使い魔にあしらわれて動けないでいる。なんだこれ、薄い本の導入か。

 

「うふふ、呼ばれた気がしますわ」

「うわ、ビックリした。マスター、何この女? なんか尼っぽい見た目してるけど」

「だ、だれか何とかしてくれ……!」

 

 いや、本当に誰か彼女に距離感を教えてあげてください。

 俺の心が持ちません。

 

 

 

「何それ、俺への嫌味か何かかアラン」

「いや、そういう訳じゃないんだけど……」

 

 ブスーと言わんばかりのムニエルに相談してみる。

 こういう時、頼れるのは同僚だ。例えばダストンさんとか、セレシェイラさんとか。

 

「まあ、確かに。あの距離感は異常だよなぁ。だからと言って突き放さないお前も優しいとは思うけど」

「いや、だって自分をマスターって呼んでくれたのに、そんな事出来る訳ないって」

「あー、そういう所なんだろうなぁ。お前のタラシって」

「???」

「わかってないならそれでいいぜ。……まぁ、慣れるしかないんじゃないか?」

「そういうもんなのかなぁ」

 

 この前、立香が清姫に締め付けられているのは見たけどさすがにあんな目にはなりたくない。

 ただAチームの面々はみんな、関わり方がうまい。サーヴァントと多く契約していないのは多いと思うけれど。

 

「だって、ほら。キリシュタリアのやつもさ、カイニスと訓練してひーひー言ってたぜ」

「え、あの人結構ガリガリじゃなかったっけ。マントの下見せてもらってビックリした記憶あるんだけど」

「おいそれ、あんまり本人の前で言うなよ? 結構気にしてるらしいぞ」

「マジかよ」

 

 

 

 

「マスター、いるぅ? って不在かー」

 

 いつものようにマスターを弄りまわしてやろうか、と考えて入ったらもぬけの殻。

 けど、これは慣れた事。むしろカルデアのマスターは多忙なのだ。部屋でゴロゴロしている方が珍しい。

 分かっている。分かっていた。だから、何も気にしなくてよい。

 

「あー、そっか。何か変な特異点に行くって言ってたっけ? 夢の地ピノコニー、とか言ってたかな」

 

 案の定、護衛のサーヴァントは全員適正が無いと強制的に離脱させられ特異点に一人で放り出される事になったらしい。あの着物女まで弾かれたというのだから、相当だ。

 けれど私のマスターだ。きっとうまくやる。何の心配もない。誰かを巻き込んで、誰かに巻き込まれて。それで誰かを助けて、誰かに助けられて。そうやって困難を乗り越えていって。

 でも、傍に私がいられない事はちょっと悔しい。独り占め出来たらどれだけいいだろう。貴方の声を、私だけのものにしたいと思ってしまう。忘れないように。乾かない思い出を。

 

「あーあ、暇だなぁ」

 

 のほほんとして、どこか頼りなくて、優しくて。でも引けない時には違った顔を見せて。強大な相手に立ち向かっていく勇気を持った、たった一人の私のマスター。

 結局、彼を救えなかった。繰り返される死と運命に対して、私は穏やかな最期を選んだ。他の英雄なら、何を選ぶのだろうか。

 私は英雄ではなく、悪魔だ。勇ましく、なんて解決はきっと初めから無かった。

 

「……らしくなかったかな」

 

 他の子ならもっと上手くやれただろうか。他のサーヴァントなら彼を救えただろうか。

 思ってしまう。考えてしまう。

 ずっと思ってしまう。ずっと考えてしまう。

 思考の堂々巡り。いたちごっこ。感情のたらいまわし。我ながら面倒くさい女だなって思う。

 

「ダメだ、ダメ。ラジオでもつけちゃおう」

『えー、では今回の曲はcolorfulです。どうぞ』

 

 それは儚い恋の歌。

 

「へぇ、悪くないじゃん。今度マスターに聞かせてあげようかな」

 

 まるであの日々を生きていた私とマスターを思い出してしまって。

 

「……マスターの前で歌ってやろうかな」

 

 思わず涙が零れてしまって。それを隠すように、座り込んだ。

 

「……会いたいなぁ、マスター」

 

 いつになったら、帰ってくるのかな。

 貴方から二度と離れたりはしないから。もういなくならないでね、私のマスター。

 

 

 




執筆BGM

岸田教団&the明星ロケッツ「colorful」 
ヨルシカ「パレード」
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