【改正前】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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※ユリちゃん少なめ、アブノーマリティもはや出てこない。つまり、ちょっとっていうか結構つまらない回。薄味です。今回のプロローグなので多目に見ていただけると……!
そのくせ長くなって難産でした(´^p^`)本当遅くなってすみません……。










Little Helper_1

俺の家族の話をすると、皆顔を顰めた。そして同情の目を向けられる。いつもの話。

 

途中までは普通の家庭だった。時に厳しいがいつも笑顔の母と、いつも腹を空かせて俺達の元へ帰ってくる父。そしてユージーン、と優しく名前を呼ばれた俺。

ここまでで別段話すことは無い。だって普通聞きたいだろうか。休日に行った水族館の話とか、公園でやったフリスビーとか、ほかの家族の何ら変わりない日常の話なんて興味あるだろうか。

だから俺はいつもここまではサラッと話すし、相手もサラッと聞き流す。

そしてここからが本題だ、と声のトーンを少し下げるのだ。出だしは大抵、『でも父は変わってしまった』。

 

そう。でも父は変わってしまった。

 

それは父の転職からはじまる。

転職の理由なんてどこにでもあるようなものだった。もっと給料と休みが欲しくなっただけ。ただそれだけ。

父が新たに始めた仕事は機械をいじる技術者だった。

工場務めになった、機械をいじるのになんの経験も技術もない父。だというのに給与が上がるなんて今思えば不自然である。

最初の違和感は、ネジだ。

玄関で靴を脱ぐ父。そのポケットからカツン、と落ちたのは艶めいた一本のネジだった。

それを俺が拾おうとした。しかしそれは叶わず、奪うように父はそれを拾った。

驚いた俺が父の顔を見ると、俺なんて見ていなかった。ただ恍惚の表情で、ネジを見つめた。そして宝物を隠すように、またポケットに戻した。

 

そこからだ。日に日に態度や雰囲気が変わっていくのがわかった。

帰る時間は遅くなり、食事はろくに食べなくなる。

それだけならよかったのだが。家にいる時必ず、うっとりと何か紙の冊子を見つめていた。

父の書斎を除くと、必ず父はそうしていた。愛しい恋人からの手紙を読むかのように、時折甘ったるいため息をはいてその冊子に向かっていた。

その表情は不気味で、気持ち悪かった。恐怖を感じさせる違和感があった。

透明な水に、一滴の墨を垂らすように。

広がる違和感は家庭に亀裂を産む。

裕福になる暮らしと比例して、家には怒鳴り声が増えた。

母はそんな父を泣いて責めた。笑顔の母からは想像つかないキンキンする声でただひたすらに父を責めた。父はそんな母をぼんやりと見ている。興味のないコマーシャルを聞き流すように、どうでもいいようだった。

 

これらはまだ俺が、小学二年生位の時のことだ。

 

父がいなくても漂う不穏な家の空気が嫌いで俺はよく外に出かけた。友達が遊べる時はみんなと遊んだし、もし一人でも携帯ゲーム片手に公園にでも遊びに行っていた。

いかに上手く家から逃げる事を考えるのが、毎日だった。

ある日、家の廊下で紙の冊子を拾う。

よれたそれの正体に気がついた時、俺は小さく悲鳴をあげて、それを思わず放り投げた。

それは父がいつも読んでいるものだった。

常に父のそばにあるはずのそれがなぜそこにあったのかわからない。

それは俺にとって恐怖の対象だった。

そして同時に、好奇心の対象でもあった。

一ページ目を、そっと開く。そこに書いてあった文字を俺は一生忘れないと思うし、事実こうして大人になった今も、はっきりと一字一句間違えずに覚えている。

 

〝 革命的なロボットが、掃除に、料理に、防犯まで、〟

〝 お宅の最高の住み心地を、安全・安心をお助けします!〟

 

これを見た時、はぁ?と間抜けな声を出した。

ペラペラと紙をめくると、そこには〝使用上の注意〟〝初期起動の仕方〟〝故障かな?と思ったら〟などなど。

ただの、何かの説明書だった。

拍子抜けした。

それと同時に、父をより気持ち悪く思った。

ずっとこんなものを読んで、何よりも大切にしていたのか。

母を、俺を蔑ろにして、こんなもの。

湧き出た怒りは手に伝わって、説明書を強く握った。ぐしゃ、と紙が潰れる音。そこでおい、と声をかけられた。

 

『と……父さん。』

『なにをしてる。』

 

父は冷たい声で、俺から説明書を奪った。

驚いて力の抜けた俺の手から簡単に抜けるそれ。しかし潰れた部分のシワは直ることなく、父はそれに顔を顰めて指で伸ばしていく。

明らかに怒っている父に、俺の肝は冷えていった。怒鳴られるか、殴られるか。はたまた両方か。

無言で説明書を撫でる父にかける言葉を探した。俺は自身でもわかるくらい、わざとらしい笑みを浮かべてこう言ったのだ。

 

『いい、説明書だね。』

 

そこで父の動きが止まる。

それは冗談のつもりだった。昔の父ならきっと笑ってくれる、馬鹿みたいなジョーク。

場が少しでも和めばなんて思って。

父は俺の肩を強く掴んだ。痛いっ、と声を上げた。

しかし父はお構い無しに俺の顔を覗き込んで、満面の笑みを見せた。久々に見た、笑顔だった。

 

『そうだろう!素晴らしいだろう!』

 

父は聞いてもないのにその説明書の、厳密に言えば説明書に書かれている機械の話をしだした。

興奮で勢いのついた父の声は、俺の顔に何度も唾を飛ばす。汚くて避けたいのに肩を掴む手が強くて叶わなかった。

次第に俺はその話に苛立ちを感じはじめる。だから意地悪を含めてこう言ってやった。

 

『そんなに凄いなら、その機械の写真でもとってきてよ。』

 

俺の言葉に父はなんていいアイデアなんだと跳ねて喜んだ。比喩ではない。本当に廊下をドスドスと跳ねた。

気持ち悪い。

 

さて、ここまでが起承転結の転まで。

ここからは結末。これらが父との最後の思い出となる。

というのも、次の日父は最寄り駅から何駅も行った先の山で、自殺したからだ。

いつも通り仕事に出かけた父の死を聞いたのは、その日の夕方だった。

発見が早かったのは、たまたまその山に何か用のあった男女が通報してくれたからである。

その男女の用は、深掘りはしない。付け足しておくならその山は割と、自殺の名所だ。

大事な用があったであろう男女がなぜ父のことを通報してくれたのか?それは父の死に方が異常だったからだ。

 

お腹が、ぱっくりと割れていた。

綺麗な切り口で、真っ直ぐ腹が真ん中で切られていた。魚を調理する時、腹に包丁をいれる。それと同じような感じ。

そして中身はぐちゃぐちゃにかき混ぜられていて、見れたものではなかったらしい。身元確認で呼ばれた時も、顔以外は全て布で包まれていた。

見ない方がいいですよ、と警察は顔色悪く言った。少し離れたところで立っている他の警察が内緒話をしている。『あれじゃあ、ミキサーにかけられたスムージーだよな。』耳のいい俺には聞こえてしまうのだけれど。

 

母は泣いた。

なんだかんだ、母は父を愛していたのだ。

そして許さないと叫んだ。

父の状態から、母も警察も殺人事件だと決めつけた。

でも俺は知っている。父は自殺したのだ。俺だけが、知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユージーンさんの話に、開いた口が塞がらない。

 

「えっと……それは、なにかのホラーですか……?」

「はは、そう聞こえるよね?この話で一本映画つくれそうだし。ノンフィクションで、どこかの監督にでも提案してみようかなぁ。」

 

軽く笑うユージーンさん。これは冗談だろう。

なら、今までの話も冗談だろうか。冗談であって欲しい。こんな話。

なんでこんな話になったのか。私はユージーンさんに、家族の話を聞いただけだ。ホラーを一つ頼んだ覚えはない。

 

「信じなくてもいいけど、本当の話だよ。しかも奇妙なことにね、父が働いてた場所、どこかわからないんだ。」

「えっ。」

「社員証に記載された企業も、会社で入ってた保険も全部存在しないものだった。不思議だよね。それなのに給料はその会社名義で毎月入っていたんだ。最初は裏企業……なんて警察は騒いでたけど、なーんにも出てこない。」

「そ、それ……嘘ですよね? 」

「いや本当。俺は思うんだけどさ、きっとあの山が父の会社だったんだよなぁ。あそこになんか存在してたんだと思うよ。だから父はあの日もあそこに行ったんだと思う。毎日行ってたのと同じようにさ。」

「……ユージーンさんは、なんでお父さんが自殺だったって思うんですか。」

「あぁ、実はさ、俺父さんが死ぬ間際に電話してたんだよね。父さんと。その履歴も……なんでか残ってなかったけど。」

「電話?」

「そう、その内容がさ、……あれ、あの人もしかしてアネッサ?」

「え?」

 

ユージーンさんが廊下の先を指さす。

それに従って私も視線を動かすと、少し距離があるが確かにアネッサさんだった。

アネッサさんは私達の方を見て、気がついたのかこちらに向かってくる。結構な速度で、早歩きをしているようだった。

 

「やぁアネッサ、さっきぶりだね。」

「人を指ささないの!ユージーン!!」

 

ぱちんっ、とユージーンの手をアネッサさんが叩く。

ユージーンさんは軽く笑って、ごめんごめんと謝った。アネッサさんは少し不機嫌にため息をつく。

 

「アネッサさんとユージーンさんって……知り合いなんですか……? 」

「あ……ユリさん。久しぶりね。体調はもう大丈夫?ユージーンとは前同じ部署で働いていたの。」

「あ、そうだったんですね。」

「ユリさんこそ、ユージーンと知り合いなんて意外ね。」

「下層に作業しに行くことがあって、ユージーンさんとはそこで知り合ったんです。」

「下層に!?大丈夫だったの!?あそこはユリさんみたいな子がいくとこじゃ……って……今更、ね。……無事で、良かったわ。」

 

アネッサさんは悲しそうに私を見つめる。

私はそれに対してどう反応していいかわからない。ただ安心させることができるように、笑うしか出来なかった。

 

「久しぶりに会えたからもう少し話したいのだけど……ごめんなさい、やることがあるから私行くわね。また今度ちゃんと話しましょうね、ユリさん。」

「あっ、すみません引き止めちゃって……。ぜひまたお話しましょうね!」

「ユージーンもまたね。まぁ後で借り物を返しに行くから……。すぐ会えるでしょうけど。」

「あぁ、またな。……気をつけろよアネッサ。死にはしないだろうけど。」

「……貴方のそういうところ、怖いわ。」

 

アネッサさんは軽く手を振って、私達と別れた。

ユージーンさんは暫くアネッサさんの背中を見送っていた。

私もそれに付き合う。アネッサさんの背中を見ながら、私はなんだか不思議な感覚に包まれていた。

アネッサさん、どこか雰囲気変わったなぁ。

優しい所も、穏やかな感じも私の知るアネッサさんだったのに。今日は追い詰めたような、深刻な雰囲気を感じた。

何か、あったのだろうか。考えすぎだといいのだけれど。

 

「アネッサは優しいよね。」

「えっ、あっ、はい。アネッサさん、優しいです。」

「……少し心配になるよ。」

「え……。」

「でもまぁ、前よりはマシかな。前は少しここのことを信じすぎてたからね。」

「それ、どういうことですか?」

 

意味ありげなユージーンさんの言葉に私は眉間にシワをよせる。

なんだか不穏な言葉だ。けれどそれに反して、ユージーンさんは明るく笑った。

 

「ユリさん、さっきの話しさ、会社には内緒にしててね。」

「え?」

「別に隠してないんだけどさ。実際ここの関係者以外には家族のこと聞かれたら話してたし。でも会社にはあんまり知られたくないんだよね。」

「えっと……なら、なんで私に話してくれたんですか?」

 

それは最初からあった疑問だ。私とユージーンさんは知り合ったばかり。

それなのにどうして、家族の死の話なんてしてくれたのだろう。

 

「君の体質に興味があったからかな。」

「体質?」

「そう。アブノーマリティに好かれる、その体質。能力なのかな?どっちでもいいけど、いつか力を借りたいと思ってる。」

 

ユージーンさんは私を真っ直ぐ見つめて、笑顔のまま表情を変えない。

笑顔なのに、どこか淡々としているその様子が怖くて私は目を背ける。

 

「父が執着していた機械の名前は〝オールアラウンドヘルパー〟。中層にいるアブノーマリティ、〝リトルヘルパー〟の別称だよ。」

「え……!?」

 

ユージーンさんの言葉に私は顔を上げた。ユージーンさんは私の反応を可笑しげに笑う。

この人は今、なんと言った?

つまりそれは、彼のお父さんの死は、アブノーマリティのせいということ?

ぐるぐると回る頭はまだ言葉の意味を理解しきれない。

ユージーンさんは笑って私に手を伸ばしてきた。頭にその手が乗る。撫でるような仕草で、そのまま手は耳におりてくる。

そして耳に触れた時、……いや、ユージーンさんが触れたのは耳ではない。私のインカムだ。

ピピッ、と音がした。私のインカムから。

それに驚いて私は耳を抑える。これは、どういうことだ。

 

「内緒、だよ。」

 

ユージーンさんは人差し指を私に立ててみせた。

そんなユージーンさんに私は恐怖した。この人は、何をしたの。

 

どうして、いつから。

インカムの電源は、切れていたのだ。

 

先程のは起動音。

でも私が知る限り、インカムの電源は会社に管理されている。電源のオンオフはエージェントは出来ないとダニーさんから教えられていた。

それなのに、ユージーンさん今何をした?

ユージーンさんが触れるまで、インカムの電源は切れていたのだろう。

これを偶然と言うには都合がよすぎる。ユージーンさんの秘密話をインカムは拾わなかったのだ。

ユージーンさんが、やったのだ。どうやって?

聞きたい。ユージーンさんに何をしたのか問い詰めたい。

けれどユージーンさんへの恐怖が、私をその場から動けなくする。

ユージーンさんは先に進んでいってしまう。私は置いていかれたまま、ただ呆然と遠のく背中を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アネッサが管理人室の扉をノックしたのは、それが初めてのことだった。

管理人室の場所は知っていたが、入ったことは無い。基本的にここは一般のエージェントにとって無縁に近い場所だった。

一部エージェントは直接管理人から呼ばれることもあるが、通常管理人との接点はタブレットからの指示のみだ。

しかしアネッサは今日管理人から呼び出されたわけではなかった。彼女は管理人に直訴しにきたのだ。

会社への不信感は、ユリのエンサイクロペディアの件から膨らんでいくばかりだ。

妖精の祭典の事件でユリが倒れた時に知った、会社のユリへの対応。

ダニーはあの時私にユリさんのタブレットを渡してこう言った。

 

『アネッサさん、ユリさんのタブレット直せませんか?こういうの得意でしょう?何とかなりませんかね?』

『え……?でも、管理人に言いに行くんじゃ……?』

『そのつもりでしたが……よく考えると、無駄だと気がついたんです。恐らく管理人はユリさんのエンサイクロペディアが使えないことを把握してないでしょう。』

『え?それならよけい報告するべきですよね?本当にただの端末エラーかもしれないですし……。』

『いや……、恐らくやったのはあのAIだ……。』

『AI……?』

『……とりあえず、やってみてくれませんか。もし見つかっても何とかしてみせるので。ついでに何かわかったら、教えてください。』

『何かって、なんですか……!?』

 

その時、半ば無理矢理ユリさんのタブレット端末を弄らされた。

まず初めに会社にタブレットを勝手に弄ってるのを悟られないよう、回線を切断する。

ここの会社はさすが大企業と言うべきか、普通のネット回線ではなくこの研究所のみで使用する回線を独自に作り上げている。

そこを切らないと、何をしてるか会社に筒抜けだ。複雑なセキュリティを抜けて、なんとか切断に成功する。

ここからは簡単。タブレットにインストールされているエンサイクロペディアの情報を見るだけ。正常に起動してない理由なんて、大抵インストールが上手くいってないか、回線に繋がるのを拒否してるかのどちらかだ。勿論、ほかの理由もあるけれど。

正直乗り気ではなかった。こういうのは確かに得意だ。パソコン系は専門分野で、プログラムも弄るのも好き。

けれど会社のものを勝手に弄るのはあまりにもリスクが大きい。大人しく会社に提示して修理するのが一番だと、その時は思っていたのだが。

 

『何よ……これ。』

 

中身を見て驚いた。

ユリさんの端末に入っていたのは、エンサイクロペディアではない。

ただの、テキストフォルダだ。

〝未実装〟と表示されるだけの、テキストフォルダ。

そのフォルダのアイコンが、エンサイクロペディアと全く同じと言うだけ。

それだけの、テキスト。アプリケーションでもなんでもない。

これを見て混乱した。何よこれ。エラーなんて起こるはずない。だってこれはただのテキスト。エンサイクロペディアに繋がるはずもない。

どうしてこんなフォルダが存在してるの?

こんな、ただの飾りみたいなフォルダ。

 

『……意図的に、作られたとしか……。』

 

そこで隣にいたダニーさんを思い出す。

咄嗟に彼を見ると、彼は眉間に皺を寄せていた。そして私の言葉に頷いた。その通り、と言われているように。

 

会社を疑いたくなんてなかったが、追い打ちをかけるように管理人の指示の仕方が変わった。

前までは納得のいく作業指示だったのが最近では明らかに不適切なものが多い。

アネッサの部下も、死亡率が増えた。

新人が集まるコントロールチームは新人を慣れさせるために比較的安全なアブノーマリティへの作業が多い。

なので死ぬエージェントはほとんどいないのだ。その後危ないチームに異動になって、死ぬエージェントは多いけれど。

そのコントロールチームで死ぬエージェントが増えたとなると、別のチームはより多くなったのだろう。

コントロールチームと言えどアネッサは研究所の中では古株の方だ。パソコンの腕を買われてコントロールチームに残されているだけ。

先に働いている先輩として、そしてコントロールチームを任されている身として、エージェント達への不適切な作業指示は見逃せない。

管理人室からノックの返事はない。

アネッサは息を深く吐いて、覚悟を決める。使い慣れていない眼鏡をポケットから取り出してかける。

これは知り合いから借りたもので、お守りのかわりだった。

度があっていないので少しずらして隙間から見ないとはっきりと辺りが見えない。邪魔なものだが、今のアネッサにとっては必要な心の支えだった。

意を決してドアを開ける。

 

「え……?」

 

アネッサは管理人と戦いに来たのだ。抗議の言葉をいくつも用意した。

しかし、目の前の光景にそれらは喉奥に引っ込んでしまう。

女性が、二人いる。

一人はアネッサを面接したアンジェラという女性。会うのは、二回目だ。

もう一人は、アネッサがよく知る人物だ。

 

「!?貴女は……エージェント・アネッサ?どうしてここに……あぁ、やはり業務中も管理人室前を見れるよう、モニターを増やす必要がありますね……。」

「な……なんで……。」

 

アンジェラはアネッサを見て最初こそ驚いた様子を見せたが、直ぐに冷静な表情に戻った。

アネッサはアンジェラの隣の女性を指さす。その指は震えている。

アネッサにアンジェラは笑顔を向けた。それは作り物のような、美しい笑顔だった。

 

「アポもなしに来るなんて本来叱るべきことですが……、貴女のような優等生のエージェントが来るなんて、何かあったのですか?アネッサ?」

「貴女、誰よ。」

 

アンジェラは優しくアネッサに問うも、アネッサは隣の女性に気を取られてそれどころではなかった。

そんなアネッサをアンジェラは面倒くさく思いながら、隣の女性を紹介する。

 

「この方が誰か?何を言ってるんですか?アネッサ、貴女もよく知る方でしょう?彼女は、」

「貴女は違うわ!!偽物よ!!彼女がここにいるわけないわ!!」

 

興奮して叫ぶアネッサに、アンジェラはため息をつく。本当に面倒くさいと。

アンジェラは大きくため息をついて、やがて誤魔化すのを諦めてアネッサを真っ直ぐ見つめた。

目を逸らさずに、一歩一歩距離を詰める。

 

「……ここで見たことは忘れなさい、いいですね?」

「う、……ぁ……。」

 

アンジェラを見ていると、なぜだか思考がぼんやりとしてくる。

それに必死に抗うも、アネッサの身体からは力が抜けていきその場に座り込んでしまった。

 

「そうですね、どうせ忘れてしまうのだから、名前くらい教えてあげましょうか。自己紹介なさい?」

 

アンジェラの嫌味っぽい声がアネッサの耳に入ってくる。

それを追いかけて、アネッサの知る女性の声が聞こえてきた。けれど絶対に彼女であるわけがない。だって彼女は。

 

「初めまして!リリーです。これからよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
















まさかのユージーンです。
今回はユージーンとの絡み多め。キャラ設定すごい悩みましたがようやく固まりました。書きづらいキャラです。

書きたいネタがあって、そこに着々と繋げられてるのと最終回になんとか繋げられてて個人的には満足な展開なのですが、アブノーマリティ出てこないからね……読んでる方々にはつまらない思いさせてしまって申し訳ないです……。
説明回とか回想回でも楽しませることの出来るような小説をめざそうぜ、ポ〇モンマスター!

あれアブノーマリティマスターの間違いでは?
というかポケモンにもユリちゃんの体質効くのかな……効いてほしい……レックウザたんでリアル日本昔ばなしオープニングやってもらいたいものです。
個人的な推しはチルタリスたんなんだけどね。もふもふは正義。あとつぉい。
いやだからアブノーマリティの話しろよ……。

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