海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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Little Helper_4

アネッサの真っ直ぐな視線は、ダニーを責めているようだった。

ダニーは頭を抱える。同僚のエージェント、ユリ。彼女と同じ姿形を持つ人物の存在。

似ている人物は世界に四人はいる。そうは言っても、顔も、体格も、身長も、年齢も、声も全てがそっくりだなんてこと、四分の一の確率でもあるのだろうか。

 

「……整形、でしょうか。」

「顔や体はそれで説明がいくけど、声は無理でしょう?それにどんなに腕のいい医者でも、全く同じなんてできるの!?」

 

責め立てるアネッサにダニーは苛立った。

そんなの聞きたいのはこっちの方だ。

現代の技術がどんなに発展していても、全く違和感なく同じ人間を作ることなどできるのか?

元々の土台が似ていれば別かもしれない。

しかし声は?声帯をいじることは出来ないだろう。

考えれば考えるほどわからなくなる。本当に、何が起こっている?

 

「何か心当たりはないの?」

「そんなのありませんよ。あのAIだって変な動きは……あ……?」

 

その時、ひとつの記憶が過ぎった。

 

数週前の業務中。

一人のエージェントがユリの肩を叩いた。

振り返るユリ。

エージェントは笑う。『肩にゴミがついていたよ。』『あぁ、髪にも。』『あっ、ごめん!間違えて髪を引っ張ってしまった……。』

 

その光景を見たダニーは、管理人室に向かった。

そして問いただす。今度は何をするつもりなのかと。なにを企んでいるのかと。

 

 

……『彼女の髪の毛の採取は、なんのためですか?』。

 

 

〝髪の毛の〟〝採取〟

ダニーの頭に、ひとつの考えが浮かぶ。

その考えに、顔の血の気が引いた。それは恐ろしい考えだった。

似ている人物は世界に四人はいる。そうは言っても、顔も、体格も、身長も、年齢も、声も全てがそっくりだなんてこと、四分の一の確率でもあるのだろうか。

難しいだろう。しかし、似ているのでないのなら。

もしも、〝同じ〟だったのなら?

答えを決めつけるには材料が少なすぎる。それにあまりにも突飛な考えだ。

もっと別の可能性を考えるべきだろう。わかっている。常識的に考えて、そんなことは有り得ないはずなのだ。

それなのに、ダニーの頭にはそれがぐるぐると回る。消しても消しても消えてくれない。靴底についたガムのように、彼の考えを妨げる。

 

「……クローン。」

「へ?クローン?」

「似ている、のでは無く。同じだったのなら。合点がいきます。」

「何言ってるの?……そんなこと、あるわけ。」

「あるわけないと、言えますか?」

「完全な人間のクローンをつくるのは、あまりに危険よ。今の技術では難しいでしょう。」

「危険を顧みなければいいのでしょう。」

「……は?」

「危険でも、失敗してもいい。何度繰り返してもいい。その前提で行えば、何百回……いや、何千回に一回は、完全なクローンを作ることができるんじゃないですかね。それを行う莫大な費用も、この会社なら用意してみせるでしょう。」

「倫理的な問題だって……。」

「この会社に倫理?笑わせないでください。」

「それは……。」

「〝恐怖に立ち向かえ〟と会社は言っています。その恐怖をアブノーマリティのみだなんて、一言も言っていない。」

 

自身の口からスラスラと言葉が出てくる。

そうであってはいけないと分かっていながら、簡単に予想がついてしまう。

 

「だとしたら!一体なんのために……。」

「それはわかりません。けど予想はつきます。彼女と同じ体質を持つ人間が増えたら、それはもう楽になることこの上ないでしょう。」

「それはそうだけどっ……。でもそんなのっ、ユリさんが可哀想だわっ……!」

 

ダニーも勿論、そう思う。

自分と同じ存在が作られる。それはまるで〝代わり〟を作られてるようだ。

いなくなっても代わりはいる。責任や背負うものは軽くなるのかもしれない。けれどそれは、そういう問題ではないだろう。

可哀想どころではない。残酷だと思う。

 

「ユリさんに知らせなきゃ!ダニーさん、一緒に説明してもらえる?」

「……いや、それは少し、待ってください。」

「は?」

 

ダニーの言葉に、アネッサは怪訝な表情を浮かべる。

 

「何故?早く知らせてあげるべきでしょう?」

「急に、〝あなたのクローンを会社が作っています〟なんて言われたら混乱させるでしょう。最悪退社を考えられるかもしれない。それは、避けたいです。」

「何言ってるの!?混乱は、そりゃあするでしょう!でもこのままじゃなにが起こるかわからない!!辞めるのだって、ユリさんの自由よ!!」

「ユリさんが辞めてもいいと、本当に思ってるんですか?」

「え……。」

「ユリさんのおかげで、業務はかなり楽になってます。職員の死亡率もかなり減った。俺は、彼女に辞められたら困ります。」

「だから何も言わないの?何も教えないの?一番巻き込まれてるのは、ユリさんなのにっ!?」

「何か起こったら勿論助けます。だからそれまでは……。」

「何か起こってからじゃあ遅いのは、貴方だってよくわかってるでしょ!?」

 

アネッサはダニーの言葉に激怒した。

何を言ってるんだ、この男は。

取り返しのつかないことが、この会社では日常茶飯事だ。

何度だって見てきた。笑顔の消える新人、心のすり減った同僚。身体を失う先輩。いなくなる、仲間。

それを見てきながら沈黙しろとこの男は言うのか。

 

「彼女に辞められては困ります。この会社で働くのに、時にはモラルだって捨てなければいけない。貴女ならわかるでしょう。」

「……貴方は本当に、何がしたいの?会社が、嫌いなんでしょう?会社を探っているのでしょう?なら、どうして仲間よりも会社のことを優先するの?」

「……まだ、俺にはやらなきゃいけない事がある。それを終えたら、この会社をぶっ潰すつもりです。けどそれが終わるまでは潰れては困る。」

「やらなきゃいけない事って、何?」

「……。」

「言えないってわけね……。で、その言えないような事のために、ユリさんを利用するってこと?」

「それは……。」

「最っ低。あなたの評価を改めるわ。このクズ野郎。」

 

暴言を吐き捨てて、アネッサは踵を返した。

早足で遠のくその背中に、ダニーは叫び声をあげる。

 

「いいのか!彼女がいなくなったら死亡率は確実に上がる!!貴女や俺だけじゃない。貴女の大切な人だって死ぬかもしれないんだぞ!!」

 

ダニーの言葉に、一瞬アネッサは足を止める。

しかし振り返らずに、また歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私も、私もあの機械を触りたい。

どうすればいいのだろう。他のは触らせてくれるが、彼はその機械だけは触らせてくれなかった。

 

『もうロボットの送り先は決まっている。』

 

彼はそう言っていた。まだ発売すらされていないのに?

 

『君は必ず彼女のもとへ送られなければならない』

 

 

────製品説明書3ページ〝お手入れの仕方〟右横の落書きより

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い鎌を目の前に、強く目をつむる。

次の瞬間、大きな音がした。

ガキンッ、と金属がぶつかる音。驚いて目を開けると、美しい水色が視界に入る。

 

「ア、アイ……。」

「全くもうっ!だからさっき、一緒にいるって言ったじゃないっ!!」

 

アイが、目の前にいた。

私と機械の間に立つアイは、私の方を見ないけど少し怒っているようだ。

先程のレティシアのプレゼントから護ってくれた時、一緒にいてくれるのを断ったこと。それを指摘してるのだろう。

アイが来てくれたことに、一気に安心してしまう。しかし一日に二回も守ってもらった事実に情けなくなって、肩を竦めた。

 

「ごめんねアイ……。こんなつもりじゃ……。」

「今度からちゃんと頼ること!わかった?私は、ユリの魔法少女なんだからっ!」

「はい……。」

「わかったらいいの!……で、あなた、なんなの?私のユリを傷つけるなら……許さないわよ。」

<……>

「……?」

 

機械の様子が、なんだかおかしい。

 

<クリーニングプロセスを停止します。>

「え?」

 

その言葉を聞いて、アイの横から機械を覗き見る。

機械はその鎌を、球体の体にしまった。

残ったのは球体だけ。球体を支えるように小さな二本足が伸びている。

球体の顔は変わらない。真っ赤なボタンのような目が2つ、じっと私達を見つめて笑顔を浮かべている。

 

<あなたのお供、ヘルパーロボットだよ!>

 

「え?え?」

 

<何をお手伝いしようかな?>

 

機械はそう言った。大人しくなったそれに私は困惑する。アイもキョトンと、その大きな瞳を丸くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







更新飛ばしすぎじゃあない?
自分でも思います。ただね、推薦してもらって嬉しかったの。嬉しすぎて書いちゃった。
何が言いたいかと作者調子乗ってますふぅぅぅう!!

推薦!!!本当に!!!ありがとうございます!!!!
これからも頑張ります!!泣きそう!!

今回ヘルパーちゃん少なくてすみません。
でも次は放課後ティータイムになる予定なので許してください。

アイちゃんだしすぎじゃね?って思われる方も多いと思いますが、仕方ないんです。声に魔法かけちゃったから来ないとおかしいんです。いや決して百合が好きとかそんなんではry


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