【改正前】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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※今回、含めあからさまな捏造が多く含まれる展開となっております。
※原作を知らない方、原作を知っているが故に疑問が生まれる方の為に最後に捏造への解説を書きます。気になる方は一読下さい。
なお、一応は原作と違っていても筋が通るような設定ではあるつもりです。原作ネタバレが嫌な方や気にならない方はスルーしてください。










Der Freischütz_9

ユージーンは天からの声を待つように空を仰いだ。

しかし先程から警告と緊急事態の言葉が繰り返させるだけで、望んだような情報はこない。

それでも冷静さを保とうとするのだけれど、周りの声が邪魔をする。

 

「中央本部のアブノーマリティどうしましょう!?」

「静かなオーケストラは!?しかもあの子他にも担当いるだろ!?罰鳥とかどうするんだよ!!」

「ユージーン!貴方規制済みの作業は!?」

「大変だ!!何も無いがっ!」

「こんな状況で静かなオーケストラに施設全体攻撃されたら困るわ!!」

 

「ああああ!!いっぺんに言わないでくれ!!頭パンクする!!」

 

わかっている、わかっているのだ。そんなことはわかっている。

苛立ってユージーンは頭を振る。わかっている。この状況がどんなに不味いかということくらい。

 

「ユージーン。」

「今度はなんだ!!」

 

そんなユージーンに、彼の同僚が淡々と声をかける。

若干怒鳴るようにユージーンは振り返った。同僚はユージーンに、金属バットを差し出す。

それは、大規模な鎮圧作業の時にユージーンが使う、特別製の硬いバット。

 

「とりあえず何も無い、叩きに行くぞ。」

「は?……はぁ!?」

 

同僚の言葉にユージーンは慌てて自身のタブレットを見た。周りの声に通知音はかき消されていたらしい。

その通知を追うように、警報が再び鳴り響く。

 

【アブノーマリティが逃げだしました。】【エージェントは管理人の指示に従い直ちに鎮圧作業を実行してください。】

 

【脱走したアブノーマリティが特定しました。アブノーマリティネーム〝何も無い〟。】

 

【エージェントは管理人の指示に従い、直ちに鎮圧作業を実行してください。】

 

「……もう、勘弁してくれよ……。」

 

ユージーンはのろのろとした動作でユリの身体を駆けつけたオフィサーに渡す。

ユリの身体が運ばれていくのをぼんやりと見ながら、金属バットを受け取った。

俺だって死にたくないのに。と、ユージーンは珍しく弱気な声を出して立ち上がる。

 

「というかアブノーマリティから作る武器ってやつどうなってんの。それ使えないの。」

「使えてたらバットなんて持ってきてねぇよ。」

「ははは、違いない……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンッ、と銃の音。

それに対抗して、バンッと光線が放たれる音。

憎しみの女王は舌打ちする。命中率が良くないのだ。

魔弾の射手に何度か掠ってはいるものの、急所は避けられてしまう。

魔法の光線が撃たれるまでのタイムロスを上手く利用されている。彼女の魔法には詠唱と魔法陣が付き物で、どうしてもその間に定めた狙いがよまれてしまうのだ。

近距離の方がいいのは分かっているが、相手の弾丸は遠距離だからこそ弾けている。

近くであの殺傷力の弾を撃たれるのは辛い。それに加えて、憎しみの女王自身が近距離を得意とするわけではなかった。

 

「どうした?さっきから当たっていないぞ?」

「あはっ……それはこっちのセリフ。掠ってすらいないのだけれど?」

 

強さだけで言えば、憎しみの女王の方が上だろう。恐らく相手は戦闘慣れしていない。

動き方を見る限り、暗殺などはした事あるのだろうが、正面からの闘いは苦手なのだろう。

視線の動き方が露骨だ。簡単に弾の狙いが見える。

しかし動きが早くて小さいのは厄介だ。もう少し大きい的ならこれくらいの敵、すぐ終わらせられるのに。

 

……アルカナスレイブを使うしかないかしら。

 

その魔法が憎しみの女王はあまり好きではない。

強力な魔法ではあるのだ。とても強い攻撃魔法。全ての悪を、ねじ伏せるような強さが欲しいと望んだ願いによって生まれた魔法。

しかし使う対価は大きい。体力のほとんどを持っていかれ、しばらく立つのもやっとになる。

一瞬憎しみの女王は使うか考える。それで倒せればいいのだが、倒せなかった場合相手のやり放題だ。

憎しみの女王が考え込んでいると、魔弾の射手の弾丸が一つ、頬を掠った。

熱が通り過ぎるのを感じた後に、ジンジンとした痛みが頬に生まれる。咄嗟に手で抑えると、彼女の白い手を赤が汚した。

 

「ははっ、可愛い顔なのに残念だなぁ?」

 

おどけて言う魔弾の射手を憎しみの女王は思わずじっと見つめた。

何となくわかっていたが、この男ずっと顔を狙ってたのか。

遠距離での射撃ならば、普通額か心臓か足を狙うだろう。額と心臓を撃ちぬけば殺したも同然で、足なら動きを止めることが出来るからだ。

けれど先程から狙われていたのは顔付近。そのおかげで少し首を揺らせば簡単に避けられた。

つまりこの男は殺すよりも先に私の顔をぐちゃぐちゃにしたいのだろう。

 

「……なにそれ。」

 

思わず零れた言葉には、確実に殺意がこもっていた。

女の顔を潰すことを楽しむなんて。どこまで最低なの。

怒りが湧いてくる。それは熱く、彼女の全身に駆け巡る。

憎しみの女王の頭に、ユリの顔がよぎる。

ユリはとても綺麗だ。暖かくて、柔らかくて。彼女の仕草一つ一つが好きで。選ぶ言葉一つがとても愛しくて。

綺麗と私が言うのに、ユリは少しぎこちない笑顔をする。

 

『貴女の方が、よっぽど綺麗。』

 

なんて言うから、やっぱり私は貴女が好きだと思うのだ。

 

ねぇ、ユリ。

貴女にあんな男の力は似合わない。

わかるでしょう。違いすぎる。あれは汚くて臭くて、どうしようもなく醜いわ。

それなのにどうして手を伸ばしてしまったの。望んでしまったの。願ってしまったの?

ううん、わかってる。わかってるわ。

無理矢理、だったんでしょう?

貴女は言った。私が憧れだと。そうよ。それでいいの。

貴女は私だけを見ていれば、いいの。

 

「ねぇ、ユリと過ごすのは楽しかった?」

「……?」

「あの子は、本当に可愛いでしょう。」

 

憎しみの女王は魔弾の射手に問いかける。とても優しい声。幼い子に言い聞かせるような。

 

「だからお前みたいなゴミに、あの子は相応しくないのよ。」

 

憎しみの女王は杖を掲げる。力を乗せて呪文を唱える。

魔法陣が、目の前に現れた。それに重なってもう一つ、

 

魔弾の射手はその光景にさすがに身構え、何発か弾を撃つが、弾は魔法陣の前まで来ると止まって力を失い、落ちてコロコロと床を転がるのだった。

 

「我が眼前に立ちはだかる 憎悪すべき存在達に」

 

真っ直ぐと魔弾の射手を見て、自身の力を身体の底から引っ張り出して。

ユリの姿を思い出せば、それは彼女の強さになった。

ユリにはいつも笑っていて欲しいと、憎しみの女王は本当に思っている。だってユリは言ったのだ。

 

自分のことを、〝希望〟だと。

私がいるから、安心できるのだと。

だから、お前なんていらない。

 

「我とそなたの力をもって、 偉大な愛の力をみせしめん事を!」

 

さっさと大人しく死ね!!

 

「アルカナスレイブ!!」

 

強い光が、魔法陣から放たれる。

それは魔弾の射手に直撃した。

彼のコートは魔法の道具のひとつであって多少は憎しみの女王の攻撃を防いだだろう。

しかしある限りの魔力全てをこめた憎しみの女王の魔法は凄まじかった。

逃げるなんて許さないと、絶対に殺すと。

そんな思いと、ユリへの愛情をこめたまさに愛と正義の魔法は、遠慮なしに魔弾の射手の身体を燃やしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破壊音がする。

どこから聞こえているのだろうか。それは分からない。もうどこもかしこも壊されている今、どこがどう大変なのかなんて誰にも分からない。

管理人である彼はモニターに釘付けだった。焦りながら次々とエージェント達に指示を送る。

しかしそれは大半が間違いだらけで、多くの犠牲が生まれた。パニックに陥るもの、傷付き身体を失うもの、そして死んでしまうもの。

あぁくそ、とXはガシガシ乱暴に頭を掻いた。

アンジェラはぼんやりとその様子を見ながらポツリと呟いた。

 

「あぁ……やはりエージェントを殺すとエネルギーは貯まりやすいんですね。」

「アンジェラ!何か言ったか!?」

 

Xは苛立ちながら、アンジェラの方を振り返った。

アンジェラはため息をつく。よそ見をしている場合ではないのに。

 

「……アブノーマリティ大鳥は、現在隔離の外にあります。」

「え。」

「今からでも遅くありません。アブノーマリティを止めるために最善を尽くしてください。」

「そんな。だって今何も無いも収容違反して、憎しみの女王だって。」

「お願いします、管理人。」

 

青ざめるXを見て、アンジェラは出来るだけAIらしくあるように務めた。

モニターを再度見つめる。ある所では悲鳴が飛び交って、ある所では電気が消えて、ある所では光線が放たれていて。

アンジェラは思う。今度は声に出さないように気をつけながら、()()()()()()()()()()()()()、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




心理テスト作りました。なお信憑性は全くない。

作者の絵、ロリユリが大丈夫方のみ下の画像を見て答えてみてね!


【挿絵表示】



どうでしたか?
答えが気になる方は一番下までスクロール。




【原作と違う点について】
原作に対しての多くのネタバレ・メタ発言が出てきます。注意。
読まなくても当作をこのまま読むにあたっての支障はありません。気になる方のみお読みください。


本来小説外で理由説明をするのは控えようと努力してたのですが、以下の説明はどうしても小説内で説明できないため書きます。
というのも、これらの理由を説明できる登場人物がいないためです。第三者で語るのもちがうと思いこの場をお借りします。





※原作でのデフォルト武器で金属バットは出てきません。

→ユージーンの性格上で一番得意そうな武器にしました。物理系で一番馴染みがあるものとして選んでます。



※原作では魔弾の射手は収容違反、また他エージェント、アブノーマリティと戦うことはありません。

→足のあるアブノーマリティはやろうと思えば収容違反出来ると思って当作は進めてます。むしろ逃げないわけなくない?原作で逃げないのは敢えてしないだけかなと。すみません。

※アイちゃんの攻撃方法
→原作では基本ビームのみです。ただ魔法少女である彼女なら物理も強いと思って捏造しました。


※アイちゃんの収容違反理由
原作ですと、彼女が収容外にいる時に多くの職員が死ぬことで当作でも登場したヒステリー状態から大蛇へと変化します。

→彼女がヒステリーを起こすのは、恐らく職員を守れなかったことから自身の「存在理由の崩れ」によって起こります。

"あたしも彼女みたいに、 結局守れなかったんだ…"
"あたしも一緒なんだ…"

と、原作テキストフレーバーにあります。
しかし当作では憎しみの女王はユリに対し「私の正義。貴女を護ることが私の存在意義なのだわ!」
と言ってるように、自身の存在理由を〝ユリの為〟と定めていて、その辺へのヒステリーや感情の揺れがない状況となっています。
なので今回のように多くの人間が死んでもヒステリーは起こりません。

彼女が次ヒステリーを起こすのは、恐らく〝ユリが死んだ〟時です。
殺されたのなら〝ユリを殺した犯人を殺した〟時。
全てやりきってしまった彼女が正義を見失った時、どうするんでしょうね。











【心理テスト結果】

①「抱っこして」を選んだ貴方は〝ユリを可愛がりたいタイプ〟

②「おいていかないで」を選んだ貴方は〝ユリが可哀想なのを見ていたいタイプ〟

③「お人形返して」を選んだ貴方は〝ユリを虐めたいタイプ〟

以上です。当たってました?
なお作者は一番のつもりでこの絵を描いていたので「作者が元々そう描いたんでしょ」は通用しません。現実を見てください。


※アンケートのその他キャラですが、それになったら活動報告で出して下さったキャラで再びアンケートとります。お時間余裕あればご協力お願いします。


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