海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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まず、アブノーマリティ〝何も無い〟についての説明が必要だろう。

アブノーマリティ〝何も無い〟は、ALEPHクラスで最悪最凶と当研究所で言われているアブノーマリティだ。

それは同じALEPHクラスの静かなオーケストラ、規制済みと言えど断トツで恐れられている。

その理由はとある過去が関係しているのだが、その話を語るのは今ではない。

もしも語るとするなら、せめてユリに撃たれてしまったダニーが目が覚めた後だろう。

何も無いの見た目を例えるなら犬だ。大きな犬。

勿論可愛いの〝か〟の字もない見た目だが。

人の器官や、骨、肉でその体は出来ている。四足歩行だと言うのに、ありえないことに頭からもう一本手が生えている。

歩く為の手ではない。それは主に人を食べる時に使われる。

それは逃げると犬のように無邪気に舌を出して走り回り、人間を見ると即座に手を伸ばす。

そして、瞬時に殺す。

その速度は人がついていけるものではない。だからエージェント達は動きを先読みする必要があるのだが、単純すぎて読めない動きに苦戦する。だから多くの人間が死んだ。

けれどそれだけならば、何も無いは強いし被害もあるがそこまで脅威ではない。複数人で、言葉通り数の暴力で攻めればいいだけの話だ。

どちらかと言えば研究所全体の攻撃をし、なおかつ業務終了に必要なエネルギーを根こそぎ持っていく静かなオーケストラの方が厄介だ。

 

それでは何故、何も無いはこんなにも恐れられているのか?

 

先程も言った通り、過去の事例がある。

 

何も無いは、変化する。

それは犬のような姿からは想像できない姿に。

 

〝何も無い〟は名前通り、何も持っていない。

だから必要なのだ。自身の身体の形成となる部位が。

だから、人を求める。以上で食べてると表記したがそれは正確には違う。

〝取り込んでいる〟のだ。〝自身の一部〟として。

燕が巣を作る時、泥を集めるように。

自身の身体を作るため、人の一部を集める。

そうして繭の様な形となる。

その赤い肉で出来た繭の中で何が起こっているのかはわからない。

もしも本当に繭ならば、蝶と同じでドロドロに中身は溶けているのだろう。

 

それらは一度、液体となり。

混ざりあって。

形をなして。

 

そうして人の姿になる。

 

当たり前だ。だって材料が材料なのだから。

その身体はとてつもなく大きく。

肩に、頭に、胸に。瞬きを忘れた目を持って。

顔と手に口を持って。

真っ赤で大きいそれを作るには人は何グラム必要なのだろうか。

考えてはいけない。ましてや犠牲になった友人がどの部分に使われているのかだなんて。

 

考えるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

タブレットからの指示に表記されていたのは、プランBだった。

プランAは多くの人数で対象を円形に囲み、追い詰めていくもの。

逆にプランBは三人から二人のチームを複数組み、時間を稼ぎながら対象を追い詰める。

まぁ、納得だ。プランAだと無駄死にが増えるだけだろう。

ユージーン達は作戦を理解すると、一番近くのチーム本部に向かい、準備を整える。

チーム本部には緊急用に武器がいくつも用意されている。それは一般的には武器と言わないものも含まれているが。

今回必要なのは機関銃。流石にバットだけでは頼りないと、ユージーンは銃を見ながら苦笑いする。

あとは小回りのきくサバイバルナイフ。武器は多ければ便利だが、荷物になる。

今回は相手が相手なので、あれも持っていかなければいけない。

 

「おい、何してる。あれも持ってきてくれ。」

 

ズルズルと麻の袋を引きずる同僚、ノックスにユージーンはまた苦笑いした。

麻の袋は冷凍室にしまわれていたものだ。霜がついていて、部屋の温度で溶けたそれが床に露を落とす。

麻の袋はノックスに任せて、ユージーンは床に置かれたダンボールの一つを抱えた。

物騒な光景だよなぁ、とダンボールに詰まった手榴弾の山を見つめる。

すこし小さめに作られてるとはいえ、危ないことには変わりない。

背負った機関銃も腰の金属バットも重い。そのせいで転びでもしたらこの爆弾達はどうなるのだろうか。想像して身震いする。

ノックスは時間が惜しいとばかりに、乱雑に麻の袋をひっくり返した。

バラバラと中身が床に落ちる。その光景は見慣れたものとはいえ、気分のいいものでは無い。

ユージーンが思わず口に手を当てる。ノックスも顔を顰めていて、いや、ぶちまけたのはお前だろうとユージーンは文句を言いたくなった。

 

袋の中身は、人の腕足だ。

冷凍保管された、いつ死んだかわからない人の一部。

 

「……やるぞ。」

「あぁ……。」

 

誰のものかわからないそれらに、もしかしたらかつての仲間たちのものかもしれないそれらにユージーン達はナイフで傷をつけていく。

綺麗に揃えられた断面を、ナイフで抉っていく。

冷凍されていたのでやりづらさはあったものの、すぐに解凍できるように調整はされていたのだろう。案外簡単にナイフは肉に沈む。

 

「こういう時にさ、思うよな。俺達が普段使ってる包丁とかって、すげぇ切れ味悪いんだなって。」

「手入れしてないだけじゃあないのか?ユージーン雑だし。」

「いやいや、俺自炊するからちゃんとしてるって。というかノックスに雑とか言われたくない。今日も昼カップ麺だったろ。」

「新発売だったんだよ。」

「味は?」

「微妙。」

「ははっ、それは何よりだ。」

「……あんなのが最後の晩餐なんて勘弁だ。」

「……。」

「俺これが終わったら焼肉食いに行くんだ。」

「……それ、ゾンビ映画なら死ぬやつな。」

 

二人は笑いながら手を動かす。

出来るだけなんてことの無い会話を意識した。日常的な、ありきたりなつまらない会話を。

自身の手の震えを誤魔化す為に。死にたくないなんて本音が漏れないように。

逃げたいなんて、間違っても口にしないように。

 

 

※※※

 

 

準備が整った二人は直ぐに現場へと向かった。

対象の位置をタブレットで確認する。それは地下四階通路というとても曖昧なものだったが。

研究所の通路は基本的に横一本通行だ。エレベーターが両端に設置されている。

その間にチーム本部が設置されていて、通路はパイプのようにそれらを繋いでいるのだ。

そしてその通路途中に扉が設置されていて、収容室となっている。

プランBは、簡単に言えば挟み撃ち。その一本通行を利用して、右端と左端から二人組のチームで挟む。

そうすることで、地下四階通路以外に何も無いが行かないようにする。被害の拡大を防ぐのだ。

 

単純な作業に思えるが、ただの挟み撃ちでは無い。

問題は何も無いは、攻撃されたからと言って逃げないのだ。

むしろ立ち向かってくるだろう。どんなに怪我をしてもこちらに襲いかかってくる怪物。

 

いずれ壁に追い込まれるのは、人間だ。

 

それを防ぐために、片方のチームが通路端のエレベーターまで追い込まれたら、後ろのチームが攻撃を開始する。

気をそちらに散らすのだ。今度は後ろのチームが追い込まれるように。

追い込まれたチームはエレベーターで一時退避する。

そうすることで定期的な休息、手当にあてることができる。

それの繰り返し。

 

大切なのはタイミングになる。

攻撃のチームを交代するのが遅すぎてはいけないし、攻撃をしているチームは攻撃のやめ時をよまないといけない。

 

遅すぎたら、何も無いにエレベーターまで、乗り込まれる。

個室での戦闘なんて死んだも同然だ。

攻撃のやめ時というのは、エージェントに攻撃が当たってしまうのことを考えてだ。

それこそ通路向かいに姿が見える中で機関銃なんてぶっぱなしたら流れ弾が直撃する。

そしてユージーン達が一番心配しているのは、そのタイミングをよむのが管理人ということである。

撤退も攻撃の中止も、管理人の指示で二人は行うのだ。

 

「……頼む、管理人。頑張ってくれ……。」

 

エレベーターでノックスはそう呟いた。

ユージーンは何も言えない。ただ目をつぶって、何かに願った。

 

どうか、どうか。

死にませんように。生きれますように。

無事に、終えられますように。

 

そんな切実な彼らの願いは、モニター越しにXに届いたか?

その答えはまだわからない。エレベーターの扉が開く。鎮圧作業は、始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 









【原作と違う点について】
※ネタバレ・メタ発言注意


アブノーマリティ何も無いについて。
→作中表記していない特殊能力があります。
何も無いが中心的に出てくるものの、また別で何も無いメイン回を書く予定なので表記していません。

武器について
→今回出てきた武器、道具ですが原作にはありません。
更には原作ではエージェント一人に対して一つの武器と決まっています。

当作は現代の私達がくらすこの世界を舞台に考えているため、私達の住む世界での特殊部隊ならどうするかを想像して書いています。





アンケートありがとうございます。そして作者の絵も見てくださってありがとうございます。
そのうちオマケでロリナリア上げさせてください。あいつ一応私の中で一番美少女設定なんです。
あと皆さん、花粉症大丈夫です?うちの職場は半分がやられました。鼻の穴に塗ってガードするっていう軟膏オススメです。作者は五月の花粉なのでそれによくお世話になります。



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セフィラが選ばれたらセフィラでアンケートとります。
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