ハイスクールD×D ~神殺しの王は赤き龍の帝王となりて王道を征く~   作:ガーネイル

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 お久しぶりです。本当は頑張って平成最後にしたかったんですが、令和最初の投稿になってしまいました。遅くなって本当に申し訳ない。
 今回はいつも以上に書く時間にムラがあったせいか重複しているところとかおかしな点、流れや言い回しがおかしいとかがあると思いますが、どうかご容赦ください
 毎度のことながら色々な点で未熟なのは自分自身がよく分かっているので……。
 二、三話くらい前にライザーとの戦いは二回に分けると言いましたが、何故か一回目でボコってしまいましたので不死鳥編は今回が最終回です。
 それでは未熟作ではありますが、お楽しみいただけたら幸いです。


10.夜会話×黄金の剣

 合宿を開始してから何日かが経過した。夕飯は女性陣と男性陣が日替わりで作っている。ここでの生活により、和希とアティは今までよりオカルト研究部に馴染んでいた。

 一週間くらい経過した日の夜。ふと真夜中に目が覚めてすぐに寝付けることも出来なさそうだったため、和希は少しだけ歩くことにした。

 

「あら、こんな時間にどうしたのかしら?」

 

 テラスに出たところで赤いネグリジェを着て眼鏡をかけたリアスに声をかけられる。

 満月の下、テラスにいる紅髪の美少女。何とも絵になる組み合わせだ。着ている物が生地の薄いネグリジェでなければもっと良かっただろう。幸か不幸か分からないが、ルクレチアの方が色気が強く出ていたため、和希としては特に意識することがなかった。

 

「ちょっと目が覚めてしまっただけですよ、リアスさんはどうしたんですか?」

「私の方は色々と前準備よ。といっても気休めにしかならないのも確かなのよね」

 

 そう言ってリアスは苦笑を浮かべながら月明かりで読んでいたのであろう本を小さく持ち上げる。

 

「この本は研究された戦いのマニュアルだもの。これを読んでいれば一定の上級悪魔とならある程度戦えるのだけれど、問題はライザー自身にあるのよ」

「家名にも在るとおりフェニックスだから……ですよね」

 

 リアスが懸念しているのは和希が指摘通りだった。

 人の世界では聖獣フェニックスと同名の侯爵である悪魔をフェネクスと区別しているが能力的には同一の物。つまり聖獣フェニックスがそうであるように上級悪魔と称されるフェニックス家も不死性を有している、ということになる。あらゆる攻撃は意味を成さず何度倒しても復活し、操る業火は全てを焼き尽くす。まさに無敵、ある種最強の力と言えるだろう。

 リアスがどこから取り出したのか一枚の紙を和希に渡す。その紙にはライザーが行ってきた公式レーティングゲームの戦績表だった。

 

「八勝二敗。その二敗は懇意にしている家系への配慮。つまり、実質全勝負け無しなのよ」

 

 つまり、リアスたちが戦うのは今のところ負け無しの相手。いくらの今回のゲームが非公式とはいえ、相手が手を抜いてくることはないだろう。勝てば美女二人を手に入れることが出来るのだ。むしろ全力でくるだろう。

 

 

 

「ライザーが婚約者に選ばれた時から嫌な予感はあったの。きっとお父様たちは最初から仕組んでいたのよ、身内同士の戦いになった時、相手がフェニックスなら勝てるわけないと踏んでいたのよ。事実としてレーティングゲームが流行って一番台頭したのはフェニックス家だった。王も参加するこのゲームで不死が如何に恐ろしいものなのか悪魔は初めて知ったのよ」

 

 それはそうだ。不死性を持った敵というのはとてつもなく恐ろしい。

 特に今回の場合、彼の眷属を倒したところでそこに強い意味はない。ただ相手の戦力を削れるだけだ。普通の相手ならばそれは有効。だが、レーティングゲームというその特性上、王も倒さなければならない。王を倒してこそ意味があるのだ。しかし、それは何度でも蘇るライザーに完全勝利するということ。それは容易なことではないのもまた事実。何度でも復活する敵を復活できなくなるまで叩き潰す必要があるのだから。

 

「時にリアスさんはなぜこの婚約に反対なんですか? お家柄そんなに無下に拒否できないのも分かりますけど」

「私は『グレモリー』なのよ」

「それは知ってますよ」

「そういう意味ではないの。私はグレモリー家の人間でどこまでいってもその名前が付きまとう。それが嫌なわけではないの。寧ろこの名前は私の誇り。けれどその名前が私を殺している。誰も私をリアス個人として見てくれない。だからこの世界での生活は充実していたわ。私個人として見てくれるもの」

 

 そう言うリアスの瞳には寂しそうな光が宿っていた。

 和希にはリアスの気持ちが何となく理解できる。前世での自分は今のリアスが置かれている環境に似ていた。

 幾つもの戦場を駆け抜け、自国に勝利をもたらす。自らの意に反して国は勝利をもたらす英雄として持ち上げた。

 何時からだっただろうか。国民が『個人』ではなく『勝利をもたらしてくれる英雄』として見てくるようになったのは。何時からだろう。自室と仲のいい人間以外と付き合いを続けるのが辛いと思うようになったのは。

 和希が前世で『英雄』という看板を背負っていた。だが、リアスは生が続く限り、『グレモリー』という看板を背負いながら生活していくしかのだ。

 

「私はリアス個人として愛してくれる人と一緒にいたいの。それが私のささやかだけど小さな夢。ライザーが愛しているのはグレモリーのリアス。反した想いかもしれないけど私は小さな夢を諦めたくないのよ」

 

 それは少女なら誰もが持っているであろう密かな想い。どこの時代でも、どのような少女でも持っているであろうささやかな願い。

 その想いは、願いは、立場が強ければ強いほど心の内に秘め、それを押し殺さなければならないだろう。でもそれがどれだけ正しくともリアスはそれを持ち続けていたいのだ。どれだけ間違っていようとも、その願いだけは諦めたくないのだ。

 

 

「いい夢だと思いますよ。だからその夢が奪われそうな時は俺を呼んでください。その時は俺が必ず助けに行きます」

「えぇ。あなたのことは信頼しているもの。だからお願いね」

「任せてください」

 

 和希がどのような思いでそう言ったのか分からない。それでもリアスはその言葉を聞いて少し前を見ることが出来るように感じた。

 

 

*******************

 

 

 恙なく合宿を終え、ついに決戦を迎えることとなった。

 グレイフィアの話ではレーティングゲームはバトルフィールドへ転送後に始まるようだった。和希の体は良くも悪くも魔術は受け付けない。それこそ神と同じクラスでないと難しい。和希はとりあえず権能のことは伏せ、体質の問題で魔術は効かないことを伝える。ただ、誰かがピンチになったときアティと共に参加してもよいか。という確認を取る。

 少々時間はかかったがそれで問題ないという許可が下りたため、途中参戦ということで落ち着いた。

 今回のゲームは中継されていて魔王も見ているということが分かり、リアスたちは分かりやすく、闘志がみなぎっていた。

 いよいよ試合が始まり、和希とアティは中継を見ていた。

 

 

「それで、今回は風の化身を使ってあちらに向かうんですね?」

「あぁ、リアスさんにはもしもの時があったら名前を呼んでくれって言ってあるからな。あと、巻き込むような形になってごめん」

「いいんですよ、ウルスラグナの時からの付き合いじゃないですか。それに和希君は私がいないとすぐに無茶するじゃないですか」

 

 和希はアティの少し咎めるような口調で言った言葉に心当たりがあるのか、少し居心地が悪そうに頭を掻く。

 そんな二人の距離はなく、寄り添い合っているようにも見えるくらいだ。

 和希の中にあるのはアティを巻き込んでしまったことへの罪悪感。アティの中にあるのは和希と共に戦うことが出来る喜び。

 元々アティは無茶をしてしまい、仲間に心配されることが多い側だった。彼女もまた、和希と同じように苦しんでる人がいたら無計画に首をつっこむタイプの人間である。そう言う面では当時に比べたらだいぶ良くなった。

 本当はアーシアを救出に行く時だって相談して欲しかった。一声くらいかけて欲しかった。短い時間ではあるがあれほど近くにいたのだから。共に戦ったのだから。だけど和希がそうすることはなかった。それが何だかイタリアにいた時よりも距離が離れてしまったような気がしていた。

 だからここで彼女の方から一つ踏み込んでみる。

 

「一つ、お願いを聞いてくれますか?」

「俺に出来ることだったら」

「それなら、……これから先、あなたが戦うときは私も一緒に戦います。あなたの背中は私が守ります。だから和希君は私を守ってください」

「……分かった。これから先の戦いは背中を預ける。今までのように一緒に戦ってくれ。今回はリアスの未来を、夢を守るために」

 

 そんな二人の会話中に何者かが入ってきた。入ってきたのはリアスと同じ紅髪の男性。その男性から出ている存在感、高貴さはライザーなど足下にも及ばない。

 二人は男性を警戒しているが、男性はそんなことは全く気にしていないかのように話しかけてきた。

 

「キミたちが風峰くんとアティさんかな? 突然押しかけるようなことをしてすまない。私は魔王の一人、サーゼクス・ルシファーだ」

「……魔王様が俺たちに何のようだ」

「妹から聞いたよ、キミは今代の赤龍帝だそうだね。顔合わせを兼ねてぜひその力を存分に発揮して欲しいと言いに来たのだよ。可能なら勝ってしまっても構わない」

 

 和希の内心はサーゼクスという男性が言った言葉の真意をはかりかねていた。

 以前、ライザーは悪魔の未来がかかっていると。リアスの兄である以上今回の婚約を進めたのも関わっているはずだ。それなのに勝ってもよいという。言動の不一致が理解できない。

 

「今回の話が破談になっても構わないと?」

「あぁ、ゲームで決めるのが今回の決まりだからね」

 

 サーゼクスは何でも無いようにそう言う。その時、何か別の言葉が聞こえた。その声は聞き覚えのある声。主は目の前にいる魔王の妹。誇りに思う名前で苦しみ、それでも小さな夢を捨てたくないと言った少女の声だ。

 そんな少女の声が聞こえる。映像からではない。異空間にいるはずの彼女の声が風に乗って聞こえてくる。徐々に強くなる風とより鮮明になってくる声。

 

「その言葉、後悔しても知りませんよ? それではリアスさんの元へ行かせてもらいます」

 

 徐々に強くなっていくその風にサーゼクスは思わず顔をかばう。風が徐々に弱まり、前を見ると目の前にいたはずの和希とアティの姿がそこにはなかった。

 

「彼は面白いね、ぜひこれからも良い関係を築いていきたいものだ」

 

 その言葉は誰にも聞かれることなく、部屋の中に消えていった。

 

***************

 

 

 子猫で犠牲がリタイヤし、祐斗も戦闘後を狙われてリタイヤした。相手の女王、ユーベルーナを追い詰めたがフェニックスの涙によって全快になった相手に痛手を受けしてリタイヤしてしまった。残っているのはアーシアと王である自分だけ。そんな二人しかいない状況でライザーとユーベルーナを倒さなければならない。魔力も底を尽きそうだった。

 

「どうしたリアス! 時間をやってこんなものか! あの小僧は怖じ気づいたか、降参しろ、お前に勝機は無いんだからな」

 

 アーシアが治癒をかけながらリアスはライザーへと滅びの魔力を叩きつける。だが、相手は公式で結果を残すだけの実力の持ち主。

 リアスの心を占めるのは敗北の二文字。アティにせっかく教えをつけてもらえたのに、和希が子猫と祐斗を鍛え上げてくれたのに勝てないのかと。自分はそれほどまでに弱いのかと心が折れそうになる。自分は自分が大切にしたいと思える小さな夢ですら守れないのかと。

 

(皆、ごめんなさい……)

 

 リアスが降参しようとしたその時、和希の言葉がリフレインした。

 

『その夢が奪われそうな時は俺を呼んでください。俺が道を開いてみせます』

(信じていいのよね?)

 

 リアスの中で消えかけていた希望の火が再び灯る。その瞳にはもう一度力が入る。弱気な光が消えたリアスを見てこれで終わらせることにしたのか、ライザーがユーベルーナと共にその業火をリアスとアーシアをめがけ放つ。

 

 

「ここに来て……私たちを助けて。今、あなたの力が必要なの。助けてカズキ!」

 

 その叫びと共に風が吹く。そしてその業火が着弾し、火柱が上がる。

 ライザーは自らの勝利を確信したのか不敵な笑みを浮かべている。だが、リタイヤのアナウンスが一向に流れない。

 そして燃え上がっていた火柱が何もなかったかのように消え去る。

 

「貴様は……!」

 

 火柱が消えるのと共に姿を現したのは何のダメージを受けていないリアスたち。そしてアティを連れて二人を庇うように、守るように和希がライザーと向き合っていた。

 

「リアスさん、助けに……約束を守りに来ました。下がっていてください。アティは向こうの女王の相手をしてくれ。俺があいつをぶっ飛ばす。お礼はいつか精神的に」

「約束ですからね。そしてこれは……勝利の前祝いです。ではもう一戦お願いしますね、女王」

 

 アティは和希と口づけを交わす。普段なら、いや、普段でも絶対に行わない行為。そしてその口づけと共に和希の中にフェニックスの知識が流れ込んでくる。今行っているのは戦士の化身を行使するための前準備。たかが、一悪魔にそこまでする必要性は感じないが、これより行うのは圧倒的なまでの暴力だ

 口づけを交わし終えたあと。アティは軽快に屋根から飛び降りていく。和希はそれを見送った後、改めてライザーと対峙する。

 

「我は言霊の技を以て世に義を顕す。これらの呪言は強力にして雄弁なり!」

 

 地面より現れるのは黄金の剣。本来、これは神に対し圧倒的なアドバンテージを与える化身だ。

 たかが悪魔ごときになぜそこまでするか。これは見せしめの意味を込めている。グレモリー眷属に、リアスに手を出せば自分が黙っていないという牽制でもある。そして悪魔たちは目の当たりにする。彼の力の一端を。

 舞台であるレプリカの駒王学園が書き換えられる。黄金の剣が存在する処刑台へと。

 

「これは……」

 

 呟いたのはライザーかリアスか。初めてこの力を目の当たりにする者からすると思いがけない光景だろう。リアスの後ろにいるアーシアも固まっている。

 これより語られるのは不死性を殺すための力。フェニックスの代名詞である不死を一時的に封じるためだ。

 

「フェニックスは死んでも蘇り、永遠の時を生きる伝説の鳥。涙は傷を、血は不老不死をもたらすといわれていた。寿命を迎えると灰に還り、燃え上がる炎と共に再び生を受ける。これが不死鳥、火の鳥と呼ばれる所以だ」

 

 神話や創作物の中で最も有名で語られるフェニックスとしての特性であり、特徴でもある。そして何事にも源が存在する。

 

「そのルーツはエジプト神話のベンヌが原型だ。太陽信仰のあったエジプトでは毎朝生を受け、夕暮れと共に死に、翌朝再び生き返ると言われていた」

 

 和希は説いていく。神話の時代を。彼らが生まれたであろうずっと前から伝わってきたフェニックスという存在の源を。

 そしてその言葉は剣の切れ味を良くするための砥石のような意味もある。

 

「ベンヌがギリシアへと伝わった際、身体の一部が燃えるような赤だったため、『真紅の鳥』を意味するポイニクスが変形しフェニックスとなった。当然、原型である以上フェニックスと共通するのは不死鳥だということ。そして生と死を繰り返すのは大地の神が持つ特性だ。だからエジプトではラーやアトゥム、オシリスの魂だと考えられていたんだ」

 

 ライザーは襲いかかってくる黄金の剣を自らの炎で捌く。だが、炎は打ち消され、襲いかかってくる黄金の剣はライザーを僅かながら切り裂いていく。

 今し方、語られたのは聖獣フェニックスという存在。永遠の象徴であるそれの大元は神の一部として信仰されていた。だからこそ、というべきなのか。今回の場合、信仰されていたということが何よりも重要なのだ。エジプトからギリシアに伝わる。そこに鍵が隠されていた。

 

「エジプトとギリシアはほぼ地続きだ。当然、他の国にもそれは伝わっていく。それは中東の方にも広がっていった。中東の方は主にヘブライ教を信仰している人が多い。そしてそれは唯一神であるヤハウェを信仰する宗教だ。そしてヘブライ教では過去に信仰されていた異教の神を悪魔として扱う傾向があった。オシリスやアトゥムの魂として考えられていたベンヌと同様にフェニックスも信仰されていた。悪魔フェニックスはヘブライ教が生まれるよりずっと前。古代エジプトからギリシアに伝わってもなお維持された大地の神が持つ不死性。それがお前が持つ不死の力だ!」

 

 黄金の剣は神性をそぎ落とすための武器。その力を一時的に使用不可能にすることなど何の問題も無い。不死性を封じられたライザーは自分の中の力が封じられ、喪失感に似た何かををしっかりと自覚できた。

 

「貴様! 一体何をした!」

「本当は教える義理などないが今回は特別に教えてやる。お前の不死身をこの剣で一時的に封印したんだ。不死性が消えた悪魔などただの悪魔と何も変わらない。もうこの武器は必要ない。お前を倒すにはこれで十分だ」

 

 和希は黄金の剣を消し、左手に赤龍帝の籠手を装備する。

 一歩詰め寄るとライザーは一歩後ろに下がっていく。

 

「どうだ、ご自慢の不死身が封印された気分は。……一方的で個人的な八つ当たりもあるが、リアスが心に受けた痛み。それをお前にも味わってもらう。覚悟しろよライザー・フェニックス」

 

 その静かな怒りと共に放たれたプレッシャーにライザーは息を詰まらせる。公式戦でも格上の敵と戦ったことはある。だが、これほどのプレッシャーを出す敵とは戦ったことは一度も無かった。そしてライザーは和希にある姿を幻視した。その姿を幻視したのは彼だけではない。この中継を見ている悪魔全員が、それを視た。

 

「赤き龍……だと」

 

 この戦いを視ている殆どが赤き龍を幻視した。だがそんな中、リアスとアーシア。そしてリタイヤ後に中継を視ていたグレモリー眷属は別のものを目に映していた。赤い龍がいるのは同じだが、それ以上に印象的なのは龍の背に乗りながら、薄汚れた外套に身を包み、和希と同じ黄金の剣を持った少年。少年の表情は憤怒に満ちていた。守るべきものを穢されたかのように、もしくは自分の不甲斐なさを嘆くかのように。

 

「カズキさん……」

「あなたは……」

 

 そうだ、彼が怒るのは傷ついた人のためだけではない。帰りを待つ者の為に、大切に想っている人のために怒るのだ。

 そのあり方はどこまでもウルスラグナに似ている。彼は正義の神でありながら民衆を守護する神でもあったのだから。ここではない遠い別の世界には彼がウルスラグナと呼ばれていても不思議ではないくらいだ。

 そして和希がライザーの前で立ち止まる。壁際まで追い詰められたライザーは怯えたように、これからの出来事から逃れるように言葉を並べる。

 

「ま、待て! 分かっているのか! この婚約は悪魔の未来に必要なことで人間ごときがどうこうしていいものじゃないんだぞ!」

「んな、こと知らねぇよ。ただ、リアスの笑顔を、願いを奪うっていうなら俺がそれを全部ぶっ壊してやる。悪魔の未来だか、純血悪魔だか知らねぇけどそんなもんでリアスが選ぶ道の邪魔をするんじゃねぇよ!」

『Exprosion!』

 

 五回ほど倍加された力が解放される。たった五回の倍加。それがただの人間だったらたかが知れている。だが、和希は違う。既に人としての理から大きく外れている。

 力量の差は圧倒的。自らが矮小であることを否応なく理解させるほど。その存在感は魔王と同等。いや、それを上回っていると思わせる。

 それだけの力を持った拳が何も躊躇うことなくライザーの鳩尾に叩き込まれる。

 

「く……そが…………」

 

 公式では負け無しといわれたライザーが一撃で意識を飛ばされる。それにより敗北したというアナウンスが流れるが無視し、さらに一撃入れようと手を伸ばすと、蹲っているライザーを庇うように金髪縦ロールの少女が割って入り、和希の前に立つ。気丈に振る舞う少女だが、その足は、身体は僅かに震えている。無理もない。魔王と同等。いやそれ以上の圧力をその小さな体に受けるにはまだ荷が重すぎる。

 フィールドが消えゆく中、和希は力を抜き、背中を向けて言葉を投げかける。

 

「文句を言う奴がいたら連れてこい。魔王だろうが何だろうが全て俺が相手をしてやる。ライザー(そいつ)にトドメは刺さない。お前のなけなしの勇気に免じてな。……じゃあな」

 

 圧力から解放された少女はへなへなとその場に座り込む。ただ仲間の方へと戻って行く少年の後ろ姿を見つめるその視線には僅かに熱が籠もっていた。

 

 *****************

 

 リアスは歩いて戻ってくる和希の元へと駆けより抱きつく。

 

「ありがとう、私たちを守ってくれて」

「これくらいお安いご用ですよ。あなたを守る為なら何度でも戦います」

 

 そう言い放つ和希が浮かべているのは先程までと全く違い、優しい笑みだった。月明かりに照られたその表情は異性ならば思わず見とれてしまうものだった。

 リアスも例に漏れず頬を赤く染める。だが、それも失せ、不安げな表情に変わる。

 

「でも、あんなことを言ってしまってよかったの? もしかしたら悪魔全体が貴方を敵として見なすかもしれないのよ?」

「別に構いません。俺が守りたいと思うものに人も悪魔も関係ありません。リアスさんはオカルト研究部だけではなく、俺にとっても大切な人ですから」

 

 彼にとってリアスという少女はある意味大切な存在なのである。悪魔という人ならざる存在でありながら、その在り方と願いは人と同じ。そして彼女は和希と同じだ。和希がそうであり、これからまたそうなるように、何時如何なる時でも肩書きや名前がついて回る。そうして個として見てくれる人は少なくっていく。

 表には出さないが、心の内に秘めている思い(モノ)は同様のモノだった。

 和希は言葉にこそ出さなかったが共感してくれたことをリアスは何となくだが理解していた。

 そんな人が自分を大切だと言ってくれた時、内側に熱を持った何かが溢れ出す。

 リアスはその衝動に身を任せることにした。ほんの少しだけ背伸びをして口づけを交わす。

 和希はリアスが取った突然のキスに驚いたのか動けずにいた。

 ついさっきまで鬼の如きを発揮していた和希だが、それが嘘のように慌てている。その姿は年相応のリアクションでとてもじゃないが、同一人物とは思えない。他人の空似、もしくは二重人格といわれた方が納得出来そうな豹変ぶりだった。

 

「ファーストキスよ、日本では女の子が大事にしているものよね?」

「え、ちょっ! リアスさん!?」

 

 唇を放した後、強く和希を抱きしめる。それを後ろから見ていたアーシアとアティ。アーシアは頬を膨らませ、アティからは何か黒いオーラが全身からあふれ出ている。

 それに気付いた和希はアタフタしながら弁解を試みるが言葉が出てこない。 

 その光景はちょっとした日常の中でありふれたもので和希が守りたいと思うモノの一つだった。

 

***************

 

 後日、リアスもまた風峰家の転がり込むように居候というか、ホームステイのような形で一緒に暮らすことが決まった。

 ちなみにその話を進めている間、和希はアティに太ももを抓まれている。なお、その際二人とも何もないような顔をしている。が、和希の口元が僅かに引き攣っている。

 

(そろそろ、ジゴロするのをやめたらどうですか?)

(何故、俺が色んなところで女の子を誑してるみたいな感じになってる?)

(違うんですか?)

(違う。そんな事実は一切無い!)

 

 ちょっとしたアイコンタクトでお互いの意思を伝える二人。

 女の子を誑かしたことなどないと主張する和希だが、現実として現在三人、無自覚を含めて五人が和希に好意を向けている。きっとこれからも増えていくだろう。少なくとも五人の内二人は先日増えた為、結果だけ見るならば誑かしたことになるのだろう。

 

(本当ですか? 少なくともリアスさんは和希君に気があるようですが、そこはどのように?)

(それこそ気のせいだ。俺よりいい男なんていくらでもいるんだぞ? それこそ木場だっているんだからな)

(……そういうことにしておきますね)

 

 無自覚タラシである上に自己評価が低い和希。無自覚タラシであるだけでもう厄介だが、自己評価が低いが故に他人の好意に気付かないという案件が発生する。

 とにかく、このままだと話が進まないと感じたアティが渋々引き下がる。

 そんな会話が終わる頃にリアスの話も終わったようだった。その後、リアスが和希に向かい、笑顔を向ける。

 

「これからよろしくね、カズキ!」

 

 それを見て更に力を入れるアティ。苦笑いを浮かべる和希。アーシアはリアスと一緒に暮らせるということが嬉しいようで笑顔を浮かべている。少し混沌とした雰囲気になっている。

 ちょっと離れたところでそれを見ていた祖父である大智が微笑ましいものを見ているような生暖かい目をしながら呟く。

 

「正輝は人タラシだが和希は生粋の女タラシのようだな。これから面白いことになりそうだ」

 

 和希の祖父である大智と父である正輝は男女問わず人タラシであるが、どうやら和希は女性に特化したようだ。それはそれとして、先ほどまでの混沌とした雰囲気はどこへやら。楽しそうな雰囲気に切り替わっていた。

 和希は今度こそ笑顔でどこにでもありふれた幸せな時間が続くことを願った。




 というわけで不死鳥編は終わりです。次回からエクスカリバー編になります。なので今よりFate要素を強めに出来たらな。とは思っています。
 また、今回使ったフェニックスの知識や黄金の剣の活用の仕方ですが少しだけアレンジを加えてみました。急ごしらえだったため、こちらも要勉強ですね。
 課題が多い……。
 また、以前前書きでも述べましたがちゃんと作者なりに考えて書いているので否定的な意見はなるべくお控えしてくださるとありがたいです。如何せん豆腐メンタルなところもあるんで執筆にあたるにも必要以上に時間がかかります。

 と、まぁそんなこんなでまだ大変未熟ではありますが、この作品共々これからもよろしくお願いします。それでは!
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