ハイスクールD×D ~神殺しの王は赤き龍の帝王となりて王道を征く~   作:ガーネイル

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 またしてもほぼ一年ぶりの投稿。新しい職ではもうちょっとプライベートの時間を確保できるはず……。部分ごとに時間が空いてるから文章的にも怪しいところが結構多いかもしてないですがよろしくお願いします……。
 流れがおかしいなど指摘点が多い不定期投稿作品だとは我ながら思いますがその点も今後もよろしくお願いします。
 
 それではどうぞ。


14.大戦の続きを望む堕天使

 共同戦線を築いてから数日が経過していた。そんな何の進歩もないように進んでいたある日の深夜。和希はとてつもないプレッシャーを感じて飛び起き、外に飛び出る。

 リアスやアティ、アーシアもそれを感じ取ったようで後から外に出てくる。そして家を出た先にいたのは行方が分からないでいたフリード・ヒルゼンその人だった。

 

「やぁ~。久しぶりだね、アーシアたん。あと君もね、カズキ君。もしかしてヤッてる途中だった? ごめんね。空気読めないのが僕ちんのウリなのよ」

 

――ひっぱたいてやろうか、こいつ……。

 

 そんなことを思った瞬間、和希は何かに弾かれたかのように上を見上げる。すると空には十枚に及ぶほどの漆黒の翼を生やした男が月を背にしながらそこにいる。

 黒いローブを身に纏った男。もとい、堕天使は和希より後ろにいる女性、リアスに視線を向ける。そして苦笑を浮かべてから言葉を投げかける。

 

「初めまして。というべきかな? グレモリーの姫君よ。その紅髪は相変わらず麗しいものだな。あの忌々しい兄君を思い出して反吐が出そうなほどだ」

「ごきげんよう、堕ちた天使の幹部――コカビエル。私の名はリアス・グレモリー。以後お見知りおきを。一つだけ付け加えるとするならこの場で政治的なやり取りを望んでも無駄よ」

 

 コカビエル。旧約聖書偽典『エノク書』に現れる天使の一人。後に堕天使となりグリゴリと呼ばれる一団に所属する。堕天使のリストでは四番目に挙げられる程の大物である。

 

「ふん、そんなことに興味はない。こいつは土産だ」

 

 コカビエルが脇に抱えていたものを投げ捨てる。和希はそれを抱きとめる。コカビエルが投げ捨てたそれは傷だらけになっているイリナだった。

 和希が上を見てから一言も発せずにいたのはそれに気づいていたから。

 

「俺たちの根城に来たのでな、それなりの歓迎をした。後、二匹は逃がしたがな」

 

 どうやらその場にはゼノヴィアと祐斗もいたようだが、この様子だとおそらく無事だろう。和希はアーシアにイリナの回復を頼み、共に容態を見ている。が、内心は激情で荒れ狂っている。そんなことなどいざ知らず、コカビエルは喋りだす。

 

「魔王との交渉などまどろっこしいことなどしない。まぁ、妹を犯し、殺せばサーゼクスの激情が俺に向くかもしれない。まぁ、それも悪くはない。だが、それでは物足りない。お前が根城にしている駒王学園を中心に暴れさせてもらう。そうすれば、サーゼクスも出てくるだろう?」

「そんなことをすれば再び三竦みの戦争が始まるわよ?」

「それは願ったり叶ったりだ。エクスカリバーでも盗めばミカエルのやつが戦争をしかけてくると思ったんだが、寄こしたのは雑魚のエクソシスト共と聖剣使いが二人。これではあまりにもつまらん! だから、悪魔であるサーゼクス妹の根城で暴れるんだよ」

 

 今すぐにでもコカビエルをぶっ飛ばしてやりたい思いで溢れ返していた。だが、家の前、しかもこんな町中で戦闘を開始するわけにもいかない。

 ひとまず、コカビエルに関することは一度棚上げしてイリナのことに専念することにした。イリナの呼吸が軽くなったのを確認し、抱え上げて二階の空き部屋に行く。アーシアには押入れから布団を出して敷いてもらう。

 彼女を布団に寝かせたところで気配が弱まったのを感じた。間もなくしてリアスとアティが部屋に入ってくる。

 リアスは今から子猫や朱乃を連れて駒王学園に出向くようだ。そこで和希はアティに着いて行ってもらうことにした。

 和希はもう少しイリナが良くなるまで傍にいてあげたかった。アーシアのことがあったとは言え、和希にとってイリナは幼少期の数少ない友人の一人。今すぐにでも仕返しにコカビエルをぶっ飛ばしてやりたい気持ちはある。だが、とてもじゃないが、彼女のことを放ってまで決着をつけに行く気にはなれなかった。

 全体的にひと段落着いた後にアーシアはリアスを追いかけて駒王学園に向かう。和希は動かず、ずっとイリナの傍で座っている。

 どれ程の時間が経ったのだろうか。数分か、数十分か、数時間か。傍から弱々しいが、しっかりと名前を呼ばれる。

 

「カズ……くん?」

「あぁ……よかった。気が付いて。体、調子の方はどうだ?」

「怪我を治してくれたのはアーシアさん?」

「そうだ。さっきまで一緒にいたからな」

「そっか。会えたらお礼言わなくちゃ。彼女のおかげで体力的には少しだけしんどいけど怪我の方は大丈夫そう」

 イリナはゆっくりと体を起こしながら和希と向かい合う。

 

「ずっと傍にいてくれたの?」

「まぁ、会ってない時間があるとはいえ、小さい頃からの付き合いだからな」

 

 和希は頬を掻きながらそう答えると何とも言えない、もどかしい雰囲気が部屋の中を支配する。そしてそれを誤魔化すように口を開く。

 

「ほら、横になってな。これから忙しくなると思うから」

 

 イリナは言われた通り、体を倒し、目を閉じる。それと同時に和希が立ち上がり部屋から出ていく。扉が閉まりきる直前に小さく呟く。

 

「いってらっしゃい」

「あぁ、いってくる」

 

 まさか、返事が返ってくるとは思ってなかったのもあるが、普段と違う和希の声音に少しドキッとしたイリナだった。

 

*******************************

 

 

 急いで向かった駒王学園には結界を張っている生徒会メンバーとその中で戦っているアティを含めたオカルト研究部の面々とゼノヴィアがケルべロス相手に大立ち回りしている。少し離れた所に宙に浮いている幾何学模様とコカビエルがいる。

 結界に近づくとソーナが和希に気付き、大声を上げる。

 

「風峰くん! カウント3で、一瞬結界解除します。それと同時に行ってください。リアスたちをお願いします! 」

「任されました」

 

 宣言通り、3秒後に結界は一度解除され、和希は走って彼女たちの元へ向かう。すると、捌ききれてない一頭のケルベロスがアーシアの方へ向かうのを目視して、体に強化の魔術を掛け、距離を縮める。

 

「カズキさん!」

「待たせた。……我は最強にして、全ての勝利を掴む者なり。全ての敵と全ての敵意を挫く者なり。故に我は、立ちふさがる全ての敵を打ち破らん」

 

 和希は雄牛の化身を使い、向かってくるケルベロスを受け止める。そして赤龍帝の籠手を纏い、殴り飛ばす。リアスたちが相手をしているケルベロスを目掛けて。

 殴り飛ばされたケルベロスとぶつかったケルベロスは何とも情けない声を上げながら飛んでいく。

 リアスたちは予想外のことに呆気に取られるもこんな事が出来る唯一の人物に思い当たる。

 その人物の名前を呼ぼうとした瞬間、宙の幾何学模様が光りだす。その光が柱となり地面へと降り注ぎ、グラウンド全体へと広がっていく。すると近くにいた人物が声をあげる。

 

「完成した! ついに四本の聖剣が一つに!」

 

 徐々に光が収まっていく。その中心には一本の剣が鎮座している。

 

「フリード! 最後の余興だ。陣のエクスカリバーを使え。その聖剣の力を見せてみろ」

「はいはーい。全く、バルパーのおっさんは人使いが荒くて困っちゃう。素敵仕様になったエクスカリバーでここにいる悪魔ちゃんたちを首チョンパしちゃいましょうかね!」

 

 イカれた笑みを浮かべながら剣を握るフリードに真っ先に近づいていくのは木場祐斗だった。この場にいる誰よりも聖剣という存在に人生を狂わされ、強い恨みを抱いている人物。そんな彼の隣を聖剣の保持者であるゼノヴィアが歩く。

 

「グレモリーの『騎士』。共同戦線は今も生きているのであれば、共にあの聖剣を破壊しよう」

「いいのかい?」

 

 ゼノヴィアからの思わぬ提案に祐斗も驚愕する。一方、ゼノヴィアは不敵な笑みを浮かべる。

 

「あぁ。最悪、エクスカリバーの『核』さえ回収出来れば構わない。それにあのフリードが使っている時点であれはもう『聖剣』であってそうではない。あれはもう、――ただの異形の剣だ」

 

 そんな会話をバルパーは声を出さずに笑っていた。祐斗は憎悪の籠った瞳をバルパーへと向ける。バルパーはそんな視線など全く意にしていないのか。一人でに語りだす。

 

「私はな、『聖剣』が好きなのだよ。それこそ夢に見るまでに。幼少時代、エクスカリバーの伝記に心躍らせたものだよ。だからこそ、自分に聖剣使いとしての適正がないと知った時は絶望したものだ。だからこそ使える者により強く憧れを抱いた。そして、聖剣を使える者を人工的に作り出す研究に没頭したのだよ。そして完成した」

 

 バルパーは語る。研究の内容を、そして至った結論を。

 聖剣を使うために必要な因子。それを数値で適正を調べた。被験者は全員が必要な数値に至っていなかったという。だからこそ、持っている者から因子だけを抜き取って結晶化する。それを取り込むことで適正ラインまで数値をたたき上げる。

話しながらバルパーは懐から結晶を取り出し、それを祐斗の方へ放り投げる。祐斗が、その友人たちが処分という名目で殺されたのは全てそれの為。

 

「もう実験は、設備さえ整えば量産できる段階まで来ている。まずはコカビエルと共にこの町から。世界中の聖剣を集め、量産された聖剣使いで、ミカエルとヴァチカンに戦争をしかけてくれる。私を断罪した愚か者共に私の研究成果を見せつけてやるのだ」

 

 もう結晶に興味はないのか一瞥もしない。放り投げられた結晶は勢いを失いながらよろよろと祐斗の足元へと転がっていく。

 祐斗はそっと屈み、割れ物を扱うかのように優しく持ち上げる。やるせなさや親愛。様々な感情が混ざりあい、複雑で切なげな表情をしている。

 

「皆……」

 

 今にも消え入りそうな声で呟く彼の頬には一筋の涙が伝う。一滴の涙が結晶に落ちる。すると結晶が淡く輝き、それが校庭全体へと広がっていく。広がった光は集まりだし、徐々に人を模っていき、数人の少年たちが祐斗を囲むように立っている。

 

「あれは……」

「おそらくバルパーの実験で犠牲になった子供たちだと思います。色々な理由はあると思いますが、一番大きな要因はきっと木場君の心の震えがあの結晶に眠っていた魂を解放したのではないでしょうか」

 

 いつの間にか和希の隣に立っていたアティがそう話す。

 この戦いの様々な要因が重なり合い、今のような奇跡が起きているのだろう。

 

「僕は……、ずっと思っていたんだ。僕だけが生きていて本当に良かったのかって。僕よりも夢を持った子がいた。生きたいと思った子がいた。それなのに僕だけが今もこんな平和な時間を過ごして許されるのかって」

 

 祐斗の口から零れるのはずっと口に出せず、奥底で眠っていた想い。それに答えるように歌う。生前に歌っていた歌を。それはつい、先日まで教会に属していたアーシアや今もなお属しているゼノヴィア、和希の家で眠っているイリナにとって馴染みのある『聖歌』。

 

『皆がいれば大丈夫』

『例え、神がいなくても』

『見ていなくても』

『僕たちの心はどんな時だって』

「……ひとつだ」

 

 少年たちは徐々に光へと戻り天へと昇っていく。昇った光は集まり、より大きくなって祐斗に降り注ぐ。それと同時に赤龍帝の籠手に宿るドライグが囁く。

 

『相棒。あの『騎士』は至ったぞ。神器は所有者の想いを糧に変化や進化していくモノだ。だが、その中でも全く別の領域がある。所有者の想いや願い。そういったものがこの世に漂う『流れ』に対して逆らえるほど劇的な転じ方をした時に神器はその領域に辿り着く。それこそが……』

 

 ドライグは楽しそうにその先を呟いた。

 

禁手(バランス・ブレイカー)だ』

 

 祐斗を優しく照らしている光はまさしく、『天からの祝福』と言えるものだった。

 

「バルパー・ガリレイ。あなたを殺さない限り、第二、第三の僕たちのような存在を生み出す」

「ふん、昔から言うだろう。実験には犠牲が付き物だと。この世界の発展は全てそれらの上に成り立っているのだ」

 

 この老人が言っていることは何も間違いはない。バルパーのように人体実験をしているわけではないが、科学者は実験の際に何十、何百というマウスを実験体にしている。何も非人道的なことを含まなければそれは確かに正しいことではあるのだ。

 だが、それが正しいからと言って納得出来るかと言われたらそれは否である。理解できることと納得することは全く別のことだ。

 

「木場、お前が今までしてきたことはきっと無駄じゃない。だから今ここで、亡くなった彼らと共に過去の因縁にケリをつけろ!」

「風峰くん。あぁ、そうだね。……僕は剣になる。彼と共に部長や仲間たちを守る為の剣に」

 

 喋りながら剣を造ろうとする祐斗の周りを光が包み込む。

 

「今こそ、僕の想いに答えてくれ『魔剣創造(ソード・バース)』!!」

 

 その叫びと共に、光は祐斗の中に入り込み、新たな剣を造りだす。その剣は縦で黒と白の二色に分かれていた。

そう、それこそが祐斗の『魔剣創造』が得た新たな力。『魔剣創造』が至った姿でもある。

 

「禁手『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔を有する剣の力、その身で味わうといい」

 

 祐斗は『騎士』の特性であるスピードを最大限生かして接近する。以前のように一撃に懸けるような失態は犯さない。フェイントを混ぜつつ動き、的を絞らせない。

 視線をはずし、視覚外から攻撃をしかける。が、フリードの悪魔祓いとしての感か、戦う者としての予感か。それをしっかりと受け止める。

 

「グレモリーの『騎士』! そのままそいつを抑えておけ。私も切り札を使う!」

 

 ゼノヴィアはそう言って破壊の聖剣を地面に突き立て右手を横に伸ばす。

 

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

 そう言葉を紡ぐ彼女の横の空間が歪む。ゼノヴィアは迷うことなく手を捻じ込み、何かを掴んで勢いよく引き抜く。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は開放する。 デュランダル!」

 

 デュランダル。十二勇士の一人、ローランが持っていた言われる聖剣。岩に叩きつけて折ろうとしたが、剣が岩を両断した。というのは有名なエピソードだろう。

 神話や伝説で語られる剣であるならば、エクスカリバーやバルムンク、レーヴァテイン。それらに並ぶくらい有名な剣である。

 真贋はともかく、そのデュランダルをみてバルパーだけは平静を保てず、声を荒げる。

 

「デュランダルだと!? そんなバカな! 私の研究ではデュランダルを扱えるほどの領域には至っていないのだぞ! 完全な適正者、真の聖剣使いだとでもいうのか!?」

「私はイリナやフリード(そいつ)とは違う数少ない天然モノだ。デュランダル(こいつ)は触れたモノは何でも切り裂いてしまう暴君でね。所持者の言うことをろくに聞きもしない。だから、こうして異空間に閉じ込めておかないと危険極まりないんだ」

「そんなのアリですか!? ここにきてのチョー展開。そんな設定いらねぇんだよ!」

 

 フリードはエクスカリバーを構え、殺気を向ける。ゼノヴィアはデュランダルを横に一閃するとガキィンという刃物同士がぶつかる音が響く。   透明な刃が彼女のもとへと襲い掛かったのだろう。その証拠にデュランダルによってバラバラに砕かれた刃が姿を現す。

 それを見てゼノヴィアは思わずつまらなそうに嘆息する。

 

「やはり、所詮は折れた聖剣。脆いものだな」

 

 聖剣としての核が違うのであろう。デュランダルの威力は彼女自身が借り受けている『破壊の聖剣』より大きく上回っている。見えないはずのエクスカリバーを軽くあしらい、砕かれたことにショックを受けたのかフリードの覇気が弱まる。

 祐斗はそれを好機と判断し、接近して聖魔剣を振りぬく。フリードは反射的に残っているエクスカリバーの刀身で受け止めようとしたが、それも虚しく破壊され、聖魔剣により切られる。

 肩から横腹の傷口から鮮血を滴らせながら倒れる。

 

「見ていてくれたかい? 僕たちの力はエクスカリバーを超えたよ」

 

 祐斗のエクスカリバーに対する因縁はここでようやく一つの区切りをつけることが出来たのである。だが、まだ終わってない。元凶がまだそこにいる。

 それを倒してようやくケリが着くのだ。

 

 

*******************************

 

 祐斗たちとフリードのやり取りを見ながら、ただ、ひたすらバルパーは思考に耽っていた。誰にも聞き取れないような小さな声でブツブツと呟いている。

 フリードが倒れ、祐斗がバルパーの方を向くと、まるでタイミングを合わせたかのように大きな声をあげる

 

「そうか! 分かったぞ。反発するはずの聖と魔。それぞれを司る存在のバランスが大きく崩れているのだとすればこの混じり合うという現象にも説明がつく。 つまり、魔王だけではなく、神も――」

 

――死んでいる。

 

 一つの結論に至ったバルパーを光の槍が貫き、最後の部分が声に出ない。バルパーは血塊を吐き出し、地面に伏せる。

この場で光の槍を作れるのは一人しかいない。バルパーを殺したのは他でもない、上空で高みの見物をしているコカビエルだ。この場においてそれ以外の答えは存在しない。

 コカビエルは哄笑を上げながらゆっくりと降りて来る。

 

「バルパー、お前は優秀だった。お前がその答えに辿り着くことが出来たのがその証拠だ。だが、俺はお前がいなくても別に構わん、最初から一人でやれる。さて、そこにいる男。貴様はいったい何者だ。赤龍帝だということは知っている。だが、それだけじゃ説明がつかんことが多すぎる」

「別にお前が気にすることじゃない。今からお前を倒す。だから、教えたところで意味はない」

「ハハッ! 確かにその通りだ。貴様となら良い戦いが出来そうだ」

 

 和希は前に出てコカビエルと対峙する。コカビエルの圧力が増し、全体を支配する。それに呼応するように増した和希の迫力にオカルト研究部の面々とゼノヴィアはまるで心臓を掴まれたかのような感覚に襲われた。

 古の大戦を生き残った堕天使幹部の実力。それを全面に押し出している。だが、そんなものは全くと言っていいほど意に介さない和希は愛剣を手にする。

 一瞬の静寂。そして両者が姿を消す。聞こえるのは剣と槍がぶつかる音。見えるのは衝突によって生じる刃の煌めきが光となって無数に飛び散る。

 

「面白い。面白いぞ、人間! やはり強者との戦いはやめられない!! だが、俺には分かる。まだそんなものではないのだろう。出してみろ、お前の奥の手を!」

 

 強者ゆえの感覚。たった数手合わせただけ。それだけでどんなものかは分からないが、和希が隠している手段があるのを何となく感じ取っていた。

 

 

「……。俺は俺に斬れない物の存在を許さない。ここに誓おう、この剣は全てを切り裂く無敵の刃であると!」

 

 和希の剣を持つ右手が銀色に包まれていく。『斬り裂く銀の腕(シルバーアーム・ザ・リッパー)』を顕現させる。リアスたちは初邂逅の時に目にしているし、合宿の時にどの神から簒奪(さんだつ)したのかを知ってはいるし説明もう受けた。だが、その力を目にしたことはただの一度もない。

だが、コカビエルだけは反応が違った。有り得ないものを目にして、動揺していた。

 

「何故だ。何故貴様がその力を使える!? それはあいつのモノだ。だが、やつを含めた大勢の神は先の大戦で死んだはずだ!」

 

 神は死んでいる。その言葉に最も動揺していたのは戦いを見ていたアーシアとゼノヴィアだ。ゼノヴィアは現在進行形で教会関係者。和希が神殺しであることは聞いた時も正直受け入れ難いものはあったが、アーシアも元々はそちら側に属し、信仰していたのだ。それを聞いて平然としていられる訳がなかった。そして、神の死を聞いて動揺したのはオカルト研究部のメンバーも同じ。

 

――じゃあ、ゾラさんが言っていた『まつろわぬ神』っていうのは本当みたいだ。

 

 まつろわぬ神。それは人が紡いできた神話に背き、自侭に流離う。その先々で人々に災いをもたらす神々の総称。そして、天災などに神の存在を感じ、畏敬の念から名前を得たものが『真なる神』と魔術の世界では言われている。もっともまつろわぬ神を打倒した人間は和希が初めての事である。とも、サルデーニャ島に住んでいるルクレチア・ゾラはそう言った。

『真なる神』と『まつろわぬ神』という呼び方の違いは恐らく人間の魔術世界での話なのだ。だからコカビエルやリアスたちは知らなかったことの方が多いのだろう。

 

「そうだな。強いて言うならその権能を簒奪したからだ」

「権能の簒奪だと!? そうか、あの女の神具によるものか! 面白い。神殺しに成功した人間を見るのは初めてだな。やはり長生きはしてみるものだ。面白いモノを見せてくれたお礼だ。面白いことを教えてやろう」

「面白いこと?」

「あぁ、これは各勢力のトップとその一部しか知らないことだ。先ほどの続きだが、先の大戦で神々は死んだ。だが、同じように先代魔王も死んでいる。残ったのは疲弊しきって神を失った上位天使、魔王全員と大半の上級悪魔失った悪魔。そして幹部以外ほぼ消え去った堕天使。どの勢力も人間に頼らなければ繁栄が出来ない程落ちぶれた。グレモリーといたのならば分かるだろう。悪魔も純血が希少だということが」

 

 以前、ライザーが言っていた純血が貴重云々と言っていたことはこれを知っていたからこそだろう。そして、リアスは現魔王の妹だ。そのことは分かっている。だからこそ、あの婚約でリアスが抱えていた葛藤でもあったのだ。

 きっと先の大戦のあれこれが今日(こんにち)に至るまでの騒動なのだろう。ここにいるコカビエルは和希の家の前で言っていた『願ったり叶ったり』というのは恐らく戦争の続きだ。どんな理由であれ、彼はずっと『三竦みの大戦』に囚われたままなのだろう。

 

「そうか、お前はその大戦に囚われたままなんだな。お前の中で続いている大戦を俺が終わらせてやるよ」

 

 今もなお、戦争の炎に焦がれ、戦いを望む堕天使を楽にするために和希は剣を握りなおす。

 

「さぁ、神殺しよ。お喋りはここまでだ。オレは貴様を殺し、この場にいる者を殺す。そしてあの大戦の続きをするのだ!」

「そうはさせない。俺はこの一撃で全てを終わらせる!」

 

 コカビエルは光の槍を自分の頭上に作り、それを巨大化させていく。和希も剣を上段に構え、右腕を通じて魔力を送り込む。

 

「沈め、神殺しよ!」

 

 コカビエルは巨大な光の槍を和希へと投げつける。和希はそれを迎え撃つように剣を振り下ろす。光の槍をまるで豆腐を切るかのようにスッと真っ二つに切り捨てると同時に剣に纏わせた魔力を衝撃波のように飛ばす。飛ばされた衝撃波をコカビエルは正面から受け、袈裟状に深い傷を負う。地面に叩きつけられるように落ちた堕天使にとどめを刺すために歩いて近づく。

 

「最期に貴様と戦えただけでも良しとしよう」

「そうか……。じゃあな、コカビエル」

 

 神殺しはコカビエルの首に剣を添えて、そっと切り落とす。

 古の大戦で雁字搦めになっていた伝説上の堕天使はここで息を引き取った。そして駒王学園に張られていた結界を突き破り、何者かが現れる。

 

「コカビエル回収の指示が出たが、遅かったようだな」

 

 姿を現したのは全身白の翼が生えた鎧兜に包まれた誰か。先程の声から男であることは分かるが、顔が隠れている為、素顔は分からない。が、コカビエル以上の力を持っていることが分かった和希は目の前の敵に警戒する。

 すると、和希の籠手に埋められた宝玉が光る。

 

『誰かと思えば白いのか』

『何だ、赤いの。起きていたのか』

 

 ドライグが発した言葉とそれに返ってきた言葉。赤と白。それだけで相手がどういう存在か。当代の赤龍帝がそれを何となく理解するには十分すぎる情報だった。

 

「コカビエルを倒すほどの力、そして俺が出てから、その気迫はより増した。いくら疲弊しているとはいえ、今の俺では勝つことは難しそうだ」

「そうか、お前が……」

「何となく分かっただろうが、俺が当代の白龍皇(はくりゅうこう)だ。コカビエルが死んだ以上、ここにいる意味は特にない。だが……いずれ君と覇を競い合うのを楽しみにしているよ」

 

言いたいことだけ言って飛び去っていく白龍皇。コカビエルの打破後、思わぬ乱入者が出てきたが、これで事態の収拾がついたのだ。

 

「終わった……の?」

 

 リアスが呆気に取られたように呟く。それを聞き取った後に権能を解除し、和希は振り返って頷く。オカルト研究部の面々とゼノヴィアの表情に喜色が浮かぶ。各々が事の終わりを喜んでいる傍ら、アティは和希の隣にいた。

 

「お疲れさまでした」

「ホントだよ。この町は短い期間で色々起こりすぎだ。正直、当分ゆっくりしたい」

「そうですね、それでは今度、いつかのお礼をください。よろしくお願いしますね?」

 

――全く。なにが『それでは』だよ。

 

 和希は内心呆れながらもそれに頷く。そして少し離れた所から和希に助けを求める祐斗の声とその喧噪を二人で眺めていた。

 そんなあれこれが起きた数日後の放課後、ゼノヴィアが編入して驚愕したのだった。

 




 というわけでとりあえず、聖剣編は終わりです。数話幕間を挟んだ後にヴァンパイア編に行きたいと思います。
 この先の話で書きたいシーンの構想はちょいちょい出来てるのにそこまでの道のりが遠すぎる。
 そのうち、ウマ娘とかシャニマスの二次創作をきっちり書いてイラストもお願いしてコミケに出してみたいなと思ったり思わなかったり…………。
 まぁ、とりあえずそんなこんなではありますが、またお会いしましょう。それでは。
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